(1955/アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督・共同脚本/シモーヌ・シニョレ、ヴェラ・クルーゾー、ポール・ムーリス、シャルル・ヴァネル/107分)
手に汗握るサスペンス描写が強烈だった「恐怖の報酬」の2年後の、クルーゾーもう一つの傑作サスペンス。
殺したはずの死体が発見されず、そうこうするうちに被害者が犯人の周りに幽霊のように出没するというミステリー色の強い作品でもあります。
結末を知っているので、流石に初めて観たとき程の薄気味悪い雰囲気を楽しむことは出来ませんでしたが、やはりこれは結末を知らずに観た方がいいでしょうな。アッと驚くラストのショッキングな映像もさることながら、今回はその前のサスペンス醸成の見事さ、ヒッチコックが作ってもさもありなんと思わせるような締めくくりの鮮やかさに唸りました。クルーゾーは最後にもう一つおまけも付けていましたがね。
元テニス選手でスポーツマンのミシェル(ムーリス)は、妻クリスティナ(クルーゾー)が親から受け継いでいる私立学校の校長をしている。女癖が悪く、同じ学校の女性教師ニコル(シニョレ)にも手を出していて、その事は同僚の男性教師も知っている。横暴な男で、クリスティナの両親もいないので他の男性教師や生徒達にも高圧的な態度をとるし、ニコルに乱暴を働くこともある。今はクリスティナもニコルもミシェル憎しで共同歩調をとるまでになっている。
休暇で子供たちが家に帰る週末、ついに女二人はミシェルを亡き者にしようと計画を立てる。
まず、クリスティナとニコルがニコルの実家へ向かい、そこからミシェルに離婚の話を電話でする。あわててやって来たミシェルに睡眠薬入りのお酒を飲ませ、眠り込んだ所をバスタブに沈めて溺死させようというものだ。
自尊心の強いミシェルは妻を迎えに出かけることは口外しないだろうし、ニコルの実家も間借り人の夫婦が居るだけなので、ミシェルの姿を見せなければクリスティナとニコルのアリバイは完全だ。
計画通りに事は進み、後はミシェルの遺体を学校のプールに沈めるだけ。クリスティナ達が不在の間にミシェルが誤ってプールに落ちたという状況になるはずだったのだが・・・。
刑事シャルル・バネルの事件の納め方がどうだったか忘れていたのですが、冒頭にも書いた通り、クライマックスのすぐ後にあっさりと、しかし何とも鮮やかな幕切れでありました。
96年に作られたシャロン・ストーンとイザベル・アジャーニのリメイク版も数年前に観ましたが、これは殆ど記憶にありません。いずれにしてもリメイク版も観ない状態で本作に入られることを推奨いたします。
▼(ネタバレ注意)
ニコルの実家の間借り人がニコルの部屋のお風呂タイムを記録したり、クリスティナとニコルがミシェルの死体を車に積んでパリに戻る途中で、死体を入れたトランクから水が漏れているのを見られるというシーンがありました。『これは犯人探しの伏線になるのかな。』と思いきや・・・でした。
死体入りのトランクを車に積む時に、間借り人の前でパカッとトランクの蓋が開きそうになるショットもドキッとしましたな。
▲(解除)
ヴェラ・クルーゾーは監督の奥さんですが、終盤のネグリジェ姿では生地がスケスケだったので胸が丸見えでしたね(←何見とんじゃ!)。この映画の5年後、40代後半の若さで心臓発作で亡くなったようです。
1955年のNY批評家協会賞で外国映画賞を受賞。モノクロのスクリーンに、ズシンと重そうな音楽がジワジワと胸を締め付ける作品です。
尚、原作者ピエール・ボワロー&トーマス・ナルスジャックはフランスの本格的推理作家ということで、ヒッチコックの「めまい」の原作もこの二人のコンビ作品とのことでした。
手に汗握るサスペンス描写が強烈だった「恐怖の報酬」の2年後の、クルーゾーもう一つの傑作サスペンス。
殺したはずの死体が発見されず、そうこうするうちに被害者が犯人の周りに幽霊のように出没するというミステリー色の強い作品でもあります。
結末を知っているので、流石に初めて観たとき程の薄気味悪い雰囲気を楽しむことは出来ませんでしたが、やはりこれは結末を知らずに観た方がいいでしょうな。アッと驚くラストのショッキングな映像もさることながら、今回はその前のサスペンス醸成の見事さ、ヒッチコックが作ってもさもありなんと思わせるような締めくくりの鮮やかさに唸りました。クルーゾーは最後にもう一つおまけも付けていましたがね。
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元テニス選手でスポーツマンのミシェル(ムーリス)は、妻クリスティナ(クルーゾー)が親から受け継いでいる私立学校の校長をしている。女癖が悪く、同じ学校の女性教師ニコル(シニョレ)にも手を出していて、その事は同僚の男性教師も知っている。横暴な男で、クリスティナの両親もいないので他の男性教師や生徒達にも高圧的な態度をとるし、ニコルに乱暴を働くこともある。今はクリスティナもニコルもミシェル憎しで共同歩調をとるまでになっている。
休暇で子供たちが家に帰る週末、ついに女二人はミシェルを亡き者にしようと計画を立てる。
まず、クリスティナとニコルがニコルの実家へ向かい、そこからミシェルに離婚の話を電話でする。あわててやって来たミシェルに睡眠薬入りのお酒を飲ませ、眠り込んだ所をバスタブに沈めて溺死させようというものだ。
自尊心の強いミシェルは妻を迎えに出かけることは口外しないだろうし、ニコルの実家も間借り人の夫婦が居るだけなので、ミシェルの姿を見せなければクリスティナとニコルのアリバイは完全だ。
計画通りに事は進み、後はミシェルの遺体を学校のプールに沈めるだけ。クリスティナ達が不在の間にミシェルが誤ってプールに落ちたという状況になるはずだったのだが・・・。
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刑事シャルル・バネルの事件の納め方がどうだったか忘れていたのですが、冒頭にも書いた通り、クライマックスのすぐ後にあっさりと、しかし何とも鮮やかな幕切れでありました。
96年に作られたシャロン・ストーンとイザベル・アジャーニのリメイク版も数年前に観ましたが、これは殆ど記憶にありません。いずれにしてもリメイク版も観ない状態で本作に入られることを推奨いたします。
▼(ネタバレ注意)
ニコルの実家の間借り人がニコルの部屋のお風呂タイムを記録したり、クリスティナとニコルがミシェルの死体を車に積んでパリに戻る途中で、死体を入れたトランクから水が漏れているのを見られるというシーンがありました。『これは犯人探しの伏線になるのかな。』と思いきや・・・でした。
死体入りのトランクを車に積む時に、間借り人の前でパカッとトランクの蓋が開きそうになるショットもドキッとしましたな。
▲(解除)
ヴェラ・クルーゾーは監督の奥さんですが、終盤のネグリジェ姿では生地がスケスケだったので胸が丸見えでしたね(←何見とんじゃ!)。この映画の5年後、40代後半の若さで心臓発作で亡くなったようです。
1955年のNY批評家協会賞で外国映画賞を受賞。モノクロのスクリーンに、ズシンと重そうな音楽がジワジワと胸を締め付ける作品です。
尚、原作者ピエール・ボワロー&トーマス・ナルスジャックはフランスの本格的推理作家ということで、ヒッチコックの「めまい」の原作もこの二人のコンビ作品とのことでした。
・お薦め度【★★★★★=大いに見るべし!】
途中のモロモロは、初見の方が勿論色々な意味で楽しめますが、クルーゾーの構成を考えながら見るのも楽しいもんです。
今日ももう一度見てしまいました。(笑)
でもきっとシモーヌ・シニョレの方が断然迫力があると思います。彼女の「燃えつきた納屋」ってのも見逃している残念な作品の1本っす
「めぐり逢えたら」みたいに、モチーフだけ借りてくるってのは観る方も楽しいのに。
今の観客はミステリー漬けですから、あれやこれや推理しながら見ておおよその見当がつくでしょうが、もっと素直に観たほうが楽しめますよね。
拙評の本文でも書きましたが、現在の観客は当時に比べてひどく不幸です。この手の作品を観ると疑ってかかりすぎますから。
それからクルーゾーはもう一本「情婦マノン」も傑作で必見です。
「情婦マノン」「犯罪河岸」「ピカソ-天才の秘密」。
クルーゾーの待ちこがれている未見の名作達です。