海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

佐藤優氏の前原誠司議員評価について

2011-06-10 14:09:24 | 米軍・自衛隊・基地問題
 6月4日付琉球新報に掲載された「佐藤優のウチナー評論」で佐藤氏が、〈民主主義の原則に反する〉行為を行っているとして〈沖縄選出の国会議員〉を批判している(国民新党の下地幹郎議員とはっきり書けばいいものを、どうして名指ししないのだろうか)。
 一方で佐藤氏は、民主党の前原誠司議員を〈民主主義的原則に忠実な政治家〉として評価し、次のように書いている。

〈東京の政治エリート(国会議員、官僚)の本音は、「沖縄にツベコベ生意気なことを言わせずに、国家の決定だから辺野古移設を強行しろ」というものだ。その中で、ごく一部の政治家が「沖縄の民意に反することは行わない」という民主主義原則に従って、辺野古移設の強行に歯止めをかけている。具体的には前原誠司前外相、原口一博前総務相らが歯止めになっているという現実を筆者は重視している。これらの民主主義原則に忠実な政治家をどうやって、もっと沖縄の側に引き寄せていくかが、普天間問題の抜本的見直しを実現する鍵と考える〉

 昨年の5月と8月、当時沖縄北方担当相だった前原議員は、島袋吉和前市長など辺野古新基地建設〈容認派〉の有力者と密会していた。辺野古に新しい基地は造らせない、という公約を掲げて1月に当選した現職の稲嶺進市長を差し置き、前市長らと密会した前原議員の行為は、権謀術数を弄するものであり〈民主主義原則〉には遠いものだった。
 現在の前原議員は考え方や態度が変わったのだろうか。何も変わりはしない。5月28日付琉球新報に前原議員へのインタビューが載っている。その主張は〈現行案推進で変わりはない〉というものであり、〈日米同盟の意志〉を示す対中国の軍事拠点として沖縄を位置づけ、米海兵隊の駐留を認めるというものだ。その政治手法も〈沖縄振興計画〉というアメをちらつかせ、名護市の〈容認派〉と連携して仲井真知事を懐柔しようとするものである。
 前原議員は今年の5月に稲嶺市長と面談しているが、同時に〈容認派〉の島袋前市長や名護市の経済人とも会っている。前原議員の発言や行動を見ると、〈「沖縄の民意に反することは行わない」という民主主義原則に従って、辺野古移設の強行に歯止めをかけている〉という佐藤氏の前原議員への評価は、黒を白と言いくるめるものとしか思えない。
 前原議員が普天間基地の辺野古〈移設〉推進の立場なのは、当然のことながら佐藤氏もよく知っている。だからこそ〈移設〉を強行するか否かに焦点をずらし、前原議員があたかも沖縄の側に立っているかのように描き出しながら、その沖縄懐柔のための動きを側面から支援しようというのだろう。
 しかし、問題は辺野古〈移設〉を強行するか、仲井真知事を懐柔して〈沖縄の理解〉なるものを得るか、という手法の違いにあるのではない。いずれの手法も〈沖縄の民意に反する〉ものでしかない。〈民主主義の原則に従って〉政治を行うというのであれば、普天間基地の〈県内移設〉反対!という沖縄県民の圧倒的な多数意思を尊重し、それに基づいて基地政策、対米外交を進めること、そのために努力することこそが政治家には問われている。
 それとは180度逆の行動をしている前原議員に幻想を抱き、このままでは普天間基地は固定化するか、辺野古〈移設〉が強行される、という脅しに屈して懐柔策にのっかり、アメとムチの条件闘争に再び入ってしまえば、沖縄は日米両政府にいいようにあしらわれるだけだ。首相候補としてアメリカに気に入られるため前原議員が沖縄でどのように動くか、〈働きかけを強める〉どころか、むしろ注意が必要だろう。


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