奇想庵@goo

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WBC日本優勝

2009年03月24日 19時00分26秒 | スポーツ
正直、予想を覆す日本の連覇だった。

昨年の北京オリンピックでの戦いぶりから苦戦すると思っていた。だが、韓国に二度敗れたものの他の国との対戦ではかなり余裕のある戦いができていた。終わってみれば日本と韓国が突出した印象を残す結果だった。

国内の期待が極度の重圧となる中での優勝は素直に評価したい。前回大会はまだ手探りの中での勝利だったが、今回は期待が高かっただけにより厳しい状況だった。その中で、特に投手陣の活躍は見事だった。こうした大会では投手力の差が勝敗の鍵を握るが、日本の投手陣は抜群の安定感を見せた。MVPに輝いた松坂と、後がないキューバ戦と今日の決勝戦で素晴らしい投球をした岩隈は傑出した内容だったし、他の投手たちもそれぞれの役割をよくこなしていた。
一方、打線は安打の割りに得点に繋がらず、この決勝戦でもダメ押しのチャンスが何度もありながらことごとくそれを逸したあたりに物足りなさを感じたが、それでも最後の最後にイチローが結果を出してチームを優勝に導いた。打線は小粒感はあるものの日本らしい野球は見せられたと思う。

五度にわたって対戦した韓国も昨年のオリンピックの優勝がフロックでないことを証明した。日本との初戦で屈辱のコールド負けを喫したがそこから立て直し、投手の出来が大会前の構想通りにいかない中でも日本以外に敗れることなく決勝までやって来たのだからたいしたものだ。
勝敗の価値が乏しい順位決定戦を除くと韓国の1勝2敗。しかし、サンディエゴで見せた速攻はインパクトがあった。今日の決勝戦でも終盤の粘りはさすがだった。

今日の決勝戦は、岩隈の好投から日本に流れがやって来たが、そのチャンスで最低限の得点しか奪えず、好機を逸し続けたことで相手に流れを渡す悪い展開。特にノーアウト1・3塁から城島、小笠原連続三振を喫した5回と、ノーアウト2塁からランナーを進められなかった9回で、その裏に失点しているあたり流れをうまく呼び込めなかったことがよく分かる。
延長10回表、ツーアウト1・3塁でイチローとの勝負に出たことが結果的に敗因となった。ただ韓国は9回裏に同点に追い付くために主軸の3・4番に代走を使っており、残りの野手が一人だけという状況になっていた。この勝負はイチローを抑えることでチームに勢いを呼び込もうと意図したものだったのだろう。だが、不振といえどもイチローはイチロー。史上屈指の安打製造機相手にこの選択はやはり無謀と言われても仕方ないだろう。

見応えある日韓戦はあったものの、大会自体への評価は前回と変わらない。所詮はメジャーリーグが始まる前の前座に過ぎない。日本や韓国など本気で取り組んだ国はごく一部に過ぎず、オリンピックと比べても価値が高いと言えないだろう。
特にメジャーリーグ所属の選手たちの起用法に対してはチームからの制約がかなり厳しいものだった。村田が離脱して、日本では三塁手だった岩村を回さず、不慣れな片岡らをサードに使わなければならなかったのも恐らくチームからの要請によるものだろう。メジャーリーグの選手を揃えたチームはそうした制約の中で戦わねばならず、とても本気の戦いとは言えない。オランダが予想外に活躍したのもこうした背景があったからだ。
WBCはアメリカ国民には関心を持たれていないが移民の間で盛り上がっているという報道もある。決勝戦は5万を超える観衆だったと言うが、アメリカ在住の日本人・韓国人が多い西部での試合だったことが要因だ。

WBCが今後権威ある大会へと進化するかどうかはかなり疑問の余地がある。現状では金の稼げるコンテンツとは言いがたい。特にシーズン制であるアメリカで受け入れられるには、夏か秋に開催しなければ意味がない。しかし、メジャーリーグの試合を中断して行う価値は誰も感じていないだろう。今はメジャーリーグのマーケット拡大のための大会に過ぎないのだから。
真に野球の国際大会を望むのなら、それに見合う価値を創出しなければならない。メジャーリーグの言うがままでは価値は高まらないが、メジャーリーグを欠いても価値は見出せない。WBCを参加国の意見によって改善していければチャンスはあるかもしれないが、その道のりは非常に遠い。それでも積み上げていくしかないのかもしれないが……。