テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。

赤ちょうちん

2015-07-27 | 青春もの
(1974/藤田敏八 監督/高岡健二、秋吉久美子、河原崎長一郎、横山リエ、長門裕之、石橋正次、山科ゆり、中原早苗、悠木千帆、南風洋子、山本コウタロー、小松方正/93分)


 大昔に観た藤田敏八監督の「赤ちょうちん」を数十年ぶりに観る。
 “かぐや姫”が作った同名曲にヒントを得て作られたもので、脚本が中島丈博だった事を今回知り、少し驚いたり納得したり。中島は前年度に斉藤耕一監督の「津軽じょんがら節」という名作を作っていますので、(多くの賞を受賞して)この年は忙しかったのか、半分やっつけ仕事のような印象もありますな。
 共同脚本が桃井章という人。なんと桃井かおりのお兄さんだそうです。

 さて映画の話。
 恐らくは同じ頃に作られた松竹の「同棲時代」のヌルさに比べたらという事で面白かったという印象が残っているんでしょう、数十年ぶりに観た日活青春映画は当時の雰囲気を思い出させてはくれたけれど、今の時代には理解しがたい展開もあり、多少は期待してた分残念感が湧いてきました。

 東京で知り合った若い男女の同棲を描いた青春映画で、高岡健二扮する男の子の素性は(名前が久米という以外)何も語られない。だけど元気は良くてどこにでもいるあんちゃんって感じ。一方のヒロインは2年前のATG映画「旅の重さ」(これも斉藤耕一作品だったな)の端役で映画デビューした秋吉久美子扮する幸枝。こっちは流れの中で少し語られる。
 幸枝は熊本出身で、田舎では御祖母ちゃんとお兄ちゃんとの3人暮らしだったが、数年前にこの兄が家出をしていて、その兄を探しに上京して来たのです。
 この若者二人が(多分)居酒屋で知り合い、なんとなく同棲が始まる所からスタートします。幸枝は兄貴探しはほぼ諦めている感じで、そちらの流れは全く無く、中盤で突然兄貴(石橋正次)とは偶然に再会するけれど、すぐに別れてしまいます。(すでに家族の絆の何と儚いことよ)

 一言で表すと、薄幸な少女が様々な苦労の末に破滅してしまう話ですね。
 形では久米が主人公みたいになっていますけど、殆ど久米を表現するのに脚本の力は入っておらず、全ては幸枝の不幸の連続が描かれるだけです。

 頼る人のいない東京の片隅で男と出逢い同棲する。そのアパートに以前同じ部屋の借家人だったという中年男が入り込み、幸枝は同情するが、久米と久米の友人等は中年男を浜辺で殴り倒して追い出す。このアパートは墓地の傍にあり、久米が夜勤の時は幸枝が怖がるし、管理人が二人に冷たいので引っ越しをする。
 引越した先で幸枝の妊娠が発覚するも、産むか産まないかで口論となり、家出をした幸枝は向かいのアパートのオカマの部屋に逃げ込む。オカマの言う事には、幸枝はアパートの側を流れる神田川に身投げをしようとしていたらしい。(ここで「♪神田川」のメロディーが)
 幸枝は男の子を産むが、病院では同じ日に別の久米夫婦にも赤ん坊が生まれたらしく、最初に渡された赤ん坊は人違いだと交換させられた。(これも世相の表現だったんでしょうか)
 次に引っ越した先では、アパートの管理人が赤ん坊を早くに亡くした女性だった為、何かと嫌がらせをされる。(不気味な管理人が悠木千帆!)
 最後に引越した先は、工場が立ち並ぶ下町で、久米も新しい職場がすぐに見つかったが、隣家のおばさんにその部屋の前の住人は一家で心中したんだと知らされ、家賃が格安だった理由も知る。ってな調子です。
 
 救いは当時の乾いた世相をそのままドライに時にユーモラスにテンポ良く描いたことでしょうか。記憶に残っていた秋吉久美子の豊満なバストが露わになるシーンもそのまんま。あの頃は人気があったし僕も好きだったけど、その後は変わり者感が大きくなって段々受け付けなくなっちゃいましたな。
 何十年も覚えていたラストの哀しい展開は記憶通りでした。

 ネタバレですが、幸枝には鳥癲癇(とりてんかん)という持病がある設定になっています。
 鶏肉が嫌いな人は良く見かけますが、鳥癲癇という病気はこの映画でしか聞いたことはないですね。

 その他のトリビアとしては、音楽担当が石川鷹彦だった事。そして助監督の一人が長谷川和彦だった事。
 お勧め度は★一つ半。当時を懐かしめる人々には★二つ(=悪くはないけどネ)かな。
 そういえば、歌にある「赤ちょうちんの屋台」なんて出てきたっけ???





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