デル・モナコ~コレッリと続いた名テノーレ、そのあとはあのドミンゴやパヴァロッティ、カレーラスと思われているかもしれません。
「3テナー」などとマスコミにもてはやされたのですから。
しかし、天下のスカラではドラマティックな主役は二コラ・マルティヌッチを起用し続けました。
アクート(高音)など樫の木のように堂々としていて声が密なのです。
戦前の名テノーレ、ペルティーレの再来とまで賞賛されました。
マルティヌッチの相手役はマリア・キアーラやゲーナ・ディミトローヴァという実力派のプリマドンナでした。
ドミンゴなどに比べ、背が低く容姿に恵まれていないので、映像の時代には不向きだったかもしれません。
しかしスカラの主要な役はほとんどマルティヌッチだったのです。
マリオ・デル・モナコに激賞され、イタリア各地で活躍、ついにスカラで地位を不動のものにしました。
今は第一線から退き、若い歌手たちを指導しています。
Nicola Martinucci in "Amor ti vieta" da Fedora di Giordano.
リサイタルで、ジョルダーノ「フェドーラ」より
Martinucci & Bocelli in concerto!
コンサートで、プッチーニ「トゥランドット」より
Martinucci master class
第一線から退いて若手歌手のレッスンをしているマルティヌッチ、
若手歌手が高音を歌うのですが音程がぶらさがっています。
これはヴェルディ「トロヴァトーレ」から、テノーレ殺しと恐れられた高音の最強音、
誰でもここは怖いところで、ドミンゴはここを歌うのを怖がり、脇役の歌手に「この部分だけ歌ってくれないか」と
頼み込んだそうですが、その脇役歌手はいつのまにか姿を消す、という騒ぎに。
マルティヌッチはその高音を輝かしい声で歌って聴かせます。
全く衰えていないのに、なぜ引退?
そうききたいほどですが、まだ歌える間に第一線を退くというのが名歌手のプライドなのでしょう。
アレーナ・ディ・ヴェローナでの『トゥーランドット』のDVDを持っているのですが、カラフ役をこの人が歌っていて、見事な歌唱なのでどんな人なんだろうと気になって調べていたのですがやはり凄い人だったんですね。
ちなみに相手役はディミトローヴァでしてこれも凄かった・・・・
ほとんどがマルティヌッチでした。
マリオ・デル・モナコの指導を受け、そのあとを
継いだようです。
声はドミンゴよりもっと強いドラマティコで
本格的でした。
ディミトローヴァは私も実際に聴きましたが
声とドラマティコ・ダジリタという劇的な強い声を
駆使してフィオリトゥーラ(コロラトゥーラ)も可能な
優れた技巧を誇っていました。
またステージ姿も美しく、強烈な印象があります。
ディミトローヴァは晩年は声が衰え、まもなく
亡くなりました。でも一世を風靡した名歌手です。