あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

汝の首が観る木漏れ日

2017-02-25 16:00:43 | 随筆(小説)
わたしは今日初めて斬首刑に合う夢を見た。
今までも何度と見てきたのかはわからぬが覚えているのは初めてであった気がする。
大して覚えてはおらぬのだがわたしは実際斬首刑に合ったあとに魂で逃げ出したのか
それとも斬首刑に合う寸前で逃げ出せたのかを覚えちゃおらないのだから気楽なものだよな。

あの恐怖といったら本当に、とんでもなかったよ。
それだのに起きたらコーヒーなんて飲んでるのだからね。
忘れた記憶を掘り起こすのが人間の役目じゃないのかい?
物書きとも在ろう者がさ・・・コーヒー飲んでる場合じゃないやんけ。

俺は必死に、ひつしに、想いだそうとするのだが全然駄目だな。
ただひとつ想いだせる。
俺を斬首したか斬首しようとした存在は、どこか気持ちの悪い白痴みたいな存在だった。
そいつは変なでっかい兜を被っていたんだ。
サイレントヒルにはまりすぎだって?
確かにそうかもしれない。あいつは処刑人だったのさ。

時代と場所は、紀元前1千年頃の古代エジプトかという感じだった。
俺は何をやったのか覚えておらんのだが捕らえられたんだ。
俺はそしてちょっとの間ほったらかされていた。
すると奇妙な存在が俺に近づいてきたんだ。
そいつは、妙に高くか細い声で俺に向かってこう呼んでいた。
「アミ・・・アミ・・・アミ・・・」
とても気色の悪い声で異常者のような言い方だった。
そう言いながらそいつは俺にふらふらとした足取りで近づいてきた。
体格はごっつかった。
そいつはとても大きな兜を被っていたのだが、その形が菱形(ひしがた)っぽいのを横にして菱形寄りの六角形みたいな形だった。
顔はまったく見えない。
そいつが俺を捕まえて連れてゆき、斬首刑の処刑台に俺の首を載せ、今にも切断せしめようとしていた。
あの恐怖と絶望感、俺はせめて夢の中だけでも全員経験するべきものだと思った。
俺は思うんだ。首をああやって瞬間的に切断しても、人ってすぐには死ねないでしょう。
目の前は瞬間的に真っ暗になるかも知れんが「嗚呼切られてしまったな」という感覚で死んでいくのかもしれない。
それとも世界は鮮明に見えていて発狂しそうな激痛のなか転がった頭で青い空を見上げて死んでいくのだろうか。
それとも知らん人間たちが自分のことを観て慄いているか、または歓喜を挙げている姿を見ながら気が遠くなっていくのか。
俺はとにかく必死に逃げた。
俺はやっぱり殺されるのは厭やった。
痛いのも苦しいのも嫌だし殺されるのなんてもってのほかだ。
そうだろう?大抵の生物はきっとそうだろう。
前世で何回処刑されたと思ってる?
生まれ変わったって、過去の罪は消えないさ。
罪人は罪人を裁くべきではない。
俺は断固として、死刑反対だ。
俺を処刑するな、ど阿呆。
俺を斬首刑に処するな、罪人どもめがっ。
俺はもっと、もっと、もっと、美しく清らかな聖者に殺されたいんだよ。
豚みたいな存在に。
牛みたいな存在に。
鶏みたいな存在に。
そんな美しい存在たちに俺は殺されたいんだよ。
あいつらは人間じゃぁない。
だから美しい。美しいさ。人間なんかよりずっと。そうだろう?
俺はだいぶと殺してきたなぁ。
なんで処刑人は兜被ってるん?
それはその姿を見せられないからじゃないのか。
それはその姿が、人間の姿ではないからではないのか。
俺を処刑しようとしたのは、俺を処刑したのはどんな存在なんだ。
俺は悲しいよ。なぜ彼らを平気で殺してきたんだろうね。
なぜ食べ物としてしか見てやれなかったんだろう。
俺が斬首刑に処されるのは当然だ。
いったい何頭何匹何羽に拷問のような苦しみを俺が与えてきたんだ。
俺はたぶん、この先数えきれないほどの斬首刑に合うだろう。
逃げてコーヒー飲んでても、眠ればあいつが俺を待ち伏せている。
菱形頭、そう今日から俺はあいつのことを呼ぼう。
俺を何度と処刑してくれる聖者、救世主だよありがとう。
やったことの落し前はワレでつけるんが、男の中の男。
逃げるなんて卑怯のうえの笑止千万。
しかし俺は断じて、死刑には反対だ。
裁くのは人間じゃぁない。
処刑人はいつでも夢のなかでおまえを待ち構えている。
神々しい刃物を、右手に持って。












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