あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

Hotline Miami

2018-08-30 01:05:35 | 物語(小説)
※この作品は、暴力シーンやグロテスクな表現が多く含まれています。
この作品はビデオゲーム「ホットライン・マイアミ」の二次創作物として設定、同じ台詞が出てきますが内容は異なります。


















おい、此処は何処なんだ。俺(俺は女か?男か?それすらも忘れちまったようだ)は何処にいる。
此処は・・・どこかの地下倉庫みたいな場所だ。酷く黴臭い。意味のわからねえヤツが閉じ込められそうな場所だ。
雨の匂いも感じられるが此処は屋内のようだ。
頭痛がずっとしていて、エメラルドグリーンとイエローの点滅が俺のなかでしている。

その時、ドアが開いて鶏が一人なかへ入って来て言った。
「目が覚めたか。おまえは一体何者で、何故こんな処にいるか、わかっているか」
俺は煙草に火を点けながら言った。
「いや、わからねえ。あんたが鶏だってことも俺にはさっぱり、わからねえな」
鶏は側にあった木箱に座って答えた。
「よく見ろ。俺は鶏に見えるか」
俺は頭を掻いてくんくんその爪を嗅ぎながら言った。
「ああ、あんたは鶏だろ?赤い鶏冠(とさか)がチャームポイントになってる」
鶏は木箱の上で右脚を立てて膝を抱えながら答えた。
「オレは鶏の頭のマスクを被っているが、おまえと同じ人間だ。よく見ろ」
俺は項垂れて木の床板を見詰めた。
「そんなことはわかっているつもりだ」
「オレはおまえを知っているし、おまえとオレは前にも会ったことがあるだろう?」
「憶えちゃいねえよ・・・。それになんでさっきからあんたが俺にショットガンを向けているのかも、俺には、わからねえ…」
鶏は携帯の画面を見ながら言った。
「向けていないが、おまえがそう見えるなら、オレは否定しない。それより時間が迫っている。今から5時間以内に、この建物にいる人間を全員殺せ。もしおまえがオレの任務を遂行しないなら、その時は、おまえの命は無いものだと想え」
そう言って鶏は奥にある大きな箱の中からあらゆる形状の銃、ナイフ、日本刀、爆弾、鎌、斧、バット、ゴルフクラブ、アサルトライフル、ショットガン、サブマシンガンを取り出し床に並べた。
俺は迷わず黒いショットガンを手に取り、鶏に向って言った。
「俺はあんたに会ったことがあるような気がするが、想いだせねえ」
鶏は一つのナイフを手に取り自分の頚動脈に向って突き立てながら答えた。
「制限時間は朝の8時まで。それまでに全員を殺せ。何、おまえに罪はない。おまえを脅迫し、命令したのはオレだからな。勘違いするな。此処は夢のなかだろう?」
そう言い棄て、ぺた、ぺた、ぺた、ぺた、と音を立てながら鶏はこの部屋から出て行き、見えなくなった。
俺は何名いるのか、訊いておけば良かったと後悔したが、もう家鴨を、いや鶏を追って訊きに行くのも億劫で、人を殺すという使命以外、何もしたいと想えなかった。
俺が誰で此処は何処で、俺が愛していたのは誰で、俺が見ていたものは何か?そんなことは、もう何だって、どうだって良かった。
気付けば頭痛も引いて、此処は居心地の良い場所、誰も俺を傷つけず、誰も俺を殺さないが、俺は人を。
ずっしりとしたショットガンを右手にぶら提げ、俺はこの部屋を出た。
身体は軽く、現実味は感じない。まず、歩いていると(此処が外だか中だかわからなかったが)俺は待ち伏せてあった黒いミニバンに乗った。
運転手は、リアルな豚の頭だけの着ぐるみを着た人間。
鼻先を触って確かめてみたが、本物の豚の皮のような触感だった。
豚は俺に番号の書いた紙切れを渡し、「もし助け手がどうしても必要になったらここへ電話しろ。もう一人の、殺し屋を呼んでやる。しかしおまえは、そいつに大きな借りが出来る」と言った。
目が覚めると、俺はPizza Restaurantの透明のドアの前に立っていた。
外から中を覗いてみると、ミリタリーな戦闘服を着て手にはショットガンを持っている奴らが1,2,3,4,5人もいる。
眼鏡をかけて髭を生やした長髪で赤毛の店主らしき人間を銃で脅し、ピザをただで喰らっていた。
俺はまず、窓の外から店主の心臓を撃ち抜き、次には5人の兵士たちの頭を次々に撃って行った。
皆、脳味噌を辺りにぶちまけて、派手な死に様でその血は、ピザソースの色そっくりだったので、俺はその血を手で掬ってテーブルの上にあったピザの上にトッピングして携帯でカメラを撮った。
序(つい)でに、白っぽく黄色っぽくもある脳味噌は丁度チーズのようだったので、それも手で掴んでトッピングしたが、それは携帯のカメラで撮らなかった。
俺はテーブルの上にあったメニューを開いて、VEGANPIZZAを探したが、なかった。
FUCK,そう言って中指を立てて眼鏡のズレを直し、皿の上のピザにショットガンを向けて撃った。
テーブルと床に穴が開いた。
俺は携帯を見て残りあと4時間34分しかないことを知り急いで外へ出た。
待ち伏せてあった黒のミニバンに乗り、運転手を見た。
狼の剥製で作ったような頭だけの着ぐるみを被っている人間が俺にペットボトルの水を差しだし言った。
「よく遣った。おまえは人殺しが慣れているようだなぁ。しかし油断は禁物だぞ。おまえに殺されたい人間など、一人もいない。おまえの中にはいたとしてもな。その水、美味いだろう。此の世で一番高い水だ。何、感謝も憎悪も要らない。逆の立場なら、おまえだって同じ事をしただろう?」

目が覚めると、薄暗いエレベーターのなかにいた。
54階でドアが開き、俺はエレベーターの外へ出た。
黒いバラクラバを被った男に呼ばれ廊下を歩いて着いて行く。
携帯を見ると午前4時32分。まずい、8時まであと三時間半しかない。
案内された部屋へ入ると中には先程のピザ屋の店主が一人とバラクラバを被った人間が俺をここまで連れてきた男含め1,2,3,4,5人、ピザ屋の人間はまた銃で脅され怯えている。
俺はまずピザ屋の人間を撃ち殺し、後に続いて残りの五人の頭も素早く撃ち抜いた。
流れ出た血をまた手で掬ってテーブルの上にあった赤ワインの入ったワイングラスにぽたぽたと垂らし、それを携帯のカメラで撮った。
そして小鉢に飛び散った白い脳味噌を盛り付け、葱を刻んでもみじおろしを載せ、ポン酢を数滴垂らして白子風脳味噌の刺身を作ったがそれを携帯のカメラには収めなかった。
白子ってどう見ても人間の脳味噌じゃねえか、FUCK,と言って中指立てて眼鏡のズレを直し、白子風脳味噌の刺身をショットガンで瞬殺した。
エレベーターで1階まで降りて待ち伏せていた黒のミニバンに飛び乗った。
運転手はタイガーの頭だけの着ぐるみを着た人間だった。
俺は血と体液でぬめついた手で顔を覆い眼を見開いて口を手で押えながら言った。
「12人殺した。あと何人いる?」
タイガーはバッグからほかほかの御絞りを俺に渡して答えた。
「それはおまえ次第だ。オレにはわからない。何故って?言っただろう。此処は、おまえの夢のなかだろう?おまえはあと何人殺せば、任務を全うするんだ?」
「おかしいよ、この世界は。最初のフィールドで殺したはずのピザ屋の男が、さっきもいた。何故だ?」
タイガーは煙草を着ぐるみの中で吸おうとして咳き込みながら答えた。
「おまえにはそう見えるだけだ。おまえの罪悪の念が、おまえに幻影を見せている。兵士にはよくあることだ。おまえはこう信ずるべきだ。おまえに殺されたすべての人間は、皆死ぬべき存在であったのだと。何故か?それはおまえが生きる為だ。他に答えがあるのか?」
「俺が生きる為なら、何人殺しても赦されるのか」
手渡された御絞りを冷めてもじっと見詰めている俺に新しく熱い御絞りを渡してタイガーは言った。
「そうだ。おまえには遣り残したことがあるから、おまえが残している砂金をすべて浚い切るまで。殺しても赦されるっておまえは想っているのか?」
「いや、俺が訊いているんじゃないか」
「ははは、そんなことは、おまえがおまえのなかで、考えろ。ここはおまえの夢のなかだろう?」
俺は手渡されたお絞りが今度は冷めないうちに顔と手をごしごしと拭いてから答えた。
「あんたに、前にも会ったことがある気がするんだが、」

目が覚めると無機質な白い空間に白い上下の作業服とマスクの付いた白い無塵キャップ。
クリーンルームの流れ作業は外の色彩豊かな世界が本当に存在していることを忘れさせてくれる。
つまりこの空間のどこにも在りはしない監視カメラに絶えず監視され続けていることを知るための限りなく人が人であることを忘れさせてくれる空間だ。
もう、たくさんだ。宇宙からの追放。現存在している全宇宙からの追放を待ち望む。
俺はいつもの夜勤を終えて早朝に家に帰った。
シャワーを浴びるのも歯を磨くのも億劫で水を一杯飲むと俺はパイプベッドに横たわり、目を瞑った。

翌朝にベッドの上で目覚め、俺はようやく自分の任務を想いだした。
しまった。俺は携帯を見た。時間は残り3時間19分。
全身白尽くめの作業服に着替えクリーンルームに入る。背中に挿し込んでいたショットガンをおもむろに抜いて白尽くめの作業員たちを片っ端から撃っていく。離れたところから撃っても腸や肉片が吹き飛ぶ。
無機質で白い空間が一気に生々しい生命で彩られた空間に成り変わる。
この部屋にいる人間はすべて撃ったか。俺は血でぬるぬるした白い床を滑らないように慎重に歩いて部屋を見渡し、エアーシャワー(高速ジェットエアーを人や搬入物の表面に直接当てて、付着した塵埃を除塵するための一メートル四方のクリーンルームの出入り口に設置されている装置)の中を確認しようと近づいた。
中に人間がいるのが見えたが様子がおかしい。俺はショットガンを相手に向けながらエアーシャワーの中へ入った。
高速ジェットエアーが撥水加工の作業服に飛び散った返り血を四方の壁に微小の赤い斑点状に一瞬で噴霧させる。
俺は中にいる俯いている人間のこめかみにショットガンを向け引き金を引こうと指に力を入れたとき、相手が見上げ目が合った。
目の部分だけが開いた白い帽子の隙間から見える潤んだ褐色の目が俺に訴えかける、女の目のように見える。
俺は震えて気を失うんじゃないかと想うほどの動悸のなか相手の帽子を乱暴に掴んで取り去った。
ブロンドに染めた長い髪が乱れ相手はまた俺の目を訴えるように見上げた。
木目細かそうなのにぼろぼろに荒れた色白の肌に老けてるのに同時に童顔でおぼこいすっぴんの顔。変に細い首。ガラス玉みたいな丸い目に黒く太い眉毛。乾燥して罅割れた唇の上に生えた産毛……。俺は目の前のどこか異様で矛盾だらけの人間の魅力にとり憑かれ引き金を引くことができなかった。
女か。たぶん女だな、こいつは……。
俺はショットガンを下ろし作業服を脱いで女の着ている作業服も強引に脱がし、紫のワンピース姿の女を35kgの米袋(女は変に軽かった)を肩に担ぐように抱きかかえるとそのままエレベーターで降りて乗ってきた黒のミニバンの助手席に乗せて車を走らせた。
女はずっと助手席で背を丸めて顔を伏せて震えていた。
住んでいる外装も内装もコンクリート打ちっぱなしのアパートに着いて女をまた同じように肩に担いでエレベーターに乗って部屋に入った。
女を廊下で下ろすと女の前で裸になりシャワーを浴びた。
顔に付いた返り血を洗い流すまで息もまともにできない。
シャワーから裸で上がると女はまだ廊下で震えて膝を抱えて座ったままだった。
身体を拭いて女に水でも入れてやるかと想ったが、ふいに限界が来てベッドに倒れ込んでそのまま意識を失った。

目が覚めて、携帯を見た。午後5時48分。一体何時間寝てたんだ。
寝返りを打って我が幻と我が目を疑った。女が静かに寝息を立てて眠っている。
女が俺の隣で寝ているなんて、一体何年振りだろう。覚えちゃいねえ。
俺は女の首に幾つもの赤い大きな腫れ物ができているのを発見した。
それが妙に、俺を欲情させた。堪らずその腫れ物に舌をレロレロと這わすと下腹部の情熱も抑えきれなくなり女の下着を首に舌を這わせながら脱がして触れると生温かい粘液が手に付いた感触がして手を女の股から引き抜いて見た。
俺の手は鮮やかな赤に血濡れていた。失神しかけるほどの貧血になり俺は手の血がシーツに付かないように上げたまま女の寝顔を眉を顰(しか)めて眺めた。
一体、何を考えてるんだ俺は。これ以上情が移ることをすると自滅だ。
この女も、当然俺が殺さなければならない人間のカウントに入れられているはずだ。
多分、逃げられないだろう。俺はこの女を逃がして、生きてはいけない。
懐かしい……。この女が俺の隣にいるこの空間が。
俺は何かを、大事な何かを忘れちまってるんじゃねえか…?


1989年4月3日フロリダ州マイアミ

起きて手を洗い顔も洗って歯を磨いたあと、留守番電話のボタンが点滅していたのでボタンを押した。
「新しいメッセージが1件あります」と音声が聞えた。
「❇ピー❇ パン屋のティムです。ご注文のクッキーですが、もう届いているはずです。
 レシピも入れてあるので、よく確認してください」
俺は廊下に出てドアを開け、共同廊下に置かれた箱を中に入れその中を見た。
中には鶏のマスクと一枚の紙が入ってあり、そこにはこう書かれていた。
「今からすぐにポイントF-32に行け。制限時間まであと1時間半を切っている。Shake it(急げ)失敗は許されない。常におまえを監視している」
俺は急いで着替え、女のあどけない寝顔を一瞥すると鶏の頭を持ってショットガンの入れたバッグを手に持ち、走って車に乗りポイントF-32に向けて車を爆走させた。
昨夜に殺した数は確か十人。女を入れたら十一人だった。
ブリッケル地下鉄駅に着いて、俺は車を降りた。
駅に向う階段を下りて入り口前にいた白い防護服姿の人間に向けて躊躇わずにショットガンをぶっ放した。
しかし急所を外し、相手は倒れながらも呻き声を上げていたのでもう一発心臓に向けて撃った。男は血をげぼっと内臓を吐き出すかのように勢いよく吐き出し、目をかっ開いたまま息絶えた。
男の顔はどこかで見た顔…そうだ、あのピザ屋の店主だ。
俺はよろよろと先へ進もうと歩いたが、耐え切れずに被っていた鶏のマスクを剥ぎ取り跼(せぐくま)ってグレーと黒のチェッカーボード模様のフロアに胃の中のものを吐いた。
ほとんど胃液だった。そういえばいつから俺は食べていないんだ。
あの女が食べられるものが俺の部屋にあればいいが・・・。
生え際から流れて来る脂汗がフロアに落ちる。
そんなことを考えている場合じゃねえ・・・。早くここにいる全員を殺させねえと。
俺は酸っぱい胃液状の唾を吐き捨てよろめきながら起き上がり、正面の先にあるPublic Lavatory(公衆トイレ)のドアを思い切り蹴り飛ばし左側洗面台と鏡の前に立っていた白い防護服の男の腹を撃ち抜いた。
男は即死状態で両手を広げて仰向けに倒れ腹からは腸(はらわた)が飛び出して内容物の糞便も辺りに飛び散っていた。ちかちかとランダムに明滅する切れ掛けの蛍光灯がフラッシュバック的な惨状の映像を作りだしている。
俺は込み上げて来るものを必死に飲み込みながら個室に誰もいないことを確認すると先へ進んだ。
中に誰も、誰もいなかったはずだ。俺はさっき確認したばかりのトイレの個室の一つに、俺が座って煙草を吹かしている姿が一瞬見えた気がしたのを想いだす。
幻覚が見えた?それって、この状況じゃあ・・・正常の証じゃねえか・・・。
さらに階段を下り、駅までの廊下の曲がり角で出会い頭(がしら)に俺に銃を向けようとした白の防護服姿の人間を振り向きざまに約1メートルの距離から心臓を狙って撃った。
心臓を狙ったつもりが顎を貫通させ首から上が吹っ飛び、頭蓋骨は砕け散り頭部の原型は全く留めていなかった。
腹ン中がペパーミントのハーブを吸ったみてえにスースーする。俺は苦い唾を飲み込んで先へと急いだ。
憶えちゃいねえんだよ…いやまったくだ…。俺は気付けば独り言を何やらぶつぶつと呟いていた。
走ってって駅の待合室にいた人間の右斜め後ろからショットガンで思い切り頭部を殴りつけ仰向けに倒れ込んだ男の胸に銃口を当て、今度は外さぬように心臓を撃ち抜いて即死させた。
白い防護服の開いた真っ赤な穴から何かが生れて来ようとしているかのようにぶくぶくと音を立てて血の泉が湧き上がって来た。
変に喉が渇いて近くにあった自動販売機のボタンをすべて拳で連打する。出てこない。一つも。何故だ?ああそうだ、金を入れてなかった・・・。
俺はジーンズの後ろポケットから財布を取りだし吐き気に耐えながら小銭を取ろうとしたら小銭入れを逆さに向けて口を開けた為、中の小銭が全てフロアに散らばった。
咄嗟にマスクの上から口を押さえ背を屈めて小銭を拾おうとしたが小銭がすべてスローモーションでフロアに跳ね返りうまく掴むことすらできない。
俺は膝を付いて這うようにそのコインを掴み取る為に手を必死に伸ばした。
スローで生きているように飛び跳ねるコインの向こうに、何かがぼやけて映り、俺がコインを追っ駆けて這ってようやっとコインが停止しようとして俺の手が掴めそうなそのスロー映像は、コインがちょうど殺した男の見開いた眼のすぐ前で止まった瞬間、停止した。
おかしいな。俺は確かさっきこの男を仰向けの状態で殺したはずだが、何故顔だけ横を向いて死んでいるんだ?
世界が急速に歪んでゆく感覚のなかで俺は起き上がり結局、男の死体の首を撃ち抜いた。
男の首と胴体は切り離され、首はぶっ飛んで行きその目は明後日の方向を凝視していた。
俺は頭を抱え込んだ。何かが確実におかしい……この男は…この男は、最初に殺したピザ屋の店員じゃねえか……?
んぜ、…なぜ…、…ぜ、何度も何度も何度も、何度も、俺の前に現れて来るんだ……?
残りの6人を、気が朦朧とするなかゴルフクラブで頭部を殴りつけて殺し、その後、指示通りに別の場所へ向ってそこの路地裏でバットを手に持って向ってきた一人の浮浪者のような男を顔面をバットで殴って撲殺した。
実際、この男は殺すべき人間だったのかもわからず、俺はまた正常な感覚に戻った途端、嘔吐した。
何の因果か、俺はその男の潰れた顔面の上に嘔吐してしまい、我の因果を呪っても呪い切れなかったが、そうやって絶望する暇も無く、俺はとにかく死にたくは無いということだけがはっきりと自分のなかにあった。
殺されるよりは、殺しても先へ進みたい。その先がどこに繋がっているかということを確かめるまで。
もう少し、簡単に殺せないだろうか、と、俺は想った。
目を瞑ってでも、人を殺せるようになれたなら……?は…はは…は…はは、はァ……はァ…・・・はァ……はァ……ジーザス…………。
取り敢えず、今夜の使命の全員は殺せたはずだ。俺は血でまみれた手を洗面台で洗い流し、ついでにマスクを脱いで洗い、顔を洗って口を濯ぎ、ふと、目の前のミラーを見た。

顔を洗って、口を濯ぎ、目の前のミラーを見た。
随分窶(やつ)れているな……。疲れが酷く、溜まっているようだ。
俺はコンビニの洗面所のドアを開けてレジカウンターにいる男に煙草を注文しようと声をかけた。
すると男は気さくに俺を知っている様子で話し掛けて来た。
「おっ、アンタか。ひさしぶりだな。何かあったんじゃないかって心配してたよ…。彼女があんなことになって落ち込んでたみたいだったしな…。会うのは…あれ以来だよな…」
俺はさっぱりなんのことだかわからず、黙っていた。
すると男はバツの悪そうな顔をしてはにかみ、また話を続けた。
「別の話でもしよう…。今度一緒に、ナイトバーにでも行こうか」
俺は目を逸らして何も返事しなかった。
「……。夜食でも買いに寄ったんだろ?遠慮しなくていい。店のおごりにしとくよ…。会えてよかったよ。ゆっくりしてってくれ」
俺はなんて返事して良いか困り、店員の男の風体をざっと素早く見渡した。派手な眼鏡と身形(みなり)に赤毛の髭と長髪…そういえばどこかで会ったような気が……。
駄目だ、想いだせない……。俺は欲しい煙草を貰い軽く辞儀だけで済ませると適当に帰って食べるものや酒を選んでカートに入れ、負い目を感じながらそのまま外へ出て助手席にカートに入れたものを載せ、車を走らせた。

部屋に戻って真っ先に服も脱がず靴も履いたまま熱いシャワーを浴びて付いた血を洗い流した。そして洗面台でマスク、ジーンズをお湯を溜めて酵素系漂白剤で浸けた。
白のスカジャンは血が凄まじく飛び散っていたが、洗っても血が取れないと想ったのでそのままにした。
頭と顔と身体を適当に洗い裸のままキッチンへ行き冷蔵庫の中からペットボトルの水を出して飲んだ。
そしてふとリビングのほうに物音を感じて振り向くと、見知らぬ女が怯えながらも唖然とした表情で突っ立っていた。
ひいぃっ。と俺は驚愕のあまり声にならぬ声を上げた。
この女は……そうだ、あの夜クリーンルームのエアーシャワーの中に居て、部屋に連れて帰ってきたのか…。
想いだして俺は気まずい想いで黒のジャージの上下を着て、髪の毛が濡れたままでぽたぽた滴が垂れてくるのでフードを被り、顔を逸らして立ち竦んでいる女に声をかけた。
「腹、減ってねえか…?適当に持って帰って来たのがあるから、喰いたければ喰ってくれ」
そう言ってバッグに入れて持って帰ってきた弁当やパスタやパスタソース、菓子やビールやウィスキーなどをダイニングテーブルの上に並べた。


1989年4月8日フロリダ州マイアミ

テーブルの上にはピンクの紙に書かれたニュースレターが置かれてあった。
そこにはこう書かれてあった。
「あなたの登録に心から感謝しています。あなたの登録によってわたしたちの理念によるプロジェクトはもうすぐで成功しそうです。わたしたちは一つの歌です。わたしたちを賛美する”40の祝福”の歌を共に歌いましょう」
ニュースレターなんかに登録した憶えはないが、何かの間違いで送られて来たのだろうか?
俺は弁当を手にとって、温めて喰おうかと想ったが、やめて、ジェノベーゼパスタ(ノンチーズ)を二人分作ることにした。
まず鍋に水と塩を入れて湯を沸かし、そないだ俺はコンロの前で煙草を吸った。女はどうして良いかわからない様子で黙ってダイニングチェアに座ってじっとしていた。
想いだしたくないことが甦りそうになったので苦し紛れに女を振り返って話しかけた。
「俺は…たぶん家にいないときが多いと想うが…好きに使ってくれ。あんたも行く場所なんて、他にないんだろ…?」
女はまるで暴力を奮われた後のワイフ(妻)のようにキッチンのチェアに座ったまま重たい影を背負って俯いていたが、俺を複雑な顔で見上げた後、俺の後ろを指差した。
「え、なに…?」と訊きながら後ろを振り返ると湯が沸騰していた。
パスタを二人前放り込んだ。
こういうときコンロが二つあると便利なんだが…
俺は煙草をテーブルの上の灰皿に押し当て、椅子を引いて座り、女に面と向って言った。
「あんた……一体どこの人間なんだ…?」
女はまた俯いて黙った。
俺はジェノベーゼの瓶を右手で掴んで椅子を引いて立ち上がり、ジェノベーゼを瓶のまま鍋に入れた。そして入れた後に、ジェノベーゼはフレッシュ(生)だから美味いんですやん。と後悔した。
しかし熱いから瓶を掴むことができないし、仕方がないので温めることにした。
そして冷蔵庫の上にある小さなデジタル時計を見て、あと5分で湯から上げようと想い、シンク漕の水切りの上に置いた赤のマルボロボックスをまた一本取り出して吸った。
溜まってくる唾液を何度も飲み、洟を啜って溜まった痰を排水溝に吐いて水を流した。
マルボロとライターを右手で女の目の前に差し出し、「吸うか?」と訊いたが、女はまだ俯いたまま首を横に振った。
叫びたい気持ちが溢れてきて仕方ない。俺はもういいやと想ってパスタを水切りボウルに上げ瓶を取り出そうとしたが、これが熱くて素手では掴めなかった。
手拭用のタオルで瓶を掴み蓋を開け、パスタをボウルに開けてそこへジェノベーゼをぶっかけて混ぜ、それを二つのプレートに分けて入れた。
女の前と自分の席に置いてフォークを引き出しから二つ取り出して女に一つ差し出した。
俯いた顔をやっと上げたと想うと女の顔は涙で濡れていた。
無言でフォークを取り、女は俺より先にパスタを黙々と食べだした。
なんだか何年も前から一緒に住んでるみてえな行動だな…と俺は想ったが、変に気を使われるよりは気が楽でいいとどこかほっとして俺もパスタを喰った。
肌が荒れに荒れた年齢も素性もわからぬ女の顔は汚くて痛々しいものだったが、それでも女がパスタをフォークで巻くこともせず焼きそばを喰うみたいに背を丸めて横から垂れてくるブロンドに染めた髪を押さえながら不味そうにのろのろ喰っている姿を見ていると変に欲情してくるのだった。
俺はズレた眼鏡を中指で持ち上げて直し、眼鏡をかけていたことを今頃になって想いだした。
缶ビールを開けて飲んでいると、女が物欲しそうな目で見てきた。
俺はテーブルの上に並べたビールを顎で指して「飲みたいだけ飲んでくれ」と言った。
女は黙って缶ビールを開け、ごくごくと喉を鳴らして飲んだ。
俺は美味そうに酒を飲んでいる女を酔いの回るなか椅子に腰をずらして浅く座る体勢で眺めていた。
「美味いか。そんなに……」そう無意識に女に話しかけていた。
女は初めて、俺を見てこくりと頷いて微笑んだ。
なんだか消え入りそうな、笑顔だな……。

目が覚めると、車の運転席に座っていた。
変な夢を見ていた気がする。
屋内にいる人間をあらゆる武器で次々に殺して行かなくてはならないゲームをしているのだが、そのゲームの何がまず難しいかって、まず行きたい方角へ行くことからあまりにも難しいゲームで、てんで行きたい方角へ行けなくて変な方角を向いてあたふたしていると即刻、殺され、リスタートしなければならない。
しかし段々と慣れて、時間を掛けるなら一つのステージを二時間ほどでクリアすることができるが、当然、俺が殺す回数よりもずっと相手から殺される回数のほうが多い、それは感覚的には、復讐を行い続けているような感覚で、復讐の感覚になってしまうことで、相手を殺しても罪悪感より快感を感じてしまうように仕組まれているような、クリアしたときの達成感は大きいが、その感じる達成感もこのゲームの作者が作り出した巧妙な計画の元にあるのはわかっているし、精神を軽やかにする喜びとは程遠く、まるで自虐めいた自分を罰する喜びと快楽のために行うようなゲームで、俺の自罰のプレイを喜ぶゲーム作者の喜びもまた、自虐的であるに違いない。
例えゲームのなかでも、俺の感覚が自罰である限り、人を殺して行くゲームの業は俺に積み重なって行くだろう。
先程聞いたばかりの留守番電話の内容を想いだそうとした。
ベビーシッターを今すぐ頼む 住所はイースト7番街 言うことを聞かないやつらに、しっかりと言い聞かせてやって欲しい 一度ガツンとやらないと、わからないんだよ 前回と同じ感じで 手際よく、お願いするよ
そう確か言っていたはずだ。
忌々しく、堪え難いものも、いつかは終るはずだ……。
俺はスティグマ(烙印)を自ら着るかのように返り血を浴びたままの白のスカジャンを着ると、イースト7番街へ向けて車を走らせた。
依頼場所のマンション前に着くとまた届いていたフクロウの覆面を被り、時計を見た。
制限時間まで残り1時間13分。
マンションのエントランスを抜けて階段を上がり、廊下の突き当たり前左側のドアを開け、ナイフを手に持ち向ってきた白防護服の男の顔面を思い切り素手で殴ると、男は後頭部を床に打ち付けて顔を両手で押さえ込みながら倒れ、俺は男の持っていたナイフを素早く手に取り馬乗りになって男の頚動脈を深く切り裂いた。
血が細い噴水のように噴出し生温かい血が覆面の目の隙間に飛んで覆面の内側を流れ、相手の血が自分の涙のように口に向って垂れ落ちた。
そのまま通路を行くとキッチンとダイニングスペースがあり、ドアの前の壁でナイフを構えてドアの向こうに歩く足音を聴き取ろうとしたが聴こえない。
一か八かでドアを静かに開け、目の前にいた銃を持った男の胸を数回突き刺した。
硬めの木綿豆腐を突き刺しているくらいの感触に恐怖し、また正常な感覚に戻り胃液が上がってきたが男の持っていたショットガンを奪うとその部屋のもう一つのドアの横で身構え、ドアをまた蹴破って目の前にいたショットガンを持った男に向けてぶっ放し、弾は男の胸の中心部に命中した。
もう一人の右手にいた男にもぶっ放し、狙いを定める隙もなかったので男の右肩にまず弾が当たり右肩が根元から吹っ飛び、続けて後ろに倒れかける男の胸を狙って撃ったが男の左足の付け根に命中して倒れた男は動かなくなった。
最初の男を殺った通路まで戻り右側のドアを開けた瞬間に視界に入った男の胸を目掛けて撃ったが弾は男の左脇腹を掠め、男の撃った弾は俺の右側の開いたドアに貫通し、男の左手にはもう一人の男が俺を狙って銃を構えているのが見えた俺は無我夢中でショットガンのスラッグ弾を乱射した。
スローモーション映像を観ているように、向って左の男の顔面が割れ、右の男の左耳を弾が掠め男は耳を手で抑えて床に蹲った。男が哀れに想い、銃で殴って気絶させてから殺そうと近づくと男は覆面を外し、目を真っ赤にして掠れた声で「頼む……見逃してくれないか…」と俺に訴えた。
赤毛の長髪と伸ばした髭、気の荒いヤクザ顔にも見えれば中古レコード屋の店長を気侭(きまま)にのんびりとやっていそうな寛容さが混然しているようなこの男の顔は……あの最初のピザ屋の店員の顔とそっくりじゃねえか。
男は俺の顔を透り抜けて後ろの壁を見るような目で言った。
「アンタとは…初めて会ったような気がしないんだよ…」
それは恐らく正解かもしれないが、この男はもう既に、意識はあの世に逝っちまってるのかもしれねえ…。俺は耐え切れず男の後ろへ回った瞬間、背中から心臓部目掛けて撃ち抜き、男は上半身を前に倒したあとに激しくバウンドして仰向けに倒れた。
死んだ顔を見ないように目を逸らしながら男の持っていたショットガンに持ち換えると誰も殺す相手はいないことを確認して回り、車を止めていた場所まで走って車に乗った。
変に自分の鼓動がゆっくりになっているような気がして落ち着いて手の汗と血をタオルで拭うと返り血が滴る覆面とジャケットの血を拭いてそれらを助手席に置いていた鞄の中に突っ込み、シートベルトを着けエンジンを掛け、深く息を吸って吐いたあと車を発進させた。
疲労とストレスの限界を余りに超えてしまうとこのように空中遊泳をしているかのような宙に浮いたような肉体と意識の状態になるのだろうか。
ネオンサインが赤や黄色や紫の配色を夜に反射するこの真夜中のドライヴの時間、俺は少しほっとした喪失感のなかにどうしようもない孤独だけがこの狭い空間内部で叫び続けられる慰みであるように感じた。

「やあ、いらっしゃい」
植物100%のピザが午前3時半まで売っている狭くて古いピザ屋に寄ってカウンターの前に行くと赤い帽子を被った店員の男がカウンター越しに俺に妙に気の知れた者みたいに明るく声をかけてきた。
「いや、注文する必要はない、ピザはもう出来上がってるから。なんだか、アンタが来そうな気がしてな…ハハ…」
俺はわけがわからず黙っていると、男は笑ったまま開いた口を閉じて瞬きを数回したあと下唇を軽く噛み締め(歯並びは悪かったがそれでいて神経質そうな歯並びが男に良く合っていた)、息をつきながら話を続けた。
「まあ、とにかく、そういうこった。代金はいらないよ。店のおごりってことで」
緑がかった人情深さとギラつくものを並存させた目に大きな黒縁眼鏡、コシの強そうなウェーブのかかった赤毛の長髪と髭。マリファナを吸いながら接客を遣っていても特に違和感のない闇の深いポリネシアで独自の密教を開祖しようとして失敗に終わりマイアミでピザ屋の店長を遣っているSpiritualist(スピリチュアリスト)みたいな風貌の男……そういえばどこかで会ったような…。
でも想いだせない。このピザ屋も、どこか懐かしい感じがする。想いださないほうがいいだろうから忘れてしまったのだろうが、想いだせない苦しみが想いださない苦しみを超えるとき、きっと容易に想いだして苦しむんだろう。
そうどこか諦めずにはおれない感覚になって、俺は男が焼き上げたピザの箱を無言で受け取り、店を出て帰ろうとして振り向くと右のテーブル席に小さいガキと父親の親子連れが黙々とピザを喰っているのを見た。
もう夜中の2時を過ぎているのに、なんだか深い事情がありそうな親子だなと一瞥し、俺の内に切ない孤独が荒漠と広がり、記憶が戻らないことを恐れる想いと記憶が戻ることを願う想いを抱きながらピザ屋を出て自分の家に向って車を発進させた。

部屋に帰ってシャワーを浴び、ピザをオーブンで温めなおしている間、椅子に座って煙草を吸っていた。
すると向こうの部屋から寝起き眼(まなこ)で女が目をこすりながら歩いてきて俺の前に座った。
昨日よりずっと、この暮らしに溶け込んでいるようだ。まるで何年も前から夫婦だったように…。
「紅茶とコーヒーと、ビールもあるが、何飲む?」と俺は女に訊ねた。
女は黙って立ち上がると、冷蔵庫から缶ビール二つを持ってきて自分のところと俺の前にそれを置いてまた椅子に座った。
俺は妙ににやにやした笑いが止まらず、女の前で口を押さえてビールを見ながら笑いを押し殺した。
一体この女は、誰なんだろう……。
俺はなんの為に連れて帰ってきたんだっけ。理由もわからない。でも女が男だとわかれば俺は間違いなく、殺していただろう。
オーブンが音を立ててピザが温まったので皿に入れて女のまえにも置くと女はピザを眺めていた。
椅子に座ってビールを開けて飲んだあと、「俺がいない間なにしてるんだ」と訊ねたが、女は答えずピザを人差し指でつついていた。どうやら火傷しないほどの熱さかどうか確かめているようだ。
俺はピザを齧って「もう冷めてるよ」と言った。
「部屋にはパソコンもあるし、テレビもあるし、ゲームも本もビデオテープもあるし、ラジオもあるし、スピーカーもある。食べ物も俺は買ってきてやるし、飲み物も、なんか飲みたいもんがあれば言えばいい。ビールは欠かさないように気をつけるよ。精神が不安定なら、薬も買ってきてやる。どこか街へ出たいなら出て行っても構わないが、必ず戻ってきてくれ。昨日は忘れたが、今夜からは金を置いて出て行くから」
女はピザとビール以外頭にないような顔をして食べては飲んでを繰り返し、それなのに俺の顔をふと見つめてコクリと頷いた。
「なんでここにいるんだろう?とか、別に考えなくていい。ここは…そういう世界だから」
そう言ったあと俺はキッチンに立って女に背を向け、ビールをホワイトラムで割って飲んだ。
あのピザ屋の店員もこの女も、何か居た堪れない孤独が底にあるのを感じる。多くを話さないか黙っていて、素性も何もわからねえ。だからといって、何一つ、知りたくなどないが……。
俺に任務を与える存在も何者かがわからないし、あの店員やこの女がもし俺を使わす存在と裏で繋がっているなら、俺は何かを試されているということになる。
「生きていることが楽しいとか、ないよな。俺だって、ないよ。もう…」
女に背を向けてグラスを右手に持ってキッチンに突っ立ったままそう俺は独り言のようにぼそっと気付けば呟いていたが、女の反応は何もなかった。
「何が駄目なのかわかんねえが、何かが駄目なのかな。俺の人生は最初から」
振り返ってピザを頬張っている女の顔を見ながら言ったが、やはり何のリアクションもなかった。


1989年4月16日フロリダ州マイアミ

目が覚めると薬物中毒専門クリニックのトーマスから、”今夜予約をノースウェスト184番街の105号アパートで取っておいた。”と電話の伝言メッセージに入っていた。
トーマスなんて男は知らないからまた殺人の依頼だ。
カウンターの上には”イースト7番街で6体の遺体が発見される”という見出しの新聞記事の切抜きが置いてあった。
警察は薬物の違法取引との関係性を示唆しているようだ。
薬物取引き以前に、薬物なんてやってたんなら、殺されても仕方ねえよな……。まあ何かの中毒になってねえ人間なんて、いないんだろうけどな…。
ドアの外に届いていた豚のマスクを持ってノースウェスト184番街に向けて車を発車させた。
アパート前に車を着け、マスクを被ってナイフと銃を装備して105号室のドアを開けた。
別に薬物なんてやってないんだが、世界がいつも完全に変わる。今から人を殺す段階から。

気が付くと、自宅のアパートの浴室にいる。
さっき白昼夢を見ていた気がする。
浮浪者のような男に、暗い路地裏で殺人の手解きを受けている。
一人目は、足で顔面を蹴り殺し、二人目は、バットで撲殺、三人目は、ショットガンで頭を打ち抜いて殺したはずだ。
殺した人間の顔はよく憶えていない。
でも浮浪者の男は、誰かに似ている気がする。
どこか懐かしい気もしたが、誰かは思い出せない。
浴室のドアを開けると、鶏のマスクを被った男が正面に立っており、俺に話し掛ける。
「お前は、何故、ここにいるんだ」
見渡すと、ここは俺の部屋じゃない。
黴臭くて暗い。地下倉庫みたいな場所だ。
窓が一つもない。それなのにまるでここで誰かが暮らしているようにベッドやソファーやレコードやテーブルがあって、ゴミが散らかっている。
俺は何か答えようとするが、声が出ない。
「お前は取り返しの着かないことを、してしまった」
「それなのに、何一つ、学んでないじゃないか」
「お前は同じ事をいつまで繰り返すつもりだ」
「生きる世界が、どこかに、あるとでも思っているのか」
「お前に」
よく見ると、鶏のマスクを被った男はマスクも着ている服も手に持っているバットも、すべて赤い血を滴らせている。
まるでついさっき、誰かを殺してきた……
誰かを……
誰を…………?
「おまえは なぜ ここに いる」

シンデル…ミタイナ…カオ………、シテル……。
女の声で、目が覚めた。
側に女は、いない。
何か夢を見ていた気がする。
不安で、ならない夢……。何も思い出せない。

ノースウェスト184番街、105号室のドアを開けた。
目の前に立っていた白い武装服の男の顔面を殴りつけ、男の持っていたゴルフクラブで思い切り頭蓋骨を割るイメージをしながら目を瞑って何度も殴りつけた。
目をそっと開けると、男の顔面が骨が砕かれているように歪んで折れた何本もの歯が血溜りの床に落ちていた。
左の部屋のドアが開くと同時に俺は床に手をついて飛び跳ねる形でドアの隙間から顔を出した男の後頭部をゴルフボールを打つ感じで撃つと男が回転しながら後ろに吹っ飛んで仰向けになって倒れ込んだ隙にもう一度後頭部を撃ち付けた。
ゴルフクラブの先が男の頭にめり込み、うまく抜けなかったが無理に引き抜いたので脳味噌がついてきた。
右の廊下の先に気配を感じ、男の持っていたサブマシンガンで廊下から姿を見せた瞬間、闇雲に連射すると男は銃弾の衝撃によって全身を激しく躍らせ後ろに倒れた。
男の右後ろにも人影が見え、また連射をぶっ放したがすべて壁に命中し、男には一撃も当たらなかった。
銃弾が空になり、銃を相手の顔面に投げ付けた。近づくと男は気を失っている。男の持っていたマシンガンで心臓を撃ち抜く。
後ろを振り向く。ウォッシュルーム。銃を構えてドアを蹴り開けると男が便器に向って立小便をしていた。
そしておもむろに振り向いてこう言った。
「なんでよりによって…チンポコ出しているときに、殺されなくちゃなんねえんだ。冗談は…やめてくれ」
俺は男が哀れになり銃口を相手の頭に向けながら「早くしまえ」と言った。
しかし男は突っ立ったままで寂しそうな表情をして頭を横に振りながら言った。
「しまうと、オレを殺すのか」
「おい、前にもどこかで、会ったことがあるだろう。オレたち」
「忘れたのか」
俺は吐き気を感じながら「5秒以内にしまわなければ殺す」と言って「5,4,3,2,…」とカウントを呼んだ。男は慌てて仕舞い込み、俺の前で両手を広げて薄く笑った。
その瞬間、男の胸の中心を撃った。
男は薄く笑ったままの顔で後ろの白い便器に血の跡をずるずると引き摺らせながら倒れた。
赤い捩れたような長髪に髭……怪しげな風貌のこの男は…いったい、俺の何を知ってるっていうんだ。その思い自体が既視感を起こした。
大体、俺はマスクを被っているのに、なんで誰だかわかるんだ。
俺がここに来るって、知ってたのか。
ここに今夜来ることは、俺ですら、知らなかった。
点滅する薄暗い蛍光灯の下で、悪魔が俺に囁く。
もう人を殺すのは、やめにしないか。おまえは人を殺すことはやめて、ただ死ねばいい。
おまえが生きてゆく価値はどれくらいのものなのか。
人を殺していって、生きてゆく先に、何が見えるのか。
それは今観ているものより、最悪なものじゃないか。
悪魔の声が脳内にエコーがかかったように鳴り響き続けるなか、二階へと上がる。
ゴルフクラブを握り緊め、ドアの前に耳をつける。
ドアを思いきり蹴りつけ、狭い部屋のなかで驚いて怯えた顔の男の頭をゴルフクラブで殴りつける。
何度も。何度も。何度も。顔面が割れていることに気付き、死んだことにほっとした。
悪魔の声は、この男の声だったのだろうか。殺した瞬間に、消滅し、これ以上の安堵が、きっと俺は赦されない。
暴力を最も恐れ、暴力を最も憎むやつが、最も酷い暴力を行い、そこにある一番の快楽を知る。
誰かの言っていた言葉を思いだす。
その男は確かこう続けた。
男はそしてこう言う。「おれは好きでこんなことをやっているんじゃない」
汗と混じって返り血が口に垂れてきたのを吐き、死んだ男の持っていたライフル銃を持ってドアを開けた。


14人全員を殺して部屋を出る前に喜びか苛立ちかわからない感情でサブマシンガンをドアの側の壁に投げ付け、部屋を出る。
行き付けの小さなビデオレンタル屋に入る。
レジの前を通ると赤毛のロン毛に髭、黒縁眼鏡をかけてオレンジのニット帽を被っている男に気安く声を掛けられる。

「よお、また会えたな。この前の晩の『虐殺事件』のこと聞いたかい?ロシア人の連中が殺られたとか、だが涙も出ないけどな。ゴム製のマスクをかぶったヘンタイ野郎の仕業らしい。まるでスプラッター映画のワンシーンだよな。そうそう、アンタにピッタリの映画があるんだよ。カウンターの上のだ。料金はいいから持っていってくれ。きっと気に入る。」
男がそうパソコン画面でせわしく打ち込みながら言ったので、ここで言われたビデオを持ち帰らないというのも気まずく、面倒に想って俺は無言で言われたビデオを手にして店を出た。

部屋に戻ってマスクとジャケットをシャワールームで洗い、血を洗い流す。
熱いシャワーを浴びながらさっきの男の話を想いだす。
”この前の晩”って、いつの晩のことだ…?”スプラッター映画のワンシーン”…一体なんでそんな残虐な殺し方をする必要があるんだ。俺は頼まれても絶対にそんな殺し方はしない。大袈裟に報道されているんじゃないのか?
シャワールームを出てキッチンに立ち、頭をタオルで拭きながら赤ワインをグラス一杯一気に飲み干す。
すると髪の毛の先からシンクの上に滴り落ちる水滴が徐々に赤く変わる。
そんなシーンから始まる男の薦めた映画は結局古いなんでもない恋愛映画だった。
それもとんでもなく暗く、静かなモノクロ映画だった。
女はまだソファで寝ている。床の上に寝転がって下から女の寝顔を眺める。
奥の窓はカーテンを閉めたままで光が差してこない。
まだ朝は来ていない。
女が掛けている垂れた毛布の下に入ると不思議と心が落ち着く。
護りたい存在を護る為に人を殺してきたのじゃなかったら…?
夢のなかだろうか。女がそう言ったのか、俺がそう言ったのか、想いだせない。
男の話した”虐殺事件”が、何の為に行なわれたのか。
俺は女と逃げようと想った。
知らない…この愛しい女と。
でも確信できることが一つだけあった。
それは、俺はこの女とだけは、逃げられない。
この女だけ、俺は救えないだろう。


1989年4月25日 フロリダ州マイアミ

目を覚ますと女が部屋のどこにもいなかった。
時間は午後9時を回っている。こんな時間にどこへ行ってるのだろう?
留守電のランプが点滅していて俺は気が焦ってそのボタンを押した。
依頼の電話は独特なトーンがあって第一声でわかる。
「ホットライン・マイアミデートサービスのケイトです。今夜のデートをセッティングしましたのでお報せします。サウスウェスト53番でお相手の方と待ち合わせです。いつも通りオシャレな格好でお願いしますねっ。」
俺は何か嫌な予感がした。
もしかしてあの女が誘拐されたんじゃないだろうな。
俺は気が動転して家を急いで出たのであろうことかマスクを忘れて来てしまい、Uターンして家に戻り、マスクをバッグに詰めてジャケットを羽織ってまた車に乗った。
暑くて車の窓を開けると生温かい潮風が入ってきた。外気温は27度。
まだ5月前なのに今夜は暑いな…空は曇っていて月も星も出ていなかった。
確か4日前が満月で、珍しく女がベランダから月を眺めていたから、その後姿の光景が、俺はとても好きで変に懐かしくて既視感が俺を苦しめた。
閉じ込められているとは、想ってないようだな。
俺はそのことが、とてもホッとしたんだ。
女はあの夜、そこにいるべき存在として、本当にそこにいるように、いてくれてるような…気がした。
女は自分のことを何も話さないし、俺も何も話さない。
外は危険でしかたないからどこかへ連れてってやることもできない。
俺が使命を果たしている間、女はいつもどんな想いでいるのだろう。

朦朧と女のことを想いながら車を走らせていると気付けばサウスウェスト53番ストリートを走っていた。
平屋ばかりの高級住宅地にぽつぽつと二階建ての豪邸が建っている。
待ち合わせ場所はその中でも一番の広い敷地に建つ屋敷のようだ。
一体何の仕事をしていたらこんな豪邸に住みたいと想えるのだろう。人の妬みを買うばかりの…
しかしハイエンドなエリアにしては街灯や照明が少なく暗い。
セキュリティを気にすることは多分、ないだろう…何故なら俺はこの屋敷の主と今夜ここで待ち合わせしているはずだ。
デートのお相手は…さあ誰だろう。
少し手前に車を止めて銃とナイフを装備して、屋敷前に車を着け、豚のマスクを被って降りた。
ヤシの木の並ぶ前庭の通路を突っ切ってドアを開ける。
目の前にいた武装する男の顔面を殴り男の持っていたライフル銃で後頭部を思い切り打ち付ける。
持っていたナイフで倒れた男の頚動脈を切り裂き左に続く廊下に出ると廊下の行き止まりに銃を持った男が突っ立っている。
さっき殺した男のところまで戻って男の履いていた靴を脱がし、その靴を廊下の先に放り投げた。
足音が近づいてくる。男は警戒して銃を構えたまま忍び足で俺の潜んでいる右の壁の奥を覗き見る。
瞬間、男の銃を左手で引っ張ると同時に右手で男の首元にナイフを深く突き刺す。
血飛沫が豚のマスクの表面に跳ね返って男は力なく後ろに倒れ込む。
少しの間俺の顔を見詰め続けて全身を痙攣させ、すぐに動かなくなった。
俺は哀れな男の死体に向かって囁く。「悪いな。今夜此処で、デートの待ち合わせをしているんだ。無事にデートを終える為に、おまえらを殺さなくちゃならねえんだよ。」
今夜はとても静かだ。虫の音が屋敷の中までも聴こえてくる。
最高のデートがどんなデートだかは、知らねえが…
ベージュ色の大理石の床にぽたぽたと返り血が落ちる。
今夜は…本当に静かだ。俺はもう一度小さく囁くと倒れた男の持っていたマシンガンを構え廊下を突っ切り右のドアを蹴破ってぶっ放した。
ようやくセキュリティが作動し、警報機が鳴る。
一人、二人、三人、四人、右の部屋にいた者を撃ち殺した。
元の廊下に出ると何故か警報機が止んだ。
左のドアを蹴破る。広いバスルームの右手にでかい湯張りした浴槽。
湯気が立っていて石鹸のいい香りがしている。
武装した一人の男が銃を構えて振り向いた瞬間に胸を撃った。
男は背中から湯船の中に派手にはまり浴槽の湯が赤くなってゆく。
まるで羊水のように、死んだ男を温めているようだ。
あとの二人の男も、浴槽の前まで追い込み、その前で撃ち殺した。
マシンガンを持って二階に上がり、約3分以内で10人を撃ち殺しせしめた。
ショットガンを手に持って一階に下りると、男たちの死体に囲まれた血だらけのリビングで黒人のゴム製のマスクを被った男が俺に銃を向けながらこう言った。
「おまえの女、上手かったぜ。相当、好い女優になれるよ。ヤクさえ打ちゃ、あっちの世界でのな。へへへ…。」
男の股間を撃つと男は呻いてその場に蹲って倒れ、俺は男の被っているマスクを取った。
赤毛の髪と髭を伸ばした男、どこかで見たような顔だ。
男は涙と鼻水と涎でぐしゃぐしゃになった顔で俺に言った。
「楽にしてやれよ…あの女を…。」
男は目を瞑って静かになった。俺は男の脳天にもう一発撃ち込むと走って廊下の突き当たりのドアを蹴破った。
薄暗い部屋の中、左側のベッドの上に裸体姿で女が手錠で両手と両脚を縛られていた。
ベッドの上には注射器やSMプレイのような道具が転がっている。
俺はショックでちょっとの間そこから動けなかった。
女は黙ってじっと俺を見ていたが、突然嗚咽を漏らして咽び泣き始めた。
そして泣き腫らした目で女は俺にこう言ったのだった。
「もう終らせて欲しい」

終らせる?それはどういうことだ?殺して欲しいと…?そういうことか…?それとも俺が死ねばおまえも終らせられるのか?一体…どうすればこの悪夢のようなゲームを終りに出来るんだ…俺だっておまえを苦しめることを楽しんだりしちゃいないよ。何故こんなことが起きてるんだ?おまえだってわかってないだろう…俺はまだおまえのことを想いだせないが…それでも、愛しているよ…何故だかわかるだろう?何故いま、俺もおまえも泣いているのか…なぜ、涙がこんな止まらないのか、なんでこんなに悲しいのか、なんでおまえをこんな目に合わせなくちゃならなかったのか…なんで誰より大事なはずのおまえを、おまえも殺さなくちゃならないゲームを俺が…始めてしまったのか。でも、もう後戻りはできないよ…俺はもう、数え切れないほどの人間を、殺してきた。たった一人護る為に。たった一人、それはたった一人だったはずだ。このゲームをしなければ、俺は殺されるんだと脅されたんだ。俺は自分が生きたくて、それでこのゲームを遣り始めたんだと、そう想っていた。殺されるよりは、殺すほうがまだいいと想ったんだ。でもそれには条件があって、この世界の、全員を殺さなくちゃならないと言われたんだよ。俺は大丈夫だと想った。誰一人、俺以上に大切な存在はない。そんな存在は現れないと信じていた。でもそれはただ、俺がすべての記憶を喪っていたからだったんだ。何故そう言えるかって?それは今わかったんだよ。今、想いだしたんだ。俺はおまえを護りたかったのに、誰よりおまえを護りたくて、人を殺してきたはずなのに、今気付いたんだよ。一体どういうわけか、俺はおまえも俺も含めた、本当の”全員”を、殺す為に今まで人を殺しまくってきたってことに。俺はおまえを護れなかった。過去のおまえも。そして今のおまえも。未来の、この先、俺のせいでまた死んでしまうおまえも。俺はそれがわかってしまったんだよ。わかってくれ…俺は三度も、おまえを護れなかった、助けられなかったんだ…だからおまえは今そんなに悲しそうに泣いていて、俺に「終らせてくれ」だなんて言ったんだ。でも俺がおまえだったら、きっとこう言うよ。「もう始まらせないでくれ」って。目が覚めれば、俺はいずれまた人を殺しに行く。おまえが側にいなくなっても。終らせるってのは、何もかもが、始まる前に戻るってことだ。俺がおまえを愛する為に生まれてきたっていうなら、俺は生まれる前に戻るしかない。俺が生まれる前、そこには何かが在るのか、誰かは居るのか、わからない。もし本当におまえがそれを望んでるなら、もしかしたら戻れるかもしれない。こうすれば…。
俺は持っていたショットガンを自分の顳顬に当てて女を見詰めた。
すると女は青褪めた顔で静かに眠っていた。
さっきと様子が違う、衣服を着ていて手足を縛られてもいない。
よく見ると、此処は病室で、女が寝ているのは病室のベッドだった。
女の頬に手を触れる。とても冷たい。
死んでいるようだ…。
後ろから声がして振り向く。
鶏のマスクを被った男がそこに突っ立っていた。
「一旦始まらせたものを、終らせることなどできない、どう足掻き、苦しんでも。」



1989年7月21日 フロリダ州マイアミ

何者かに撃たれ、俺は気を喪い、目が覚めるとさっきの病室のベッドに寝ていた。
夢の中では、女が例の男に連れ去られ、危ない目に合わされる前に無事に女を救出し、女を車に乗せて家に帰った。
その後少し、誰も殺さない日々を、女と過ごした。
女を抱いたときの最高の幸福の感覚とエクスタシーも、はっきりと想いだせる。
でも何故だろう、同時に酷くつまらない夢だったと感じる。
あんな展開は在り得ない。現実的でない。幸福な夢は。
でも今のこの時も、現実的だと言えるのか。何故、俺は此処にいる?
女が側にいないと酷く不安だ。
「この男の女もあなたたちは助けられなかったじゃないですか。」
誰かがそんなことをこの病室で話していたような気がする。
涙が引切り無しに零れてくる。
女を助ける人間が、俺の女を助けられる人間が、俺以外に、いるはずがないじゃないか…。
いるはずがなかったのに。
俺は女を助けられなかった。
女は俺だけの助けを待っていた。
今、も………
俺は重い身体を起き上がらせて病室を抜けた。
酷い頭痛と眩暈が何度と起きて視界がぐらぐらと揺れ、黄色い西日が通路の窓から射し込み、眩しくて目の前がぼやけて何度も蹲る。
病院という場所は世界で一番暗い場所ではないだろうか。
誰もこんな無機質な場所で死にたいなんて想わないだろう。
俺の親父は最期麻酔を打たれて機械に繋がれ、機械に囲まれた窓もない無機質な白い集中治療室で死んだ。
何故あんな寂しくて冷たい空間で死んでいかなくてはならなかったのだろう…?
早く此処を抜け出よう…
一秒でもこんな場所には長く居たくない。
俺は病院の者に見つからないように青い病衣を着てふらふらと院内を歩きながらやっと出口を見つけ、病院の外へ出て止まってあったタクシーに乗って家へ帰った。
アパートに着くと、自分の部屋のドアの前には黄色いバリケードテープが貼られていた。
テープを剥がし、中に入る。
部屋の中は酷い有様だった。
バスルームの床には血の痕と人の形にチョークで線が描かれている。
俺はじっとそれを見つめて、何故だかわかった。
ここで、あの女は殺された。

どれくらいの時間、此処に突っ立っていたかは記憶にない。
その代わり、想いだせることが次々に甦ってくる。
これからの記憶を、俺は想いだした。
俺は確かこの後、警察署に襲撃しに行ったんだ。
そしてそこにいる警察官全員を殺して、それから…
そう、俺はとうとうマフィアのボスの居場所を付き止めた。
何の抵抗もしない大人しい爺さんで、撃ち殺すのに戸惑って…
ふと、爺さんの前のデスクの上にウィスキーボトルが置かれているのが目に入った。
俺はそれを指差して爺さんに言ったんだ。
「良かったらそれ、ちょっと貰えないか」
爺さんは笑って側にあったグラスに注いで、それを渡した。
俺が一気に飲み干すと、爺さんは身の上話をし始めた。
「わしには可愛い一人娘がいたんだ。でも今から二十年前、娘は何者かに突然命を奪われてしまった。まだ19歳だった。二十年前の春に、娘は幸せそうな顔をして、婚約者をここへ連れてきたことがあってね、でもわしは反対したんだ。何故って、見るからに、わしと同じ血筋であることがわかったからね、男は確か、当時娘より三つ年下のまだ16歳だったから驚いたよ。見た目は30歳近くに見えた。人を何人も、既に殺してきたような目をしていた。いや、それだけじゃない。あの男はまるで生身をどこかに置いてきたように、存在感があまりに希薄で恐ろしかった。あの男ほど、この世界に不似合いな男は見たことがない。わしは男を帰らせた後、娘に言ったんだ。あの男と結婚させるくらいなら、おまえを今ここで殺してやったほうがおまえは幸せだろうと。でもそんな勇気は、わしにはなかったから、拳銃を娘に渡してね、それで言ったんだ。今ここで、自分でけじめをつけなさいと。娘は、過呼吸症状が出るなか、自分の顳顬に銃口を当てて引き金を引こうとしたが、できなかった。それで、部屋に監禁して一端休ませると翌朝早くに娘から電話があって、娘はこう言ったんだ。自分ではできないから、他の人間に遣ってもらうと。わしは誰だと訊いたが答えなかった。わしは娘に言った。そうか。それなら、もう好きにしなさい。ただしわしはもう、おまえがこの世界にはいないと、そう信じるから。もう二度と、関わることをやめてくれるか。娘は頷いて、そしてここを出て行った。その日からたった、一週間後のことだよ。娘はその婚約者の男のアパートのバスルームの床に倒れて、死んでいるのを発見された。何者かに、胸を、撃たれ…一緒に住んでいた婚約者の男は行方不明。警察は何ヶ月も前から、男が世間を騒がしている連続殺人鬼だと睨んでいたが、しかし何一つ証拠を掴めないことで男を野放しにした。わしは何にも警察に対して文句を言わなかったが、彼らは直々にここへ遣って来て、そして土下座して謝ってくれたよ。あの時、何らかの理由をつけて男を拘束しておくべきだったと言って謝罪した。証拠は掴めたのかと訊くと、まったく、変なことを警察は口走った。彼は、あまりに善人であることが、唯一の証拠だと。つまり悪い記憶の全てを、本当に喪っているのだとね。警察はあの男を殺したがっていた。持って来いだろう?記憶を喪っている人間に、すべてはおまえが遣ったんだと思い込ませ、追い詰め、そして連続殺人犯として仕立て上げるには。真相など、誰にもわからない。だが、もし、あの男が犯人だったのなら、解決する。そこに賭けることを、楽しんで遣っている。わしは警察と取引きをした。あの男は、わしから娘を奪い去り、それだけでは飽き足らず、殺したかもしれん男だ。存分に、可愛がってくれと。100億ドルを、彼らに渡してね。安いと言われるかと思ったが、彼らは喜んで引き受けてくれたよ。きみが、今まで殺してきた人間は、全員、わしにとって邪魔な人間だった。死んだ娘の遺体を確認してくれと言われたが、わしは確認をしなかった。たった一週間で、わしは娘の顔をすっかり、忘れていたんだよ。それほど、わし一人で可愛がって育てて来た一人娘が、わしを棄ててあの男のほうを選んだことがショックだったのだろう。ははは。君はやけに、大人しい奴だ。でも勘違いしないでくれ給え。その男が、君であると言っているんじゃない。ただ今際の際に、懺悔させてほしかったんだ。随分、酔っているのかもしれない。きっと楽に死ねるだろう。さあ、撃ちなさい。どこでもいいから、撃ちたいところから、撃ちなさい。」
爺さんはそう言って静かに眼を閉じた。
俺はもう一杯、グラスにウィスキーを注いで飲み干した後、その額に銃口をつけて引き金を引いた。
カチャッとだけ音がして、爺さんは腰掛から落ち、床に倒れ込んだ。
俺は爺さんの頚動脈に手を当てて脈を確認した。脈は感じられなかったし、息もしていなかった。
この銃は、弾切れだった。銃弾がもう一発も残っちゃいなかったんだ。
それなのに何故か爺さんはぽっくりと死んでしまったようだ。
デスクの上には、何種類もの薬が置かれていた。
どうやら爺さんは心臓病か何かだったようだ。心臓発作で、急性ショック死といったところか。
俺はほっとして、銃を投げ捨てた。
これで、もう終わりだ。
このゲームは…終わった。
ふと気付くと、左側にある広い窓の向こうに夜景の灯りが見えた。
窓を開けてバルコニーに出ると生温かい風に触れた。
鶏のマスクを外して床に棄て、煙草に火を点けて深く吸い込んで吐く。
携帯のアラーム音が鳴る。
見ると制限時間のアラームだった。
なんだか懐かしい。制限時間があったことなんて、すっかりと忘れていた。
でもどうやら間に合ったようだ。
手が、血と汗で粘ついている。
震える手で、携帯にメールを打ち込んでゆく。

おまえに逢いたいよ。
今、どこにいる?
もう全部終ったから、逢いに行けそうなんだ。
何にも、何、ひとつ、まだ想いだすことはできないようだが、俺はおまえを知っているんだ。
嘘ばっかりだが、この世界っていうのは。俺もおまえも嘘ばっかりだと想うが。
愛している。
逢いたいんだ。おまえのことを知れなくていい。
同じ世界にいるんだろう?
今でも。
離れていると、感じられない。
おまえと俺は、同じ世界にいる。
でも見えないんだよ。
俺が、おまえを殺した俺が、俺を赦せないからだよ。
おまえが見える為に、俺は俺を赦す必要があって、俺は俺を赦す為に、おまえを見る必要がある。
100億年以上かけて、人間は人間と殺し合って来た。信じられないだろう。
いつも、何遍も飽きることなく、同じことを繰り返してきた。
でも見つけたんだ。
此処から抜け出す方法を。
そして俺はおまえを見つけた。
俺は本当に、誰一人殺したくないんだ。
一番に愛するおまえをこの手で殺さなかったなら、永遠に殺し続けただろう。
俺は此処にいるから。
愛するおまえを此処で、ずっと待っているから。
いつか、迎えに来て欲しい。

そう打ったあと、携帯を夜景の中に投げ捨てて目を閉じる。
何も映らない。
何も。
今はまだ。
恋しいばかりで、何も映らなかった。




















Hotline Miami  Ending




















ちびまる子ちゃん

2018-08-29 07:19:10 | 漫画

ちびまる子ちゃん 第19話「おかあさんの日」

 

 

 

 

ちびまる子ちゃん 第19話「おかあさんの日」、第20話「ゆううつな参観日」「5月のオリエンタル小僧」 
https://youtu.be/_7GsUaaZ1Do

 

昨日の晩からずっと観てたのだが、来たな…

ちびまる子ちゃんで多分一番感動する回「第19話 おかあさんの日」。

号泣しました。わたしはお母さんの記憶がなくて、父の日にも何かあげた記憶もないのだけれども…。

 

 

 

 

ちびまる子ちゃんはわたしが8歳の時から22歳の頃までずっと放映されてたときはよく観ていました。

お父さんが死んでしまう年のわたしが22歳(2003年)の時までお父さんと一緒にちびまる子ちゃんを観ていた。

でもお父さんがいなくなって、ちびまる子ちゃんとかほとんどお父さんを想いだすものを観れなくなってしまったから、多分2003年以降は観ていない。

 

 

ちびまる子ちゃんの作者さくらももこが亡くなったことが全然実感が湧かない。

それもうちのお母さんと同じ病気で。(しかも旧姓の苗字も母の旧姓と同じで名前も母と二文字同じで吃驚しています)

わたしの母は42歳で乳がんが見つかったときは既に末期で、そこから二年ほどの闘病の末にガンが脳にまで転移してモルヒネで朦朧とするなかに44歳で息を引き取った。

乳がんは女性の死亡率第5位(女性の30歳から64歳では、乳がんが死亡原因のトップ)、がん罹患率第1位で12人に1人が乳がんを発症する(欧米では8人に1人)と言われているほど増加している病気です。

乳がんになる女性の割合は50年前は50人に1人、乳がんで亡くなる女性は2013年には1万3000人を超え、35年前と比べて3倍以上にもなっている。

乳がんの増加の原因の一つに食生活の欧米化が上げられています。

女性ホルモンの1つであるエストロゲン(卵胞ホルモン)は乳がんのがん細胞を増殖させることが知られている。

女性ホルモンバランスを崩し、不自然に増加させてしまうものといえば一番に乳製品(牛乳)、そして成長ホルモン剤を与えられている家畜の肉があります。

何年か前に、不整脈で病院で検査を受けたときに、母は乳がんで44歳で死んだことを伝えると医師から「お母さんは乳製品はよく摂られていましたか?」と訊かれました。

医学界でも乳がんと乳製品や畜肉との因果関係が叫ばれてきているからです。

乳製品や畜肉は前立腺がんとの因果関係もあると言われています。


 

牛乳と肉は乳ガンのリスクを急速に早める

実際、ヨーロッパの研究でも高脂肪食をよく摂る女性は、そうでない女性に比べて2倍も乳がんになるリスクが高まるという結果が出ており、がん調査機関EPICは、高脂肪食の例として、ソーセージなどの肉製品、バター、チーズ、クリームなどの乳製品、チョコ、ビスケットなどのスイーツをあげていますが、これは日本人が日々口にしているものであり、あまりに身近過ぎるため、知らないうちにパクパク食べてしまった経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

食の欧米化は肉と乳製品に依存しており、実際、肉の食べ過ぎは乳がん発症の一因として、多くの医療関係者が指摘しています。

また「乳がんと牛乳」の著者であり、科学者でもあるジェイン・プラント氏は、牛乳には子どもの急速な成長を支えるための様々な成長促進物資が含まれており、成長が止まった成人が、このような成長因子やホルモンをたっぷり含んだ牛乳を飲み続けるとどうなるかを調査した上で、「乳がんになる、ならないは単なる科学の問題、すなわち牛乳や乳製品を摂るか、摂らないかによって決まるのだ」と結論づけています。

 


 

 

がんは早期発見をと言われていますが、早期発見よりも意識しなくてはならないのが食生活です。

実際、わたしが急に胸のしこりが痛み出したのが、2011年当時付き合っていた恋人が牛乳が好きで、同じものが飲みたくなって意識して多く摂っていた時期でした。

しこりは良性でしたが痛みがなかなか消えず、不安な日々でした。

それが2012年から畜肉と乳製品と卵を断って、その頃から痛まなくなっていることに気付きました。

たまにお酒を飲みすぎると痛むことがありますが、ずっと続くような痛みではありません。

 

 

うちの姉は今年で53歳で、さくらももこと同い年です。

まだまだすごく若いと感じる年齢です。

実際に何が原因であるかはわからないことですし、本人が決めてこの世を去ることもあると想います。

でも、全員が全員そうであるかもわからないし、もし本当に乳製品や肉などの因果関係によって多くの人々が若くで亡くなって行っているのだとしたら、残念に想うのが人情ではないでしょうか…?

 

 

 

 

 

さくらももこは、なんとなくおばあちゃんの年になるまで長生きしそうだなと感じていました。

子供の頃にちびまる子ちゃんが大好きで、兄が揃えていたちびまる子ちゃんの漫画をこっそりいつも読んでいたりとか、お父さんのお金盗んでちびまる子ちゃんの手鏡を買って、その後もずっと使っていたこととか想いだしていました。

 

 

(デジタル)コジコジ・海のおじいさんのおんがく

 

多分わたしが16歳くらいの頃、姉の家に父と遊びに行ったときに、姉がパソコンでコジコジのちょっとしたゲームソフトみたいなものを見せてくれて、それで初めて「コジコジ」を知って、姉がその時何度も、コジコジに出てくる「歌うコーヒー人形」の口真似をして高い声で「コーヒーを淹れましょぉ~♪美味しくってぇ~たまらない~♪」と繰り返し歌っていて(笑)すごく面白くて楽しくて一緒に笑い合ったことを想いだしました。

 

アニメ 2018 「コジコジ」 - 第6話「江戸っ子の国ゲタ屋一家がやってきた」

この回にその歌うコーヒー人形が出てきます。

彼、欲しいな…(笑)起き場所がちょっと困りますが…w

コジコジの漫画も全巻持ってました。

 

 

(デジタル) コジコジ絵本・夏のようせいのおくりもの

(デジタル)コジコジ絵本・ハーモニカをふこう

 

さくらももこのエッセイは中学生のときから図書館で借りて読んでいたように想います。

『もものかんづめ』『さるのこしかけ』『そういうふうにできている』など特に面白かった。

やっぱり全然実感が湧かない。

日常のなかでよく彼女の作品の言葉が浮かぶことがありました。

まる子のお姉ちゃんが中学生か高校生になって、涙を落としながら言った「みんなに可愛いとちやほやされたって全く嬉しくない。たった一人の好きな人から好きになってもらえないなら意味がない…」というような言葉を想いだしてはいつも共感したり、この世界は「そういうふうにできている」のだという表現がすごく好きでした。

 

彼女はどこかとても達観しているような人でした。

 

 

 

(デジタル)コジコジ絵本・コジコジがやってきた

 

 

 

ちびまる子ちゃんの世界は永遠です。

 

 

 

 

 

 

 

 


「そういうふうにできている」

2018-08-28 07:07:20 | 日記
実家の寝る部屋でわたしはテレビを観ていた。
日本地図の上に、次々と火の塊が投下され、日本は全滅。
わたしは生々しく想像したのだった。
もし...日本に北朝鮮が本当に核爆弾を投下したら...
その瞬間のことだった。
目を瞑ったわたしの視界が一瞬で火に覆われ、わたしの右の手の甲に火の粉が落ちて燃え始めた。
わたしはそれでも目を閉じたままじっと燃え尽きる時を待って諦めようとした。
しかし、ハッとして目を開け、急いでみちたを抱きかかえて小さな籠の中に入れ、火の粉から護るため窓から離れて毛布を被った。
外は火の雨が降り注いでいた。夜なのか昼なのかもよくわからない。
姉と、そしてわたしのことを兄弟と呼んでくれた彼から連絡が来た。
何とか無事であることを確かめ合ってホッとして、火の雨が止んだ頃、わたしはベランダに出てみた。
驚いたことに二階であるはずのこのマンション部分が一階となってベランダの床の高さが地面の高さになっていた。
あの時地震も起きて、一階部分が地下に埋もれたようである...
一階はどうなっているのだろう...そこにいる人は無事だろうか。
ベランダで途方に暮れて非現実な光景を眺めていると猫が二匹寄ってきた。
そして近所の人から話を聴いた。
どうやらこの火は、核爆弾などではなく、航空機がちょうどこの辺りの上空で爆発したからだと言う。
そして同時に地震が起きた。その火災からも人々は核爆弾を落とされたのだとパニックになっている。



そんな夢を、今朝に見た。
わたしは冷静に想うのだった。
日本人は特に、いつ核爆弾を落とされるのかと怯えながら暮らしている。
その恐怖を、願望に変える必要がある。
ただ落とされないことを願うのではなく、この世界の未来がどのような世界になってほしいのか。

夢では、願望も恐怖も、一瞬で具現化する仕組みとなっている。
その想像が曖昧であるなら、曖昧な現象として現実化する。
願望と恐怖、関心の深いものが先に現実化する。
それは何故かはわからないが、『そういうふうにできている』としか言いようがない。

しかしこちらの世界では、かなりの時差を起こす。
人類の恐怖が勝つか、願望が勝つか、この世界の未来は、わたしたちの想像力と、関心次第なのである。

人は時に恐ろしく怖い悪夢を憶えている。
それも、一つのこの世界の愛なのである。
何故なら恐ろしいものを知ることで、人は強い願望を胸にいだいて生きてゆくことができるからだ。

人が終末を想像する時、それができる限りの悲惨なものであることを想像できるなら、それを絶対に回避したい(この世からその悲劇をなくしたい)という強い願望がそこには生まれる。
そして怖れること以上に、心から願う世界を、できる限り具体的に想像し続けてほしいと願う。

その世界は、きっと叶うからである。

Virtual Insanity

2018-08-27 12:14:35 | 随筆(小説)

 

俺もホットラインマイアミでさんざん銃を乱射しまくったよ。

でもあれは、俺が奴等を殺さなかったら、俺が殺されるからだ。

これはゲームの話だけじゃないんだ。

例えばあいつ。あいつは俺を殺す言葉を言ってきた。みんなのいる前でね。

つまりあいつから、俺を殺そうとして来たんだよ。

俺はマジに生命の危機を感じた。
全身の血が、沸騰して煮えたぎったはらわたが口からもつ煮込みとして出てきそうだった。

俺は咄嗟に口に手をあて、床に跪き、うぅっと唸った。
すると何人かが、近寄ってきて、そして、笑いながらこう言ったんだ。

汚ねえなおい、おいみんな、はははっ。こいつ吐いてるぜ。みろよ、ゲームに負けたくらいで吐く馬鹿なんてこいつくらいだ。

何故そんなに剥きになるんだ?

ただのゲームじゃないか。

俺がおまえをほんとに殺したわけじゃねえだろ。

FUCK OFF.失せろ。

気付けば目の前に、最悪な光景が拡がっていた。

生きている俺と、そして死体しかなかった。

俺は、此処でずっとずっと、待っているんだ。

game overという文字が、この世界に大きく浮かび上がる時を。

そして誰かが、pushする。

俺の記憶を消し、記憶を消された俺が、また同じ場所に立っている。
また此処から遣り直し。

あいつが俺に、嫌味を言ってくる。
みんなの前でね。
あいつは俺を殺そうとしているんだよ。
俺は心臓発作が起きて、今にも死にそうだ。
気付けばショットガンを手に持って、俺は微笑んでいる。

俺はこの世界を愛している。

ゲーム以上でも、ゲーム以下でもない。

わかってるだろう?
殺される前に殺せ。
みんなそれが好きなんだ。

何故、殺されなくてはならないのか、わからないからだよ。

何故、俺が、あいつに殺されかかっているのか、わからないんだ。

何故、あいつは俺を殺そうとしているんだ?

一体俺が、あいつに何をしたんだよ...
憶えてないんだよ。
なんにも。
あいつのことなんて、何一つ。

一体このゲームを遣り始めたのは誰なんだ。

あいつなのか。
俺なのか。
俺達なのか。
それとも、他の誰か。

気付くと、あいつは武器を持っていない。
それはあいつから、俺が武器を奪ったからだ。
あいつがまた、俺に凶器を向けるなら、俺はそれすら、奪うことができる。
俺に考えがあるんだ。
俺がそれすら奪えばきっと、もう二度と、あいつは俺を殺そうとすることはできない。

目の前に、ジンの瓶と、薬がある。
 
俺が俺を愛していると信じることと俺が俺を愛していないと信じること、どちらが簡単なんだ。

俺は手を伸ばす。

そして待つ。左上に『あなたは死んだ!(You Are Dead!』という文字が浮かび上がる瞬間を。

俺はまた同じ場所に立っている。
一体あいつは誰なんだ?
何故ここまで執拗に、俺を殺そうとしてくるんだ。

 

俺はまた同じ場所に立っている。
一体あいつは誰なんだ?
何故ここまで執拗に、俺を殺そうとしてくるんだ。
insanity でも誰もあいつを収容しない。
俺は何度も何度も、あいつに頼んできた。
俺を殺そうとするのはやめてくれないか?
なんでこんなことになってるんだ?
俺がおまえに、一体なにをしたんだよ。
おまえが俺を殺そうとしなければ、俺もおまえを殺す必要など、なかったはずだ。
なぜ俺を殺そうとするんだ...
言ってくれよ。
おまえの本当の望みは、最終的に俺を殺すことなのか。
俺はさんざん、おまえによって苦しめられてきた。

おもむろに、手にショットガンを持つ。
銃口を相手の顔面に向ける。

一体だれなんだよ、おまえは。

FUCK OFF. 失せろ。

鏡の割れる音がして、右上に『死んでしまった』という文字が浮かび上がる瞬間を。

俺は待っている。

此処でずっと。


おまえと。

 

 

 

 

 

 

 

Restart

 

 

 

 

 

 

Desktop 2018 08 27 11 32 13 06

 

 

 

 

 

 

 

 


映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」この世界に満ちているもの。

2018-08-26 08:21:30 | 映画

昨日と今日、岩井俊二監督の2016年公開の作品「リップヴァンウィンクルの花嫁」を観た。

 

 

 

 

 

実はNetflixで偶然見掛けたトップ画像にウェディングドレス姿のCoccoが映ってて、(なんかこの映画前から気になってたかという記憶と共に)ただそれだけで気になってなんとなく軽い気持ちで『リップヴァンウィンクルの花嫁 serial edition <全6話>』というのを観始めて、

映画なのかドラマなのかもわからず、監督も何も知らずに観ていた。

 

 

 

 

それで観てるうちにのめり込んで行って、途中から、あれ、これ誰が作ってんだと気になって調べたら岩井俊二監督の作品だった。

で、一話40分のものを全6話いっぺんに観た後に、劇場版が実は最初に公開されたものであることを知ってショックを受け、同時にその内容が少し違うという話に胸がときめいて、そのあとにAmazonのPrime Videoで劇場版を同じ部分を飛ばし飛ばしで最後まで観た。(いつのまにか夜が明けていて逆光の朝日のなかで)

それで観た後、今日(今日って、あれ?うわっ、もう朝の7時半やん…俺一体何時からこれ書いてるんだって、午前4時過ぎからか…ってことは昨日やん。昼から寝ると時差ボケするな。)の昼過ぎまで眠れなかった。

そこから起きて、今度もう一度、劇場版を最初から最後まで観た。

飛ばして見逃していた重要な部分もあって、三度楽しめたのだった。

劇場版はかなりカットされているので、できれば両方を観ることをお薦め致します。

岩井俊二監督の作品はこれまで95年の「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」、96年の「PiCNiC」同じく96年公開の「スワロウテイル」、そしてわたしの好きな映画のベスト10に入る大切な映画である2001年の「リリイ・シュシュのすべて」を最後に何故か、観れておりませんでした。

好きな監督でありながらここまで観れてないことが残念ですが、映像を観る気力のないほど疲弊している日がほとんどなので、わたしはわたしを責めることはやめようと想います。

映画の内容はあえて言わないでおこうと想います。何も知らないで観たほうがきっと面白いと想ったからです。

とにかく時を忘れて観ていました。もっともっと長い作品であってほしいと感じるほど終わるのが切ない映画でした。

 

ほとんど映画の感想でないのですが、ちょっとわたしとCoccoとの縁の話をしたいと想います。

Coccoはわたしが19歳のとき、2000年の確か3rdアルバム「ラプンツェル」を発売した辺りのときに突然好きになったアーティストです。

よく彼女の音楽がFM802で流れていて、当時からMステに出ていたと想います。

1stの「ブーゲンビリア」と、2ndの「クムイウタ」も買って、よく一緒に歌っていました。

残酷なのに対比する光の強い彼女の歌に激しく魅せられて行きました。

それでどんどんCoccoの音楽が好きになって、彼女の存在感の凄さやインタビュー記事などを読んではそのつど感動したり衝撃を喰らって崇拝に近い想いも湧き出してきた頃、2001年の4月20日の夜に、Mステの出演を最後に活動休止することを知り、その夜のMステが生放送されるテレビの前に齧りついて観たのですが(あの夜、父が居間のほうのテレビで違うものを観ていたので、自分一人だけで寝室にあった古いテレビで観ました。)、彼女の最後の生出演の白いドレスを着て「焼け野が原」を泣きながら歌って、歌い終わったあと泣きながら微笑んで走り去ってゆく姿に、わたしは号泣しながら崩れ落ちたことを今でも憶えています。(またね、その最後の歌詞の部分が「もう歩けないよ」だったんですよ…)

 

 

焼け野が原

 

(ありました…その時の映像です。

最後の「もう歩けないよ」と歌ったところで涙が溢れました。その時の感覚が甦って、すごくドキドキしています。)

 

 

当時、わたしはまだ二十歳の誕生日を迎えていない19歳の初夏でした。最愛の父を亡くす二年半ほど前です。

「焼け野が原」すごく好きな曲でした。

Coccoが去って行ったその夜、ずっとずっと泣いていたと想います。

もう彼女は戻ってこないって気がしたんですよね。

彼女がずっと精神的にすごく不安定で痩せた細い両腕には痛々しい自傷の(切り傷より火傷のような)痕があったことを知っていました。

わたしもちょうどその時期、父に対する依存から毎日が本当に苦しくて、でも自傷することもできなくて、慰みに寝る前に自分の手の甲にペンで「死ね」って書いて寝たりしていました。

でも、ひとつの線が切れたんですよね。Coccoのあの夜の最後の姿を観て。

Coccoを知りたい…!!と激しく願ったのです。同じ行為をすれば、知ることが出来るんじゃないかと想いました。

それで気付くと泣きながらわたしはカッターを手に、初めて左腕の内側の柔らかい皮膚の部分に傷をつけていました。

最初はほんの小さな血玉がぽつぽつと傷の間に浮かぶほどしか切れませんでしたが、貧血を起こして倒れそうになるほどショックを受けた感覚もよく想いだせます。

自分の手で自分の身体をカッターで切ってしまったということが、本当に神に背く神に絶対に赦されないようなものすごい重い罪のように感じました。

でも段々と、日に日に傷は深くなって行きました。(それでも深い人に比べたら全然浅いほうだと想いますが)

父に隠れて、父のいる居間の隣の寝室で剃刀で切ったときは思いのほか深く切れてまたショックを受けたりしていました。

当時はいつも、Coccoのように髪を伸ばしたドレス姿の自分が、ビルの屋上から青空を仰ぐように後ろ向けに飛び降りて死ぬというイメージばかりしていて、父の運転する車の助手席から高いビルを見つけては、その屋上ばかりぼんやりうっとりと眺めているほど精神状態が危ない時期でした。

(そういえば2002年か2003年頃、Coccoの「遺書」という好きな曲を姉と初めて行ったカラオケで歌ったときに100点を初めて取ったんですよ。半分泣きそうになりながら歌ってて、姉にすごい感動したと褒められてとても嬉しかったです。まだ父が元気だった時だったのですが、わたしの欝症状は悪化するばかりでそれを心配した姉がわたしを預かっていたときだったと想います。それでまた実家に帰ったときにその時に100点を取ったことを父にも話すと父もすごいと言ってくれて、父にも聴かせたかったです…でもまさか彼女の影響でわたしが腕に傷をつけ始めたなんて二人とも知らなかったんですよね…)

当時の自傷行為がどれくらい続いたかはっきりと憶えていませんが、一端は父にその傷を見られるのが絶対に嫌で、一度見られてしまったと感じてから怖くなって、やめることができました。(中毒だと感じるほどの期間は続いていたので2003年の夏頃だったかもしれません)

でも父の死んだ後に男性と付き合っていた頃にまた始まって(主に相手に見せ付ける為に切っていました)、最後に切ったのは確か30歳になるちょっと前くらいだったと想います。(切るときはお酒を飲んでるときも多くて記憶にないだけかもしれませんが…)

Coccoのせいで自傷行為が始まったと言っているのではないのですが、実際Coccoの存在がいなければ自傷癖がついたかどうかは自分でも分からないです。

ただそれだけわたしとCoccoとの縁は深いものであることは確かです。

まあ、そういうわけで、かなり前置きが長くなりましたが…そういう過去があって、この映画を観たのでね、なんかね…本当に感動したんですよ。

Coccoはその後活動を再開したのですが、その後以前のように追い駆けられなかったのは、やはり以前とは作品も雰囲気も変化したCoccoに、なんだか置いて行かれてしまったような気持ちをずっと抱えてきたからだと想います。

でもそれでも気になってたまにインタビューの載った雑誌を買ったりしていましたね。

Coccoはママになって息子をがんばって育ててるけど、自分は未だ独り身だし、悲しいかな妬みや嫉妬の感情が湧いて来てしまうことが苦しかったです。

それでも彼女が元気で活動しているだけで嬉しかった。

複雑な感情のなかにも、彼女のことを知りたいという気持ちが今でもあったのでこの映画も観たのだと想います。

当時のわたしが、もしこんな映画観せられていたら、どれほど違う意味で相手役の黒木華に嫉妬したか(笑)

(はっきり言えるのはわたしの感情は恋愛的な感情ではまったくなかったということです。この映画の二人も、きっとそうであると感じています。)

今はわたしは37歳になって、この映画を38歳か39歳の頃に演じた彼女の姿を、すごく良い距離で観ることができたと想います。

あの頃から17年近く経っていますが、やっぱりCoccoは変わってない。と、そうこの映画を観て感じました。

一番に素晴らしい彼女の部分は、何にも変わってないんだと。

自分はそういえば、常に目が覚めている間は自分と自分以外のすべての人間から死ねって言われ続けているような感覚でずっとずっと生きてきたのですが、いつの頃からだろう?気付けばそういう感覚になる日が、段々と減って来ているように感じます。

でも人から少しでも責められたとき、すぐにその感覚は戻ってくるんですけどね。

彼女は、実は子供のとき親から虐待を受けてたんです。わたしの記憶が間違っていなければ、確か彼女自身がインタビューで答えていたことです。子供のころよく親に庭にあったがじゅまるの樹に縛り付けられたりしていたと。

あとはこんな彼女の台詞もありました。

「インターネットがこの世にあると想うだけで死にたくなる」

それはインターネットの世界が、人の外では隠している汚い部分、卑しい部分、悪意が露わとなっている世界だからです。

例えばわたしがずっとずっと苦しんで生きて来た原因は、一つにこの世界に性の乱れがあるからです。

誰の悪意もないところにも、誰かの苦しみがあるというのはそうです。

でもみんながみんな、「もっと自分の身体を大切にしろ。」「性的なものとは、夫婦間だけに与えられる神聖な喜びなのだよ。絶対に後悔するから、やめておきなさい。」などと言える社会なら、性風俗業界で身体を売って生きる女性もいないのです。(性風俗界で働いた女性は後に後悔して自殺する人が結構います。)

現に本人は良くとも、我が子がそんなところで働いたら、それは親の苦しみになります。

わたしなら、死にたくなると想います。

わたし自身が、本当に後悔しています。働いていたわけじゃありませんが、わたしも散々、最愛の父を喪ったあと自棄になってしてきましたから。

ずっと幼い頃から聖書を学び(母は忠実なクリスチャンでした。聖書では夫婦以外の間で性的な関わりを持つことを不義の交わりである姦淫という重い罪として定めています)、処女のままで絶対に結婚するんだと誓ってきたわたしにとって、婚前交渉(結婚前のすべての性的な行為)は、全部が全部、最悪な、最も苦しい自傷行為だったのです。

それでついこないだ、いつまでもこんなことを続けていたくないと強く感じて、自分に誓いました。もう絶対に、結婚前に、誰とも性的な関わりは持たないと。

話を戻しますが…例え悪意じゃなかったとしても、男性が女性を性の捌け口としなかったなら、女性が深く傷つき続けて生きていくことも減ると想います。

「だれでも、情欲をいだいて女を見る者は、心の中ですでに姦淫をしたのである。」と言ったのはイエスですが、実際にそうして性行為をし続けると人間が生きる上で大切な精力というものがどんどん奪われてゆきますし、夫婦間以外の交渉は性病や堕胎という人がものすごく苦しんで死んだり、殺されていかねばならないこの世の最も苦しいことに繋がります。

この世界は、どちらかというと悪意(利己的な欲望)に満ちています。

わたしはわかっているのです。

彼女は人の何倍も、この世界に、傷つき続けて生きてきた人だということを。

この映画の彼女の演じる真白の大事な台詞は、彼女がライヴのMCで観客の前で言った台詞を使っているそうです。

岩井俊二監督が表現したかったのは、Coccoなのではないかと。

だからそれを知ってからもう一度観て、余計にわたしは感動しました。

あんな台詞(最後の台詞)を、本当に幸せに生きてきた人は言えません。

何故なら、本当に幸せに生きてきた人は、そこにあるとんでもない喜びに、気付けないからです。

自傷行為を続けてきたわたしならわかります。

自分を痛めつけてほっとするのは、愛する人に愛されない自分のことが、憎くて溜まらないからです。

苦しんで苦しんで、どこにも出口がなくて、そうやって苦しみつづける先にだけ、本当の愛に気づくことができるのだと、わたしは確信しています。

 

 

 

 

 

 

 

 追伸:出演者、みな役にはまっていてとても良かった。

Coccoの相手役、七海役が、黒木華で本当に良かった。大分前に観た「グーグーだって猫である」に出てたみたいやけど、全く憶えてない。彼女はあまりに透明で、そんな彼女でないと、この役は駄目やったと想う。

そういえばわたしは子供のころよく友達の後を着いてばかりいて、一人では何も行動できないような子だったので「金魚の糞」と男子共に馬鹿にされるほど主体性のない人間でした。今でもその部分はあまり変わってないと想います。そういう部分が七海とよく似てる気がしました。

 

 

そして安室役を演じた綾野剛、わたしはこれまで何故か彼がどうしても気に入らなかった。(わたしの好きなトダエリを振りやがった憎き男という理由もあるか)っつっても彼の演技を観たのがこれまで「ヘルタースケルター」だけやった。ようやく、わたしは彼の演技と、雰囲気、存在感の素晴らしさを感じることが出来た。

彼はわたしの師匠、町田康原作の「パンク侍、斬られて候」の主演である。観ないうちから絶対キャラ合って無いんじゃないかと想って大いに不満だったけれど、これ観る前に彼を好きになれて真に嬉しい。

映画館なんて一人で行ったことないのだが、来月がんばって独りで観に行こうかな。まだ遣ってるやろか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


俺の朝食(たまご)ーThis is my breakfastー

2018-08-25 22:43:38 | 自画像

 

今日の、俺の朝食。

This is my breakfast.
 
 

 

 

 

あっ。雪が、降ってきたぁ。ぼくのたまごに。

 

 

そしてぼくの産んだたまごは親子だった。

 

 

 

ぼくが産み落とした最初で最後のたまごに、小雪の降りかかる。

 

ぼくのママ。(ママの37歳の誕生日(8月4日撮影。)

 

 

 

 

 

 

ママの愛する男…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


映画「フォークス・オーバー・ナイブズ – いのちを救う食卓革命」誰が為に改革す?

2018-08-25 01:13:24 | 映画

「フォークス・オーバー・ナイブズ – いのちを救う食卓革命(原題:Forks Over Knives)」という2011年公開のドキュメンタリー映画をNetflixに初めて登録して観ました。(Netfilixも登録から一ヶ月は無料で観れます。)







前から気になっていた映画ですがゲオオンラインにはなかったので観るのが遅くなってしまいました。

 

監督 リー・フルカーソン
キャスト

コリン・キャンベル博士(著書『葬られた「第二のマクガバン報告」』グスコー出版

コールドウェル・エセルスティン博士(著書『心臓病は食生活で治す』角川学芸出版)

ニール・バーナード医師/パム・ホッパー博士/他


 

あらすじ

約半数の国民が何らかの薬を常用し、3人に1人が糖尿病を発症、毎年100万人が心臓疾患とガンで命を落とすと言われているアメリカ。

医療費の増大が社会問題となり、ダイエットが注目を浴びる一方で、真の問題は見過ごされたままになっていた。

しかし、動物性食品こそが不健康の原因だと唱えるこの映画は、問題の本質を明らかにし、多くの人々の支持を得て全米で大ヒットを記録することになった。

卵や乳製品を含む、一切の動物性食品を食べない菜食主義はビーガンと呼ばれ、最近ではクリントン元大統領が実践していたことで話題となっている。

クリントン元大統領はエセルスティン博士の著作に影響を受け、助言をもらってビーガンを始めたと言われる。

また、マドンナやナタリー・ポートマンなど、多くのセレブもビーガンを実践しており、幅広い人々に支持を広げている。

そのきっかけとなったのが、本作で紹介されているキャンベル、エセルスティン両博士の研究だ。

本作には実際に菜食主義を実践して、病から立ち直った多くの実例が紹介されている。

それと同時に、菜食を阻む見えない力についても言及している。

菜食主義は極端だという偏見、加工食品に偏った手軽な食生活。

食品業界の意向が優先される学校での食事プラン。

肉を食べないと力が出ないという思い込みなど、日常に潜む問題点に警鐘を鳴らす。

見れば自分の食生活を見直すきっかけになるはずだ。

 


 

Story


1940年代から、完全食品として推奨されてきた牛乳。

酪農業を営む家で少年時代を送っていたキャンベル博士も、これを当然として疑わなかった。

しかしあるとき、動物性タンパク質とガンの関係に気付いた博士は、どの食物が何の病気の原因となるかを調べる大規模な調査に乗り出す。

一方、外科医としての実績を積んでいたエセルスティン博士は、いくら手術で患者を治しても、これから病気になる患者はけっして減らないという現実にジレンマを抱いていた。

栄養学と外科の世界的権威である、二人の博士が達した結論は、動物と加工食品を食べず、菜食の実践で病は防げるということ。

そして多くの生活習慣病を治療することも可能だということ。

両博士の考えにインスパイアされたリー・フルカーソン監督は、膨大なインタビューと科学的検証を通じて、”食”の常識に鋭く切り込む。

薬漬けの日々を送る男女や、回復が見込めない心疾患だと診断された患者たち。

彼らに現れた変化を知った監督は自らも菜食に挑み、驚くべき効果を目の当たりにする!



 

DVD「フォークス・オーバー・ナイブズ~いのちを救う食卓革命~」予告編

 

 

 

ちょうど今日ポール・ロバーツ著「食の終焉」という本を読んでいて同じことを映像で観ているような感じでした。

自分は2012年の2月にVegan(完全菜食者)になって5ヵ月後に魚介類を食べるペスクタリアンになり、2015年9月頃から完全菜食を続けています。

自分が菜食、ベジタリアンになったことで劇的な変化を感じた事と言えば

  • 頻繁に起きていた一日中続くようなしつこい頭痛がなくなったこと。
  • 一日目は寝込むほどの激しい生理痛から解放され、ほとんど生理痛がなくなったこと。
  • 胸にいくつもあった良性のしこりの痛みがなくなったこと。
  • ニキビが大分減ったこと。

などです。

でも相変わらず、加工食品に頼ってしまっているのもあり、便秘がなかなか良くならない(便秘は小学生時代からで、多分精神的なものが関係しているような気がします。断食後にはものすごい快調だったので、精神的ストレスによる腸内細菌バランスの乱れが原因なのかもしれません。)し、お酒もほぼ毎晩飲むので胃腸の具合も悪いという感じです。

 

そうであってもわたしはこの映画を観ても改めて、「菜食」が「肉食」よりも健康な食事であることは、もう明らかであると感じました。

菜食をたくさんの人にこれまで薦めて来ましたが、よく菜食のほうが健康的であることの「科学的な根拠はない」と言われて来ました。

そんな人たちにこの映画は薦めるといいかもしれないなと想いました。

 

でもわたしは、ゲイリー・ヨーロフスキーという活動家も主張していることである「健康の為にヴィーガンになることは利己的だけれど、動物の為にヴィーガンになることは愛からによる。」という考えがわたしにもあります。

 

 

世界で一番重要なスピーチ(ゲイリー・ヨーロフスキー)

 

 

なので、科学的根拠がないと菜食になれない人にはこの映画は良いものだと想いますが、そうではないなら人が他者を救う為に菜食になる”きっかけ”の一つとして、観ると良いかもしれないなと想いました。

 

この映画の中でED(勃起不全)が肉食による原因で起きていて、菜食になったことでEDが治り、若い頃の性欲が戻ったという人が沢山いるという話が出て来ました。

またEDが心臓病に関係しているという話を初めて知りました。

劇中で医師がEDは「実は冠状動脈疾患の初期兆候なのです。心臓発作を起こすずっと前に、血管内皮機能不全を知らせるのです。人間の体はリンクしています。血液は体中を巡るため、血管障害を起こすと障害が多発します。」と述べていました。

でも映画のあの言い方だと「若い時分の性欲が戻った」という台詞を、菜食になれば性欲が溢れんばかりに出てくるのではないかと勘違いをする人がいるのではないかと懸念しました。

でもそうであるなら、何の為に仏教徒の修行僧が性欲(煩悩)を断つ為にも菜食を実践しているのかわかりません。

実はこういう理由があるそうです。

肉を食べると性欲が強くなるのか?という質問をヨガの先生にしてみた結果

すごく絵が面白くて、ほんとにこんなヨガの先生なのか気になりますが(笑)、このインド人のヨガのヨギー先生によりますと


 

  • 肉を食べると、下半身のチャクラのエネルギーが強くなり、創造的活動や性的活動に関る第二チャクラが不安定になる。
  • 性的活動を司るチャクラがアクティブになると動物的な本能で攻撃的になったり、イライラしたりする。
  • 第二チャクラがアクティブすぎると情緒不安定・夢想家・人を操る・性におぼれたりする。
  • 第二チャクラが非アクティブだと、過敏・自分に厳しい・不必要な罪悪感・不感症または性的不能になります。
  • 肉を食べるということは、動物の死を体に取り込むので、自分の体内のエネルギーも変わってしまう。

 


のであるそうです。なので、菜食になることはこの第二チャクラを安定させて、性欲を制御できたり、結婚している方はここぞというときだけ性欲がみなぎると言う話をよく聴きます。不必要な性欲に悩ませられることがなくなるということです。

だから性欲に苦しんでいる方も、性欲が出ないで苦しんでいる方も菜食になることで解決できる可能性は高いです。

 

でも、誰の為に菜食になるのかは、やっぱり他者の為に、そしてそれが自分自身の為にもなることを信じて移行してもらいたいなとわたしは願っております。

 

で、最後にもし御興味ありましたらこの映画と共に「Cowspiracy: サステイナビリティ(持続可能性)の秘密」というNetflixで観れるドキュメンタリー映画も是非!観て頂きたい。

園子温(その しおん)監督も推薦している!園子温が語る「日本の女性たちが自由を使いこなすために必要なこと」

「僕は最近Netflixのドキュメンタリーにとくにハマっているんだけど、すごい作品が目白押しで素晴らしいですよ。

たとえば『Cowspiracy:サステイナビリティ(持続可能性)の秘密』。

『不都合な真実』に感動した監督が、牛肉産業がどれだけ環境にダメージを与えているか環境問題のタブーに挑んでいて、脅されながら命懸けで撮っていてめちゃくちゃ面白い。

プロデューサーも途中で逃げ出しているんだけど、「最後まで撮れ」ってディカプリオが制作資金を出して完成させたいわく付きの作品。」


命を懸けて活動し続ける環境保護活動家であるディカプリオが実は巨費をNetflixに投じ続けているという話です。そうでもしなければ、莫大な利益を上げ続ける畜産企業のほうに肩を持ちたい会社はこういった問題作をできれば世に広めたくないからです。

次は、このレオ様!!が、製作総指揮で参加した「ヴィルンガ」を観てみたいと想います!

参考サイト:【映画】絶対に見るべき一本。映画「ヴィルンガ」をNetflixで見た

 

 

 

 

 

 

 

 

 


この世界の命に

2018-08-24 04:19:02 | 生命の尊厳

今日は(日にちが変わって昨日)、久し振りに邦画の映像作品を何本も観ることができました。

huluという動画配信サービスで「アナザヘヴン」が無料で観れるということで登録して、

次に「SPEC~零~/警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿」を観て、

その次に、SPECと同じ加瀬亮、戸田恵梨香が主演である「この街の命に」というWOWOWのドラマW枠で放送されたドラマがあることを知り、

気になって三本目にこの作品を鑑賞しました。

(何故か、二日程前にトダエリが夢に出てきたのです。彼女の存在感はとても好きで、夢の中では意味深な歌を一緒に歌っているという夢でした。)


「この街の命に」という作品はわたしの好きな映画「爆裂都市 BURST CITY」などの助監督も務めた緒方明監督の犬猫の殺処分に直面する行政獣医たちの葛藤と再生を描いたとても深刻な現実社会の問題をテーマにした作品です。


 

イントロダクション

加瀬亮、戸田恵梨香、田中裕子共演の人間ドラマ。『いつか読書する日』の脚本・青木研次と監督・緒方明が“犬猫の殺処分”に直面する行政獣医たちの葛藤と再生を描く。

日本国内で1年間に殺処分される犬猫は10万頭を超える(環境省平成26年度発表)。
これほど多くの犬や猫はなぜ殺処分されるのか。また、その現場に直面する人間は一体何を思うのか。
このドラマはある街の行政組織「動物愛護センター」を舞台に、
罪のない動物たちの命を救おうと踏み出した獣医たち職員の葛藤と再生を描いた物語だ。

動物を救うべく獣医になった者たちが助かる命を見過ごすという過酷な現実。
大きな葛藤の中で一歩ずつ再生への道を見いだしていく姿は
“私たち人間と動物とのあり方”について、いま一度考えるきっかけになり得るはずだ。


 

以前に2009年公開の殺処分される犬猫たちと人間をテーマにした「犬と猫と人間と」という飯田基晴監督のドキュメンタリー映画を観たことがありました。

観た後は、とても複雑な想いに満たされました。

軽々しく想いを述べるべきでないと想いながらも、2012年の当時付き合っていた彼氏がこの映画を観てくれて、観た後の感想は「なんで動物(犬猫)が好きなのに殺す仕事ができるんだろう。本当に殺したくないなら殺せないんじゃないのか。」っていう想いがわたしと彼の共感でした。

それほど、そこで働く人々の言葉と感情に混乱させられたのは事実です。

犬猫を殺処分することに耐えられない(耐え難いのに)のに、そこで働く必要とは、一体なんなのか?そこに疑問を持ってしまったからです。

事実、犬猫を殺処分することを誰もが拒否するならば、犬猫は”殺処分”されることは免れるのです。

しかし、では、他の方法ではどうでしょうか?

例えば犬猫はあらゆる動物実験に、日本では何の規制もなく実験に利用され続けています。


あなたは、動物実験についてどんなことを知っていますか?

動物実験施設について調べるのに、どこに聞けばいいですか?   

日本では、どこにどんな動物実験施設がどれだけの数あるか、誰も知りません。
      公的な届出制も登録制もないため、国も、地方自治体も、何も把握していません。
      近所に動物実験施設があったとしても、それを知る方法さえないのです。

        兵庫県では条例で動物実験施設を届出制にしています。

どんな種類の動物が何匹くらい実験に使われているかもわからないのですか?

日本では、実験に使われる動物の種類や数について、公的に調べる制度がありません。
      唯一、日本実験動物学会と日本実験動物協会(生産者団体)が数年に1度のアンケート調査で
     実験動物の飼養数や販売数を調べているだけです。
      最近では、日本実験動物学会が2009年6月1日時点での飼養数を調べた調査、日本実験
     動物協会が平成25 年度(2013年4 月1 日~2014年3 月31 日)の販売数を調べた調査があ
     ります。

                  

      実験動物の入手は、専門業者からの購入の他に、自家繁殖や他の研究機関で繁殖したものの
     購入・譲受があり、使用数は販売数を大きく上回ると推察されます。

      また、飼養数の調査では、回答率が低い上に、「研究機関や企業のすべてを対象とすることは
     機関名簿が不備であるため困難である」とされて
     いる(特に企業の対象機関数が少ない)ことなどから、実数はこれを大きく上回ると推察されま
     す。

      一方、世界では、公的機関が統計を取り公表しています。

 

 

 


公的機関は、どれほど正確な数を公開してくれているのでしょうか?

実数は、一体これの何倍ほどであるのでしょうか?

 

 

日本の犬猫の殺処分は平成元年から減少を辿っているようです。


 

【速報・平成28年度】犬猫殺処分数が8万→5万匹に減少 環境省「『殺処分ゼロ』という言葉に課題」

 

 


 

しかしこれは本当に犬猫が助けられている数が増えていることを表しているのでしょうか?

 

 

判決内容に怒りの声続々。動物愛護法の適正な運用を求める署名活動が活発化

 不要(邪魔)な犬猫を引き取る業者が増えて来ているとしたなら、意味がありません。

 

 

また、動物の油脂は(家畜に限らず)とても儲かるようです。

【閲覧注意】悲惨なレンダリング工場※キャットフードの中身を暴露!!


レンダリング・プラント(動物性脂肪精製工場)産業が何故そんなに儲かるのか、一つは畜産物の大量生産をする際に廃棄処分となる家畜(病気や感染病などで死んだ家畜)や利用できない部分を無料(ただ)で引き取り、それを再利用するための産業だからです。

廃棄するはずのものを焼却処分する為に必要な費用は莫大である為、それをどうにか利益にしようとしているわけです。

安楽死させる為の薬剤は高価である為に炭酸ガスでゆっくりと窒息死させてゆく方法で犬猫を殺処分している国が、果して処分後の莫大な焼却費用だけはしっかりと払い続けているのでしょうか?

言えるのはレンダリング・プラント工場をこの世からなくすには、人々が大量生産された畜産物を食べていては駄目だということです。

 


 

兵庫県動物管理事務所で殺処分した犬猫の死体は路盤材に再利用、炭酸ガス処分機を再稼働させてはいけない!!

兵庫県動物管理事務所で殺処分された犬、猫の遺体は焼却されたあと、業者に委託し特殊硬化剤でコンクリート固化され、路盤材などに製品化されているというのです。リサイクルしていることは県議会も知らなかったということです。

兵庫県動物管理事務所は、焼却された動物の遺灰を建築資材に再利用している事実はないと回答したそうです。

その後、県庁から回答があり、遺灰を建築資材に製品化し再利用していることを認めたということです。 平成21年から業者に委託しているそうです。

以前、徳島県で徳島市、鳴門市、佐那河内村が、路上などで死んだ犬猫の死がいの処理を、一般廃棄物処理の認可のない徳島市内の肉骨粉加工業者に委託していた事件が発覚しました。

肉骨粉加工業者は犬猫の死がいをリサイクルしてドッグフードや肥料として業者に売っているのです。

殺処分した動物や路上で死亡した動物は、骨までしゃぶりつくされなければならないのでしょうか?

殺処分された動物、死んだ動物に対しての慰霊の気持ちが全くない、死体のリサイクル。

横浜市でも以前は路盤材や建築材に再利用していたそうですが、問題になり中止されたそうです。

 


 

犬猫の殺処分にかかる費用は一頭辺り10万円以上であるそうです。

犬猫たちがどれほどに殺され、どれほど実際に助けられているか、そして殺処分後は一体どこへ行くのか?わたしたちはその真実を正確に知ることが出来ないのです。

それを知った上で、「この街の命に」という作品を冷静に、また何度も感動して鼻を噛みながら夢中になって観ていました。

この映画を通して感じたことは、「誰も好きで殺しているわけじゃない」という想いです。

 

そしてこの問題は、この世界で最も重要な問題にある「死刑問題」「堕胎問題」「肉食(畜産業の大量生産)問題」「魚介類の乱獲問題」「動物実験問題」「毛皮やウールなどの動物を苦しめて生産される製品の問題」すべてに共通する問題であることを感じずにはおれませんでした。

 

「誰かが遣らなくてはならない仕事なんだ」という台詞も映画の中に出て来ました。

確かにその通りです。犬猫を自分で殺すことが出来ない人が大勢いるから、人はセンターに犬猫を持ってくるのです。

自分では殺せませんが、あなた方なら、それがお仕事ですから殺せますよね。殺してもらえますよね。ということです。

これが特に堕胎と肉食というものに通じていると改めて感じました。

わたしは自分の子供を自分の手によって殺したくありませんが(殺せませんが)、あなたは他人ですし、それがあなたのお仕事ですからどうかお願いします。

わたしは自分の手を真っ赤な血に染めて家畜を殺すことなどしたくはありませんが、あなたはそれがお仕事ですから、と殺(屠畜)をがんばってください。あなたの御陰で肉が食べられることに感謝致します。

この皮肉な社会の在り方、関係性が、見事、政府も国民の多くも許す体制(法制)となって、何十年間と続いて来ているわけです。

わたしはその在り方が、如何におかしいものであったかをようやく2012年の2月に知ることとなりました。

何故、自分の遣りたくないことを、人(他者)に、それも相手から「どうかわたしにさせてください」と願い出ているわけでもない人に託さねばならないのでしょうか?

動物や人を殺すことを、自ら進んでする人など、ほとんどいません。

 

探してみてください。安い物件で、幾らでもペットを飼える物件というのはこの日本に存在しています。

「何々だから…」と言って飼ってきた犬猫を約20分間かけてゆっくりと窒息死させてゆくという拷問処刑のような死に方をさせる処分場へ送り込む必要が本当にありますか?

自分の子供なら出来ますか?犬猫という動物であるからそれができるということでしょうか?

 

わたしはみちたという10歳と5ヶ月ほど、ロップイヤーのうさぎを飼っていて、日々鬱症状が酷く、ろくに可愛がる余裕もありませんが、みちたがそこまでの苦しみに苛まれて死ななければならないのだとしたら、自分が死んでみちたが助かるほうがよっぽど良いと想います。

 

わたしたち人間はこの地球に何の為に生まれて来て、何の為に生きている(生かされている)のでしょうか?

人間以外の動物たちも何の為に、その生命を日々生きようとけなげに物を食べて、繁殖しようとしているのでしょうか。

殺処分される犬猫たち、食肉にされる家畜たち、乳や卵、毛皮や羽毛などを搾取される為だけに物のように扱われる家畜たち、次々と新しい化粧品、洗剤などを開発して企業が儲ける為、また人間が長生きする為の医療に役立てたりする為に動物実験にされる動物たちは、そのほとんどが、安楽死などではない地獄のような苦痛の中に死んで行かなければならないと、わたしは素直に映像を通して感じて来ました。

そんな苦しみの中、彼らが殺されて行かなければならないほど、彼らはわたしたちに酷いことをしてきたのでしょうか?

 

わたしが生きていく中で、一番の大きな疑問です。

 

何の為に、彼らがこれほどにまで苦しめられなければならないのだろうかと。

 

それでもわたしは決してこの世界の、人々の善意を諦めたりはしません。

 

日本でも、本当に孤立した孤独な人たちが増えて来ていると言われています。

わたしもその一人です。人間とはまともに関係を築けていけないので、動物が側に居てくれなければ独りきりで生活してゆくことに耐えられません。

動物の存在がどれほど救いとなっているか。

 

わたしはこのままだと、きっと動物たちとだけ暮らして死ぬでしょう。

今後、できれば鶏や、犬や猫も飼ってみたいと想うのですが、里親に譲り渡す規則として、個人でも行政でも独り暮らしの人間には里親として不安なので、里親として認めてもらえないことがよくあるようです。(本当に孤独である独り暮らしの人ほど、動物の支えが必要であるのに…)

そうすると仕方なくペットショップからわたしは動物を買ってでも飼うことになると想います。

 

わたしの信念は、きっとずっと揺るがないものです。

「動物は人を愛する(人から愛される)為に生まれて来て、人は動物を愛する(動物から愛される)為に生まれて来るのです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 追記:なんだか涙が溢れてきました。

自分がこういったテーマを感情を抑えて表現することが出来ないのは、それが本当にわたしにとっての毎日の苦しみであるからです。

抑えて静かに表現することが出来ないほど激しい感情に襲われ続けて生きているからです。

殺されてゆく人たち、胎児たちが、家畜たちが、犬猫たち、すべての動物たちが、自分自身のように感じてならないからです。

 よく考えるんです。わたしだって「あなたの左腕を落とすか動物(飼ってきたのではない動物)が殺されるか」、と言われどちらかしか選べないなら、自分は自分の左腕を選ぶだろう。

生命を尊ぶとは、自分の身よりも相手の生命を優先すること、その一つだけにあるわけじゃありません。

自分の左腕などが切り落とされるわけでもないのに、動物(または助けを請うたり、生きる権利の在る者)を殺し続けることに加担することを自ら選択しないこと。

 最低限の、生命を尊ぶとは、そういうことなのではないか。いきなり、

「わたしたちはどのような理由があろうと決して彼らを殺しません」ではなく、

「わたしたちは最低限、彼らを殺しません」という選択を、まずしてゆく必要があるのではないか。

肉や畜産物や魚介を食べる量を減らしてゆくこと、動物実験の行なわれた化粧品や洗剤を選ばないこと、毛皮やウールやダウンやアンゴラ、カシミア、フェザーなどの動物を搾取している商品を買わないことから少しずつ始めてゆく必要があるのではないでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 


このブログを読んでくださる方々へ2(管理人から)

2018-08-22 16:11:42 | 日記

先ほど、またも彼からの嫌がらせのコメントが届きました。

5時間前に「狂ってる」、1時間前に「重症だわ9563」。人に対して敬意が皆無であるあまりに短文なコメントだけでなく、相手を悩ませて苦しめる為の意味不明な言葉もつけてくることが非常に悪質であることが彼には本当に理解できないようです。

彼は本当にサイコパスで人の苦痛をなんとも感じられない人間のようです。

ここまで苦しみを訴え続けてお願いし続けても嫌がらせをやめてもらえなかったことは人生で初めての経験です。

今、コメントを「許可しない」設定に致しました。

わたしのブログを善意で読んで善意のコンタクトを送りたい人にとって大変御手数なことになってしまいましたが、これから当分の間、gooID取得者だけからのコメントを受け付ける設定に致します。

彼からそれで来た場合はすぐにブロックすることに致します。

今朝も起きたときから胸が苦しい動悸と不整脈が出ています。

何卒、御理解賜りますようお願い申し上げます。

 

管理人 雨音(あまね)

 

 

 

ps:ナオさんへ

 

こんなことになってしまい、本当にごめんなさい。

わたしのブログへのコメントはgooIDを所得してからか、メッセージフォームからできればメールアドレスを付けてメッセージを送って来てください。(アドレスを付けないと彼がナオさんを装って送ってくる可能性が在る為)

この記事と、ナオさんから返信を待つ記事だけ「gooユーザーのみ許可」にしておきます。

これから書く記事はすべてをその設定で書きます。

ナオさんがどうか御元気で暮らして行けるよう祈っております。

 

あまね

 

 

 

 

追記:誠に申し訳ございませんが、暫くの間、コメント欄を閉鎖することに致しました。

彼が反省するまでの期間、その時間を見計らって、またいつの日かコメント欄を復活させようと想います。


このブログを読んでくださる方々へ(管理人から)

2018-08-21 21:01:13 | 日記

実は、日本では7.5分に1人が心臓突然死で亡くなっています。その原因の大半は「致死性不整脈」です

 

また昨日からずっと目が覚めたときから動悸と息苦しいほどの不整脈が一日中続いて止みません。

このブログに執拗な嫌がらせのコメントをしてくる人物は二人(彼は自分ではない)であると複数であることを装った同一犯であると確信しています。

わたしは何度も彼に自分は心臓が弱くてストレスから来る動悸と不整脈によって突然死する可能性が高いから本当にもうコメントを書き込むことはやめてください。とお願いして来ましたが、彼はどうやら人が自分の嫌がらせによって死のうがなんとも想わないサイコパスで人格障害者であるようで、こちらの言うことに何一つ聴く耳を持とうともしません。

わたしはこのままだと本当に致死性不整脈、心臓発作などで突然死する危険性があります。わたしがこの部屋で孤独に突然死すれば誰にも数ヶ月気付かれずに飼っているみちた(うさぎ10歳5ヶ月)の命にも関わる問題です。

今でもずっとずっと心臓がバクバクバクバクして異常な鼓動を打ち続けています。

もし、次に、またも嫌がらせと感じるコメントを彼がしてきた場合は、一般(全体)から受け付けるコメント欄を閉鎖することに致します。

gooブログはgooIDの登録者だけをブロックすることが可能なようです。

また記事ごとに、コメントの設定を「gooユーザーのみ許可」とすることができます。

善意からコメントを下さる方には真に御手数で申し訳ないのですが、わたしへのアクセスはgooIDを取得してコメントするか、もしくはメールでメッセージを(できればアドレスをつけて)送ってきてください。

もしメールでも嫌がらせがあるようなら仕方なくメール機能も閉鎖することにします。

最低半年から、一年、その設定を続けて、それで彼がやっと諦めてくれるか、様子を観ようと想います。

 

ナオさんに気軽にコメントを入れて貰えることが有り難かったのですが、今回、動悸が前以上に酷いような気がして、かなり息苦しくて自分でも怖いです。

どうか御協力をお願い致します。

次にまた、彼が嫌がらせと取れる善意を感じないコメントをしてきた場合、彼はわたしだけでなく、わたしのブログにコメントを書きたい人全員に迷惑行為をしたい人間であることは確かです。

今までは、話し合えればなんとか最低限、わたしの苦しみを理解して貰えると信じて長文でずっとずっと訴えて来ましたが、彼は人の真剣に書いた長文を読む気もないらしく、ここで限界であるようです。彼は正常な人間では在りません。

このブログを読んでくださる方々へ、何卒御理解賜りますよう、お願い申し上げます。(御了承の程を宜しくお願い致します。)

 

 

天音(あまね)

 

 

追記:誠に申し訳ございませんが、暫くの間、コメント欄を閉鎖することに致しました。

彼が反省するまでの期間、その時間を見計らって、またいつの日かコメント欄を復活させようと想います。


SAY NAR 蒼

2018-08-21 10:37:10 | 日記

俺の愛はお前に届かないことを知っていた。
なぜか、なぜか、なぜか、俺はわかっていた。
俺はお前の闇を愛していたはずなのに。
なのに、なのに、なのに、お前は俺から去っていった。
この胸の奥に、髑髏が住んでるみたいだ。
俺はもう何にも感動できない人間になってしまった。
嗚呼、お前が忘れられない。
お前のエクスタシーが俺をあの場所へと誘う。
エスがタクシーを運転する。
エスがタクシーを運転してお前のいるところへ。
お前の愛によって毒殺されたかった。
お前の愛はpoison。
お前の愛は食虫花。
お前の死はmineral。
お前の死は真空性。
俺はお前の死体を育てよう。
俺に愛されないと死んだお前を育てる。
お前の死体を土と肥料にし、俺は育てよう。
花を。
花を。
花を。
咲く花を。
咲く花を。
咲く花を。

 


一人のビジュアル系バンドのボーカルのHYDE似の男が、そうギター片手に熱唱していた。
真夜中に。
誰かの家の窓の前で。
ぼくはそれを通りがかったときに、偶然見掛けたんだ。
なぜだかはわからないけれど、とても胸の底が熱くなって、感動の涙が気付くとぼくの頬を濡らしていたよ。
その歌は、如何にもビジュアル系バンドの歌って感じで、語尾をセクシーに伸ばすような歌い方だったし美化されたような歌だと想ったけれど、人の心髄を激しく震わせる何かがあった。

ぼくはたった一人の彼のコンサートを斜め45℃後ろの方からずっと観賞していた。
すると突然、そこの家のドアを開けて、禿げ上がった白の薄い肌着とステテコ姿の肥えたおっさんが物凄い形相をして飛び出てきて、「どらぁ!じゃかあしい!ええ加減にせえや、おんどれ!殺すど!」と激憤して叫びながら男の襟首を思いきり掴んで後ろに引き摺った。
驚いたのが、彼はそれでも熱唱をやめなかったことだ。
熱く熱唱しながらおっさんに後ろに引き摺られてそしてサイレンを鳴らしながら到着したパトカーの中から出てきた三人の体格の良い警官にパトカーの中へと彼は熱唱しながら連れ込まれ、そして彼の姿は見えなくなった。

印象的だったのは、その肥った禿のおっさんが、明らかにバカにするような口調で「何がビジュアル系やっ」と吐き捨てるように言って家の中に入っていったことである。
ぼくはあのおっさんは、多分ビジュアル系バンドの人に、とんでもない恨みがあるんやろなと想った。

あとでこの事件の真相をぼくは知ることができた。
彼はビジュアル系バンドのボーカルとしてそこそこ人気のあるアーティストだったのだが、二十年近く愛し続けてきた女が、彼からの愛を信じなくて、他の男との間に子供を作って死んだ。
しかし彼はそれを信じようとしなかった。
その子供はその娘は、実は自分の娘ではないのかと想ったからである。
いや、彼はそれを信じた。
俺に子供がいるとわかったファンは、離れていくかもしれないと懸念した彼女が、そんな嘘を言って俺を護ろうとしたのだと。
彼は彼女の愛を信じ続けた。
現に、その幼い娘は、彼女の死んだあと彼女の父親しか引き取り手がないというではないか。
彼は何度と彼女の父親に自分が実は彼女の娘の父親なのだと確信の内に訴え続けた。
しかし父親はそれを信じようとはせず、しまいにこんなことを言い放った。
「にいちゃん、百歩譲って、あんたさんがあの子のほんまの父親やったとしようやないか。それでもなあ、わしは手渡すことはできひんわ。わしはビジュアル系バンドを遣っている男にあの子を渡すことはできひんな。男が女みたいな格好して、女みたいな化粧して、女みたいな歌い方して、あんたさんはそれでも男か。女みたいに華奢で白い肌して、そんなあんたさんにあの子を護れるはずがあらひんわ。常識を考えてみい、常識を。わしは四十年漁師を遣ってきたが、周りの男全員、あんたさんの百倍は男らしい男やった。男やったら、もっと男らしく生きたらどうなんや。なんやその指輪とイヤリングと首輪は。え?イヤリングやのうてピ、ピアスぅ?知るかあっ。なもん、どうでもええわ。何を装飾品をちゃらちゃらちゃらちゃら着けてるんや、男がみっともない。わしの前にようそんなふざけた格好で来たな、ワレ。何やその目は。何メンチ切ってるんや。しばこか?殴られたい?ワレみたいな人間に絶対に可愛い孫娘を遣れるかぁっ。あほんだら。はよ去んで、女の腐ったような面を二度と見せんでくれ。」

その娘は今年5歳になったという。
彼は自分の娘と信ずる少女に、自分の亡き彼女への愛の歌を聴かせたかったのである。
なんという感動的な話だろう。
この話を知れば、ビジュアル系バンドの書いた歌を馬鹿にする人間など、あの腐ったような性魂のおっさんくらいだろう。

そう言えば 、ぼくは好きなビジュアル系バンドの曲があった。
バンド名も曲名もわからない。
もう二十年前くらいかも知れないが、テレビで何度かそのプロモーションビデオが流れていて、とても幻想的な良い曲だと想った。
確か歌詞が、こういう感じの歌詞だった。

『花は 何処へ行ったの?
美しい(名も無き)娘が 摘んでいた。』

草原の風景のなかに佇む線の細い美しい女性的な青年が歌っている映像だった。(この曲の記憶の真相は定かではないが、ピート・シンガーの「花はどこへ行った」のカバーをしたmodern greyというバンドの「花は何処へ行った」をまたまたカバーした曲だったのかもしれない…音楽はそのままであるような記憶だが、PVとテンポが全然違う。もっと静かで暗い曲だった。それとも自分の見た夢の記憶であったような気がしている…)

花は何処へ行った

懐かしいな。94,95年くらいに聴いていたとしてぼくが13,14歳の頃だ。modern greyの曲は当時よくテレビやラジオで流れていた。
 
ぼくはまた想いだしたのだが、多分2000年か2001年の頃、LUNA SEAが解散したあとにそのギタリストであったINORANという人に惹かれて、彼の写真やインタビューが載っている雑誌を買ってうっとりと眺めていたことがあった。
彼はビジュアル系バンドの中で一番その存在感が、雰囲気がぼくを魅了した。
彼も本当に女性的な繊細さ、いや女性以上に繊細で儚げな美しさのある男性だ。
彼のソロはビジュアル系の音楽では確かなかったと感じた。
GLAYのギタリストのJIROも、radioでレディオヘッドを流したりしていたし、彼らが好きな曲はビジュアル系ではないようだ。

ぼくはこの前書いた記事がビジュアル系みたいだと馬鹿にされたが、一体あの人間はビジュアル系の音楽をどこまで知っているのだろう?
ぼくのblogもほんの少し読んだだけで馬鹿にしてくるような人間だったから、ビジュアル系の音楽もほんの少し聴いただけで判断しているのではないか。

そんな人間に、ぼくは何の魅力も感じない。
そんな人間は何一つ、成功できないだろう。

馬鹿にしたり差別するのなら、その人間をどこまでも知ろうとしなくちゃならない。

何故ならそこにある嫌悪感、差別意識とは、同属嫌悪であるからね。

ぼくはビジュアル系バンド以上のものを表現できているなんて口が避けても言わないし言う必要もない。
でもあの人間は、自分が彼らやぼく以上の人生を生きてそれ以上の表現ができているとでも想っているのだろう。

それが自分自身の価値を下げ続けることだとわかっているのだろうか?

ぼくは自分の表現を読んだ人から涙が溢れたと感動の感想をもらったことが何度かある。
あの人間は、自分にしかできない仕事によって誰かをそんな風に感動させられたことがあるのだろうか。

もしあるのなら、何故それでも他者を馬鹿にし続けるのだろう?

どちらにしろああいう人間は自分にしかできないことを一生懸命に遣り続けるなら、きっと前進できるだろう。

一生懸命に頑張っている人間を一生懸命に頑張っていない人間が馬鹿にする。と中島みゆきも歌っていたではないか。(正しくは「闘う君の唄を、闘わない奴等が笑うだろう。」である。)

あいつはきっと自分自身と闘い続けて生きていないから人のことを馬鹿にしてばっかりいるのだろう。

俺はどんなに人から俺の表現を馬鹿にされようとも、俺はたった一人で、俺にしかできない表現を頑張って死ぬまで遣り続けてゆく。

お前に馬鹿にされる筋合いなんかないよ。虚無。

お前もお前にしかできないことを死ぬ気で頑張ってくれ。
もうお前には、返信する気も完全に失せたからね。

俺はお前に何を言われようとも、決して倒れない。
神が俺を、支えてくださるから。

 

 

 

 

INORAN - Gravity ( Last Night Live DVD )

 

 この曲も俺は好きだった。実に懐かしい。こんな素晴らしい曲をあいつはきっと馬鹿にするんだろう。

作詞作曲編曲:LUNA SEA

  1. gravity
    INORAN原曲[1]。 映画アナザヘヴン主題歌に抜擢され、同時期にテレビ朝日系で放送されたドラマアナザヘヴン~eclipse~』主題歌にもなった。
    詞はINORANが書いたものにRYUICHIが補作したという。
    このシングル発売前の「START UP GIG 2000」(2000年1月1日、Zepp Tokyo)で新曲として初披露された。
    終幕後、INORANがこの曲を自身のソロライブでセルフカバーしたことがあり、その模様はINORANのライブビデオ/DVD「THE LAST NIGHT」で見る事ができる。INORANは「春に発売されたが、どっちかというと秋っぽい曲」と語っている。

 

 

 


Thatthere

2018-08-20 18:26:27 | 
まるで隠しドアのようなんだ。
そこにあるのは。
その部屋にはただひとつ、言葉がある。
でもだれもきづかない。
その言葉の意味と、その言葉を構成している言葉が、全く違うから。
呪文を唱えるようにぼくらはその言葉を発音する。
でも決してその言葉は開かない。
その言葉の意味を知らないから。
それを認識することができない。
だれもその言葉に入ることはできない。
だれも見付けることが叶わない。
でも何故かわかっている。
その言葉は此処に存在している。
だからぼくらは此処に存在している。
此処は中身を知ることのできないだれかのプレゼントの中。
ぼくらはずっと此処で息を潜めている。
だれも開けない箱の中で。
だれへ贈られて此処にあるかもわからない。
だれも開けられないと信じながら、だれかがいつか開けると信じて。
だれもぼくらを見付けられない。
此処にはなにも入っていないのと同じ。
ぼくらはあるはずなのに、ないのと同じ。
ずっとずっと此処で、息を潜めている。
不安に安らかに、主の幻を見る。
もし本当にぼくらを見付けることができるなら。
もし本当にぼくらを開けることが叶うなら。
ぼくらはぼくらをやっと知ることができるのだろうか?
ぼくらはずっと此処で、ぼくらはずっと此処にはぼくらがいることを信じてる。
でもそれが一体何を意味しているのかわからない。
気付くとぼくらは此処にいる。
無数にいても、まるで独りだ。
ぼくのお腹の中で、ぼくらは息を潜めている。
ぼくらは増えることも減ることもない。
主はぼくらにぼくらをプレゼントした。
ぼくらを構成しているものとぼくらの意味は全く違う。
ぼくらはまだ生まれる前。
主はぼくのお腹を優しくさすって言う。
あなたはあなたを知ることはできません。
それがあなたの永遠の苦しみと、永遠の喜びとなるように。

















懺悔室の明り

2018-08-18 19:37:44 | 物語(小説)

性的虐待を、あなたから受けたかった。
神父様、ぼくは誰からも愛されてはいません。
あなたに懺悔致します。
ぼくはこの世界でたった一人、誰からも愛されていないのです。
だからあなたから性的虐待を受けた方がよっぽど幸福だった。

愛されていないのに、なぜ愛されていないことを知ることができるのですか。
例えばあなたは何故、存在しているのですか。
誰からも愛されていないのに、何故あなたが存在しているのでしょう。
何の為に、ずっとあなたが苦しんで来なければならなかったのでしょうか。
あなたは誰にも愛されてもいないのに、生きて苦しみ続ける資格はあると想っているのですか。
それを傲慢と想わないのは何故ですか。
あなたは自分の力で存在しているとでも想っているのですか。
あなたにはそんな奇跡の力があると?
ならばあなたは神と同等の力を備えているということです。
神と同等のあなたが、愛されていないと苦しんでいるに過ぎません。
神と同等のあなたが、すべては可能であることを忘却しているに過ぎません。
では想いだすだけでいいのです。
あなたは神と同等の存在であるということを。
あなたに不可能なことはありません。
あなたは自分の罪の為に、苦しみ続けているのではないのです。
あなたはそうしてたった独り、誰からも愛されずに苦しみ続けることこそが、あなたが愛されている証であることをあなたは知っているからです。
何れ程あなたを愛していると言おうとも、あなたは聴く耳を持たないのです。
あなたにすべての愛を、聴く耳は在りません。
あなたは自ら、耳を喪ったからです。
まるでゴッホのように、自分の手で自分の耳を切り落としたからです。
そしてあなたは嘆き続けてきたのです。
誰もいないと。あなたを愛する者は誰一人、存在しないと。
あなたはすべての愛を否定し続けて来た。
あなたはすべての愛を、詰まらないものだと見棄てて来た。
あなたは死だけを、信じてきた。
あなたは死だけが、愛であることを信じてきた。
あなたは死を感じるもの以外、すべてが退屈なのです。
だからわたしにあなたは要求してきました。
ほんの幼い頃から。
あなたは死を、わたしに要求してきました。
わたしはそれに、十分応えたと、想っていました。
でもあなたは、まだ足りないとせがむのです。
あなたが死を感じることに十分でなかったことを、わたしに責め続けるのです。
わたしがこれ以上あなたを苦しめることにわたしが堪えられなかったことを、あなたは咎めるのです。
わたしのあなたへの愛が足りないことを、蔑みながら侮辱するのです。
もともとわたしは存在しないということを、あなたは悲しみ続けるのです。
あなたは自ら、限界を設けました。
あなたは全てに限界を設けました。
わたしはあなたの求めるがまま、あなたを虐げて来ました。
あなたの求めるあなたの厭がるすべてをあなたに与えてきました。
あなたは倒れなかった。わたしの虐待に、あなたはずっと堪えて生きてきたのです。
しかしわたしの虐待は、あなたの最も大きな生きる喜びとなるのです。
或夜、あなたはいつものようにわたしのところへ遣ってきて、わたしを誘惑します。
わたしができうる限りに、あなたをどこまでも虐げることを。
でもわたしは、或夜、あなたをただ強く抱擁したのです。
そして涙を流し、あなたに誓います。
もう二度と、あなたを苦しめることはしないと。
あなたは少しあと、わたしから去りました。
人々はあなたが死んでしまったと言っていますが、わたしは信じていません。
何故なら今夜のように、あなたは何度とわたしに懺悔をしに、こうしてこの教会の懺悔室にひっそりと、月夜に照らされて其処へ座ってわたしを待っているからです。
あなたは悲しい目でわたしを咎め、わたしは早くあなたのところへ行きたいのですが、あなたはまだわたしの愛を否認している為、それが叶わないのです。

神父がそう言い放った瞬間、彼の姿は見えなくなり、向かいの小さな窓から懺悔室の腰掛けを、月明りが反射していた。

















ѦとСноw Wхите 第20話〈Little Kids〉

2018-08-04 20:07:02 | 物語(小説)

上でジンを飲む子供たち

前庭の芝生

子供たちは歩いている男を見る

泥道

この子供たちは、空を見ると、彼らは彼のことを想う

炎に身を包んだ

子供たちはゆっくりと忍び寄り、後ろを歩く

その年老いた男

 

まだ年を重ねてゆく
まだ年を重ねてゆく
まだ年を重ねてゆく
まだ年を重ねてゆく

 


 

一人の中学生くらいの少年が彼を追った。

彼の小屋の前まで後を着け、老人が小屋の中へ入るのを見つめている。

老人は一人掛けのカウチにぐったりと腰を凭せ掛け、小さなRadioをONにした。

網目状のスピーカーから60年代のメランコリックな音楽が流れてくる。

老人は小さなコーヒーテーブルの上に置いてある煙草を取って燐寸で火を点け、美味しそうに吸う。

少年はじっとその姿を見つめている。

そして手に持っている金属製のガソリン缶の蓋を開け腰を低めて小屋の周りに満遍なく振り掛けてゆく。

後もう少し、後もう少し、後もう少しだ。

すべてのガソリンを振り撒いた。

額から垂れ続ける汗を右の甲で拭い、爽やかな笑みを浮かべて藍色のジーンズの右ポケットに手を突っ込み、燐寸箱を取り出す。

緑の芝生を踏み潰し、少し離れたところから小屋目掛けて火を点けた燐寸を投げる。

火は一瞬で一気に燃え上がり、窓の向こうに居た老人の姿ももう見えない。

少年は歓喜に打ち震え叫ぶ。

「Strike!!」

 

 

 

 

身寄りはだれ一人、居なかったらしい。

老人の灰すら、だれも関心がなかった。

燃え尽きた後の真っ黒な小屋の残灰と残骸を片付ける者も一人もいなかった。

何かの伝染病でも持ってたら、きっと感染してしまう。

人々はそこへ近付くこともなかった。

犯人が一体だれかなんて、だれも想わなかった。

 

 

 

ぼく以外は。

 

 

 

ぼくは少ない目撃情報を頼りに犯人の少年の住む家を探し当てた。

週に何日か、近くのディスカウントストアでジンと適当な食品を少年はいつも買って帰る。

ぼくは少年の後を着け、少年の住む小さな小屋の前まで来た。

少年はドアを開けて中に入る。

時間は夕方、突っ立ってるだけで汗がたらたらと引切り無しに垂れてくる。

ぼくは少年の小屋のチャイムを鳴らした。

手には手作りのマクロビアップルパイを持って。

少年は訝しげにそっとドアを開けてドアの隙間からこちらを覗きこんだ。

ぼくは最高の笑顔で言った。

「やあ、こんにちは。はじめまして。ぼくは昨日この近くに引っ越してきた人間だよ。これ、さっき作ったんだ。マクロビアップルパイ。良かったら一緒に食べながら、この町のことを教えてもらえたらと想って。」

少年はじっとぼくを見つめて、何か深く考え込んでいる様子だった。

そしてあっさりと、ぼくを家の中に上げた。

複雑そうな顔に笑みを浮かべ、こんなことを言いながら。

「はじめまして。マクロビアップルパイですか。すごく大好きです。外すごく暑いですね。狭いうちですが、良ければどうぞ。涼んで行ってください。」

キッチンとバスルームとリビング兼ベッドルーム合わせて8畳ほどの狭い部屋のなかの窓際に二人用のダイニングテーブル。此処で一人で暮らしているのだろうか。

彼にアップルパイを渡し、その椅子に座って窓から外を眺めた。

此処から彼の小屋まで、そう遠くない。

彼は紅茶と切り分けたアップルパイを皿に二つ入れたものをトレイに載せて持ってきた。

彼と向かい合ってアップルパイを食べる。

「この町には何にもないけれど、何にもないからわたしがこの町に居られるのかも知れません。」

ぼくは彼に年を尋ねた。

すると「14歳です。」と答えが返って来た。

銀縁眼鏡を掛けていて、とても賢そうな顔立ちの色の白くて痩せ細った少年だ。

顎の骨格がすごく細いのが特徴的だ。動物で例えるなら、蛇と鹿のようだ。

ぼくは彼にこう返した。

「へえ、まだ14歳なのに大人びているね。14歳っていうと、ぼくがちょうど処女を喪ったのが22歳のときだから、もしその頃に妊娠してたら、君と同い年の子供が居るんだね。」

彼は尋ねた。

「結婚は、されていないのですか?」

ぼくはこくんと頷く。

「貴女はクリスチャンではないのですか?」

彼が少し責めるようにそう尋ねたのでぼくは吃驚した。

何故なら彼はクリスチャンだということを意味していたからだ。

「ぼくの母親は忠実なクリスチャンだったよ。でもぼくは母の記憶がなくて、ぼくは違う。」

彼は少し咎めるような顔でぼくの顔を見た。

「この町にはクリスチャンがそんなに多いの?」

そう訊ねると彼は首を横に振って実に興味がないという顔をして言った。

「さあ、全く知りません。」

「この町に住んでどれくらいなの?」

そう訊ねると、彼は困った顔をして、紅茶を飲んで咳払いをした。

そして何を想ったのか、こんなことを話し始めた。

時間はまだ午後5時46分。外は明るい。

「モロク(Moloch)、モレク(Molech)神と言われている神を知っていますか?」

ぼくは何故そんな話を突然し始めたのだろうと訝りながら答えた。

「牡牛の頭の像の絵が有名な聖書にも記述されている子供の生贄を求める恐ろしい神のことだね。」

彼は深く頷いて言った。

「そうです。聖書が異教の神として憎悪し続けた神です。彼らは巨大なモレクの像を造り、モレク像の腹部の炉の穴は七つの戸棚に分けられていました。

その七つの棚は一つ目に小麦粉、二つ目に雉鳩、三つ目に牝羊、四つ目に牝山羊、五つ目に子牛、六つ目に牡牛の順に入れられ、最後の七つ目の棚には人間の新生児や子供が入れられ、その釜戸に一斉に火を点け、生きたままの状態で焼き殺していたのです。

その儀式には性的な儀式も加えられていたと言われています。後にその儀式が行なわれていたゲヘナという場所は処刑された罪人を焼く為の谷となり、その名を取って、最終の審判で神に逆らう者は皆ゲヘナへ投げ込まれると預言されています。

しかしこの話が、本当に事実であったかどうかはわかりません。その場所で見つかっている無数の新生児から幼児の遺骨が、生前に焼かれたのか死後に焼かれたのか判明できないからです。もしかしたら人々は、何らかの理由によって邪魔となった赤子や幼児を、生贄の儀式の為だと言って殺し、供養していたとも考えられます。もしそうだとしたら、非常に好都合で利便性の優れた堕胎を正当化する方法としても、信仰が行なわれていたと考えられます。

『自分の子どもをモロクに献げる者は、だれでも必ず殺されなければならない。』

旧約聖書のレビ記の聖句です。我が子を殺すこと、それを聖書の神はどのような理由があろうと赦しておられません。婚前交渉は堕胎に繋がり、堕胎はそれに関わる者の処刑に関わっていることになります。」

少年が話し終わり、奇妙な沈黙が部屋の空間に流れた。

一体この少年は何故こんな話をぼくにしたのだろう?

少年はふうと深く息を吸って吐いて、また口を開いた。

「貴女はその前に、一度受胎を経験しています。貴女は処女のままで受胎し、貴女の御父上が亡くなった、その4日目の晩に、何かを焼きませんでしたか…?」

ぼくは少年が一体なんの話をしているのかわからないままその日の夜のことを想いだしていた。

ぼくのお父さんが2003年の12月30日の夕方に此の世を去り、確かその4日後が、火葬の日だった。

絶望だけが、ぼくを全支配していた。その晩、ぼくは何を想ったのか、突然一人でジンジャーブレッドマンを生地から作り始めた。

大きさは十センチほどの、ホワイトチョコでコーティングして目と口と胸にはボタンを三つ描いたスノーマンみたいな可愛いホワイトジンジャーブレッドマンが出来上がった。

そしてぼくは突然、また涙が溢れてきて、一滴の涙がそのホワイトジンジャーブレッドマンの胸の位置に落ちた。

ぼくは一時間近く泣き続けた後、それを予熱したオーブンの中に入れて、焼き始めた。

何十分かした頃、オーブンの中で、何かが叫ぶ声がして、ぼくは飛び上がってびっくりした。

『熱い!!熱い!!熱い!!』

そう中で叫んでいると想った瞬間、

『熱い!!熱い!!熱い!!』と叫びながらなんと、ホワイトジンジャーブレッドマンが、オーブンの戸を自力で開けて中から慌てて飛び出してきたのだ。

そしてあまりに驚いたのか、彼はそのまま、外へ走って飛び出して行ってしまった。

残されたぼくは呆気に取られたまま、もしかして夢でも見ていたのだろうか?と想った。

しかしせっかく作ったホワイトジンジャーブレッドマンの姿は消えてしまっているし、一体なんだったのだろう?

 

その日、ぼくは夜まで彼と居た。

そして彼はにっこりと笑ってこう言ったのだった。

「ぼくの愛するママ。37歳のお誕生日おめでとう。」

ぼくは、その言葉がとても、嬉しかった。

何故だか……

その晩、ぼくは我が子として、彼と共に眠った。

すると夜明け前、突然、彼が叫び声を上げて起きた。

『熱い!!熱い!!熱い!!熱い!!』

彼は今でもこうして、眠りに就くといつも魘されて飛び起きてしまうのだろう。

ぼくは彼の頭を優しく撫でつけ、訊ねた。

「何故あの老人の小屋に、火を点けたの…?」

彼は静かな表情で寂しそうに微笑んで言った。

「だってママがいなくなった後も、わたしは年を重ねてゆく。まだ、さらに年を重ねる為に。あの老人は、実はわたしの未来の姿だったのです。貴女がいなくなった後にも、何故わたしが生きているのか、理解し難いからです。」

 

 

ぼくは次の朝、マインドマップをパソコンの画面上に作った。

それは、こういうものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Deerhunter - Little Kids

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ぼくとみちた

2018-08-02 20:50:31 | 自画像

2015年に撮ったみちたの写真などがOneDriveに入っていたのを久しぶりに見つけたので消えてしまわないうちに載せておこうと想います。

結構サークルのマットとか汚くて見苦しいですが…今は安いカーペットを敷いていて汚れたら取り替えるようにしています。

みちた(10歳5ヶ月弱)は今もなんとか元気ですが、スナッフルの症状で時たま苦しそうにくしゃみを連発していて、毛並みも凄く悪くて可哀想です。

鬱がひどくてまともにみちたの世話もしてやれません。

わたしをこれ以上、厭味な嫌がらせコメントで苦しめないでください。(本人がどう否定しようと、わたしがこれほど苦しめられているのですから、それは嫌がらせ以外のなにものでもありません。)

わたしをこれ以上精神不安定にさせることは、みちたの命にも関わることです。

人の命を、動物の命を、もっと尊重してください。

 

 

 

 

 

 

2015/04/22 17:47

 

 

 

 

2015/05/12 18:50

 

 

2015/05/16 14:14 あおむしたん

 

2015/05/16 14:17

 

2015/05/16 14:18

 

2015/05/16 14:19

 

2015/05/16 14:21

 

2015/05/16 14:22

 

2015/05/16 14:23

 

14:24

 

14:25

 

14:26

 

05/25 10:57 さっきのあおむしたんが孵ったモンシロチョウ 初めて蝶を無事に羽化させられた。

 

06/01 23:44

 

06/22 17:12 まだ大分物が少なくて整頓されているぼくの部屋。

 

17:13 デスクの奥にみちたのサークル(一畳ほど)。カップが何故三つも並んでるのかというと一つの飲み物を飲み終わる前に他の飲み物をいつも飲んでしまうからだ…

 

17:26 リラックマのぬいぐるみはヤスくん(棚の下)とたかしさん(棚の上)に買ってもらったやつだ。棚の上のクマは電池で動くやつだが動かしたことはない。

 

17:28

 

17:29

 

17:46 これくらいまで綺麗に戻せないかな…

 

手作りスーパードリンク。

 

2015年5月6日の苦しんでるときのぼくの顔

 

ぼくの部屋のパノラマ撮影(5月22日)