旅する心-やまぼうし

やまぼうし(ヤマボウシ)→山法師→行雲流水。そんなことからの由無し語りです。

機械音のない環境で暮らしたい ~国立成育医療センターで見た光景に~

2007-05-15 22:47:36 | 日々雑感
5月12日に東京都世田谷区にある国立成育医療センターへ行った。





目的は、可愛い志耀(Shyo しょう)くん(満1歳)のお見舞い。何やらウイルス性感染とかで入院とのこと。体内への酸素の取り入れ量がやや少なめということで、酸素供給用のビニール管をつけ、栄養補給の点滴を受けている姿は、やはり痛々しい。(でも、今週中には退院できそう。志耀くん、ガンバレ!!)

ここのセンターはもちろん24時間完全介護。とにかく大きく、運営内容も充実している。さすが国立。

しかし、ここの病室で異様な光景に出くわした。

同室の幼児(まだ1歳にもならないような)のベッドでは、寝たきり状態の顔の上でテレビがつけっぱなし。何だ、これは? 目を開ければ画像がいやでも飛び込むし、眠っていても音は脳を刺激し続けるだろう。

どうやらその子のお母さんも、病室に来たときは常にテレビを見ているらしい。自分の家でもきっとそうなのだろう。子供に手がかかることを避けるためなのか。だから、病院側も、子供の精神的安定につながるとの認識から、そうした日常生活と同様の環境においているのかも知れない。

しかし、その子は将来どういう精神構造をもった人間になっていくのだろう? 音のない世界、静寂の世界があってこそ、脳も休まり、また思考するという活動も起きてくるのだろうに・・・。

いつも外部からの刺激にさらされ続ければ、自分で考え行動するという意識や習慣は持てなくなってしまうのではないだろうか。

それでなくとも現実の世界は、好むと好まざるに関わらず、どこに行っても映像や音が飛び込んでくる。発生源者は、他よりも自分を目立つようにしたいので、いっそう激しくやっている。その結果、街全体がヒステリックなものになっていく。

我が住む街・仙台も広瀬通りと青葉通りの間の一番町商店街などはその最たる例。通るたびにイライラ感が増し、一刻も早く抜け出したい思いに駆られる。


川べりや山や野原で聞く風の音、木々の葉のすれる音、さえずる鳥の声。それらは家並み(やなみ)の中にもある。そうしたものにじっくりと耳を傾ける。なんとすばらしいひと時であろうか。ふと記憶の彼方から、詩や歌も沸いてもこように・・・。

  ・・・・・梵字と雲と みちのくは風の巡礼
                         宮澤賢治「五輪峠」


  不来方(こずかた)のお城の草に寝ころびて
  空に吸はれし
  十五の心
                         石川啄木
       ※不来方(こずかた)城=盛岡城
                 
       
       もくせい
                         金子みすず
     もくせいのにおいが
     庭いっぱい

     おもての風が
     ご門のとこで
     はいろか、やめよか
     そうだんしてた
                         


同室の入院している子供たちは、こうした環境から逃げる術(すべ)なくベッドサークルの中で時間を過ごしている。

子供たちの健やかな生育をサポートするはずの国立の成育医療センターで見た異様な光景は、今も我が頭から離れない。


   石川啄木記念館 ⇒ こちら
   金子みすゞ記念館 ⇒ こちら
   金子みすず詩集 ⇒ こちら

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