徒然なるまままに

展覧会の感想や旅先のことを書いてます。

書の至宝-日本と中国

2006-01-14 | 美術
書の至宝-日本と中国
王羲之、欧陽詢、蘇軾、空海、小野道風、本阿弥光悦、良寛―
名筆、時空を超えて一堂に。
東京国立博物館
2006年1月11日(水)~2月19日(日)

巡回予定
中日書法名品展(仮称)
上海博物館 2006年3月11日(土)~4月23日(日)

展覧会の構成

 1.文字の始まり~字体の変遷~
 2.王羲之とその周辺
 3.楷書表現の完成~中国・唐時代~
 4.主観主義の確立~中国・宋元時代~
 5.中国書法の受容~飛鳥時代~
 6.奈良時代の写経と三筆~奈良時代から平安時代初期~
 7.三跡と和様の成立~平安時代中期~
 8.仮名の美~平安時代中期・後期~
 9.伝統の和様と個性の墨跡~鎌倉時代から室町時代~
10.さまざまな到達点~中国・明清時代~
11.寛永の三筆と唐様~安土桃山・江戸時代~

 前上海博物館副館長の汪慶正氏が「夢にまで見た日本所在の中国古代重要書跡」を集めた展覧会が開催されている。氏によれば、中国古代書跡の中で、きわめて重要な資料の一部が現在の日本の公私の機関に所属されている。これらの書作品や碑帖の数々を中国に里帰りさせて、中国の人々に実物を見せたい、こんな氏の思いから構想されたのが今回の展覧会のようである。残念ながら、汪氏は2005年10月に逝去された。
 また、この展覧会は、古典性・系統性、学術性・鑑賞性をともに満足させる展覧会だと上海博物館館長の陳燮君氏も挨拶をかいている。

 というわけで、この展覧会の目玉は、やはり第一室。中国古代重要書跡がずらっと並ぶ。
 石鼓文、泰山刻石(百六十五字本)、西嶽華山廟碑(長垣本)、曹全碑(「因」字不損本)の鮮明な拓本がならぶ。国宝 説文木部残巻 は、漢和辞典。
 王羲之の双鉤填墨(精巧な複製)は喪乱帖(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)が展示されていた(22日まで)。会期後半には、国宝 孔侍中帖 、妹至帖が出展される。両方を鑑賞したければ、2月7日から12日の間にまた訪れるしかない。現存する王羲之の双鉤填墨の作例はわずか8~9例にすぎないという貴重さ、また日本にある双鉤填墨は、遣唐使により(多分唐の皇帝から下賜されて)将来したものなのだろうと知ると歴史を感じる。
 王羲之の拓本、定武蘭亭序は2点も並ぶ。しかし何といっても今回の目玉は、淳化閣帖(最善本)(中国・上海博物館蔵)。14時ごろ到着したときには、あまりの人の多さに横目で見ただけで通り過ぎたが、16時30分過ぎにもう一度と戻ってみると、漸くゆっくりと鑑賞できる。あまりの字の美しさと拓本の美しさに足が離れなくなってしまった。2003年にアメリカから高額で買い戻したもの。数少ない宋拓の中でも刊行年代を北宋と確定できる貴重なもの。
 国宝 臨王羲之尺牘 伝藤原行成筆も、臨書であり王羲之の書風を伝えるという。

 中国・宋元時代の書では、
 多景楼詩冊 米ふつ筆、北宋時代・11~12世紀 (中国・上海博物館蔵)は傑作というだけのことはあります。
 国宝 楷書徽宗文集序巻 高宗筆 1巻 南宋時代・紹興24年(1154) 文化庁蔵
に目が行きました。

 日本の書では、
 法華義疏巻第二・四 聖徳太子筆 2巻 飛鳥時代・7世紀 御物 :本当に聖徳太子は実在したのか?なんて思いながら眺め、空海筆は、よく出展されるので横目で見ながら、4巻に並んでいた写経がよかった。
 国宝 法華経序品(竹生島経) 1帖 平安時代・10~11世紀 滋賀・宝厳寺蔵
 国宝 法華経巻第八(浅草寺経) 1巻 平安時代・11世紀 東京・浅草寺蔵
 国宝 法華経化城喩品(久能寺経) 1巻 平安時代・12世紀 静岡・鉄舟寺蔵
 重文 大唐西域記巻第八(中尊寺経) 1巻 平安時代・12世紀 東京国立博物館蔵
料紙がすばらしかった。
 
 国宝 御堂関白記 藤原道長筆 1巻 平安時代・長保6年(1004) 京都・陽明文庫蔵
には、こんな記録が残っているのかという驚き、そして、
 国宝 仮名消息(延喜式巻第四紙背) 1巻 平安時代・11世紀 東京国立博物館蔵
は、多分先般も拝見しましたが、紙背にかかれた「かな」が、今日はわかりやすく展示されていました。
 
 かなは、
 和漢朗詠集は、
雲紙本和漢朗詠集巻上 伝藤原行成筆 1巻 平安時代・11世紀 宮内庁三の丸尚蔵館蔵
国宝 倭漢抄巻下(近衛本和漢朗詠集) 2巻 平安時代・11世紀 京都・陽明文庫蔵
国宝 葦手下絵和漢朗詠抄巻下 藤原伊行筆 1巻 平安時代・永暦元年(1160) 京都国立博物館蔵

 万葉集は、5つの有名な万葉集のうち三種類が並ぶ。
桂宮本万葉集 源兼行筆 1巻 平安時代・11世紀 御物
国宝 元暦校本万葉集巻第十二・二十 2冊 平安時代・11世紀 東京国立博物館蔵
金沢本万葉集 藤原定信筆 1冊 平安時代・12世紀 宮内庁三の丸尚蔵館蔵

 中国・明清時代の書では、
草書赤壁賦巻 祝允明筆 1巻 明時代・弘治15年(1502) 中国・上海博物館蔵
が狂草書と説明があったが、まるで歌うように書かれた一巻が印象的だった。

 日本の寛永の三筆では、
重文 立正安国論 本阿弥光悦筆 1巻 江戸時代・元和5年(1619) 京都・妙蓮寺蔵
が、色紙帖とは違って心のこもった作品で感銘。

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2 コメント

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そろそろ混んできましたか。 (Ruihui)
2006-01-18 00:25:33
こんばんは。

TBありがとうございます。



双鉤填墨の方法は、以前の『模写・模造と日本美術』でも見ていましたが、王羲之がこれほど並ぶのは本当にうれしいですね。



TBお許しください。
返信する
Unknown (Tak)
2006-01-20 22:45:23
こんばんは。

TBありがとうございました。



勉強して出直します。

そうでないと申し訳ないような気さえする展覧会でした。
返信する

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