徒然なるまままに

展覧会の感想や旅先のことを書いてます。

ピカソ 5つのテーマ @ポーラ美術館(箱根)

2006-08-07 | 美術
ピカソ 5つのテーマ
ポーラ美術館(箱根)
2006年 3月18日~ 9月17日 会期中無休
Picasso: Five Themes

2002年9月神奈川県箱根仙石原にオープンしたポーラ美術館を初めて訪れた。鈴木常司(1930-2000)が集めたコレクションが展示されている。箱根の樹木の間に建つ採光あふれる建物だ。

さて、今回の「ピカソ 5つのテーマ」。一寸作品数は少ないが、青の時代の作品が国内で見られることは滅多にないので期待は高まる。展覧会は次のような構成。

1.青の時代 バルセロナ-パリ
青のカンヴァスに秘められた世紀末の都市風景と青春の軌跡

2.キュビスムの聖地 オルタ・デ・エブロ
絵画を小さな面の集積へと解体し再構築したキュビスムの到達点

3.ピカソとブラック 静物
物を主題に二次元の空間に挑んだピカソとブラックの冒険

4.聖愛と俗愛 ピカソと女性
愛の象徴である女性像を多様な様式でとらえた画家の身体表現

5.ピカソ、スペインの伝統
故国スペインを見つめ続けた画家とスペイン絵画の伝統


1.青の時代 バルセロナ-パリ
2. パブロ・ピカソ≪通りの光景≫1900年、油彩/カンヴァス
3. パブロ・ピカソ≪海辺の母子像≫1902年、油彩/カンヴァス
が展示されていた。後者が青の時代の作品。
X線写真による解析の結果、≪海辺の母子像≫の絵の具の下に、花束と女性像が描かれていたいたことが判明したと解説されていた。

2.キュビスムの聖地 オルタ・デ・エブロHorta de Ebro
今回の展覧会で一番の収穫。1898.6から1899.2と1909年夏にピカソはオルタ・デ・エブロに滞在している。オルタ・デ・エブロは、岩山と立方体を積み重ねたような集落。1907年のセザンヌ大回顧展と1909年のオルタ・デ・エブロに滞在がキュビズムにつながる。「私の知識はすべてオルタの村で学び取った」(ピカソ)「1909年にピカソはスペインに滞在し風景画数点を持ち帰った。それは、まさにキュビズムの始まりだった。」(ガートルド・スタイン)(スタインはドイツ語で石という意味なので、ちょっと笑えました。)との言葉が書いてあった。オルタ・デ・エブロの村をピカソが撮った写真のパネルも展示されていた。《裸婦》は、オルタ滞在中に描かれた作品。フェルナンドのバックにオルタの山が描かれている。

7.パブロ・ピカソ 《裸婦》 1909 年
5.ポール・セザンヌ 《4 人の水浴の女たち》1877-1878 年

3.ピカソとブラック 静物
10. パブロ・ピカソ≪葡萄の帽子の女≫1913年、油彩/カンヴァス
13. パブロ・ピカソ≪ろうそくのある静物≫1944年、油彩/カンヴァス
火の消えたろうそくある静物画。第2次世界大戦中の絵。

4.聖愛と俗愛 ピカソと女性
22. パブロ・ピカソ≪母子像≫1921年、油彩/カンヴァス;オルガとパウロの「聖母子像」。古代ギリシャ彫刻のような古典様式で描かれた理想化された女性像。
23. パブロ・ピカソ≪坐る女≫1921年、油彩/カンヴァス
24. パブロ・ピカソ≪花売り≫1937年、油彩/カンヴァス;ゲルニカと同じ頃に描かれた作品が《花売り》です。《ゲルニカ》制作後、ピカソは友人で詩人のポール・エリュアール、その妻ヌッシュらと南仏カンヌ近郊の村ムージャンでバカンスを過ごしました。《花売り》には南仏の黄色い陽光、花売りの民族衣装などが色彩豊かに描かれています。そして、モデルはヌッシュ。彼女は芸術家仲間のあいだの、美のミューズともいえる女性でした。《ゲルニカ》同様、たくましい腕など力強さを感じさせる作品ですが、南仏という明るい太陽のもとで画家自身がリラックスした状況で描いた開放感あふれる作品
25. パブロ・ピカソ≪シルヴェット・ダヴィット≫1954年、油彩/カンヴァス;金髪のシルヴェット・ダヴィットを描く絵はいつも白黒だという。髪の長さが強調された右向きの肖像。川村記念美術館で3月にシルヴェット・ダヴィットの肖像画を見たのを思い出す。
26. パブロ・ピカソ≪草上の昼食≫1959年、クレヨン/紙;小品だが一寸面白い
27. パブロ・ピカソ≪母と子≫1960年、油彩/カンヴァスボード
28. パブロ・ピカソ≪帽子の女≫ 1962年、油彩/カンヴァス;画家の晩年を支えた最後の妻ジャクリーヌを強烈な色彩と奔放な線で捉えた《帽子の女》は、「俗愛」の対象として描かれた女性像

5.ピカソ、スペインの伝統
29. パブロ・ピカソ≪花束を持つピエロに扮したパウロ≫1929年、油彩/カンヴァス;本作品は1929年7月、(オルガ・コクローヴァとの子供)パウロが8歳の頃に制作された肖像画。ピカソ一家は高級アパルトマンで暮らし、社交界にも出入りする華やかな生活を享受していた。しかしその幸福な生活は、ピカソの新しい恋人の出現により破局をむかる。別居後、オルガとパウロの姿は、画家のカンヴァスからも忽然と消え去る。そのため、この《花束を持つピエロに扮したパウロ》が、父の手で描かれたパウロの最後の肖像画となった。本作品では、パウロはピエロの衣裳を身につけ、杖と花束を手にしています。その姿は絵筆と色とりどりの絵具を載せたパレットを持つ、画家の姿に重なります。また、堂々としたパウロの立ち姿は、ピカソが敬愛するスペインの黄金時代の画家ベラスケスやゴヤの描く宮廷肖像画の形式を受け継いでいます。スペイン人の血をひく長男パウロに、「画家の跡を継ぐ息子」、「誇り高きスペイン人」というイメージを授けようとするピカソの意図と、父親らしい想いと期待が、本作品に込められているかもしれません。(今井敬子学芸員)

30. パブロ・ピカソ≪すいかを食べる男と山羊≫1967年、油彩/カンヴァス
31. パブロ・ピカソ≪ルイス・デ・ゴンゴラ『20詩篇』≫1948年刊、エッチング、アクアティント/紙
32. パブロ・ピカソ≪ハイメ・サバルテス『ピカソのアトリエにて』≫1957年刊、リトグラフ;彩色の美しいリトグラフ集のようだ。全体を見てみたい。
33. パブロ・ピカソ≪フェルナンド・デ・ロハス『セレスティーナ』≫1971年、エッチング、アクアティント/紙

流石、鈴木コレクション、点数は少ないですが、ツボを良くおさえて、教科書のようなピカソ展でした。






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