海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

〈沖縄へ陸自2万人構想〉と米掃海艦入港強行

2010-09-21 17:29:03 | 米軍・自衛隊・基地問題
 9月20日付琉球新報に〈沖縄へ陸自2万人構想/防衛省 2020年、現在の10倍に/定員1万3000人増も調整〉という見出しの記事が1面トップで載っている。中国の軍事力の強化を奇貨として、現状維持どころか組織の肥大化を図ろうとする陸上自衛隊幹部の欲望が剥き出しになっている。日本・中国・米国の経済的相互依存がこれだけ進んでいる時代に、陸自が投入されるような本格的な戦争が、日中間で起こる可能性がどれだけあるというのか。10年後に南西諸島に2万人配備の構想を打ち出すとは、陸自幕僚監部の大風呂敷に呆れ果てる。

〈ただ主要国では領土侵攻の前に敵を食い止めるため海軍や空軍を重視し、陸上部隊を削減する傾向にある。財政難の中で経費負担の増大も避けられず、政府内の調整は難航しそうだ〉

 記事では以上のように記されているが、このままでは海自、空自が強化される一方で、陸自はその分、削減の対象となって割を食う、という危機感が陸自幹部にはあるのだろう。ソ連が崩壊して北の脅威が無くなったので、今度は中国の脅威を煽って奄美・沖縄諸島で組織維持、あわよくば肥大化を図ろうとする陸自の構想は、「国防」の美名に隠れて奄美・沖縄を利用しようとするものであり、けっして許してはならない。

 中国漁船と海上保安庁の巡視船の衝突事件が、外交問題として解決どころか悪化の方向に進んでいる。そういう中で今日21日、米軍掃海艦ディフェンダーが宮古島の平良港に入港した。

http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-09-21_10420/

 民間港の軍事利用に対し沖縄県や宮古島市は米軍に自粛を求めたが、米軍はそれを無視した。米軍は市民と「乗員の友好・親善」が目的だというが、尖閣諸島に注目が集まる中でわざわざ宮古島に寄港するのは、沖縄における米軍の存在意義を強調し、先島地域の民間港使用の既成事実化を狙ったものだ。平良港周辺では米軍掃海艦の入港強行に抗議行動が行われている。

 今回の掃海艦の入港に先立って9月初旬には、宮古島市で開かれる「米海軍第7艦隊音楽隊演奏会」に出演する隊員や荷物などを厚木基地(神奈川県)から輸送することを口実に、宮古空港を米軍が利用しようとする動きもあった。演奏会は台風のため延期となったが、宮古島をめぐる一連の米軍の動きには、先島地域の民間空港、港湾施設を米軍が頻繁に使用していくための地ならし(宣撫工作)と同時に、中国の脅威に対して米軍が「抑止力」となっていることを印象づけ、海兵隊をはじめとした米四軍がやはり沖縄には必要なのだ、と宣伝しようとする日米両政府の思惑も透けて見える。
 普天間基地の辺野古「移設」が行き詰まっている中で、11月の県知事選挙で日米両政府に少しでも近い立場の知事を当選させるために、尖閣諸島をめぐる問題が「在沖米軍(海兵隊)必要論」を展開する材料として利用されている。中国の「反日デモ」の様子や中国政府の強硬姿勢が連日ニュースで流れることで、日本国内の対抗的ナショナリズムが高まり、尖閣諸島防衛と沖縄の米軍・自衛隊強化の声が高まっていけば、日米両政府にとって辺野古「移設」を強行する追い風となる。
 尖閣諸島を排外的ナショナリズムの扇動と軍事強化に利用しようとする日本・米国・中国のいっさいの動きに反対する。

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