ベッラのブログ   soprano lirico spinto Bella Cantabile  ♪ ♫

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ニ期会オペラ公演 ヴェルディ「ナブッコ」~壮大な史劇のオペラ、東京で上演~ぐらっぱ亭さまご感想記

2012年02月22日 | オペラ

ものすごいオペラをニ期会は上演したものだ。
このオペラはスカラ公演で、ブルゾンとディミトローヴァ主演、ムーティ指揮で聴いたが、それは度肝を抜くような演奏だった。

それを日本のニ期会が上演、またテレビで放映されるだろうけれど、ぐらっぱ亭さまがお聴きになったのでそのご感想を記す。



このオペラの初演はヴェルディが29歳の時というから、驚く。演奏時間正味2時間17分は、中身の複雑さから言えば寧ろ短いぐらいだ。

今回の上演、話題は何と言っても24歳という若き指揮者アンドレア・バティストーニ。
この若さで本格オペラを指揮する事自体、びっくりだが、演奏がまた素晴らしいときているから、二重の驚きなのだ。

これに応える東フィルも、さすが日本最古の管弦楽団というだけあって、見事な演奏を聞かせてくれて、大いに公演を盛り上げてくれた。全体的にバランスよく演奏されたが、とりわけブラスの響きが多彩で、思わず聞き入った場面が何度も。

二期会合唱団も、ソロで歌えるような団員が多数いるわけだから、うまくて当然だろうが、この舞台での彼らの役割をよく理解していて、ソリストとの関わり具合、間合いの取り方が抜群だったように思う。

ソリストたちもそれぞれ持ち味を発揮していた。とりわけアビガイッレの板波利加さんは期待通りで、今回もまた圧倒的な存在感を示し、堂々たる演唱だった。タイトルロールの上江隼人さんも、苦悩するナブッコの内面心理描写などに意を用いたのか、繊細な発声が特に印象に残った。

装置では背景になったゴツゴツとした岩肌の壁の、不気味なほど立体感のある質感作りに工夫の跡が見られたと思う。照明も当てすぎず引きすぎず、それぞれの配役に会わせて微妙な陰影作りに成功していたようだ。

アリアではもうこれしかないという「かつて私の心も歓びに心を開いた」。これがいわゆるCavatina+cabalettaの典型手法ということらしく、勉強になった。板波さんの低音域から一気に高音域まで、駆け上り駆け下りる超絶技巧を楽々こなす技術には脱帽。

イタリアの第二の国歌、Va pensiero sull'ali dorate 上手、下手からゆっくり登場するユダヤの捕囚たち、やがて中央付近で照明に合わせて、円になって合唱、そして喝采の後、すぐにアンコール演奏。こんどは円がほどけて左右に広がっての合唱。見事な演出だった。

休憩は20分が一度だが、場面転換で二度ほど照明を落としたまま、5分ほど待機時間がある。持ち込んだLED小型読書灯でプログラムを読んでるとすかさず係員がそばにきて、やめるよう注意。休憩中では?に対して「休憩ではありません」と宣う。

周囲に迷惑をかけるわけでもなく、不思議に思い翌日ホールに電話で確認すると、ケータイの明かりと間違えたのではないかとの説明。勘違いなら仕方ないにしても、そもそもあのホールは細かいことにうるさ過ぎだ。

#12
投稿者 ぐらっぱ亭 時刻: 14:22



ラベル: オペラ 2 コメント:
ベッラ・カンタービレさんのコメント...
ニ期会、ついに待望の「ナブッコ」ですか、
もうこれは素晴らしいオペラですね。主役のナブッコは王の中の王、と讃えられる英雄ですが、非情なる侵略王、そして実際の親子でありながら娘アビガイッレは奴隷との間の出生という恨み、正妻との娘フェネーナは美しくアビガイッレが憧れる青年イズマエーレと相思相愛・・・。
もうすごい家庭ですね。怖いです。
この物語は「史記」の武霊王の物語と重なります。王は当時の中国では戦車で戦っていたのを、直接馬に乗り、服装もシルクロードの将軍のような乗馬服、権力をほしいままにしますが、息子に幽閉される・・・ナブッコは民衆の声で再び「王の中の王」として返り咲きますが、武霊王は幽閉のなかで亡くなる・・・。
それにしてもあの「第2の国歌」は「史記」にはなかったような。
ぐらっぱ亭さまの批評、素晴らしいのでまた転載させて下さい。
よろしくお願いします。


2012年2月20日20:41
ぐらっぱ亭 さんのコメント...
ベッラさま、ありがとうございます。ややこしいストーリーを、「史記」と対比させての解説、まことに痛み入ります。当方も勉強になります。「行け、我が思いよ、黄金の翼に乗って」、メロディーも歌詞も、そしてこのタイトルの何と素晴らしいこと!第二の国歌も、むべなるかな、です。(尤も、国歌そのものが、どうもねー、歌詞はともかくメロディーが軽過ぎて、というのもあるかも知れませんよ


☆ そうそう、イタリアの国歌は歌詞はローマ時代からのことを歌って素晴らしいのだけれど、曲がもうひとつ、と思っていました。
ところで、このオペラはイタリア人にとっては、特別な意味を持っている。
祖国統一運動がさかんだったヴェルディの生きた時代、外国からつねに侵略を受け続けた「都市国家」から「統一国家イタリア」へ流れが一気にあふれ出た時だった。
合唱の「わが思いは黄金の翼にのりて」など、特別の感情で心が一つになる名曲である。

以前も動画をUPしたことがある。
名歌手カップッチッリのナブッコを聴いて司馬遷の「史記」と重ね合わせた。

私は若きバリトン歌手のKenさまが40歳を過ぎたらぜひ歌ってほしいと願っている。

ぐらっぱ亭さま、ありがとうございました。(ベッラ)

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