テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

幸せのちから

2011-10-06 | ドラマ
(2006/ガブリエレ・ムッチーノ監督/ウィル・スミス、ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス、タンディ・ニュートン、ブライアン・ホウ/117分)


ウィル・スミス主演の「幸せのちから」をレンタルで観る。実話に基づく、奇跡のようなサクセス・ストーリーというお話だと思って観たら、過酷な貧困生活に耐える親子の物語という雰囲気の方が強い。目新しいチャンスメイクの術を描くわけでもなく、その点は期待はずれだったけど、一見の価値はある。
 [10月 03日](→Twitter on 十瑠 より

*

 1981年、失業者が一千万人を越えて、戦後最悪の経済状況といわれたロナルド・レーガン政権下のアメリカ、サンフランシスコが舞台の実話を元にした作品だそうです。

 ウィル・スミス扮するクリス・ガードナーは骨密度が測れるという高級医療機器のセールスマン。全財産をなげうって購入したその機械は思惑通りには売れずに家計は逼迫、家賃の支払いも滞るようになっていた。共働きの妻は次第に愛想を尽かすようになり、ついにはニューヨークの姉をたよって、幼い息子を連れて家を出ていこうとする。自身も28歳まで実の父親を知らなかったクリスは、息子への愛情が深く、妻を説得して息子は彼が育てる事にした。
 そんなある日、街で高級車に乗った男の様子に惹かれたクリスが彼の仕事を尋ねると、その男は株の仲買人だと言った。
 『仲買人をするには、やはり大学を出ていないとダメかな?』
 『そんなことはないさ。数字と人に強ければ誰でもOKだ』
 男が入っていったビルの前は、どれも晴れやかな笑顔をした人々が行き来し、クリスも彼らにあやかりたいと思った。ふとビルのドアに目をやると、ある証券会社が社員登用のチャンスもある研修プログラムの紹介チラシを貼っていた・・・。

 この後クリスは研修プログラムに応募するのですが、研修生に選ばれるまでも、大事な面接に行けなくなりそうな事態が発生したり、アパートを追い出されたりと幼い息子を抱えての苦労が描かれます。当時流行っていたルービック・キューブがクリスの家にもあって、序盤でチラッと紹介され、これは何かの伏線だなと思っていたら、案の定、面接者の選定をする人物へのアピールにこのオモチャが使われました。今も玩具店には置いてありますが、僕も全面クリアしたこと無いなぁ。

 脚本のスティーヴン・コンラッドは、お気に入りの「潮風とベーコンサンドとヘミングウェイ」を書いた人。この映画でも殆ど時系列にエピソードを描いていて、段々と家計が逼迫していって住む所も無くなり、教会の世話になったりとか、そこにも入れなくて駅の構内の公衆トイレで一晩過ごしたりとか、父と子の生活が段々と厳しくなっていく様が良く分かるようになっています。
 ローマ出身というイタリア人監督ガブリエレ・ムッチーノも、お涙頂戴ではなくて淡々と、時にハンディカメラを使ってハラハラするようなドキュメンタリータッチも見せて、緩急織り交ぜて描いています。

 クリスの個人的事情にはお構い無しに研修プログラムは進むのですが、研修中は無報酬なので、数台残っている医療機器の販売もしながらの生活で、息子を寝かしつけてから株の勉強をしたり、医療機械の修繕をしたりと、とにかく苦労続きです。

 原題は【The Pursuit of Happyness(=幸福の追求)】。
 映画は自分の過去を振り返っているクリスのナレーションで進められていて、時々引用されるのがトーマス・ジェファーソンの独立宣言書。【The Pursuit of Happyness】もその前文に掲げてある、全ての人間が平等に有すると唱えている「生命、自由、幸福の追求」の権利に基づいた言葉です。実際は「The pursuit of happiness」で“happiness”のスペルが違うのですが、その理由は映画を観ていただければ分かります。
 クリスが息子に伝えたい事も最終的には、“夢をあきらめてはいけない。幸せは追求し続けなければいけない”ということだったようですネ。

 2006年のアカデミー賞で主演男優賞にノミネートされたウィル・スミスは、プロデューサーにも名を連ね、幼い息子クリストファーを演じたのは(この後「ベストキッド(2010)」に主演した)実の息子のジェイデン・クリストファー・サイア・スミスでした。
 軽妙な演技の印象が強いウィル・スミスが、この映画では深刻な表情をし、後半では追いつめられて子供にまで怒りの表情を見せます。感動的なのはなんといっても、証券会社に採用が決まった後の表情ですね。ちっちゃいジェイデン君の自然な演技も可愛いかったなぁ。
 尚、ラスト・シーンで歩いているスミス親子とすれ違う人物としてクリス・ガードナー本人が登場しているそうです。


・お薦め度【★★★=一見の価値あり】 テアトル十瑠

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
良さそうだ! (anupam)
2011-10-14 10:45:11
見てみようと思いつつ忘れてた作品です。

やっぱし見てみよ~~っと。
ウィル・スミスはラッパー歌手からものの見事に演技できる俳優になりました。
顔が超好きです!
返信する
一緒に観てた (十瑠)
2011-10-14 11:20:21
高校生の息子が、もう一度観たいと言い出しましたので、またレンタルするかもしれません。

>顔が超好きです

顔を思い出そうとしたら、何故かエディ・マーフィーも出てきちゃうんだよねぇ。二人の顔がエクザイルのようにくるくる回ってんの
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