(1964/ジュールス・ダッシン監督・製作/メリナ・メルクーリ、ピーター・ユスティノフ、マクシミリアン・シェル、ロバート・モーレイ、エイキム・タミロフ、ジェス・ハーン、ティトス・ヴァンディス/120分)
ジュールズ・ダッシン作品は、めったにTVでも放送されず、レンタルにも見かけないので観る機会が少ない。映画鑑賞歴40年の私でもほとんど観てないのだ。ドキュメンタリー・タッチが話題になったという「真昼の暴動(1947)」、「裸の町(1948)」然り。後に奥さんとなるメリナ・メルクーリ主演の「日曜はダメよ(1960)」も、「死んでもいい(1962)」も、そして「トプカピ」も、ちゃんと観た記憶がなかった。やっとこさ、この度「トプカピ」をノーカットで鑑賞、DVD録画出来ました。
メリナ・メルクーリを首謀者、マクシミリアン・シェルを計画立案者とした窃盗団が、インスタンブールのトプカピ宝物博物館から大きなエメラルド付のスルタンの宝剣を盗むという話。
冒頭で、メルクーリ扮するエリザベスがカメラに向かって自己紹介と、博物館の説明をする。
厳重な警備をかいくぐって物を盗むというのは、監獄からの脱出物と同じように面白いモノですが、冒頭のシーンでも分かるように、これは遊び感覚の冒険談であります。洒落た盗人(ぬすっと)ものといえばワイラーの「おしゃれ泥棒」を思い出しますが、あれよりは手法はハードな本格派。ロマンチックなムードは(エキゾチックな背景以外)ほとんど有りません。
舞台はパリからロンドン、そしてギリシャ、イスタンブールへと向かいます。
今回のNHK-BS放送はアカデミー賞特集の1篇で、「トプカピ」の対象者は、ギリシャの観光案内人を演じたピーター・ユスティノフ。助演男優賞を受賞したのですが、印象は主演級。キューブリックの歴史劇「スパルタカス(1960)」に続いて2度目の受賞です。「クォ・ヴァディス(1951)」でも暴君ネロを演じるなど歴史物の印象が強かった彼が、ここでは小心者のインチキガイドを軽妙に演じ、完全に画面をかっさらってしまいました。
ユスティノフはギリシャにやって来たシェルに、一台の車を隣国トルコのイスタンブールに運ぶ仕事を頼まれる。車には計画に必要な武器がドアの内部に隠されているが、国境で発見されてしまう。近々行われる国際会議を狙ったテロリストと疑われ、何も知らなかったユスティノフは、解放する代わりに、シェル達の動きを監視、トルコ警察に報告する役目を仰せつかる。
イスタンブールで待っていたシェル達は、車が届いて一安心だったが、トルコ内ではユスティノフ以外にその車を運転することが出来ないと言われ、渋々運転手として雇うことになる。
本人は真剣なのに、まぬけな内容を報告するのが笑わせるし、美女に弱く、メルクーリに睫毛が可愛いなどと言われてイイ気になる所も、この後の展開の伏線になっている。
窃盗団には力自慢の男がいるが、実行前に事故が起こり力が使えなくなる。ユスティノフに目を付けたメルクーリに煽てられ、力をみせた彼に、シェル達は計画を打ち明ける。大金にも弱い彼は、一も二もなく窃盗に参加する。参加したはいいが、トルコ警察の踏み込みの予定が実行日の前なので、今度はその事も打ち明けなければいけない・・・、と、まあ、ひょんな事から大きな犯罪に巻き込まれていく男の、二転三転する立場の変化が面白く、高所恐怖症というのに、博物館の屋根を歩き回らなければいけないのも可笑しい。
さすが、後年“サー”の称号も与えらた名優でありました。
今では珍しくない盗みのシーンも、丁寧に描かれていて見もの。結末~エンドクレジットへと、とぼけた展開も楽しい作品でした。
一つだけ気になったのは、シェル達は大金が入るということで宝剣を狙っているんだが、一体誰が彼らにお金を払うのか? 首謀者のメルクーリは自分を泥棒と紹介し、宝剣を欲しがっていたのも彼女だった。ということは、彼女がお金を払うという事になる。そんな人物が、窃盗の実行に参加するというのは現実的ではないが、ま、この際そんな事は、“関係ねぇ”ってか?
ジュールズ・ダッシン作品は、めったにTVでも放送されず、レンタルにも見かけないので観る機会が少ない。映画鑑賞歴40年の私でもほとんど観てないのだ。ドキュメンタリー・タッチが話題になったという「真昼の暴動(1947)」、「裸の町(1948)」然り。後に奥さんとなるメリナ・メルクーリ主演の「日曜はダメよ(1960)」も、「死んでもいい(1962)」も、そして「トプカピ」も、ちゃんと観た記憶がなかった。やっとこさ、この度「トプカピ」をノーカットで鑑賞、DVD録画出来ました。
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/17/e3d73b9776846f6a6d254d1b017eb6f5.jpg)
冒頭で、メルクーリ扮するエリザベスがカメラに向かって自己紹介と、博物館の説明をする。
厳重な警備をかいくぐって物を盗むというのは、監獄からの脱出物と同じように面白いモノですが、冒頭のシーンでも分かるように、これは遊び感覚の冒険談であります。洒落た盗人(ぬすっと)ものといえばワイラーの「おしゃれ泥棒」を思い出しますが、あれよりは手法はハードな本格派。ロマンチックなムードは(エキゾチックな背景以外)ほとんど有りません。
舞台はパリからロンドン、そしてギリシャ、イスタンブールへと向かいます。
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今回のNHK-BS放送はアカデミー賞特集の1篇で、「トプカピ」の対象者は、ギリシャの観光案内人を演じたピーター・ユスティノフ。助演男優賞を受賞したのですが、印象は主演級。キューブリックの歴史劇「スパルタカス(1960)」に続いて2度目の受賞です。「クォ・ヴァディス(1951)」でも暴君ネロを演じるなど歴史物の印象が強かった彼が、ここでは小心者のインチキガイドを軽妙に演じ、完全に画面をかっさらってしまいました。
ユスティノフはギリシャにやって来たシェルに、一台の車を隣国トルコのイスタンブールに運ぶ仕事を頼まれる。車には計画に必要な武器がドアの内部に隠されているが、国境で発見されてしまう。近々行われる国際会議を狙ったテロリストと疑われ、何も知らなかったユスティノフは、解放する代わりに、シェル達の動きを監視、トルコ警察に報告する役目を仰せつかる。
イスタンブールで待っていたシェル達は、車が届いて一安心だったが、トルコ内ではユスティノフ以外にその車を運転することが出来ないと言われ、渋々運転手として雇うことになる。
本人は真剣なのに、まぬけな内容を報告するのが笑わせるし、美女に弱く、メルクーリに睫毛が可愛いなどと言われてイイ気になる所も、この後の展開の伏線になっている。
窃盗団には力自慢の男がいるが、実行前に事故が起こり力が使えなくなる。ユスティノフに目を付けたメルクーリに煽てられ、力をみせた彼に、シェル達は計画を打ち明ける。大金にも弱い彼は、一も二もなく窃盗に参加する。参加したはいいが、トルコ警察の踏み込みの予定が実行日の前なので、今度はその事も打ち明けなければいけない・・・、と、まあ、ひょんな事から大きな犯罪に巻き込まれていく男の、二転三転する立場の変化が面白く、高所恐怖症というのに、博物館の屋根を歩き回らなければいけないのも可笑しい。
さすが、後年“サー”の称号も与えらた名優でありました。
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今では珍しくない盗みのシーンも、丁寧に描かれていて見もの。結末~エンドクレジットへと、とぼけた展開も楽しい作品でした。
一つだけ気になったのは、シェル達は大金が入るということで宝剣を狙っているんだが、一体誰が彼らにお金を払うのか? 首謀者のメルクーリは自分を泥棒と紹介し、宝剣を欲しがっていたのも彼女だった。ということは、彼女がお金を払うという事になる。そんな人物が、窃盗の実行に参加するというのは現実的ではないが、ま、この際そんな事は、“関係ねぇ”ってか?
・お薦め度【★★★★=犯罪映画の好きな、友達にも薦めて】 ![テアトル十瑠](http://8seasons.life.coocan.jp/img/TJ-1.jpg)
![テアトル十瑠](http://8seasons.life.coocan.jp/img/TJ-1.jpg)
「裸の町」が傑作と評判ですけど、僕が圧倒されたのは同傾向の「街の野獣」です。元来リチャード・ウィドマークが好きだったということもありますが、見事なショット群を観ているうちに「これが映画だ」と感心しまくりました。気になって双葉師匠の採点を調べたら我が意を得たりの☆☆☆☆でした。
滅多に観られない作品になってしまいましたが、凄いですよ。
ハリウッドを追い出されてからの作品では、
「宿命」「掟」「日曜はダメよ」「トプカピ」「女の叫び」を観ています。いずれも秀作でしたよ。
「トプカピ」は師匠も<完全防備突破ドロボー映画の代表的傑作>と太鼓判を押していますね。
「男の争い」「死んでもいい」「夏の夜の10時30分」は是非観てみたいのですが、今では超の付く貴重品みたいですわ。
「トプカピ」では、シェル達がギリシャに入る頃のシーンで、港町の風景を移動カメラで細切れに繋いでいるのがドキュメント・タッチながら、詩情も感じさせて印象深い映像でした。
気骨の女、メルクーリの他の作品も是非観たいですね。
突然のTB、コメントで失礼します。
映画情報サイト『シネトレ』です。
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>今では珍しくない盗みのシーン
全くアナログなのが良いですねえ。博物館側も小重量で反応する装置以外はかなり貧弱で、そこに両者が拮抗する所以がある(笑)。
>そんな人物が、窃盗の実行に参加するというのは現実的ではない
きっとヒロインは峰不二子なんですよ。冒険が楽しみなのでしょう。
多分この映画のメリナも峰不二子に影響を残した一人ではないかなあ。「黄金の七人」のロッサナ・ポデスタのほうが直接的でありましょうが、このロッサナのヒロイン自体がメリナの発展形だったかもしれないですしね。
>きっとヒロインは峰不二子なんですよ。
>ロッサナ・ポデスタのほうが直接的でありましょうが
「黄金の七人」も随分観てないなぁ。