テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

チョコレート

2007-03-27 | ドラマ
(2001/マーク・フォースター監督/ビリー・ボブ・ソーントン、ハリー・ベリー、ピーター・ボイル、ヒース・レジャー、ショーン・コムズ/113分)


 同じ時期にレンタル屋さんに並んでいたので「ショコラ(2000)」とごっちゃにしていたけど、コチラは2001年度のアカデミー賞でハリー・ベリーが主演女優賞を獲った作品。しかも、原題は【MONSTER'S BALL】。確かに、主人公がチョコレート・アイスクリームを好きだし、印象的なラストシーンでも使われているからなんでしょうが、「ショコラ」の原題が【CHOCOLAT】なので非常に紛らわしい。因みに、<原題の「Monster's Ball」(怪物の舞踏会)は、死刑の執行前に看守達が行う宴会を指す。(『ウィキペディア』による)>とのことでした。
 ベリーのオスカー受賞記念に数年前に中古VHSを買っていましたが、人種問題絡みのシリアスな話のようなのでそのままにしていたら、ソーントンとベリーの濃厚なラブ・シーンがあるとの情報をキャッチ。早速鑑賞の運びとなりました。

 息子の自殺により、本来の自分に気付いた元刑務官の白人男性が、偶然知り合った元死刑囚の黒人妻と愛し合うようになるという話。
 人種差別の根が深いアメリカ南部が舞台で、爺ちゃん、親父、息子と3代続く刑務官の家族の中年親父ハンク(ソーントン)が主人公。爺ちゃんは既に引退していて、息子は新米。婆ちゃんは爺ちゃんに嫌気がさしてずっと前に家出。ハンクの嫁さんも居ない。一人息子のソニー(レジャー)は気が優しくて、近所の黒人達とも仲良くしているが、爺ちゃんは根っからの黒人嫌いで、ハンクも追随している。女っ気が無いので、家の中は陰気くさい。
 ハンクと一緒に初めて死刑囚の死刑執行に立ち会った時に、ソニーは気分が悪くなって吐いてしまう。他の刑務官たちの前で醜態を晒し、しかも死刑囚の最期を台無しにしたとして、後でトイレの中でソニーはハンクになじられる。その後、家に帰ってからもハンクはソニーに厳しく当たる。家を出て行けと言われ、ついにソニーはハンクに銃を向ける。『親父は俺が嫌いか?』
 『嫌いだ・・。』
 ソニーはそれを聞くと、『俺は親父が好きだった。』と言って自分の胸を撃って死んでしまう・・・。

 ワイラーやキャプラでは絶対にあり得ない描写。ウディ・アレンとも違う。「パリ、テキサス(1984)」なんかのヴェンダースに雰囲気は似てるかなと思いましたし、赤裸々な性描写には70年代のニューシネマも思い出しました。感覚派ですな。寡黙な男が主人公で、心情が掴みづらいシーンもありちょっぴりもどかしい。

 ハリー・ベリー扮するレティシアは、ソニーにとって執行に立ち会うのが最初にして最後となった死刑囚の未亡人で、ハンクのシークエンスと共に、レティシアと一人息子との厳しい生活も描かれていきます。或る雨の夜、レティシアの息子が交通事故に遭い、偶然通りかかったハンクが母子を病院に運んだことにより知り合うわけです。

 息子の自殺後、ハンクは自分が父親の言うとおりに生きてきた、身近な世間に流されていたことに気付いたのでしょう。映画はその辺のハンクの心情を表すようなシーンはありません。息子の生前には嫌っていた近くの黒人親子と話をするシーンなどで、ハンクの変化は客観的に描かれるだけです。レティシアを愛するようになったのも客観的な描写で、生々しいSEX描写もハンクは受動的。ハンクはレティシアを本当に愛しているのか? それとも、ソニーへの贖罪の意識の延長か?
 ちょっとイヤ~な雰囲気だったラストシーンが結局はハッピー・エンドに至ったのはよろしかったです。さして魅力的でもなかったレティシアがドラマのヒロインになった一瞬でした。

 性交渉の前後にチョコレートが欲しくなるって・・・ハンクは褐色フェチ?
 ポルノまがいのSEXシーンが必要以上に長くて、このシーンのみで<映倫=R-18>となったようです。

 尚、フォースター監督はこの後「ネバーランド(2004)」を作った人。70年代に活躍していたピーター・ボイルが、爺ちゃん役でアクの強いところを見せていたのが懐かしかったです。

・お薦め度【★★★=ハリー・ベリーの熱演、一度は見ましょう】 テアトル十瑠

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5 コメント

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ショコラと、チ・ヨ・コ・レ・イ・トゥ、が、ゴッチャになるかい? (viva jiji)
2007-03-27 17:11:54
私しゃ~~~、ならんよ。
絶対、ならんも~~ん!(笑)

相変わらずTB、ダメって言われたので
名前の後ろに隠してありますから・・・(困)

フムフム、なになに?(笑)
必要以上に長い濃厚ラヴシーン?
いいじゃあ~りませんか~。長いの~。
楽しみは長いほうが断然!いいも~~ん!(笑)

そうね、ガンコ一徹だった中年男の再生ストーリーに絡めたラブロマンスものね。

でもなんか十瑠さんから改めて“褐色フェチ”って
指摘されると、なんやこう、チョコアイスを舐めるハンクがすごーーく“いやらしく”思え・・・。(笑)

それと、な~~~に?

『性交渉』って、お言葉、

と・っ・て・も、レトロねぇ^^^^^^(笑)

わが父親の隠し戸棚にあった茶褐色した「性生活の知恵」の表紙絵が今、私の脳裏を華々しくトンデおります。(笑)
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だって、ショコラもチョコレートも同じだも~ん (十瑠)
2007-03-27 23:36:01
改めて自分の記事を読みなおすと、あんまり褒めてないですな。編集は良かったと思ってます。

allcinameには『中年おやじが金の力で美女をものにした印象が拭えず・・』なんてコメントもあるくらい、賛否両論ある映画で、“褐色フェチ”って勘ぐりをした人は他にもしてるでしょう。(笑)

中年男の再生ストーリーに絞って、もっとウェットに描いてもらったら好きな映画かも・・・。
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訂正ダス (十瑠)
2007-03-28 08:00:28
>他にもしてるでしょう

=他にもいるでしょう、の間違いダス
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ご無沙汰していました。 (アスカパパ)
2007-03-29 17:14:44
桜、素敵です!

「チョコレート」TBさせていただきました。
はっきり言って、私もあのセックスシーンには驚きました。

近くBSで「勝手にしやがれ」があるようなので、今度こそ見逃さないぞと思っています。(この映画、恥ずかしながらまだ見ていません)
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こんにちわ、パパさん (十瑠)
2007-03-29 17:58:03
今日の福岡がこんな桜日和なんですよ~。

ハリー・ベリーと、エッチなシーンも見たくて買い置きしていたビデオを見ました。
「キャット・ウーマン」とか「X-MEN」とかも見たくなりましたネ。

「勝手にしやがれ」はゴダールの中では親しみやすい部類だと思います。私も沢山は見てないですが、コレと「軽蔑」は一見の価値有りと思いました。
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