徒然なるまままに

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「新たな国民のたから」+常設展 東京国立博物館

2006-08-25 | 美術
特集陳列 文化庁購入文化財展 「新たな国民のたから」
2006年8月8日~2006年9月3日
主催:文化庁・東京国立博物館
東京国立博物館 本館特別1・2室

「文化庁の文化財にかかわるいろいろな事業のなかには、文化財を国が優先して購入できる制度があります。これは貴重な国民のたからものである文化財が海外に流出するのを防ぐためのものです。この制度によって国は多くの文化財を購入してきましたが、その多くは国立博物館や国立美術館に移管してそこで公開・活用してきました。国立博物館や国立美術館が独立行政法人となった現在は、文化庁が保管しつつ、各地の美術館や博物館に貸し出して公開しています。」ということで、文化庁が買い上げた作品が展示されていました。何とカラーのパンフレットまで作成しています。

  • 重文 紙本著色浜松図 六曲屏風 1双 室町時代・15世紀
    「浜松図は絵巻物の画中に頻出し、愛好されていたとみられるが、現存する中世の作例は3例しかみられない。本図はそのなかでも最古とみられ、磯馴松(そなれまつ)が横長の大画面にゆったりと展開する様は、中世やまと絵の屏風の精髄を伝える代表作である」とのこと。磯馴松の向こうには、リズミカルな波、帆掛け舟が一艘、二艘、左隻手前には苫屋、左隻には、赤い葉の木は柿か何かか、右隻には紅梅、白梅を描く。保存状態もよく存在感のある構図の屏風。

  • 紙本著色西行法師行状絵詞 巻第三断簡 5幅 俵屋宗達筆 烏丸光廣詞書 江戸時代・寛永7年(1630)五幅。「1630年、烏丸光廣は禁裏から西行法師行状絵詞4巻を借り、宗達法橋に写させ、詞書を記した。巻4の奥書にその経緯が光廣によって記されている。本断簡は、巻第三の一部であったもの。宗達作品の中で唯一制作年の判明する作品。」とのこと。五幅とあるが、3つの場面が展示されていた。(2場面は、絵と詞書が別に装丁されている。)

  • 本墨画淡彩山水図 1巻 藝愛筆 室町時代・16世紀 ;「藝愛」印の捺された作品によってその存在が知られる画家。16世紀前半の頃の活動が想定されている。本館には南宋の夏珪画に基づくと見られる図様も多く、わが国における夏珪画の影響を考える上で重要

  • 重美 紙本墨画江山蕭寺図 1巻 王時敏筆 明時代・崇禎8年(1635); 王時敏は、幼少のころより董其昌(1555-1636)に書画を学んだ。本図は44歳の作であり、この時期に最も意を用いて学習した元時代の黄公望、倪?の作風にならい流麗自然に起伏する山水を巧みにあらわしている。

  • 重文 紙本著色名所風俗図 六曲屏風 1双 安土桃山時代・16世紀;琵琶湖畔を近景に、後方には右隻には日吉山王社、左隻には三井寺とみられる寺院を配する。狩野派正系の画家の作と見られる。

  • 色絵樹下人物文八角大壺 1口 伊万里・柿右衛門様式 江戸時代・17世紀 ;高さ53cm、胴径38cm、八角大壺としては国内最大級

    あとは、鎧兜、太刀、歴史資料(重文 扶桑略記 巻第二残巻 真福寺本、重文 文選集注 巻第六十三、第九十三、奈良時代の文書(重文 写経料紙充帳 1巻 奈良時代・天平宝字4年(760、 重文 墾田立券文 延暦二十一年正月十日 1通 平安時代・延暦21年(802)、 重文 家地立券文 嘉祥二年十一月廿日 1通 平安時代・嘉祥2年(849)、重文 校生勘紙帳 1巻 奈良時代・天平11年(739)、重文 銭納帳 1巻 奈良時代・神護景雲4年(770)) 扶桑略記は平安時代後期の皇円による私撰の史書。 文選集注は梁の昭明太子が撰した詩文集である「文選」の注釈書。他の注釈書にない注をひく孤本。金沢文庫伝来。 それにしても奈良時代の文書を見ていると、忘備録のようなものあり、面白いですね。



    「重文 夏秋草図屏風 酒井抱一筆」 公開
    本館7室 2006年8月8日~2006年9月18日

    もともと尾形光琳(こうりん)の「風神雷神図屏風」(重要文化財・東京国立博物館蔵)の裏側に描かれていたそうだ。

    「10数年前に「夏秋草図屏風」の下絵(東京・出光美術館蔵)が発見され、その袋の一部と思われる紙に書きつけられた抱一の墨書から、この屏風が第11代将軍徳川家斉(いえなり)の実父にあたる一橋治済(はるなり)の注文によって文政4年(1821)頃に完成したこと、屏風表裏の取り合せが抱一の制作当初からのものであったことが明らかとなりました。表の金地に対して裏を銀地とし、雷神の裏に夕立に打たれて頭をたれる夏草を、風神の裏に野分の風に吹きあおられる秋草を対応させたことなどは、すべて抱一自身の構想であったことが確認されたわけです。屏風の表裏の絵は、あたかも連歌・連句における付合のようにみごとな呼応をみせています。そして確かに、裏として使われたとき、つまり折り目を手前にして立てたときに、各隻(せき)両端の空間が一段と奥へとひろがって見えるようです。今回もそのような折り方で展示いたしますので、ぜひ会場で抱一の意図した空間構成を確かめていただきたいと思います。」とのこと。
    「折り目を手前にして立てた」というところまで意識せずに鑑賞したので、期間内にもう一度確かめたいと思います。銀地はどうしても状態が悪くなり易いので残念です。P.S.25日に、折り目を確かめました。なるほど。

  • 周茂叔林和靖図屏風 6曲1双 狩野探幽筆;
    周茂叔は、隠棲の地として知られた慮山に棲み蓮を愛でて暮らし、林和靖は宋の時代に西湖の孤山に隠棲し梅を300本植え鶴を二羽放して悠々自適の生活を送っていたという隠遁生活を理想とする文人の憧れを描く。という。行年六十歳探幽法眼とある。1661年の作品(?)。

  • 国宝 納涼図屏風 2曲1隻 久隅守景筆 江戸時代・17世紀 ;(8/8-8/20)
    久隅守景は、探幽門下四天王の一人。というよりは、やはりこの納涼図屏風の方が有名です。いつ見ても汚い屏風ぐらいにししか見ていませんでした。先般の日曜美術館では、破門を余儀なくされた久隅守景の思いを描いたという話。久々の拝見ですが、そうおもってみるとなかなか。雰囲気がなんともいえない悲哀に満ちています。

  • 鷹狩図屏風 8曲1双 久隅守景筆 江戸時代・17世紀 個人蔵;(8/22-9/18)
    こちらは、逆に探幽門下で作品。鷹狩のようすがよくわかり面白い。鷹匠のほかに農民が走り回ったり、鷹が鶴を捕らえたりしています。鷹匠が這って鷹に近寄ったりする描写や、さらに鶴、鷹の描写などは見事。鷹匠などの人物は、納涼図屏風の顔つきと似ています。

  • 虎図 1幅 円山応挙筆 江戸時代・18世紀;署名は平安仙嶺。応挙は仙嶺、一嘯などと号し、1766年に名を応挙としたとのこと。
  • 重文 兎道朝暾図 1幅 青木木米筆 江戸時代・文政7年(1824);木米にばかり出会っています。別稿をおこします。
  • 浪に鵜図 1幅 熊斐筆 江戸時代・18世紀 ; 装飾的な波。鵜が魚を飲み込みます。
  • 富士山図 1幅 宋紫石筆; 南宋画風な愛宕山の向こうに普通の富士山が重なっています。御殿場あたりから見た風景で、いまでも同じ風景ですが、スタイルをいれると絵はこう変るというのが面白いです。

  • 鶏図扇面 1本 伊藤若冲筆 江戸時代・18世紀
  • 仕丁図扇面 1本 尾形光琳筆 江戸時代・18世紀;7人の貴族が舞を舞う様。仕丁とは何でしょうか?雛飾りで仕丁というのがあるようで、十五人の揃いの雛飾りでは、内裏雛(2人)、官女(3人)、五人囃子(5人)、随身(2人)、仕丁(3人)からなるようで、仕丁とは、別名を衛士ともいう。3人一組のもの。十五人揃いに属し、白衣を着たもの。向って右から立傘・沓台、台笠持ちの順に飾る。笑い、泣き、怒りの表情から、三人上戸の別称もある。とのこと。http://www.ningyo-kyokai.or.jp/jiten/

  • 重文 船窓小戯帖 1帖 田能村竹田筆 江戸時代・天保元年(1830) 個人蔵
  • 鯉魚図襖 2面 円山応瑞筆 江戸時代・18世紀; 鯉魚を応挙の弟子らしく描きます。

  • 扇面 1幅 烏丸光広筆 江戸時代・17世紀
  • 題九成宮詩 1幅 池大雅筆 江戸時代・18世紀;楷書。
    市河米庵(1779-1858)の書が展示されていた。
    市河米庵はこんな顔の人物。(市川米庵像および画稿 渡辺崋山筆、画像は京都国立博物館へのSRCリンク。説明はこちら)。京都国立博物館でを11日拝見し、厳しそうな人と拝察したところ。

    市河米庵は、先日の「唐様の書」ではじめて知った。祖父市河蘭台は、細井広沢(1658-1735)門下、父市河寛斎は昌平こう学頭。米ふつの書に私淑。5千人もの門弟をもったという。素晴らしい手本が出展されていた。「唐様の書」には、こちらが展示されていた。手本の類だが、美しい字体。
  • 楷書千字文 1帖 市河米庵筆 江戸時代・19世紀 市河三次氏寄贈 米庵折手本のうち
  • 中興頌 1帖 市河米庵筆 江戸時代・19世紀 市河三次氏寄贈 米庵折手本のうち
  • 米庵先生漫抄 2冊 市河米庵筆 江戸時代・19世紀 市河三次氏寄贈
    今回展示されていたのは、
  • 扇面 1幅 市河米庵筆;
    小品だが、扇面にきちんと細かい文字で書いてあり見事。



    浮世絵 第10室(2006/8/15~ 2006/9/10)
    常設展示は、いつも最後までみるには体力がつづかず、ついつい浮世絵のところは飛ばしてしまう。今回は、珍しく浮世絵までゆっくりと見る時間があった。また、作品がよかったのか、体力があったのか、いくつか優品に目がいった。

    春信は、前回の東博ではおきゃんな娘といった画題だったが、今回は違います。
  • 重美 見立菊慈童 1枚 鈴木春信筆 江戸時代・18世紀 横中判 錦絵
  • 六玉川・萩の玉川 1枚 鈴木春信筆 江戸時代・18世紀 中判 錦絵
    見立菊慈童は、解説では、「「見立て」とは、古典などの設定を当世風俗に移し変え、絵解きを楽しむもの。この図は可憐な少女を菊慈童に見立てたもの。菊慈童は中国の仙人で菊の霊薬によって童形のまま長寿を保ったとされます。」とのこと。画面を横切る川には菊の花。手前に川辺に少女が坐る。手前は黄色、向こう岸はピンクに塗り分けられた画面は極彩色。
    六玉川・萩の玉川は、春信らしい娘二人が、萩咲く玉川にいる図。

  • 美人挿花 1枚 北尾重政筆 江戸時代・18世紀 中判 錦絵;北尾重政は独学で錦絵を学ぶ。北尾政演(山東京伝)、窪俊満らを輩出。画面は、部屋の中に、生け花と挿し花をする娘が二人、挿し花をする立ち姿の娘の動きの表現が見事。髪の表現、着物の表現は細やか。窓の外にはおっとりとした笹の花が対比的。
  • 重美 当世美人色競・山下花 1枚 北尾政演筆 江戸時代・18世紀 大判 錦絵;1782ごろに山東京伝と名乗る。煙草屋も経営。着物の表現はともかく、どうして重美か?
  • 山東京伝の見世 1枚 歌川豊国筆 江戸時代・18世紀 横大判 錦絵;遊女花扇、三代目瀬川菊之丞、沢村字十郎、市川海老蔵など人気者が訪れる図。面白い。

  • 風俗東之錦・萩の庭 2枚 鳥居清長筆 江戸時代・18世紀 大判 錦絵 2枚続;見栄をきったような三美人(萩の庭)武士とお付と女性(風俗東之錦)。 清長らしい女性表現。

  • 六玉川・萩の玉川 1枚 窪俊満筆 江戸時代・18世紀 大判 錦絵;趣向のこんだ摺り絵、三人の女性を描くが草花の様子が趣向に富んでいる。

    歌麿の優品があった。
  • 重文 婦人相學十躰・浮気の相  1枚 喜多川歌麿筆 江戸時代・18世紀 大判 錦絵
    《婦人相学十躰》は,美人大首絵の中に気質の類型まで描き分けようとした歌麿(1753?-1806)の代表作ともいえる揃物。湯帰りの女が振り返った一瞬を描いた本図では,その嬌慢な表情の中に,多情で浮かれがちな女の性格が見事に写し出されている。これぞ歌麿といったイメージの錦絵を久々に鑑賞した。あと2点と出来の差があまりにある。
  • 婦人相學十躰・面白キ相 1枚 喜多川歌麿筆 江戸時代・18世紀 大判 錦絵
  • 桃の皮むき 1枚 喜多川歌麿筆 江戸時代・18世紀 大判 錦絵


  • 柱時計美人図 西川祐信筆 江戸時代・18世紀; 西川祐信(1671-1750)は京都の浮世絵師。絵本と肉筆美人画に活躍し,江戸の浮世絵にも大きな影響を与えた。柱時計の分銅の紐を結ぶ美人の姿を描いた本図では,たおやかな女の容姿と繊細かつ華麗な衣裳模様に,祐信美人画の特色がよく表れている.男性を待つが時がきてしまた女性の心理を描くとのこと。柱時計が描かれているのがなかなかモダン。


    画像は特記ない限り、東京国立博物館へのSRCリンクです。
    18日+(25日)

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    3 コメント

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    Unknown (はろるど)
    2006-09-01 01:07:08
    こんばんは。TBありがとうございました。



    >折り目を手前にして立てたときに、各隻(せき)両端の空間が一段と奥へとひろがって見える



    初めて拝見した時は少し違和感を覚えたのですが、

    しばらく見ているとなるほどと思います。



    それにしても風神雷神図と組合わさった姿はどれほど素晴らしかったのでしょうね。

    大変我が侭な話ですが、それも見てみたいと思いました!
    返信する
    Unknown (るる)
    2006-09-02 08:58:37
    TBありがとう御座いました。

    拙く雑多なブログですが

    どうぞ宜しくお願い致します。





    今までも見ていたはずなのに、

    この春位から抱一がとても新鮮で好きになりました。

    都会的な洗練されたデザイン、熱心な勉強ぶり、

    そしてその才能、センスに惹かれます。



    西川祐信の柱時計美人図も"焦れた"女心が

    何ともいじましいのですが、

    大胆でスッキリした柄の着物から

    彼女の潔い性格が・・・

    やがては去っていく男性への心情を表している

    のかもしれないと思いました。







    返信する
    何時間? (Tak)
    2006-09-02 18:06:26
    こんばんは。



    相変わらずとても詳細にご覧になっていらっしゃいますね。

    自分とは大違いです。

    TB頂いて恐縮です。
    返信する

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