海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

民主党と下地幹郎議員の画策

2010-02-16 23:51:26 | 米軍・自衛隊・基地問題
 17日に行われる与党3党の沖縄基地問題検討委員会で、普天間基地「移設」先候補地の提案が見送られることになった。国民新党が嘉手納統合案やキャンプ・シュワブ陸上案を提案しようとしていることを社民党の福島瑞穂党首が批判した。それに対し国民新党の下地幹郎政調会長が反発し、与党間の不協和音が表面化する中で、問題を先送りしたわけだ。
 2月15日付琉球新報の1面トップに〈政府、シュワブ陸上模索〉という見出しの記事が載っていた。政府が普天間基地「移設」の最終的な決着案として、名護市辺野古のキャンプ・シュワブ陸上部分への「移設」を模索しているという内容だ。防衛省政務三役直属の特命作業班「普天間代替施設検討チーム」が中心となって作業を進めており、平野博文官房長官が2月初めに北沢俊美防衛相に検討を指示したという。与党3党の検討委員会とは別に政府内で議論が行われていたわけだが、それをごまかすために次のような画策がなされていた。

〈北沢氏は、検討委の議論との整合性を図るため、検討委員である国民新党の下地幹郎政調会長に、国民新党案としてシュワブ陸上案を委員会に提案するよう要請した。国民新側は、これまでも陸上案を移設案の一つとして提唱しており、17日の委員会で提案する予定〉

 当初、17日の検討委員会では社民党、国民新党が「移設」先候補地を提案する一方で、民主党は提案しないということが報じられていた。琉球新報の記事を見れば、そのからくりが分かる。昨年の衆議院選挙前に鳩山党首自ら「県外移設」を唱えていた民主党が、キャンプ・シュワブ陸上案を検討委員会で提案すれば、公約違反の強い批判を受けるのは必至だ。それを回避するために自らは提案せず、国民新党の下地議員に働き掛けたということだろう。実に姑息なやり方だ。
 キャンプ・シュワブ内陸上案は自公政権時代にもあった。既存の基地内に造れば反対派は手が出せず、県知事の埋め立て許可も必要ないから手っ取り早い、という発想だ。しかし、住宅地域に近接するので騒音や墜落事故などの被害が懸念されるため採用されなかった。もちろんそこには埋め立て利権の問題も絡んでいたのだが、住民生活への配慮が建前ではあっても言われていた。それすらも民主党や国民新党はかなぐり捨てようというわけだ。
 稲嶺進名護市長は、選挙では辺野古現行計画反対を訴えて当選したが、このような動きに対して、陸上案にも反対する姿勢を示している。市民の生活を脅かすという点では、海上案や沿岸案よりも陸上案の方が酷いのだから当然のことだ。沖縄県議会でも自民党や公明党を含めて「県内移設」に反対する決議があげられようとしており、17日の検討委員会でキャンプ・シュワブ陸上案が出されていたら、沖縄から猛反発が出ていただろう。
 県選出の国会議員である下地幹郎議員は、このような沖縄の動向や世論を熟知しているはずだ。にもかかわらずそれに逆らって「県内移設」に固執しているのはなぜだろうか。
 2月12日付琉球新報に沖縄県特A業者の公共工事完工高ランキング(2008年度決算/08年9月期~09年8月期の集計)が載っている。それを見ると公共工事完工高の上位には屋部土建、大米建設、金秀建設、仲本工業、国場組といった企業が名を連ねているが、注目すべきは発注機関別の請負額上位企業の表で、沖縄防衛局発注工事の請負件数と請負額上位は以下の通りになっている。

1 仲本工業  2件  12億1400万円
2 大米建設  3件   8億9000万円
3 屋部土建  4件   7億8800万円
4 仲程土建  3件   6億      円
5 渡嘉敷組  2件   4億1100万円

 下地議員のファミリー企業である大米建設が、沖縄防衛局発注工事の請負額ランキングで2位に入っている。沖縄に米軍が駐留していることは、下地議員にとってはファミリー企業の利益につながるわけだ。普天間基地の「移設」に関しても、県外・国外ではファミリー企業に利益はない。「県内移設」なら嘉手納基地やキャンプ・シュワブで行われる工事を受注できるかもしれない。以前から書いているように、基地機能・訓練の分散・移転を口実に下地島空港の軍事利用の道を開くこともできる。沖縄でこれだけ「県内移設反対」の声が高まっているにもかかわらず、下地議員が「県内移設」を主張し続けるのは、以上の理由からではないのか(これがすべてとは言わないが)。

 下地議員については以下の記事も参考までにあげておこう。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-116009-storytopic-86.html

 昨年8月の衆議院選挙で政権交代が行われ、沖縄では自民党の衆議院議員が一人もいなくなった。この機に乗じて下地議員は、政権与党にいる自らの政府とのパイプを売り物にし、普天間基地の「県内移設」を主導することによって、沖縄の基地建設に絡む利権を牛耳ろうとしているようにさえ見える。
 下地議員が沖縄選出の国会議員として「県内移設」を主張することに、沖縄への基地固定化を図ろうとするヤマトゥの政治家や大手メデイアは大喜びだろう。その発言をもてはやし、大いに利用するはずだ。これから国民新党は民主党にさらにすり寄り、連立政権からの社民党はずしが図られそうだ。民主党と国民新党が手を握って「県内移設」を進めようという動きが顕在化し、下地議員がその先導役を果たそうとしていることに対し、それを許さない取り組みを沖縄から早急に行う必要がある。
 

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4 コメント

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トラスト・ミー (トリニティー)
2010-02-17 02:39:34
政党の枠組みや、連立政権の都合と政治家個人の発言を切り離して、5月まで静観するしかないのでしょうか。

仮面を被った売島汗の下地氏は、次の選挙で淘汰を。小沢党首個人が、事情聴取明けに稲嶺新市長と対談した時の言葉を信じるしかありません。

集票と自らの一族の利権が目的で、その言動をコロコロ変える政治屋たちの醜悪。彼らには、自らの就職活動のために、有権者を都合よく集票に誘導する魂胆しかない以上、逆に有権者も政治屋の立場や都合、その言動を賢く利用し、自らが信じる民益を実現するしか方途が見受けられません。

大切なのは、彼ら政治屋の悪知恵に負けない知見を、一人一人の有権者が身に着けることかと。今こそ民衆リーダーの勇躍が待望されている時を感じています。
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池間大橋の水難事故 (京の京太郎)
2010-02-21 10:28:34
 20年弱前に宮古島の池間大橋で地元の子ども達数名と京都から家族旅行できていた一人の親が子どもたちを助けようとして溺れ、後日死亡するという出来事がありました。
 親水性を考慮して大橋のたもとに小さな公園のような駐車場があり、海辺に降りられる階段が作ってありました。島と島の間の海の激しい潮流への危険より、観光事業としての見栄え優先の設計工事がなされたものゆえの事故でした。
 京都から来て事故に遭い亡くなったのは私の友人でした。たまた本島にいて訃報を聞き宮古へかけつけ、病院の一室で最後の一夜を彼と過ごしました。なぜ、こんなことになったのか!?
 高校の天文倶楽部の一年後輩であった彼も私も30分以上泳ぎ続ける能力を高校の水泳の授業で獲得していたはずでした。水難された地元の子どもたちを助けようとして力つきたのだろうと思っていましたが、聞けば、以前にも同じような水難事故があったいうことでした。しかし、事故が二度と起きないようにと、浜へ降りることが出来ないようにはなにも工夫はなされていないことが今回の事故の再発をまねいたという事でした。
 水難事故というより、橋と公園を設計施工し管理している者たちによる人災事故だったのです。
 宮古島の政治状況には全く何の知識ももっていませんでしたが、池間大橋の建設をすすめたのは下地議員の親と大米建設だったのでしょうか?
 人の命より、金儲けを優先させる政治家や行政者はいりません。退場させる力を学び獲得したいと思います。
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水難事故防止対策は? (京の京太郎)
2010-03-04 10:00:49
 宮古島の池間大橋の水難事故の記録をネットで検索しても何も出てきませんでした。そればかりか、事故があった池間大橋の同じところで観光客が腰まで海に入り橋の写真を撮影したとの最近の記事がありました。
 彼が亡くなった1992年の9月以来、宮古島には行っていませんが、池間大橋のたもとの公園には水難事故の防止対策として、激しい潮の満ち引きの潮流の危険を知らせる注意看板や公園から海に入れないようにするための防護柵などの設置などはされていないのでしょうか?
 宮古島の方で池間大橋の公園の状態の情報をお教え頂けないでしょうか?なにとぞ宜しくお願い致します。
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宮古島の方へのお願い (京の京太郎)
2010-03-09 08:29:15
水難事故が起きたのは1992年8月4日。
4人の子ども達が潮に流され、2人は救助され、2人の少女が死亡。
渡邉君(当時41才)は自分の子どもを救助した後、潮に流された地元の子ども達、8才、5才、5才の救助にむかい、力つき意識不明の重体となり同年9月14日、宮古の病院にて死去。
事実経過は以上です。
つらい事実ですが、池間大橋のたもとの公園では、水難事故の再発防止対策は為されているのかどうなのか?、あれから事故は起こってはいないのか?情報がありましたら、ぜひお教え頂きたい。お願い致します。

目取真さん、沖縄本島、ヤンバルとは関係ないことで、申し訳ないですが、よろしくお願い致します。
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