はじめての現場
はじめての○○。と言えば、なにかホノボノとした楽しい想い出が多いと思いますが、
私の記憶にある「はじめての○○」は、はじめてのコロシ~殺人現場です。
我が社(警察)に就職。最初の赴任地に配属された、1ヵ月位。
まだ西も東も判らない、車も自転車も持ってない。
最初の給料で、一番安い洗濯機を買った。それしか無かった。
午前2時半頃、昔の黒電話が~品のない、ただ大きなベルだけが鳴り響く~・・・音だけの音、
・・・今思えば大音量のベルが、古い警察官舎に鳴り響いた。
「コロシがあった。すぐに来てくれ」
これだけだ。
・・・・・・・・何もわからん。
電話で長話するヒマがあれば、一秒でも早く動く。外は土砂降りだ。
秋にはめずらしい、大粒の雨が、古い官舎のトタン屋根にドラム缶をたたくように鳴り響いた深夜、
雨音に急かされながら、ズボンをはきワイシャツのボタン穴を目一杯^横に^広げ、
・・・一つ一つ~ボタンを突っ込む
ワイシャツは、警察官の服にふさわしくない。急いで服を着なければならない職業の人間が
ナゼ?これほど多くの小さなボタンを~ボタンの穴に突っ込む必要があるのか?不思議でならん。
その上から無地の紺色ネクタイを結び込む。~なんの意味もない、くだらん飾りだ。
犯人と格闘するとき、この糞ネクタイをつかまれたら厄介なだけ、何の役にも立たん。
日本の警察官の制服は、警察庁の高級官僚が、イギリスの皇宮警察(正式の呼称は知らない)
をモデルにデザインしたモノらしい。~まったく何を考えているのか???意味不明だ。
現場なんか~・・・・
行く必要も・考える必要も・思う必要も・思考する必要もない・エライ高級官僚が決めることだ。
使いやすい制服が、できるはずがない。
・・・・・・・・・顔も洗わず飛び出した。
車はない、自転車もない、田舎じゃあ~深夜のタクシーもない。なんにもない。
傘一本さし、ただ闇雲に走った。
傘が役に立ったのは、頭の後ろ側だけだ。
土佐の海辺に降りそそぐ、風混じりの大雨が前から吹き上げてくる。
・・・雨は、上からは来ない。
びしょ濡れのまま警察署に飛び込み、受けた指示は、現場保存。
犯人を逮捕した後の殺害現場の保存である。
現場は、町の中心街から少し離れた、雨漏りのする古屋。
40歳代の後家さんが経営する居酒屋兼メシ屋。
後家さんには、小学校2年生の男の子がいた。
まだ若い後家さんに男が付いた。
並の男ならよかったが、普通じゃぁ~なかった。
昔・自分の女房を包丁で刺し殺し、刑務所から出て、まだ2~3箇月。
・・・一番・女をほしがる時期だった。
隣で寝ている小学生から少し離れた場所で、一発エッチした。
が、深夜、~酒の酔いが覚めた頃~・・またやりたくなった。ほかにヤル事がない。
・・・・・・・・・・・・・・・それだけの理由だ。
~「オイ・やらせ」
~「もう、夜中よ。明日にして」
女は半分居眠りをしながら、単刀直入に拒否した。
・・・・・これだけの話だ。
都会の男なら、これだけの話だが、
漁場の漁り火が、脳の中で燃え上がったまま~女を抱いた男は
「なにおぉ~」・・・と・・言うが早いか、女のえり首をつかまえ引き起こし
近くにあったビール瓶(ビール入り)を女の左側頭部に叩きつけた。
ビール瓶は粉々に飛び散り、先端は割れたガラスのヤリになった。
男はガラスのヤリ先を女の左首、頸動脈に思いっきり突き刺す。
ガラスの穂先が飛び、頸動脈から血が吹き出す。
土間に転げ落ちる女めがけ、新しいビール瓶を頭にたたきつけ、
割れ口を最初と同じ箇所に~突き刺す。
~更にもう一度。
合計3回。
現場はドロ~とした、数箇所の血液の塊を中心に、泡沫状の血痕が飛び散っていた。
テレビや映画では、あざやかな鮮紅色の血液が派手に散っているが、動脈を切断されたら、
一気に血液が吹き出し空気に触れ、一部はドロ~とした塊になる。
大きな皿に盛り上げたケチャップの様で、表面は酸化し筋状に黒味がかる。
どす黒い線が、盛り上がったケチャップの上に幾何学的な模様を描いた。
血のニオイに酒・ビールがチャンポンになり、
掃除をしてない古屋の~コケが腐った様なスエたニオイが応援し、独特の空気が充満した。
その上から、雨漏りが・・・ひっきりなしに・・落ちてくる。
雨水は、チョロチョロ~チョロチョロ~・・かわいい流れになりながら、
殺された女の血を少し削り取り、土と綿ぼこりがコケの様に付いた黒いコンクリートの上を
右往左往しながら赤い水筋になって、古屋の出入り口まで押し流した。
まるで魚屋の店先のように、赤い血が入口ドアの凹みに溜まった。
その周りに飛び散ったビール瓶の破片が、裸電球に照らされ光っていた。
キラキラ光る破片の中に、女の死体がボワァ~とした目を開き転がっていたが
首の肉は、むしり取った様に無くなっていた。
テレビや映画では、スパッと切った傷口が出てくると思いますが、
あの様なキズは、“死体を切った”場合にしかできない。
人は生きている。
~目にも口にも筋肉にも“張り”がある。
切れば傷口は“開く”。
特に首の肉は、筋肉の筋が同じ方向にある。
切れば、傷口は上下反対方向に“まくれる”様になり、
その部分の肉が、上下に動くから傷口は大きく開き
見た感じは、肉をムシリ取って除けた様になる。
目と口にも力がなくなるから、全ての力がゆるみ、ドラマに出てくるような
怨念を丸出しにした、凄みのある顔にはならない。
死体には、美しい者も凄い者もいない。全ての肉がゆるんだ~塊だ。
死体搬送後に物音ひとつしない、最悪の出来事があった闇のまん中で、
良く言っても、悪く言っても、一人で現場保存だ。
なんにもない・音もない・独り言もない・・・暗闇の中~
~腐った様な湿った空気に、酒と血の臭いが混じり合い~雨漏りだけが規則正しく落ちていた。
・・・・・・・・・・・・・・ただ明るくなるまで待った。
・・・それから~朝メシを~何も考えず大急ぎで胃袋に放り込み死体解剖。
・・~それから~晩メシを~大急ぎで口の中に掻き込み書類作成。
死体とメシと~大急ぎ~その合間に、トイレでユックリくつろいだ。・・・初めての現場。
あれから32年。
首の肉がむしり取られた様に殺された女が横たわっていた所。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今は小僧寿しの駐車場になっている。
あの時と同じ場所は、駐車スペースに区分けされた白い白線が引かれ、
たのしそうに行き交う買い物客しか目にすることはない。
この場所で、実の母親が殺されるのを眼前に見た少年は、ハダシで外に飛び出し。
警察まで走って行き ~「お母さんが殺される」と泣きながら叫んだらしい。
その後、親戚中を次から次へ、タライ回しにされ高校生になった。と、までは聞いたが、
その後の事は判らない。
いや、聞こうと思えばできた。調べたらいい。
が、母親が眼の前で色男に殺され、裸足で泣きながら警察まで走った小学生に
何と言えばいいのか、会うのも聞くのも恐かった。祈るしかない。
事件から数日後、警察署の受付に下唇を振るわせ、声にならない声で
・・・・「アァ~・のう~」と言う女性が現れた。
まわりには運転免許証の書き換えやら、交通事故の当事者などが、
それぞれの言い分を言いたい放題・ 好き勝手にわめいている最中。
・・・・・・茫然とした表情で一言
「ァのう~・・●●の姉です・・・・・・」
・・・・・・・・・・・女を殺した犯人の姉だった。
~これで二度目。
・・・・・最初は自分の妻を包丁で殺し、次がビール瓶。~二度目の殺人。
このコロシにも、弟の後始末は“姉”しか~・・来ない。・・来られない~
その後、この「姉」が、どのような人生を送ったのか?・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・送っているのか?・・・・・・・・
これだけは、二度と聞かなかった。
世の中の弱者は、最後の最後まで弱者だ。
自分の主張をハッキリ通せる弱者は見たことがない。
長い時間だけが流れた。あれから有名な知識人と名乗る立派な御歴々が右と左にわかれ、
数々の理想論を絶対主義のように主張する勇猛果敢な姿を幾度かテレビで見たり、
本で読んだりしましたが、
~それで何か変化があったなら~
ある知識人と名乗る立派な御仁の経済状態が良くなった。・・・~それだけの変化でしょう。
ほかに、何か・・?~変化がありました?・・・・???????
はじめての○○。と言えば、なにかホノボノとした楽しい想い出が多いと思いますが、
私の記憶にある「はじめての○○」は、はじめてのコロシ~殺人現場です。
我が社(警察)に就職。最初の赴任地に配属された、1ヵ月位。
まだ西も東も判らない、車も自転車も持ってない。
最初の給料で、一番安い洗濯機を買った。それしか無かった。
午前2時半頃、昔の黒電話が~品のない、ただ大きなベルだけが鳴り響く~・・・音だけの音、
・・・今思えば大音量のベルが、古い警察官舎に鳴り響いた。
「コロシがあった。すぐに来てくれ」
これだけだ。
・・・・・・・・何もわからん。
電話で長話するヒマがあれば、一秒でも早く動く。外は土砂降りだ。
秋にはめずらしい、大粒の雨が、古い官舎のトタン屋根にドラム缶をたたくように鳴り響いた深夜、
雨音に急かされながら、ズボンをはきワイシャツのボタン穴を目一杯^横に^広げ、
・・・一つ一つ~ボタンを突っ込む
ワイシャツは、警察官の服にふさわしくない。急いで服を着なければならない職業の人間が
ナゼ?これほど多くの小さなボタンを~ボタンの穴に突っ込む必要があるのか?不思議でならん。
その上から無地の紺色ネクタイを結び込む。~なんの意味もない、くだらん飾りだ。
犯人と格闘するとき、この糞ネクタイをつかまれたら厄介なだけ、何の役にも立たん。
日本の警察官の制服は、警察庁の高級官僚が、イギリスの皇宮警察(正式の呼称は知らない)
をモデルにデザインしたモノらしい。~まったく何を考えているのか???意味不明だ。
現場なんか~・・・・
行く必要も・考える必要も・思う必要も・思考する必要もない・エライ高級官僚が決めることだ。
使いやすい制服が、できるはずがない。
・・・・・・・・・顔も洗わず飛び出した。
車はない、自転車もない、田舎じゃあ~深夜のタクシーもない。なんにもない。
傘一本さし、ただ闇雲に走った。
傘が役に立ったのは、頭の後ろ側だけだ。
土佐の海辺に降りそそぐ、風混じりの大雨が前から吹き上げてくる。
・・・雨は、上からは来ない。
びしょ濡れのまま警察署に飛び込み、受けた指示は、現場保存。
犯人を逮捕した後の殺害現場の保存である。
現場は、町の中心街から少し離れた、雨漏りのする古屋。
40歳代の後家さんが経営する居酒屋兼メシ屋。
後家さんには、小学校2年生の男の子がいた。
まだ若い後家さんに男が付いた。
並の男ならよかったが、普通じゃぁ~なかった。
昔・自分の女房を包丁で刺し殺し、刑務所から出て、まだ2~3箇月。
・・・一番・女をほしがる時期だった。
隣で寝ている小学生から少し離れた場所で、一発エッチした。
が、深夜、~酒の酔いが覚めた頃~・・またやりたくなった。ほかにヤル事がない。
・・・・・・・・・・・・・・・それだけの理由だ。
~「オイ・やらせ」
~「もう、夜中よ。明日にして」
女は半分居眠りをしながら、単刀直入に拒否した。
・・・・・これだけの話だ。
都会の男なら、これだけの話だが、
漁場の漁り火が、脳の中で燃え上がったまま~女を抱いた男は
「なにおぉ~」・・・と・・言うが早いか、女のえり首をつかまえ引き起こし
近くにあったビール瓶(ビール入り)を女の左側頭部に叩きつけた。
ビール瓶は粉々に飛び散り、先端は割れたガラスのヤリになった。
男はガラスのヤリ先を女の左首、頸動脈に思いっきり突き刺す。
ガラスの穂先が飛び、頸動脈から血が吹き出す。
土間に転げ落ちる女めがけ、新しいビール瓶を頭にたたきつけ、
割れ口を最初と同じ箇所に~突き刺す。
~更にもう一度。
合計3回。
現場はドロ~とした、数箇所の血液の塊を中心に、泡沫状の血痕が飛び散っていた。
テレビや映画では、あざやかな鮮紅色の血液が派手に散っているが、動脈を切断されたら、
一気に血液が吹き出し空気に触れ、一部はドロ~とした塊になる。
大きな皿に盛り上げたケチャップの様で、表面は酸化し筋状に黒味がかる。
どす黒い線が、盛り上がったケチャップの上に幾何学的な模様を描いた。
血のニオイに酒・ビールがチャンポンになり、
掃除をしてない古屋の~コケが腐った様なスエたニオイが応援し、独特の空気が充満した。
その上から、雨漏りが・・・ひっきりなしに・・落ちてくる。
雨水は、チョロチョロ~チョロチョロ~・・かわいい流れになりながら、
殺された女の血を少し削り取り、土と綿ぼこりがコケの様に付いた黒いコンクリートの上を
右往左往しながら赤い水筋になって、古屋の出入り口まで押し流した。
まるで魚屋の店先のように、赤い血が入口ドアの凹みに溜まった。
その周りに飛び散ったビール瓶の破片が、裸電球に照らされ光っていた。
キラキラ光る破片の中に、女の死体がボワァ~とした目を開き転がっていたが
首の肉は、むしり取った様に無くなっていた。
テレビや映画では、スパッと切った傷口が出てくると思いますが、
あの様なキズは、“死体を切った”場合にしかできない。
人は生きている。
~目にも口にも筋肉にも“張り”がある。
切れば傷口は“開く”。
特に首の肉は、筋肉の筋が同じ方向にある。
切れば、傷口は上下反対方向に“まくれる”様になり、
その部分の肉が、上下に動くから傷口は大きく開き
見た感じは、肉をムシリ取って除けた様になる。
目と口にも力がなくなるから、全ての力がゆるみ、ドラマに出てくるような
怨念を丸出しにした、凄みのある顔にはならない。
死体には、美しい者も凄い者もいない。全ての肉がゆるんだ~塊だ。
死体搬送後に物音ひとつしない、最悪の出来事があった闇のまん中で、
良く言っても、悪く言っても、一人で現場保存だ。
なんにもない・音もない・独り言もない・・・暗闇の中~
~腐った様な湿った空気に、酒と血の臭いが混じり合い~雨漏りだけが規則正しく落ちていた。
・・・・・・・・・・・・・・ただ明るくなるまで待った。
・・・それから~朝メシを~何も考えず大急ぎで胃袋に放り込み死体解剖。
・・~それから~晩メシを~大急ぎで口の中に掻き込み書類作成。
死体とメシと~大急ぎ~その合間に、トイレでユックリくつろいだ。・・・初めての現場。
あれから32年。
首の肉がむしり取られた様に殺された女が横たわっていた所。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今は小僧寿しの駐車場になっている。
あの時と同じ場所は、駐車スペースに区分けされた白い白線が引かれ、
たのしそうに行き交う買い物客しか目にすることはない。
この場所で、実の母親が殺されるのを眼前に見た少年は、ハダシで外に飛び出し。
警察まで走って行き ~「お母さんが殺される」と泣きながら叫んだらしい。
その後、親戚中を次から次へ、タライ回しにされ高校生になった。と、までは聞いたが、
その後の事は判らない。
いや、聞こうと思えばできた。調べたらいい。
が、母親が眼の前で色男に殺され、裸足で泣きながら警察まで走った小学生に
何と言えばいいのか、会うのも聞くのも恐かった。祈るしかない。
事件から数日後、警察署の受付に下唇を振るわせ、声にならない声で
・・・・「アァ~・のう~」と言う女性が現れた。
まわりには運転免許証の書き換えやら、交通事故の当事者などが、
それぞれの言い分を言いたい放題・ 好き勝手にわめいている最中。
・・・・・・茫然とした表情で一言
「ァのう~・・●●の姉です・・・・・・」
・・・・・・・・・・・女を殺した犯人の姉だった。
~これで二度目。
・・・・・最初は自分の妻を包丁で殺し、次がビール瓶。~二度目の殺人。
このコロシにも、弟の後始末は“姉”しか~・・来ない。・・来られない~
その後、この「姉」が、どのような人生を送ったのか?・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・送っているのか?・・・・・・・・
これだけは、二度と聞かなかった。
世の中の弱者は、最後の最後まで弱者だ。
自分の主張をハッキリ通せる弱者は見たことがない。
長い時間だけが流れた。あれから有名な知識人と名乗る立派な御歴々が右と左にわかれ、
数々の理想論を絶対主義のように主張する勇猛果敢な姿を幾度かテレビで見たり、
本で読んだりしましたが、
~それで何か変化があったなら~
ある知識人と名乗る立派な御仁の経済状態が良くなった。・・・~それだけの変化でしょう。
ほかに、何か・・?~変化がありました?・・・・???????