夜 叉
畑のド真ん中。
360度どちらを見てもフラットで、よく見える。
あと1キロメートル位で、モーテルがある地点。
ゆるい左カーブにさしかかる手前に、電柱が一本。昨日までは立っていた。
その電柱が、根本から見事に折れ~車の上に~のしかかる様に倒れていた。
車は運転席を中心に「くの字」に折れ曲がり、中に人が三人。・・~酒臭がする。
運転手は、ハンドルと車のボデーに挟まれ頭から大量の出血。・・意識がない。
助手席の女は、男の体に乗っかる様になり、意味不明の言葉をわめいている。
これだけ元気なら軽傷だ。
もう一人、後部座席の男は、ものの見事にガラスを突き破り、
上半身が車から飛び出していた。
・・・・・・たぶん即死だ。
見覚えのある顔。
前科はないが以前、盗人で調査した事がある。
午前3時、飲酒運転・スピードの出し過ぎでカーブを回り切れず側面から電柱に衝突。
2人死亡(男)・女は軽傷。
すでに警察組織にイヤケがさしている私には、交通事故処理は、どうでもよかった。
~どうせ警察の事故処理は“飲酒運転・死亡事故”で終わりだ。
ただ、いくら飲酒運転でも現場にスリップ痕が無いのと、盗人の「死に顔」が気になった。
習性的に、知り合いのホステスにアタリを付けて聞き込んだところ、
軽傷の女は、酒に酔うとエッチをしたがるらしい。
いい話になるまでは、色気のある可愛い女だが、
ある時点で突然に豹変し、男が運転する車の助手席で、ヒステリックにワメキながら
「死にたい~・・・」と、大声をあげ、
男が握るハンドルを両手で押し上げる魔性の女らしい。
これまでに、あやうく命拾いしたエッチな野郎が、
後日~眼をむき出して、焼酎に酔いながら話したらしい。
女は九州から流れてきた独り者。・・・・ワケありの女らしい。
女の氏素性なんかどうでもイイ。
面白おかしく飲んだ後、一発できたら最高の女さ・・・
漁場の出会いは、陸(おか)の上~カツオ船に乗れば~それまでじゃぁ~
船に乗り込んだら半年ぐらいは海の上じゃ~どうでもエエぞ!
無免許でも、平気で新車を買う漁場気質で酒を飲み始めた。
~車はガソリンさえありゃぁ~走る。法律で走るワケじゃない。
~女は酒と銭がありゃぁ~いい。
いつものように腹一杯飲んで、女を仕込んだ。
~あとは、どこかに~しけ込むだけ~
女を車に乗せ、ヤル気ムンムンで飛び出したが
今まで、酒に酔いつぶれ、助手席でウトウトしていた女が~突然わめきだし
~「死にたい」~と叫び~運転している男の左腕に抱きついた。
車は横滑りしながら、山の排水溝に衝突し止まった~危うく転落するところだった。
・・・・・・いくらなんでも~こんな女とヤレるか!~その場で、女を蹴り出して帰った。
・・・・・・・・・・コイツがエサになるところだった?
この小話から~・・3ヶ月ぐらい後の飲酒運転死亡事故だ。
~女は、“死にたい” と叫きながら運転手が握るハンドルを押し込んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・つまり、車は右側に急回転したはずだ。
女が殺したようなものだが
いまさら~警察に話して何になる
何もしないだろう
事故から半年後の12月頃、海から吹きつける独特の荒い風の中で、
派手なスカートを風の吹くまま、気ままに羽ばたかせながら、
若い女が九州行きの巡航船に乗り込んでいた。
女の前には、年老いた男が
~後ろには、深いシワの老婆が女を挟み
取り込むように。
3人が同じ歩幅、同じ表情で、下を向き無言で乗船する。
女の両親が~なにがどうでも~女を連れ戻しに来た。無言の帰郷。
2人の老人は、おそらく死んだ後も~夜叉に付きまとわれるだろう。
畑のド真ん中。
360度どちらを見てもフラットで、よく見える。
あと1キロメートル位で、モーテルがある地点。
ゆるい左カーブにさしかかる手前に、電柱が一本。昨日までは立っていた。
その電柱が、根本から見事に折れ~車の上に~のしかかる様に倒れていた。
車は運転席を中心に「くの字」に折れ曲がり、中に人が三人。・・~酒臭がする。
運転手は、ハンドルと車のボデーに挟まれ頭から大量の出血。・・意識がない。
助手席の女は、男の体に乗っかる様になり、意味不明の言葉をわめいている。
これだけ元気なら軽傷だ。
もう一人、後部座席の男は、ものの見事にガラスを突き破り、
上半身が車から飛び出していた。
・・・・・・たぶん即死だ。
見覚えのある顔。
前科はないが以前、盗人で調査した事がある。
午前3時、飲酒運転・スピードの出し過ぎでカーブを回り切れず側面から電柱に衝突。
2人死亡(男)・女は軽傷。
すでに警察組織にイヤケがさしている私には、交通事故処理は、どうでもよかった。
~どうせ警察の事故処理は“飲酒運転・死亡事故”で終わりだ。
ただ、いくら飲酒運転でも現場にスリップ痕が無いのと、盗人の「死に顔」が気になった。
習性的に、知り合いのホステスにアタリを付けて聞き込んだところ、
軽傷の女は、酒に酔うとエッチをしたがるらしい。
いい話になるまでは、色気のある可愛い女だが、
ある時点で突然に豹変し、男が運転する車の助手席で、ヒステリックにワメキながら
「死にたい~・・・」と、大声をあげ、
男が握るハンドルを両手で押し上げる魔性の女らしい。
これまでに、あやうく命拾いしたエッチな野郎が、
後日~眼をむき出して、焼酎に酔いながら話したらしい。
女は九州から流れてきた独り者。・・・・ワケありの女らしい。
女の氏素性なんかどうでもイイ。
面白おかしく飲んだ後、一発できたら最高の女さ・・・
漁場の出会いは、陸(おか)の上~カツオ船に乗れば~それまでじゃぁ~
船に乗り込んだら半年ぐらいは海の上じゃ~どうでもエエぞ!
無免許でも、平気で新車を買う漁場気質で酒を飲み始めた。
~車はガソリンさえありゃぁ~走る。法律で走るワケじゃない。
~女は酒と銭がありゃぁ~いい。
いつものように腹一杯飲んで、女を仕込んだ。
~あとは、どこかに~しけ込むだけ~
女を車に乗せ、ヤル気ムンムンで飛び出したが
今まで、酒に酔いつぶれ、助手席でウトウトしていた女が~突然わめきだし
~「死にたい」~と叫び~運転している男の左腕に抱きついた。
車は横滑りしながら、山の排水溝に衝突し止まった~危うく転落するところだった。
・・・・・・いくらなんでも~こんな女とヤレるか!~その場で、女を蹴り出して帰った。
・・・・・・・・・・コイツがエサになるところだった?
この小話から~・・3ヶ月ぐらい後の飲酒運転死亡事故だ。
~女は、“死にたい” と叫きながら運転手が握るハンドルを押し込んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・つまり、車は右側に急回転したはずだ。
女が殺したようなものだが
いまさら~警察に話して何になる
何もしないだろう
事故から半年後の12月頃、海から吹きつける独特の荒い風の中で、
派手なスカートを風の吹くまま、気ままに羽ばたかせながら、
若い女が九州行きの巡航船に乗り込んでいた。
女の前には、年老いた男が
~後ろには、深いシワの老婆が女を挟み
取り込むように。
3人が同じ歩幅、同じ表情で、下を向き無言で乗船する。
女の両親が~なにがどうでも~女を連れ戻しに来た。無言の帰郷。
2人の老人は、おそらく死んだ後も~夜叉に付きまとわれるだろう。
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