あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

愛と悪 第七十五章

2021-05-22 10:58:43 | 随筆(小説)
最初の海辺で、最初の夕日が落ちてゆくのをひとり眺めているわたしの星、エホバ。
古い車に乗って、ぼくらは出掛けよう。
もうとっくの昔に廃車となった車に乗って。
その懐かしい車は、今も何処かでぼくらを待っている。
存在できる場所があって、エンジンを休ませて、独りでぼくらを待っている。
その車は、ぼくらがそこへ辿り着きそうになったら、迎えに来てくれる。
その車に乗って、ぼくらは一緒に行くんだ。
だれも見たことのない場所。
だれも行くことのない場所。
だれも知ることのない場所へ。
ぼくらはその車に乗って向かう。
今此処から、そう遠くはないだろう。
過去のぼくらは、その場所の存在も知らなかった。
過去のぼくらは、もうその車が走れる場所なんてないと想ってた。
過去のぼくらは、なかにだれが乗っていたんだろう。
今じゃもう憶いだせない。
彼らは変わったんだ。
彼らはもう、同じことを想ったりはしない。
彼らはもう、此処にはいないんだ。
ぼくらに乗るものは、新しい彼ら。
ぼくらは一緒に、会いにゆく。
ぼくらの車は今も変わらずそこにいるんだ。
古い車は、ぼくらを包み込むように乗せて、知らない場所へ連れてゆく。
光も闇も、この星も、この宇宙も超えて。
最速のスピードで、過去も未来も超えて。
なかにいるぼくらは、揺られながら眠る。
生まれて揺籠のなかにいる夢を見ながら。
























Kurt Stewart · Lomme - Old Cars (Original Mix)