海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

明日は沖縄戦裁判

2008-09-08 10:14:00 | 「集団自決」(強制集団死)
 一昨日(6日)に琉球新報朝刊に掲載された「風流無談」に、雑誌『WiLL』緊急増刊〈沖縄戦「集団自決」〉特集号に載っている梅澤裕元座間味島戦隊長のインタビューについて書いた。親子三代にわたる軍人一家である梅澤家の歴史や、日中戦争に従軍して中国大陸で五年余戦ったこと、戦後の苦労など、梅澤氏の簡単な「自分史」としても読めるインタビューだ。
 その中で梅澤氏は、座間味村の助役・兵事主任・防衛隊長だった宮里盛秀氏を「非常に優秀な兵隊」「軍人の塊みたいな男」と褒めそやしているのだが、その裏にあるのは「集団自決」(強制集団死)の責任をすべて盛秀氏におっかぶせようという打算なのだ。死人に口なし、で梅澤氏が何を言おうと盛秀氏や村の幹部たち、あるいは宮城初枝氏が反論することはない。それをいいことに言いたい放題言っているというわけだ。
 あまつさえ梅澤氏は「集団自決」について〈村の人たちは、私の説得も聞かずに自決していったけれど、それは当時の価値観からしても、立派な決断だったと思います〉とまで発言している。座間味島や渡嘉敷島、慶留間島の遺族がこの文章を読んだらどういう気持ちになるであろうか。そういうことを考える能力もないのだろう、この元軍人には。
 しかし、そのようなことを口にすれば、以下の突っ込みがすぐに返ってくるはずだ。梅澤氏自身はどうして〈当時の価値観からしても、立派な決断〉をしなかったのであろうか。住民を「集団自決」に追い込み、第一戦隊の部下の三分の二を死なせておきながら、自らは従軍慰安婦の女性に看護されながら生き延びて、米軍の捕虜となったこと。そのことをを恥じる気持ちはないのだろうか。
 いや、やはり心の底では恥じているからこそ「命令しなかった」「自分は関係ない」「責任はない」と言い張っているのだろう。そのような梅澤氏の姿は、帝国日本の軍隊の無責任体制を象徴するものでしかない。
 明日は大江・岩波裁判の控訴審公判の日である。「靖国応援団」の右翼弁護士たちや支援者たちから持ち上げられて、本人は得意になっているのであろうが、法廷に現れる元軍人の姿は、生き恥をさらしているとしか見えない。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 九月の空 | トップ | 大江・岩波沖縄戦裁判傍聴 »
最新の画像もっと見る

「集団自決」(強制集団死)」カテゴリの最新記事