あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

Gondola

2017-07-29 08:58:43 | 
彼と一緒に巨大な大観覧車の非常階段を雨が降るなか登っている。

これは壮大なゲームで、僕らは眠ることなく早朝から登ることに決めたんだ。

鉄の階段は雨で濡れているから滑らないように気をつけなくちゃ。

それにしてもなんて大きな観覧車だろう?
大きすぎて全体像さえ見えない。

チケットはもう買ってある。
僕らは一番乗りだった。

ここまで車で来たっけ。
周りは海か広い湖だよ。
透明に近い色。
空も白くて遠いようで近いね。

透明な秩序の世界だよ。
でも何を失ったんだろう?

預言を失ったんだ。

そうだ僕ら、預言を食べちゃったんだ。
夢を食べるバクみたいにね。

何もここから消えることなんてないさ。
ここから僕らが消えてしまうことも?

そうだよ、だって、ここはスタート地点。
始めるために今ここに僕らいるはずなんだ。

でもなんのゲームか、まだ知らないだけ。
彼らは僕らを観てる。
試されているんだ。

僕らが何を選んでどう進むのか。
どのドアを開けてどこへ逃げるのか。

この観覧車だって、僕らがここに来るまではなかったはずなんだ。

何も知らされていないゲームを僕ら始めようとしたんだから。
あの角を右に曲がっただけで全然違う世界があった。

外に非常口は用意されていた。
振り向いてご覧。
誰もいないはずだよ。

振り向くと、きっと目眩を起こして落下するよ!
でも、霧が深くて、前もよく見えないな。

もうすぐだよ。
観覧車は今も回り続けてる。
誰かを心配させ続けるんだ。

気づかないうちに、もういるよ。
誰かを不安にさせ続けるんだ。
誰かを憂鬱にさせ続けるんだ。
誰かを孤独にさせ続けるんだ。

もうゲームは始まってしまったからね。
僕らは当分、観覧車のなかで暮らすんだ。

一人で乗り込まなくちゃいけないって誰が決めたの?
さあ、ガラスの向こうにいる人たちじゃないかな。

ほら、僕らに指図している。
でも二人で乗っている人もいるし、三人で乗っている人もいるよ。
そう見えるだけだよ、多分彼らは一人なんだ。

大丈夫。できるだけ近くに乗り込めるようにするから。
互いに見える席に座るようにするよ。
幾つも層になったガラスが僕らを隔てているだけ。

でも隣の席のチケットは売り切れてた。
誰が買ったんだろう。

やっと着いた。
ここで待っていたらやってくるよ。
乗り込むときは足下に気をつけるんだよ。

傘は?この赤い傘はどうするの?
もう必要ないから、消えてしまうと想うよ。

やって来た!
さあ早く乗って。
急いで乗り込む。
ドアが閉まる。
ガラスのドア。

赤い傘、赤い傘だけ見える。
傘を飛ばした。
微笑んでる。睫毛が水滴を弾く。
微笑みながら、透明な海に溶けて行った。

一体、彼は誰だったんだろう?
ガラスの窓の外、たぶんぜんぶ揃ってる。

けれど不確かだ。
全部がここにあるはずなのに。
不鮮明だ。
まだ隣には誰も乗ってこない。
待ち望んでる!
知っている。
誰かがやって来ることを。
















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