海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

参院選に向け沖縄を政治利用する橋下市長と下地代表

2013-06-06 14:04:02 | 米軍・自衛隊・基地問題

 6日午前、日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長と政党そうぞうの下地幹郎代表が、安倍晋三首相と菅義偉官房長官と会談し、MV22オスプレイの訓練を大阪八尾市で受け入れることを提案した。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130606/stt13060613250003-n1.htm

 松井一郎知事が大阪での「訓練受け入れ」の意向を表明したのは6月2日のことだが、受け入れ先とされる八尾市には事前の調整、説明はまったくなく、田中誠太市長はすぐに反対の意思を示している。

http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130603/waf13060315550010-n1.htm

 自分たちの意向は無視されて、市民の生活と安全にかかわる重要な問題を頭越しに提案されれば、田中市長ならずとも反発するのは当然のことだ。それに対し橋下市長は平然と居直っている。

http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130606/waf13060610460011-n1.htm

 「『地元との調整を先にやれ』とか『構想の中身を具体的に詰めてから』というのはばかげている」という橋下市長のコメントを読んで、田中市長はさらに反発を強めているだろう。これが「橋下流」だと言ってしまえばそれまでだが、橋下市長が本気で八尾空港での訓練受け入れを考えているなら、もっと丁寧に準備を重ねたうえでことを進めはずだ。威勢のいい言葉の裏から透けて見えるのは、いかに場当たり的な思いつきで参院選向けのパフォーマンスを演じているか、ということだ。

 そもそも八尾空港の現状を見ると、田中市長の反発がなかったとしても、訓練を簡単に受け入れられそうにない。

http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130606/waf13060609420009-n1.htm

 給油施設、格納庫、土地不足、訓練環境などの問題は、少し調べれば分かりそうなものだ。橋下市長は本当にそれらの問題を考えていなかったのだろうか。それらの問題を抱え、普天間基地と同じように市街地にある空港をわざわざ提案したのはなぜか。あらかじめ受け入れが困難なことを知ったうえで、地元市長が反発するような手法をあえて取ったのではないか、という疑問すら起こる。

 八尾空港での訓練受け入れが実現しなくても、7月21日に行われる参議院選挙までの話題づくりとして利用できれば、橋下市長と下地代表にはメリットがある。八尾市や周辺自治体の反対・反発を逆手にとって、「沖縄の基地負担の軽減」に努力しているという姿勢を強調できるからだ。

 普天間基地の司令官に「風俗業の活用」を求めたことで、橋下市長は沖縄県民の猛反発を受けた。その反発をやわらげるためには、沖縄の「基地問題」に取り組んでいるという姿勢を打ち出さなければならない。7月に第2陣の配備が行われようとしているオスプレイ問題は、参議院選挙前に話題となる。オスプレイの「訓練受け入れ」は、橋下市長と下地代表にとって格好の宣伝材料なのだろう。

 同時にそこには、5月1日に大阪維新の会と政党そうぞうが政策協定を締結し、普天間基地の辺野古「移設」推進を打ち出しだしたことへの焦点化を回避したいという思惑も見てとれる。参議院沖縄選挙区で勝つために、自民党沖縄県連は党中央に逆らってまで普天間基地の「県外移設」を選挙公約に掲げようとしている。大阪維新の会と政党そうぞうが沖縄で独自候補を立てても、辺野古「移設」推進では勝てるはずがない。選挙期間中に、辺野古「移設」推進について追及されることは、橋下市長と下地代表にとって大きなマイナスだ。オスプレイの「訓練受け入れ」をめぐる問題にマスコミの話題が集中すれば、そのマイナスを緩和できる。

 二枚舌を弄して県民を振り回し、愛想を尽かされた下地代表にとって、国勢に返り咲くためには日本維新の会にすがりつくしかない。一方で、沖縄で政治基盤のない日本維新の会は、政党そうぞうに協力をあおいで基盤作りをしたいのだろう。双方の思惑がかみ合って手を結んだわけだが、橋下市長と下地代表という組み合わせは、どう見ても政界プロレスの悪役コンビでしかない。いくら沖縄のことを考えているかのように装っても、化けの皮はすぐに剥がれる。

 橋下市長が普天間基地の司令官に「風俗業の活用」を求めた5月1日は、大阪維新の会と政党そうぞうが政策協定を結んだ日だ。協定を結ぶために沖縄に訪れた橋下市長は、4月30日と5月1日に県内の米軍基地などを視察し、その際に司令官に問題の発言を行ったのである。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-206062-storytopic-53.html

 つまり、大阪維新の会と政党そうぞうの政策協定-普天間基地の辺野古「移設」推進-普天間基地司令官への「風俗業活用」発言は、一つながりのものなのである。辺野古「移設」=県内たらい回しを進めようとするとき、米兵による事件・事故、とりわけ性犯罪が起こることは、県民の反発を高じさせ、大きな障害となる。辺野古「移設」推進のためには、米兵の性犯罪を減らす必要がある。そういう政治的思惑から橋下市長は、「海兵隊の猛者たち」の性衝動をコントロールするために「風俗業の活用」を司令官に求めたのだ。

 橋下市長が言っているのは、「沖縄の基地負担」はそのままにした上で、沖縄の女性たちに「風俗業」で働いて米兵の性のはけ口まで「負担」しろということだ。それはまた、「移設」先の名護市辺野古に風俗店を乱立させろ、と言っているに等しい。こういう人物がオスプレイの「訓練受け入れ」や「沖縄の基地負担軽減」を口にしたところで、参議院選挙に向けて沖縄を政治利用しているだけなのは明らかだ。

 橋下市長や下地代表が、本当に沖縄のことを考えているというのならまず真っ先に、普天間基地の司令官に「風俗業の活用」を求めたことを、沖縄県民に謝罪すべきだ。その上で、オスプレイの一部訓練の「受け入れ」ではなく、県民の圧倒的多数が求めているオスプレイの撤去ために力を尽くすべきだ。そして、辺野古「移設」推進という政策協定を破棄して、普天間基地の「県外移設」もしくは無条件返還のためにとりくむべきだ。沖縄県内に「移設」して、どうして沖縄の「負担軽減」になるのか。

 普天間基地の固定化か、辺野古「移設」かという二者択一の問題設定は、沖縄への米軍基地集中を続けるための恣意的なものでしかない。沖縄県民のことを考えているかのように装い、沖縄を自らの政治的影響力拡大の道具として利用しようとしても、大多数の沖縄県民はそれを見抜き、橋下市長と下地代表に批判の矢を浴びせるだろう。

 

 

 

 

 

 

 


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