海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

沖縄における脅威の実態

2012-04-08 13:40:28 | 米軍・自衛隊・基地問題

 米国バージニア州でFA18戦闘機が住宅地に墜落した。沖縄にとってこの事故はけっして他人事ではない。FA18戦闘機は沖縄にも飛来して訓練を行っているし、F15戦闘機の墜落事故もこれまで何度も起こっている。この秋以降には、MV22オスプレイの配備も予定されている。政府・防衛省は北朝鮮の人工衛星打ち上げを利用し、PAC3を沖縄島・宮古島・石垣島に配備して脅威をあおっているが、沖縄にとって実際の脅威は、米軍機の墜落なのだ。北朝鮮の脅威をあおるのは、目の前にある実際の脅威からの目くらましでもある。

 今日のNHK日曜討論で、拓殖大学大学院教授の森本敏氏が、今回の沖縄へのPAC3配備などを通して、沖縄県民に国防意識がひろがり、普天間基地の辺野古「移設」にも好影響を与えることを期待する趣旨の発言をしていた。それは森本氏のみならず、政府・防衛省の本音でもあるだろう。

 北朝鮮の脅威があるから在沖海兵隊が「抑止力」として必要である。中国の脅威があるから先島への自衛隊配備が必要だ。米軍と自衛隊が県民を守っているかのような幻想を作り出し、沖縄の過大な基地負担も、やむを得ないもの、として受け入れさせる。そういう沖縄県民の意識改造が狙われている。それはまた、日本人全体に沖縄への基地押し付けを、脅威があるから仕方がない、と正当化させるものでもある。

 それにしても、大手マスコミ、とりわけテレビの報道はひどいものだ。ミサイルと決め付けて脅威をあおっているが、実際にはマスコミ関係者も「万が一」などありはしないし、危険や脅威もないことをよく分かっているはずだ。もし、本当に危険や脅威を感じているなら、沖縄と首都圏の間は何の対処もされていないことに、黙ってはいないだろう。だいたい、ミサイル騒ぎをしている一方で、田中防衛大臣を笑い者にし、いつ辞めさせるのかを議論しているのだから、緊張感のかけらもありはしない。それでも、マスコミが無批判に政府に同調し、視聴率狙いで騒げば、「万が一」を懸念して沖縄観光をキャンセルするという実害は出る。

 石垣島では、民間地域で自衛隊が実弾をこめた小銃を持ち、PAC3の警備にあたっている。下手に近づけば市民にも銃口は向けられる。東北と違い沖縄では、自衛隊は軍隊としての素顔を出している。沖縄にとって本当の脅威は、米軍に加えて自衛隊までもが強化・拡大され、琉球列島全体が基地の島=軍事要塞と化すことである。それは戦争の手段として沖縄が利用されるということであり、「本土防衛」のために県民がさらに犠牲が強いられることを意味する。

 脅威の実態を見極めましょう。演出される軍事色に馴らされてはいけないし、踊らされてもいけない。

 


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