海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

米軍再編交付金とふるさと納税について

2010-12-29 23:55:10 | 米軍・自衛隊・基地問題
 12月29日付琉球新報に、名護市が2011年度予算に米軍再編交付金に関わる予算を計上しない方針を決めた、という記事が載っている。12月24日に沖縄防衛局が09年度の繰り越し分と10年度の要求分を「不交付」としたことに対して、28日に開いた市部長会で上記の方針を決め、市議会与党連絡会議に伝えて理解を得たという。同記事には「市は今後、こういったアメとムチの交付金には頼らない市政を進めていく」という市幹部の言葉や、24日に稲嶺進市長が述べた「政府がこのような決定をした以上、新たな財源の確保に努めながら、再編交付金に頼らないまちづくりに邁進していきたいと思う」という発言も載っている。

 今回の米軍再編交付金に関する名護市の方針に対して、一市民として高く評価し、支持したい。元もと稲嶺市長は、基地問題と経済問題をリンクさせる政府の手法を批判し、米軍再編交付金に依存せず財政を健全化することを訴えて当選した。前市長時代の繰り越し分6億円に関しては、それまでの経緯からして不交付とした政府・沖縄防衛局の姿勢は批判されて当然だ。しかし、当初から不交付も予想して別財源の確保や市政への影響を抑える対処もなされていることと思う。
 稲嶺市長が議会でくり返し発言しているように、ほとんどの市町村は最初から米軍再変交付金などないし、それでもちゃんと自治体運営を行っている。必要な予算を取るための工夫を首長や職員は必死で行っているのであり、これまで安直に基地がらみの「アメ」に頼っていた名護市の姿勢を改め、本来あるべき姿に戻るために今回の方針決定は大きな一歩だ。

 これから野党は不交付になったことで市長を責め立ててくるだろうが、こういうときこそ市民の応援が必要である。巷では「16億円が支給されなくなって大変なことになった」という不安を煽る声もあるようだ。基地がらみの金が10年以上もばらまかれてきたことからくる心理的影響もあるだろう。市民の側も意識変革が問われている。名護市としても今回の方針について、市民の理解を広げるために積極的に説明や広報を行ってほしい。

 最近、名護市への米軍再編交付金の不交付と関連して、「ふるさと納税制度」を使って名護市を支援しようと呼びかけるブログを散見する。取り組み自体は以前から行われていて、実際に納税も行われているが、懸念することがいくつかある。
 市のホームページに載っている納税者のコメントを見ると、普天間基地問題に関する稲嶺市長への支援を目的としたものが多い。まるで特定の政策を支持、支援するためのカンパ代わりのようだ。そういう人たちは市長の政策が変わったり、あるいは反対の政策を唱える市長に替われば、「ふるさと納税」を打ちきるだろう。そうやって市政運営に影響を与えるために「ふるさと納税制度」を利用しているとすれば、それは制度の趣旨を歪めるものではないか。

 仮に名護市よりもっと規模の小さな自治体で、米軍基地や自衛隊配備を受け入れたいという首長がいて、その首長を応援するために「ふるさと納税制度」が利用されたらどうするのか。数千人にしか人口がいない小さな自治体に対し、大規模な運動が取り組まれて数千万円や数億円という「ふるさと納税」がなされた場合、それこそ自治体運営に影響を及ぼしかねない。やっている本人たちは善意のつもりでも、金を使って外部から自治体をコントロールしようという発想において、その取り組みは政府の再編交付金と似通ったものだ。

 「ふるさと納税制度」は、その自治体の出身者や関係する人が、その自治体への愛着や善意に基づいて財政支援するためのものであり、首長個人への評価や個々の政策への支持・不支持を抜きに行われるのが筋ではないのか。納税のあり方にしても、短期的に高額の支援をするより、少額でも長期的に支援する納税者が増えていく方が望ましいように思う。いずれにしろ、特定の政治運動や企業の利益追求などを目的に同制度が利用されれば、小規模自治体ほど外部からの影響を受けやすく、政策が左右されて自治が冒される危険がある。
 首長を支援したいのなら、その後援会にカンパをすればいい。運動を支援したいのなら、運動を担っている団体にカンパをすればいい。地方自治体はどこも財政を立て直すのに必死であり、「ふるさと納税」者が増えてほしいだろう。しかし、たんに金が集まればいいというものではない。「ふるさと納税制度」を政治運動として利用するのは誤りであるし、やめるべきだ。名護市への支援は寄付という形もあり、税制度を絡めてはいけない。

 最後に、地域振興は基地問題とは関係なく行われるべきであり、菅政権は米軍再編交付金そのものを即刻廃止すべきだ。



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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2010-12-30 21:10:48
米軍再編交付金打ち切りに関しては、マスコミの報道にも疑問を感じます。名護市はもともと280億円の予算を組んでいます。前市長の時に再編交付金をあてにしていた2か所の公民館の建設も市と地元の予算で進めるそうです。交付金打ち切りですっきりしたという市幹部の声も聞きました。この1年、名護市政に関する報道では基地問題の対応が多かった感がありますが、市民と直接対話する「お出かけ市長室」を6回こなしていますし、認可保育園も増やしています。北部病院の医師不足の問題に関しても直接足を運んで関係者の話を聞きに行っています。
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一枚、300円の収益金を! (大木晴子)
2011-01-03 03:40:58
記事を拝読させて頂きました。
「明日も晴れー大木晴子のページ」の名で一万円を名護市のふるさと納税をした者です。「基地はつくらせない」と言う気持ちに繋げて送りました。私は働いていません。私が送った金額は、よく考えてこれからも送り続けられる金額にしました。自分で平和へ繋がることへと作ったバンダナの収益金から出ています。一枚千円の内、300円が収益です。買って下さった皆さんの想いと一緒に送りました。30人近い人たちの想いも一緒にです。闘いが続く限り、私の命がある限り送り続けたいといまは思っています。
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