テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

ホット・ロック

2009-07-03 | アクション・スポーツ
(1971/ピーター・イエーツ監督/ロバート・レッドフォード、ジョージ・シーガル、ロン・リーブマン、ポール・サンド 、ゼロ・モステル、モーゼス・ガン、トポ・スウォープ/105分)


 厳重な警備がなされている美術館や博物館から高価な宝石や美術品を盗む映画といえば、「トプカピ」や「おしゃれ泥棒」などを思い出しますが、眼目は如何にして犯罪者が警備網をくぐり抜けるか、盗みに成功するかという点。「ホット・ロック」にもそういうハラハラドキドキはあるのですが、先に挙げた二つの映画と違う点は一度では成功しないという所で、かといって全くの失敗でもない。少しずつ少しずつ成功に近づいていき、もはやコレまでかと思われた状況から最後に逆転ホームランをかっ飛ばす。
 ラストで、盗みに成功したレッドフォードが、してやったりの表情で街中を軽快にスキップでもしているかのように歩いているシーンには(クインシー・ジョーンズのBGMも最高!)、こっちまでニヤニヤしてしまいます。

 監督が「ブリット(1968)」、「ジョンとメリー(1969)」のピーター・イエーツで、脚本が「明日に向って撃て! (1969)」、「大統領の陰謀 (1976)」でオスカー2度受賞のウィリアム・ゴールドマン。どんな重厚なサスペンス・ドラマかと思われるかも知れませんが、これはすっとぼけた犯罪コメディです。レッドフォードとしても「裸足で散歩 (1967)」以来のコメディでしょうか。
 ドナルド・E・ウェストレイクの書いた犯罪小説が原作で、レッドフォード扮する“ドートマンダー”を主人公にしたモノはシリーズ化され、この後、別のスタッフ、キャストで2度映画化されているらしいです。

 やり手の盗人(ぬすっと)ジョン・ドートマンダー(レッドフォード)が、服役を終えて刑務所を出てくるところがファーストシーンで、出所直前の彼と刑務官とのやりとりにより、ドートマンダーには刑務所の更正プログラムが全然効いてないのが分かる。
 表に出てきた彼を不気味な車が追いかけてくるが、それが迎えに来た犯罪仲間のケルプ(シーガル)。ケルプはドートマンダーの妹の亭主で、どうやらドートマンダーの刑務所行きはケルプのへまが災いしたらしい。ケルプの車で妹のアパートへ向かいながら、新しい仕事(つまり犯罪)の話を持ちかけられる。さて、その計画とは・・・。

*

 そもそもの依頼者はアフリカ某国の国連大使(ガン)。その国を含む周辺の数カ国により“サハラの石”と呼ばれるダイヤモンドの争奪戦が行われていたが、現在その石は国連預かりでブルックリンの博物館に展示されている。真の所有者は国連での協議により決定されることになっているが、某国大使は先行き不透明な協議の結果を待つよりは、プロフェッショナルによる強奪を選んだというわけだ。
 報酬は一人2万5千ドル。但し、トータル10万ドル以上は出せないので、5人でやれば一人の取り分は2万ドルになる。
 ケルプが集めたのは、運転が得意なカーキチのマーチ(リーブマン)と、爆弾作りが得意なグリーンバーグ(サンド)。これにドートマンダーとケルプが入って4人での犯行となり、詳細な計画はドートマンダーに任せられる。
 “サハラの石”は、強化ガラスで囲まれた箱の中に入っており、箱の四隅に付けられた鍵を開ける必要があるが、解錠のプロがケルプ。ケルプの表の顔が錠前店のオーナーというのが笑わせます。但し、ドートマンダーはあまりケルプの腕を買っていない。
 “サハラの石”の周りに警報装置などはなく、あとは警備員の排除が計画のテーマで、4人のそれぞれの役割分担と演技がモノをいう。ここは見てのお楽しみ。

 記事の冒頭で書いたとおり、最初の計画は予定通りにいきません。石は手にしたものの、グリーンバーグが持って逃げる途中で警備員に捕まってしまい、慌てた彼はソレを飲み込んでしまう。飲み込むところを見られてないので、グリーンバーグは刑務所に入るものの、石は安泰。
 弁護士をしているグリーンバーグの父親(モステル)も巻き込んで、今度はグリーンバーグの脱獄計画が練られます。このオヤジが、見た目通りのくせ者なんですよね~。(笑)
 この後も、一難去って又一難、というか、意志の疎通が悪くて、2度手間3度手間のリカバリー計画が実行される状況となり、ついにはドートマンダーも胃炎になってしまう。

 これ以上はネタバレになってしまうので、止めておきましょう。
 一つだけ書いておきたいのは、「スコルピオンの恋まじない」と同じく、犯罪に催眠術が使われるということ。呪文の言葉は「アフガニスタン、バナナスタンド」。何十年経っても、この言葉だけは忘れませんでした。簡単ですからネ。

 イエーツ監督らしいロング・ショットや遠近法を効果的に使ったスマートな画作りで、カット・バックのサスペンスもお上手。1972年のアカデミー賞では編集賞(Frank P.Keller、Fred W.Berger)にノミネートされたそうです。

 尚、ドートマンダーの妹役のトポ・スウォープ は、ワイラーの「友情ある説得(1956)」などに出演のドロシー・マクガイアの娘さんでありました。あんまり活躍は聞かないですが。




・お薦め度【★★★=一見の価値あり】 テアトル十瑠

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2 コメント

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アフガニスタン・バナナスタンド♪ (kiyotayoki)
2009-07-04 15:38:32
この呪文の言葉、僕も不思議と頭にこびりついております。観てるこっちも催眠術にかかっちゃったんでしようか(^^;
公開当時に観ましたが、その年の個人的ベスト10の上位に入れたほど大好きな作品でした♪
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kiyotayokiさん、こんばんわ (十瑠)
2009-07-04 20:31:56
以前、kiyotayokiさんチの記事にコメントさせてもらいましたネ。
ホントは、「アフガニスタン、バナナスタン」と覚えていたのに、その時“バナナスタンド”だったと教えられたのでした。^^

>その年の個人的ベスト10の上位に入れたほど大好きな作品でした♪

そ、そうなんですか。
建設中のWTCビルの側をヘリコプターで飛んだりして、結構お金のかかったシーンもあり、ハイセンスな印象が残る都会的な映画でしたよね。
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