かわいいコケ ブログ I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、情報発信中。
コケ、旅、山が好き。コケとコケにまつわる人やモノの記録です。

山形コケ紀行(その1)&「お知らせ」を2つ

2017-05-23 16:21:13 | コケをめぐる旅

  
   ▲滝のそばの岩上に生える胞子体が成熟してきたコツボゴケ(2017.5月 秋田県)



----------<お知らせ>----------

●その1:『近所で、旅先で、さらに自宅でも。 じわじわ高まるコケの人気。その理由とは?』

「観光 Re:デザイン」という日本のこれからの観光の可能性やスタイルを探ることを
テーマにしたサイトにて、上記タイトルの記事を寄稿させていただきました。

すでに4月末にはアップされていたのですが、GWに遊びまくったり、連休ボケしていたりして、
すっかりここでのお知らせが遅くなってしまいました(担当者Jさん、本当にごめんなさい~!)。
よかったらぜひご覧になってみてください。

※記事はこちら→ 

ちなみに記事のトップを飾っている画像は、4月に東京・葛飾区の水元公園で行ったコケ観察会の様子。
撮影を快く承知してくださった参加者の皆さん、その節はありがとうございました。

 
▲水元公園でのコケ観察会の様子。いろんなコケの胞子体がちょうど出ていた時季で、楽しかったです。



・・・余談・・・

最近テレビや雑誌などのメディアで「コケがひそかなブーム」という切り口で、コケが紹介されているのを目にする機会が多くなった。
たしかにコケの観察会やイベントにはとても多くの方が興味を示し、参加もしてくださる。

個人的には、コケが好きでコケを楽しむお仲間さんが増えていることは嬉しい。
でも、それはあくまで人間界で起こる事象の一つに過ぎないことであって、
コケたちにとっては自分が注目されているなんて、正直、どうでもよいこと・・・にちがいない(笑)。
 
コケを眺める人が増えようが減ろうが、相変わらずコケは、美しく、神秘的で、ユニーク。そして繊細だ。
もしも、そこに人間の軽率な一手が加わると、いともたやすくいなくなってしまう。

「好き」というその気持ちの根底にあるのは、利己からくるものなのか、それとも相手を重んじる愛からくるものなのか。
私たちがコケに接する時、これからはそんなことを少し考える「ひと呼吸」があるべきなのかもなぁ。

最近、〝ブーム〟と呼ばれる陰でひそかに、そして、大きな問題となっている「コケの乱獲」と「コケの使い捨て」。
上記の寄稿文の結びは、そんなことを思いながら書いたことを思い出しました。



●その2:《祝》『知りたい 会いたい 特徴がよくわかるコケ図鑑』(発行:家の光協会 )が増刷決定!

  


筆者がGWに遊び呆けている間にも、編集者さんらと力を合わせて作ったコケPOP(説明はまた後日!)ががんばってくれたのか、
予想に反して多くの方がこの本を手に取ってくださいまして、発行からちょうど1か月で増刷が決まりました。

ありがたい。

もう本当にその言葉につきます。
ありがとうございます。

なお、本屋さんに行ったのになかったという方はしばしお待ちを。
2刷目は6月初旬頃には店頭に並ぶと思います。


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さて、ここからは山形コケ紀行。


夫の実家が山形県にあり、もうここ何年もゴールデンウィークとお盆には山形県を訪れるのが常になっている。

関西人からすれば、東北というのは近い親戚がいるなど何かしらの縁がないと、
ほとんど訪れる機会がないし、日常生活の中で情報を得るチャンスも極めて少ない。

事実、山形県について興味を持つチャンスがほぼ皆無だった結婚前の私にとって、
「さくらんぼ」、「ラ・フランス」、「だだちゃ豆」という美味しそうかつ高級そうな三大農産物と
「県民が芋煮会に対して底知れない情熱を持っている」(by 秘密のケンミンSHOW)というのが、山形県のすべてだった。

いま思えば、山形県の皆さん、ごめんなさいってかんじであるが、
きっと関西を知らない山形県民からしても、大阪は「粉モン」に「豹柄」だし、兵庫は「おしゃれな港町・神戸」ってな具合で、
これだけインターネットが発達してもなお、遠い土地へのイメージというのは、
しょせん中学くらいまでに見聞きした情報がすべてになってしまうのだと思われる。

しかし、意外や意外、実際に訪れてみると山形県、なかなかどうしてこれが私の心惹かれるコンテンツが満載の県なのである。
たとえば「縄文土偶」をはじめ、「ジオパーク」、「伝統野菜」、「井上ひさし」、「山伏」、「湧水地」などなど。
どうしてもっと早くこの県に目をつけておかなかったのかと悔やまれるが、今さら悔やんでも仕方がない。

その中から今回のゴールデンウィークは「湧水地」に目的を絞り、
鳥海山の麓にあり、湧水で有名な遊佐町(ゆざまち)へ行くことになった。
もちろん、言わずもがな湧水が豊富なところにはコケがあるだろうと踏んでのことである。


奇遇にも、遊佐町は『特徴がよくわかるコケ図鑑』の担当編集者Eさんのご出身地であったことから、
下調べするまもなく、湧水地の情報を事前に得ることができた。

さらにGW前に、たまたまキノコ写真家で東北エリアの森に詳しい新井文彦さんと飲む機会があり、
「鳥海山麓の湧水地ならここへ行け!」というEさんとはまた違った新情報をゲット。

さらにさらに、夫の姉が鳥海山へ毎年スキーに行っており周辺の地理に詳しいことから、
効率よく複数の湧水地の名所を回るコースを考えてくれ、さらには近くの宿も予約してくれるなど、
なんだかもう、今回は旅に出る前から色々と至れり尽くせり状態。

これはもう湧水地が私を呼んでいるとしか思えない。

そして当日、運転免許がない私たち一家(私のみならず夫もない)は、移動も義理姉や義父にがっつりお世話になり、
首からカメラとルーペだけ下げた状態で車中で爆睡していたら、いつのまにか素晴らしい湧水地の入口に到着していたというわけである。

いやはや、おねえさん、こんな私でごめんなさい。



▲目が覚めたら、今回の第1目的地に到着。



▲看板の柱を見ると「にかほ市」とあり、ここは山形県ではなく、ギリギリ秋田県という場所らしい。寝ぼけつつ、片道10分の道のりを歩きだす



▲遊歩道脇の小川。なかなかの水量じゃないか。寝ぼけていた頭もじわじわと覚醒



▲5月初旬の東北は、林床にスミレが群生。「スミレも種の見分けが難しいのだよなぁ」なんてこと思いながら、さらに先へ進む


そして、看板には「10分」とあった道を
スミレやらコケやらを見ながら20分ほどかけて歩いていくと・・・




▲ででーん!と突如現れた大迫力の景色


見ているだけで涼しくなれるこの絶景。岩という岩がコケだらけである。
驚くべきはこの水が上流から流れてきた川の水などではなく、
その場所、その場所から浸み出している湧水だということ。

入口の看板によれば、溶岩が何層にも積み重なってできている鳥海山の地層に降った大量の雪や雨が、
およそ10~20年の時間をかけて、このように山麓のいたる場所に湧水として流れ出ているのだという。

とくに溶岩の縁部分にあたる場所の湧水は水量も多いため、
このような景観も美しい湧水地として有名になっているとのこと。



▲角度を変えて見た様子。青々としたコケが流水に映える


あの岩場にはいったいどんなコケが生えているのかと非常に気になったが、
正直、目測でも向こう岸にわたるには腰以上まで水に浸かるであろうことはひと目でわかり、
さらにこの勢いのよい流れっぷりからして、うかつに近づくのは危険すぎると判断。

早々にコケの見分けは諦めて、ここではひたすらコケ風景を楽しむことにする。



▲近くにはこのような看板もありました。確かに自然環境保護の点からも入るのはご法度。
 でも実際に素人が「川を渡る」のは技術的にもかなり厳しいと思う











ふんだんに水分を含んだみずみずしいコケ、そして耳に心地よい湧水の流れる音、いつまでいても飽きない。
ぼんやり風景を眺めていたら、目の前の岩場にコツボゴケの大群落。ようやく種がわかるコケがいた!(笑)



▲すかさず滝をバックにパチリ


そして、帰り道。行きでは気づかなかったが、靴ひもを結び直すためにしゃがんだら、
スギの大木の足元に胞子体をたくさんつけたコケの群落を発見。





なんだか長く伸びた胞子体の柄が気になって、よくよく見てみると・・・











こ、この子はもしかしてヨツバゴケ!?
まだ胞子体が若くて、ヨツバゴケ(四歯苔)の最大の特徴である4本の蒴歯(さくし)が現れていなかったが、
ためしに1本の胞子体の帽を失敬したところ、まだ未成熟ながら蒴歯の形状がヨツバゴケのそれであった。

さらにもう一つ、ヨツバゴケの特徴となる茎頂部の葉がカップ状になった植物体も発見。





本来なら、このカップの中に粒々の無性芽が詰まっているはずなのだが、
残念ながら今回はそれらしきものが見つからず。

ちなみに、ヨツバゴケの近縁種には「アリノオヤリ」というかわいい名前のコケがあるが、
こちらは胞子体の柄が途中で明らかに「く」の字に曲がるのが特徴。
その点から見ても、今回のコケはヨツバゴケの可能性の方が高そうだ。


ヨツバゴケを自分で見つけたのは今回が2度目。1度目は昨年の8月初旬、山形県内の山中でのことで、
やはり「山形のコケが見たい!」と義父たちせがんで車で連れてきてもらった時だった。

帰宅後、復習のためにも、改めてその時の画像をもう一度よく見直して見ることにする。

すると・・・・・



▲この時は山中の腐木上に生育。すでに胞子体は胞子を出しきって、朽ちつつあるようだった(2016.8月 山形県)



▲ピンボケで見づらい画像で申し訳ないのだが、蒴歯が4つに分かれている(2016.8月 山形県)



▲この時は、カップ状になった植物体が1か所にかたまって、たくさん生えていた(2016.8月 山形県)



▲よくよく中をのぞいてみると、つぶつぶの無性芽が! わかるでしょうか?!(2016.8月 山形県)



▲無性芽は顕微鏡で見ると円盤形だそう(2016.8月 山形県)


できたら今度のお盆休みも、あのヨツバゴケの場所をチェックしに行きたいなぁ。   <つづく>


【お知らせ】6/16(金)19時半~:コケ図鑑刊行記念トークイベント「コケの世界へようこそ」 @Title (東京・荻窪)

2017-05-11 09:00:31 | コケ情報
※下記のイベントにつきまして、おかげさまで定員に達したので受付を終了しました(2017.5.18追記)





GWに遊びまくってしまい、いまだにやや連休ボケなのですが、
残席が少なくなってきたとのことなので、取り急ぎ!

6月16日(金)19時半~、東京・荻窪の書店「Title」さん(本好きがわざわざ遠方からも訪ねるという人気書店!)で、
『知りたい会いたい 特徴がよくわかる コケ 図鑑』(家の光協会)の刊行記念イベントをさせていただける運びとなりました。

  
  ▲『知りたい会いたい 特徴がよくわかる コケ 図鑑』


このブログでの告知が遅くなってしまったのですが、先週からすでに申込も始まっています。定員25名。
もしご興味がありましたら、お仕事帰りにぜひ遊びに来てくださいマセ!



●イベント詳細・申込みはTitleさんのHPにて → 


  ※このブログでは申込み受付をしていません。


本物のコケにも触れつつ、店主の辻山さんに会いの手を入れていただきながら、
辻山さんのコケ体験についても色々とうかがおうかなと。わいわい楽しい会になればと思っています。


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はー。他にも告知せねばなことや、GWの山形コケ紀行、
その他諸々書きたいことはいっぱいあるのだけど…。

できるところから、ぼちぼち更新していきたいと思います。