農村で起こる時代劇

村民委員会組織法は中国の農村で導入されている、直接選挙で村長などを選ぶ制度です。これを読むと「農村農民の自治を保障するために、農民自身が法によって自らの事を決め、民主選挙を行う。共産党は村民の自治活動を支持し、直接的な民主の権利行使を保障する」(抜粋)とあります。

読んでいるとまともな法律なのですが、そこは中国です。民主の第一歩目から踏み外してます。

これを書き始めた時は新鮮だったんですが、一回飛んでしまいまして。ソースは17日(昨日)の産経朝刊ですが、『命をかけ搾取・圧政と戦う』と題された記事、これは衝撃の内容です。要約させていただきます。



殷家林村――ここの党支部書記は拘束道路建設で収容された保証金など1000万元横領の疑いがあり、二期目を向かえた村長の周長青さんは汚職を暴くために立ち上がった。今年1月に再選されたが、書記の率いる武装集団40人に襲われ、周さんは肋骨骨折、廖洪世殷は頭蓋骨骨折の重傷で意識不明の重態に陥った。警察は動かなかった。

党西村――近隣の村の書記にかかる汚職疑惑を調べ、横領した金を村委に返却させる裁判を起こす寸前、帳簿の調査を行った支化成さんの息子一家4人が惨殺された。妊娠中の妻は腹を裂かれていた。これで奮起した張廷夫さんは書記の選挙妨害に遭いながら、再選に向けて闘っていた。彼は一期目の選挙運動の際に、書記のいとこに腹を刺され、先日も書記の親族が自宅に乱入してきたという。張さんは「警察も裁判所も取り合わないといって、怯えたままでは一生人並みの暮らしが出来ない」と話す。


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農村に限らずですが、公安、裁判所、党がグルなのはよくあること、中国仕様です。たまに村長も飼いならされたりしますので注意が必要ですが、このケースはまだましな方ですね。しかし、お上がごろつきを雇って下々を襲うなんて、まるっきり中世じゃないですか、これ。そろそろ梁山泊に山賊が住み着くかもしれません。

地元じゃラチがあかないから上訪(北京の専用窓口に行って直訴)するんですが、そこにもなぜか幹部が先回りしていて、最近は「お小遣い」を渡して追い返されるのだとか。中国の農村は、時間が11世紀頃でストップしているのでしょうか。

冗談はさて置き、と言いつつ冗談で済まされないのが農村の現状。貧困に加え、ご覧の通りの汚職が蔓延し、『一国二制度』と揶揄する声も(胡鞍鋼・清華大学国情研究センター教授)。そんないいものじゃないことは明白。国家発展の原動力となる安い労働力の供給源とするために、農村を半ば植民地化しているのでしょうが、どこで終わらせるのか、それともその前に爆発するのか、温家宝が打ち出した『和諧社会』がウソでない事を願います。


【余談】ところで、この記事を書いた福島香織さんは、ネットには配信されない事が多いのですが、面白い記事をか書かれます。産経読者の私は、ソウル支局の黒田勝弘氏、ワシントン支局の古森義久氏(北京支局での経験あり)、そして福島さんの記事で、お腹一杯です。
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