●悪魔と踊ろう vol 1-6 不思議な果実
明日から全署員で、オートバイが発見された箇所から下流にかけ、川岸の捜索を開始する。
長い草は鎌で刈り取り、竹薮や岸沿いの川の中まで徹底的に捜索する。
当分の間、非番・休日返上になる、との事だった。
えらい熱を入れて、演説するような口調で力説したが、
・・・~そんなに力まんでもいい。
捜索するのは、当たり前。草を刈るのも当たり前、あとは人数をそろえたらいい。
これほど“リキ”を入れるなら、いっそのこと「殺し」として捜査したら、いいんじゃないか?
もし違っていたら、あとで「ゴクロウサン」と言えばいい。
そうしないのが公務員と言う、日本のお役人が造りだした組織だ。
もし事件として取り扱った場合、解決すれば手柄になるが、
何の材料も無く、むやみに時が過ぎれば失点となる。
この様な~重大事件は~逐一・些細な事まで“本部報告”しなければならない。
いかにして“本部”を納得さすか~敵は本能寺にあり~“報告”が、すべてである。
そんな“冒険”をしてまで、仕事をするような人間はいない。
仕事とは出世の糧であり、糧とは、うまいモノだけを蓄積するのがベストだ。
公務員には公務員のモノサシがある。このモノサシにあわない組織人、
たとえば私の様なバカは、どんどん切られていく。
この20年間に警察官の気性も随分かわった。
昔は土佐の“イゴッソ”を地でいく頑固な刑事がいくらでもいたが、
そんな~上から見て扱いにくいヤツは、ドンドン切り捨てられ飛ばされた。
それが20年たったら~世代が入れ替わり、“上手モン”ばかりが繁殖する。
たてつく者はいなくなる。そうまでして仕事をしなくても、いくらでも出世はできる。
1にコネ、2に銭、3に要領、“三種の神器”だ。
明日の方針が決まれば~言われたとおり~やればいい。
オートバイが発見されたことを喋るな。~と、言うなら女房にも、だまっておればいい。
簡単なことだ。しかし、なにか風向きが変な感じがした。
これは明らかに事件だ。が、・・・何かまわりくどい・・イライラするような動きだった。
一日中、真夏の太陽に照らされた挙げ句、うんざりする訓示を聞かされ、疲れきって帰宅した。
何も喋る気がしない、「喋るな」と言う御命令だから丁度いい。その夜は早く寝た。
翌朝、はやく目覚め、滅多にないこと、朝はやく新聞を見てビックリ。
なんと、新聞に大きな見出しで、しかも写真入りの記事かある。
「四万十川から、失踪した銀行員のオートバイ発見」と書いている。
あれほど厳格に~エラソウな態度で“秘密にしろ”と、
厳命しながら~地元新聞は~発見された場所を写真撮影して、
・・・・・・・こと細かに説明している。
遠距離の写真撮影ができると言うことは~昼間の明るいうちでないとできない。
つまり昨日~「喋るな」と言う訓示をウンザリするほど、
・・・・・~ながながと受けていた時間帯までに、撮影しなければ写らない。
・・・・・・・・・・これは、どう言う訳だ。
~県警本部から、漏れたとしか考えられない。
県で出世するには、県最大のマスコミ、地元新聞の“ゴキゲン取り”をして
人気を上げていなければ、県の幹部クラスにはなれない。と、言うのが定説だ。
逆に普段から地元新聞に「特ダネ」をエサとして流しておけば、警察の悪口は程々に、
うまくコントロールできる。“持ちつ~持たれつ”・・の仲。
・・・・戦争中の「大本営発表」と、同じだ。
しかし、もし・この失踪事件が強盗殺人事件なら、オートバイを四万十川に落した事実は
~犯人しか知り得ない“事実”~である。
犯人を逮捕した際、四万十川のどこに~“落とし込んだ” か?・・を自白させれば、
犯人しか~知り得ない自供を取ったことになり、裁判で有罪になる絶好の材料である。
これを、いとも簡単にマスコミに流す人は、いったい~どんな感覚で生きているのか。
・・・ほんとに人間なのか?~警察でメシを食う人間か?
腹が立つ以上に、ガクゼンとした思いだけが残った。
こんな環境の中で汗を流して、一生懸命働き、仕事で失敗すれば飛ばされ、
成功すれば、上役が得するシステムになっている。
~ なんとも~やりきれん思いで朝飯をかき込んだが、最近よくある。
メシを食った後・・今なにを食ったか、思い出そうとしても?
~ 何を食ったか?まったく記憶の中に出てこない。
~今の事を覚えてない。
おかしな話だが、現実に時々ある。決して痴呆症ではない。
今・生きている環境と自分の生き様が、まるで他人を見ているようで、
時々ボンヤリすることがある。
そんな、おかしな現象が起こる。
・・病気だろうか?
病名は、職場がイヤになった症候群、はやく“ヤメタイ自閉症”とでも銘々するか。
かと言って仕事が嫌いな訳ではない。
むしろ面白い、このチグハグな感覚を、自分で持てあましている。
~イヤならイヤで、やめたらいい。そんな事はしたくない、仕事はやりたい職場はイヤだ。
今朝の新聞を読み、フト発作が起きた~朝飯に何を食ったか覚えてない。
何か胃袋に入れた事は間違いない~ソレでいい。
車に乗れば、いやでも職場につく、今日は県本部鑑識課から鑑識指導官が来て。
いや、「来て」などと軽々しく言ってはだめだ、鑑識指導官がミエラレテ
四万十川から見つかったオートバイから、指紋を採取する。
指導官は鑑識技術の神様みたいな人だから、ウヤウヤシクありがたく、指導をしていただき、
その助手として下働きができることを、光栄に思わなければならない。
今日一日は、優秀な組織人として振る舞う。が、結果は判っている。
四万十川の川底で、最低でも 48時間以上の長時間、
流れにさらされ、水にもまれた金属の塊から、指紋が採取できる訳がない。
そんな事はどうでもいい、~やることが仕事だ。
~やりました、~やっています、との姿勢だけが必要である。私も一応・クソ役人の1人だ。
昼前には指導官が見えられる。
それまでに万全の準備を整え、お迎えしなければならない。
やる事はいくらでもある、ただ今日も一日・~むだに時間を浪費することだけが残念である。
四万十川の河原では、数10人の警察官が鎌を持ち、草を刈りながら捜索している。
なにか発見しただろうか?それだけが気がかりだった。
とにかく今日はオートバイだ、気を取り直し指紋採取の準備に専念する。
オートバイは完全に乾燥していた。
ただ気になるのは、車体のあちこちに~コスッタような跡が付いている。
おそらく川底から引き上げた際に、作業員が指でこすったものだろう、
その跡に付いていた指紋は、確実に消えている。不用意にオートバイを引き上げた証拠だ。
部屋の整理を済ませ指導官の到着を待ったが、いつまで待っても御見えにならない。
早く指紋採取を済ませ、四万十川の現場に行きたい気持ちが先に立ち
あれこれ問い合わせていると、指導官はすでに到着しており署長室に入っている、との事だった。
署長室で何をしているんだ。~クソバカが、早く仕事しろ~と、
言ってやろうと思い署長室をのぞいてみると、
中で料理屋から取った高級な弁当を食べていた。すでに前日から予約していたようである。
・・~それなら、と、少し早いが愛妻弁当を取り出して早弁を食べ、
近くの喫茶店でコーヒーを飲みながら時間をつぶした。
どうしてこんな時に、よけいな時間を使うのか、またもやイライラしながら考え込む。
所詮何をやってもこの程度だ、最も重要なことは、上役とのツナガリであり現実に何をどうするか、
・・・現場の動きなんか二の次だ。
結果は判っている~「指紋は出ない」・・どうでもいいから早く済ませろ。
指導官が来たのは午後1時を20分ぐらい過ぎて、やっと見えられた。
まさに「見えた」~と言う感じだった。
形式どおりの挨拶を済ませ、さっそく神様のお手並みをはいけんした。
神様はオートバイ全体を、透明のビニールでスッポリ包み込み
その中にアメリカ製のハードエビネンスなる“新製品”の封を切り、ビニールの内側に張りつけた。
ハードエビネンスとは商品名で、日本語に訳すと「硬い証拠」と言う意味である。
証拠とは指紋のことで、早い話が瞬間接着剤を固形化しサロンパス様にした物をはがし
瞬間接着剤の気化ガスで、指紋採取するものである。
ただ、これには難点が有る。
~かりに、このハードエビネンスを車内に置いた場合、
真夏の太陽に照りつけられた車の中は、大変な温度に上昇する。
すると成分である・瞬間接着剤のシアノアクリレートガスが揮発してしまい、何の効力も無くなる。
果たして神様が仕込んだアメリカ製の新製品が、どこまで威力を発揮するか、 見届けることにした。
オートバイを包み込んだビニールの内側には、故意に指紋を付けている、
ガスが揮発すれば、まず先に、その指紋が出るはずである。
~ところが、いくら待っても出なかった。心配したとおり、すでにガスは揮発して、効力は無くなっている。
いつまで待ってもしかたない。時間の無駄。
即、用意していた瞬間接着剤をズボンのポケットから取り出し
「これを使いましょう」と提案した。
こんなところが私の悪いところだ。
上の人が次に何をするか、全て黙って待ち、後で相手の措置をホメタタエたらいい。
それをいきなりジャンプして、早々に結論を出してしまう。
上から見ると、いやなヤツだろう。
とにかく~どうでもいいから~瞬間接着剤を多量に灰皿に移した物を三つ用意して
・・・オートバイの前、シートカバー、後部の三個所に置いた。
直ぐビニールで全体を密封し、ガスが漏れて無い事を確認してから、室内の冷房を暖房に切り替えた。
温度を上昇させ、シアノアクリレートガスが揮発しやすくするためだ。
こうすれば、通常の半分位まてば指紋が検出される。
後輪の泥よけカバーから一個採取できた。
わざわざ指導官殿が警察本部から見えられて、一個も取れないでは済まない。
カッコウが付かない。どうでもいいから出せ、~やりました。~頑張りました。
・・と、報告すればいい。どうせ~たいした結果は出ない。
後始末を済ませ、これから四万十川河川敷の現場に行こうとした際。
指導官は署長室で、署長に詳細にわたり~説明していた。
これが世渡りだ、現実にはクソにもなってないが、
ドシロウトの署長に 専門用語をまじえて説明すれば、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・~アホは何か?納得するだろう。
結局~目的は、アホを納得させ、御自身の存在感を誇示する為か~結果は、立派な組織人である。
・・・うまいものだ。
・・・・・・~感心しながら~現場に向かおうとした~
後日・・オートバイから採取された指紋は、やはり~引き上げ作業に従事した、刑事課員のものであることが判明した。
警察官の指紋は、本人の気が付かないうちに全て保管されている。
警察学校在学中に被疑者(犯人)指紋採取の練習と称し、二人一組になり、それぞれの指に墨を付けて、
一生懸命・お互いの指紋を取り合った。
たしかに練習と言われてやったことだが、じつは・この時取った指紋は確実に保管されている。
したがって警察官全員の指紋は、本人が死ぬまで個人資料として管理されている。
しかし~オートバイの引き上げ作業をした刑事さんは、手袋もせず~力まかせにオートバイを引っ張ったのだろう。
そうでなければ、川の中で指紋は付かない。一体どうゆう感覚で仕事をしているのか、
情けないやら、ハラガ立つやら、まぁ~この程度のものだ。
署長室で、上手に世渡りしている指導官を横目で見ながら外に出た時には、
すでに午後4時45分になっていた、今から現場に行ってもしかたない。
また今日も1日~くだらん時間が流れた。情けないが、どうしようもない。
真夏の太陽が照りつけ、空気が淀んでいる。
何もかも馬鹿らしくなり、自然に歩き出した。5分ぐらい歩いたところに
警察官が絶対行かない喫茶店がある。ジャズ喫茶だ、
道から少し入り込んだ目立たない場所に、青色の壁を隠すようにポツリと建った、
ブルーノートと言う小さな店があって、モダンジャズが流れていた。
演歌が好きな人は、絶対来ないから時々行った。
昔、ビリーホリデイが好きだった。ベトナム戦争の終わり頃、岩国に米軍の
ベースキャンプがあり、心身共に傷ついたアメリカ兵が多く集まっていた。
私は、広島の工業大学で将来を夢見ながら当時の総理 田中角栄が 言うところの
「日本列島改造論」を信じ工場の流れ作業をコントロールする生産工学を学んでいた。
当時は学生運動が盛んで、浅間山荘にたてこもった日本赤軍と、 機動隊の攻防がテレビ放映された時代だ。
広島でも学生運動が盛んになり、あちこちにヘルメット姿でゲバ棒を持った学生が路上で
気勢を上げていた。人間の心理とは、多数が正義であり少数はバカにされる。
さらに1人は悪だ。
ゲバ棒を振り回し学生運動に没頭する者が正義で、何もしないヤツはノンポリ学生、
1人で何もしない者は害悪だった。
そう言う風潮のなか、1人の女子大生が首をつって自殺した。
学生運動を否定し、仲間の中で孤立して自殺したのだ。一番悲しい出来事だった。
が、遺体に逢うこともできなかった。
事の話を聞いたときは、既に彼女の遺体は故郷に帰っていた。
広島のスナックに、黒人のアメリカ兵士が1人座っていた。
もうろうとしながらウイスキーを飲み、ビリーホリデーの「奇妙な果実」に聞きいっていた。
南部の木々に奇妙な果実が、
むごたらしく、ぶら下がっている。
その葉は血に染まり、根本にまで、血潮はしたたり落ちている。
黒い遺体は、南部の微風に揺れそそぎ、
まるでポプラの木から、垂れ下がっている奇妙な果実のようだ。
美しい南部の田園風景の中に、思いもかけず見られる、
腫れ上がった眼や、苦痛に歪んだ口
そして甘く新鮮に漂う木蓮の香りも、突然肉がこげる臭いとなる
群がるカラスに、その実をついばまれた果実に、雨は降り注ぐ。
風になぶられ、太陽に腐り、道にくち落ちる果実
奇妙な、むごい果実が、ここにある。
(KKK)
“愛”と言う美しい名の下に集まった。
片方から見れば愛国者の秘密結社・KKK・・~クー・クラックス・クランに、
なぶり殺しにされた黒人の死体を
遊び半分に “吊した”
恐るべき情景が、ビリーの語りとも言える歌声で、
1本の木に、1人はこの枝で首を吊され~
あの人は~こっちの枝、
この人は~こっちの枝に~吊り下がっている。
奇妙な形の “木の実” が、あるモンだと、
全ての死体を抱きしめるがごとく歌い込む・・~誰にもできまい。
~・・コレに聞き入る黒人兵の姿も絵になって、
酒に涙を落とした初めての夜だった。
人は流れの中で上手に生きている、~回りを見ながら。
が、1人で正論を見つけることもだいじだ。
実際ゲバ棒学生の多くは、卒業と同時にすまし顔で、
彼らが最も攻撃した大企業に就職している。
奴らに、奴らの頭には矛盾と言う言葉は無いんだろう。
飲んだ帰り、1人でウロウロしているヘルメット姿のゲバ棒学生を見つけ
無茶苦茶な因縁をつけ喧嘩を売りつけ殴り倒した。
起きあがる相手に回し蹴りをブチ込みサッサと逃げた。
2人目は何も言わずに跳び蹴りをぶち込み即座に逃げた。
酒と空手しか能のないアホが、せめて彼女の供養にできる事は、これぐらいの事だった。
酒に酔った勢いで、相手にチドリ足で近づき油断させ、瞬時に猛攻をくわえ
一撃で倒し逃げる。酔拳の極意である。土佐に帰ろう。やっぱり土佐がええ。
そう思う様になったのはこれからだ。
土佐に工業は無いがアッケラカンと酒を飲み、「犬と猫のどっちが強いか」
くだらんことを真剣に論ずる気風がある。やっぱり土佐がええ。
強烈な望郷の念が働いたが、仕事は無い、
昭和50年のオイルショック・ドルショックでスーパーにトイレットペーパーが無くなった時代、
田舎に工業大学の学生が就職出来る職場は無かった。
大学に入る時は「日本列島改造論」日本の前途は洋々としたものだった、
それが大学を出る時は、スーパーにトイレットペーパーが無い。まるで詐欺だ。
それじゃあ~警察官にでもなるか。
この安易な決断が間違いのもとだった。
その後どうすることもできず、ズルズル底無し沼に飲み込まれるハメになろうとは 夢にも思わず、
ただ土佐に住みたい一心で警察官になった。
結婚して家庭を持てば、いまさら仕事を辞めるわけにはいかない。
都会なら、ほかにも仕事はあるが、高知県のような田舎でいくら探したところで
たいした仕事はない。土佐に帰りたい、そう言う感傷的な思いが悔やまれる。
今となっては、どうすることもできない。流れに身を任すしか他に方法がない。
なんともならん・・
喫茶ブルーノートで1人、昔の物思いにふけりながら、
子供だけは自分の様な、くだらん生き方はさせたくない、
それなら今を乗り切るしかない。そう言い聞かす、
そして又、イヤミな戦場に出て行く。この繰り返しだ。
今日もくだらん時間を1日つぶした。
明日、また日が昇る。
車をそのまま職場に残し、歩いて家に帰る事にした。
車を残して置けば、まさか帰ったとは思うまい。形を残して実体を移動さす、
家に帰ってビールでも飲むか。少し怠ける、これが心のいやしだ。
もっとも結果はどうあれ、
いそがしそうに~パタパタ動き回っておれば、警察では評価が高くなるが、そんな事はどうでもいい。
大動員をかけて捜索した、四万十川河川敷から何も発見されなかった。
何もないでは、シャレにもならん。翌日から~さらに規模を大きくして再捜索が開始された。
横一列に警察官が並びそのまま前進する。
前に竹藪があっても、水たまりがあっても~そのまま突っ切る。
それでも何も見つからなかった。
太陽はジリジリ音をたてるように照りつけている。
皆、汗で濡れ鼠のようにビショビショ になり
帽子から地面に、しずくとなって汗が落ちた。何も発見できない。
河原には木が生えてない、石ころばかりが、ごろごろ転がっている。
日陰が無い。上から太陽、下から石の熱気がむせ返る。石に汗が落ちても直ぐ乾いた。
みんなグッタリして座り込んでいた。
遠くで誰かが騒いでいた、何か発見したようだ。
重たい体を引き起こし、声がする方に走った。
・・・~いつ来たのか“タンス係長”が、何か~わめいている。
「どうして、これが見えん」等と言う内容だった。
見ると 、直径40センチ位の範囲で
~プラスチックがドロドロに融けたような黒い塊が、
道路から少し離れた地面の上に、無造作に放置されていた。
黒い塊をヒックリ返すと、下には焼けこげた ・一国銀行の伝票様の書類が
融けたプラスチックにくっついていた。
伝票は、30枚位あり、上にあるのは部分的に燃えていたが
その下にある物は、まったく燃えてなかった。
この伝票は、失踪した銀行員が住んでいた・マンションのゴミ箱で見た物と、同じ伝票だった。
紙と言う物は、ピッタリ・くっつくと、なかなか燃えない、
例えば本なんかを燃やす場合、
火がついた本を開き、中に火を入れなければ、燃えるものではない。
つまり、この伝票を燃やした者は、紙が燃えにくい、くっついた紙は、なかなか燃えない、
~と、・言う観念がない者が燃やした。~という事になる。
黒い塊は、ビニールかプラスチックが熱で溶けたものだろう、炎で炭化され黒くなった。
が、黒い塊をひっくり返すと、下側は熱だけで融解しているので、
溶ける以前の色が鮮明に残っていた。~青色だ。
この色は銀行・農協その他金融機関の外回りの従業員が、使用するオートバイの前側の
荷カゴに、これと同じ色の丈夫なビニールカバーを取り付けている。
数百万円、又は一千万円を超す現金を鞄に入れ、
オートバイのハンドル前にある荷カゴに入れて、
この荷カゴ全体を青色のビニールカバーで、すっぽり包み込み、
雨や風を防ぎながら、オートバイを走らせている。
このビニールカバーを取り外し、この下に一国銀行の伝票を置き・火を付けて燃やした。
ところが、上のビニールカバーを燃やす事に一生けんめいになり、
肝心の伝票は、蒸し焼き状態になって完全には燃えなかった。
~こう考えるのが自然だろう。
汗を流しながら地面に~はいつくばって~現物を見ながら、考えている私の頭の上で
タンス係長が得意げにわめいていた。
「こんな・わかりやすい・道ばたにある物をどうして、発見できん。
・・・・・・・・・・・・・オレはすぐ見つけた」
回りには、10人位の警察官が輪になって聞いていた。
今頃ノコノコやって来て、車を止めたあたりを少しぐらい探し・・・・・
~たまたま見つけただけだろう。~むしょうに腹が立った。
が、その時ふと考えた。~こんな所を探す警察官はいない。~・・そのとおりだ。
タンス係長が~たった一度だけ、いいことをした。
発見場所から 30メートル位離れた箇所に、ゴミ焼き用のドラムカンがある。
その回りには、数カ所ゴミを燃やした黒い塊がある。
それぞれの塊は、直径1メートル以上の大きさである。
この場所は、地元住民のゴミ焼き場だ。
そこからわずか30メートル位離れた箇所、まさか~こんなところに。
誰でもそう思う~だから誰も探さなかった。
探したのはタンス係長だけだった。~タンスが言った
「こんな・わかりやすい所」~まさに~そのとおりだ。
・・・・ココは、地元のゴミ焼き場。
タンスが初めて、いいことを言った。
“タンス” だからこそ、乗ってきた車を止めた~ゴミ焼き場を探した
車が自由に出入りできる、地元住民(川漁師)のゴミ焼き場
その前には四万十川が流れ、川舟が三隻係留されている。
~三隻とも地元の川漁師の舟~ その三隻の持ち主が、共同で使用しているのが、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・このゴミ焼き場だ。(現在は無い)
つまり地元民の生活圏だ。
こんな所で銀行員が、失踪する前に証拠隠滅を計るだろうか
・・・・・・・・・・まず場所・・今は鮎やウナギ漁をする人が多い。
川漁をする人は、早朝又は深夜・いつ現れるか判らない~前に川舟、後ろはゴミ焼き場。
ここは、完全な地元川漁師の生活圏の中にある。
このエリアの中で、よそ者が火を焚けばどうなる。
とたんに地元住民の眼が光る。~まちがいなく~そうなる。
外回りの銀行員に、そんなことが理解できないはずがない。
こんな所で銀行員が燃やすか・・・まず、燃やさない。・・・だれが燃やした?・・つまり、銀行員では無い。
次に紙だ、薄い紙の伝票を 数10枚重ね、
その上に厚いビニールカバーを置いて火を付けた。結果、紙は完全には燃えてない。
当たり前だろう・・・こんな事が判らない人間が、火を付けた。ここまでは事実だ。
~推測ではない
銀行員に、こんなことが判らない人がいるだろうか
毎日「紙」と格闘している銀行員にだ。
銀行員の紙に対する管理は厳しい、数年前から不要になった書類等を処分する時は、
紙を粉砕するシュレッターと言う機械に通して、文字が読めない様にしてから焼却処分する。
そこまで徹底的な処分方法をとるものだ。
それがどうだ、伝票の紙は蒸し焼きだ。これを見て何も感じないのか?
これは明らかに銀行員の仕業ではない。銀行員ならもっと上手に燃すだろう。
・・・しかも、今から逃げる銀行員が、何のために?ビニールカバーを~これほど丹念に燃やす必要があるのか?
・・・なんの意味もない。まったく必要がない。~川に投げ捨てて~サッサと、逃げればいい。
始めから全体を見てみることだ。
失踪した銀行員が住んでいたマンションのゴミ箱には、
使用済みのコンドームが2つ、
一国銀行発行の伝票の様な物が多数、
さらに押入には、
使ってないコンドームが2箱あった。
本人の車は駐車場から動いてない。ホコリをかぶっている。
次に仕事で使用していたオートバイは、 闇夜の四万十川を舟に乗せられ、
川底の根ガカリする場所に、持たせ~かけるよう正確無比に捨てられていた。
漆黒の闇夜に、川舟を操り、舟の上からオートバイを捨てたのか?
この様な事ができる者は~地元の川師以外に考えられない
さらに、このオートバイのナンバーは取り外して、
オートバイ本体から300メートル下流の川底に捨てられていた。
さらに、その場所から500メートル位川下の河原に蒸し焼きにした
一国銀行の名前が入った伝票の様な書類が、
地元住民のゴミ焼き場近くから発見された。
通称、赤鉄橋と言われている四万十川橋から川沿いに下った四万十市荒川地区の間、
直線にして約1500メートルの間に、全てが埋まっている。
この事件の根は、四万十川にある。
これだけの材料がありながら未だ警察は、
失踪であり、事件ではないと言い張る。
なぜだ?オートバイが川底に捨てられたのは、
何月何日であると決める事はできないが、数日間に限定する事は可能だ。
その期間、月齢は闇夜。
しかも発見された場所は橋の下、闇夜の橋の下。
夜になれば自分の足元さえ見えない。
そんな条件で失踪した銀行員が、深夜こっそり川舟を自由自在に操って
オートバイを運び、しかも川漁師が網を打たない、根ガカリする場所をねらい
確実にオートバイを~水上から川底に投げ捨てた。
捨てた一点は、根ガカリするコンクリートに、もたれかかる様にオートバイが沈んでいた。
よほど正確に投棄しなければならない。
しかもくどいようだが、闇夜の橋の下。自分の足元さえ見えない条件でだ。
こんな事が、どうして銀行員にできるのか~できるわけがないその必要もない
この一点だけでも事件と断定していいさらに職場で使っていた一国銀行の名前が
入った伝票の様な書類を蒸し焼き状態にしている。
燃やしたのは銀行員とは思えない。~しかも、燃やした場所は地元の川漁師が使うゴミ焼き場だ
これら一連の材料は四万十川沿い、
約1キロメートルの範囲に点在しながら集中している。
~他にはない。すべて、ココだ。
これで事件じゃない~失踪だと言いはる警察幹部は、バカと言うより、
自分のやりたい放題の主義主張を無理矢理おし通す、子供の感覚でしかなく、
人の命を左右する警察官の・やる事ではない。そんなに出世がしたいのか?
日本のお役人様、あんたが出世したいなら勝手に出世しろ、ゴマでも何でもすれ、
銭でも・何でも投げろ。勝手に、やりゃぁ~いい。クソバカタレ。
しかし眼の前で~人の命が燃えている、いま1人の命が消されたかもしれない。
その命さえ~出世の天秤にかけ、計っている。
日本のお役人、お前たちは人間じゃない。クソ虫が。
・・・~この事件の「根」は、冤罪(えんざい)事件と同じ~クソ虫の都合で、ねじ曲げられた。
冤罪の「冤」は兔(うさぎ)を冠(かんむり)で囲(かこう)った意味だ。
・・・おとなしいウサギを無理矢理“絡め取って”~オリの中に~平気で押し込んだ。
・・・・・・~たかがウサギだ。気にする事はない
~ウサギはウサギ
昔々~秘密結社kkkが黒人を殺戮しながら~死体を木に吊り下げた
南部の木々に奇妙な果実が、
むごたらしく、ぶら下がっている。
その葉は血に染まり、根本にまで、血潮はしたたり落ちている。
黒い遺体は、南部の微風に揺れそそぎ、
まるでポプラの木から、垂れ下がっている奇妙な果実のようだ。
やがて~四万十川にも “不思議な果実” が・・・・・・・・・
明日から全署員で、オートバイが発見された箇所から下流にかけ、川岸の捜索を開始する。
長い草は鎌で刈り取り、竹薮や岸沿いの川の中まで徹底的に捜索する。
当分の間、非番・休日返上になる、との事だった。
えらい熱を入れて、演説するような口調で力説したが、
・・・~そんなに力まんでもいい。
捜索するのは、当たり前。草を刈るのも当たり前、あとは人数をそろえたらいい。
これほど“リキ”を入れるなら、いっそのこと「殺し」として捜査したら、いいんじゃないか?
もし違っていたら、あとで「ゴクロウサン」と言えばいい。
そうしないのが公務員と言う、日本のお役人が造りだした組織だ。
もし事件として取り扱った場合、解決すれば手柄になるが、
何の材料も無く、むやみに時が過ぎれば失点となる。
この様な~重大事件は~逐一・些細な事まで“本部報告”しなければならない。
いかにして“本部”を納得さすか~敵は本能寺にあり~“報告”が、すべてである。
そんな“冒険”をしてまで、仕事をするような人間はいない。
仕事とは出世の糧であり、糧とは、うまいモノだけを蓄積するのがベストだ。
公務員には公務員のモノサシがある。このモノサシにあわない組織人、
たとえば私の様なバカは、どんどん切られていく。
この20年間に警察官の気性も随分かわった。
昔は土佐の“イゴッソ”を地でいく頑固な刑事がいくらでもいたが、
そんな~上から見て扱いにくいヤツは、ドンドン切り捨てられ飛ばされた。
それが20年たったら~世代が入れ替わり、“上手モン”ばかりが繁殖する。
たてつく者はいなくなる。そうまでして仕事をしなくても、いくらでも出世はできる。
1にコネ、2に銭、3に要領、“三種の神器”だ。
明日の方針が決まれば~言われたとおり~やればいい。
オートバイが発見されたことを喋るな。~と、言うなら女房にも、だまっておればいい。
簡単なことだ。しかし、なにか風向きが変な感じがした。
これは明らかに事件だ。が、・・・何かまわりくどい・・イライラするような動きだった。
一日中、真夏の太陽に照らされた挙げ句、うんざりする訓示を聞かされ、疲れきって帰宅した。
何も喋る気がしない、「喋るな」と言う御命令だから丁度いい。その夜は早く寝た。
翌朝、はやく目覚め、滅多にないこと、朝はやく新聞を見てビックリ。
なんと、新聞に大きな見出しで、しかも写真入りの記事かある。
「四万十川から、失踪した銀行員のオートバイ発見」と書いている。
あれほど厳格に~エラソウな態度で“秘密にしろ”と、
厳命しながら~地元新聞は~発見された場所を写真撮影して、
・・・・・・・こと細かに説明している。
遠距離の写真撮影ができると言うことは~昼間の明るいうちでないとできない。
つまり昨日~「喋るな」と言う訓示をウンザリするほど、
・・・・・~ながながと受けていた時間帯までに、撮影しなければ写らない。
・・・・・・・・・・これは、どう言う訳だ。
~県警本部から、漏れたとしか考えられない。
県で出世するには、県最大のマスコミ、地元新聞の“ゴキゲン取り”をして
人気を上げていなければ、県の幹部クラスにはなれない。と、言うのが定説だ。
逆に普段から地元新聞に「特ダネ」をエサとして流しておけば、警察の悪口は程々に、
うまくコントロールできる。“持ちつ~持たれつ”・・の仲。
・・・・戦争中の「大本営発表」と、同じだ。
しかし、もし・この失踪事件が強盗殺人事件なら、オートバイを四万十川に落した事実は
~犯人しか知り得ない“事実”~である。
犯人を逮捕した際、四万十川のどこに~“落とし込んだ” か?・・を自白させれば、
犯人しか~知り得ない自供を取ったことになり、裁判で有罪になる絶好の材料である。
これを、いとも簡単にマスコミに流す人は、いったい~どんな感覚で生きているのか。
・・・ほんとに人間なのか?~警察でメシを食う人間か?
腹が立つ以上に、ガクゼンとした思いだけが残った。
こんな環境の中で汗を流して、一生懸命働き、仕事で失敗すれば飛ばされ、
成功すれば、上役が得するシステムになっている。
~ なんとも~やりきれん思いで朝飯をかき込んだが、最近よくある。
メシを食った後・・今なにを食ったか、思い出そうとしても?
~ 何を食ったか?まったく記憶の中に出てこない。
~今の事を覚えてない。
おかしな話だが、現実に時々ある。決して痴呆症ではない。
今・生きている環境と自分の生き様が、まるで他人を見ているようで、
時々ボンヤリすることがある。
そんな、おかしな現象が起こる。
・・病気だろうか?
病名は、職場がイヤになった症候群、はやく“ヤメタイ自閉症”とでも銘々するか。
かと言って仕事が嫌いな訳ではない。
むしろ面白い、このチグハグな感覚を、自分で持てあましている。
~イヤならイヤで、やめたらいい。そんな事はしたくない、仕事はやりたい職場はイヤだ。
今朝の新聞を読み、フト発作が起きた~朝飯に何を食ったか覚えてない。
何か胃袋に入れた事は間違いない~ソレでいい。
車に乗れば、いやでも職場につく、今日は県本部鑑識課から鑑識指導官が来て。
いや、「来て」などと軽々しく言ってはだめだ、鑑識指導官がミエラレテ
四万十川から見つかったオートバイから、指紋を採取する。
指導官は鑑識技術の神様みたいな人だから、ウヤウヤシクありがたく、指導をしていただき、
その助手として下働きができることを、光栄に思わなければならない。
今日一日は、優秀な組織人として振る舞う。が、結果は判っている。
四万十川の川底で、最低でも 48時間以上の長時間、
流れにさらされ、水にもまれた金属の塊から、指紋が採取できる訳がない。
そんな事はどうでもいい、~やることが仕事だ。
~やりました、~やっています、との姿勢だけが必要である。私も一応・クソ役人の1人だ。
昼前には指導官が見えられる。
それまでに万全の準備を整え、お迎えしなければならない。
やる事はいくらでもある、ただ今日も一日・~むだに時間を浪費することだけが残念である。
四万十川の河原では、数10人の警察官が鎌を持ち、草を刈りながら捜索している。
なにか発見しただろうか?それだけが気がかりだった。
とにかく今日はオートバイだ、気を取り直し指紋採取の準備に専念する。
オートバイは完全に乾燥していた。
ただ気になるのは、車体のあちこちに~コスッタような跡が付いている。
おそらく川底から引き上げた際に、作業員が指でこすったものだろう、
その跡に付いていた指紋は、確実に消えている。不用意にオートバイを引き上げた証拠だ。
部屋の整理を済ませ指導官の到着を待ったが、いつまで待っても御見えにならない。
早く指紋採取を済ませ、四万十川の現場に行きたい気持ちが先に立ち
あれこれ問い合わせていると、指導官はすでに到着しており署長室に入っている、との事だった。
署長室で何をしているんだ。~クソバカが、早く仕事しろ~と、
言ってやろうと思い署長室をのぞいてみると、
中で料理屋から取った高級な弁当を食べていた。すでに前日から予約していたようである。
・・~それなら、と、少し早いが愛妻弁当を取り出して早弁を食べ、
近くの喫茶店でコーヒーを飲みながら時間をつぶした。
どうしてこんな時に、よけいな時間を使うのか、またもやイライラしながら考え込む。
所詮何をやってもこの程度だ、最も重要なことは、上役とのツナガリであり現実に何をどうするか、
・・・現場の動きなんか二の次だ。
結果は判っている~「指紋は出ない」・・どうでもいいから早く済ませろ。
指導官が来たのは午後1時を20分ぐらい過ぎて、やっと見えられた。
まさに「見えた」~と言う感じだった。
形式どおりの挨拶を済ませ、さっそく神様のお手並みをはいけんした。
神様はオートバイ全体を、透明のビニールでスッポリ包み込み
その中にアメリカ製のハードエビネンスなる“新製品”の封を切り、ビニールの内側に張りつけた。
ハードエビネンスとは商品名で、日本語に訳すと「硬い証拠」と言う意味である。
証拠とは指紋のことで、早い話が瞬間接着剤を固形化しサロンパス様にした物をはがし
瞬間接着剤の気化ガスで、指紋採取するものである。
ただ、これには難点が有る。
~かりに、このハードエビネンスを車内に置いた場合、
真夏の太陽に照りつけられた車の中は、大変な温度に上昇する。
すると成分である・瞬間接着剤のシアノアクリレートガスが揮発してしまい、何の効力も無くなる。
果たして神様が仕込んだアメリカ製の新製品が、どこまで威力を発揮するか、 見届けることにした。
オートバイを包み込んだビニールの内側には、故意に指紋を付けている、
ガスが揮発すれば、まず先に、その指紋が出るはずである。
~ところが、いくら待っても出なかった。心配したとおり、すでにガスは揮発して、効力は無くなっている。
いつまで待ってもしかたない。時間の無駄。
即、用意していた瞬間接着剤をズボンのポケットから取り出し
「これを使いましょう」と提案した。
こんなところが私の悪いところだ。
上の人が次に何をするか、全て黙って待ち、後で相手の措置をホメタタエたらいい。
それをいきなりジャンプして、早々に結論を出してしまう。
上から見ると、いやなヤツだろう。
とにかく~どうでもいいから~瞬間接着剤を多量に灰皿に移した物を三つ用意して
・・・オートバイの前、シートカバー、後部の三個所に置いた。
直ぐビニールで全体を密封し、ガスが漏れて無い事を確認してから、室内の冷房を暖房に切り替えた。
温度を上昇させ、シアノアクリレートガスが揮発しやすくするためだ。
こうすれば、通常の半分位まてば指紋が検出される。
後輪の泥よけカバーから一個採取できた。
わざわざ指導官殿が警察本部から見えられて、一個も取れないでは済まない。
カッコウが付かない。どうでもいいから出せ、~やりました。~頑張りました。
・・と、報告すればいい。どうせ~たいした結果は出ない。
後始末を済ませ、これから四万十川河川敷の現場に行こうとした際。
指導官は署長室で、署長に詳細にわたり~説明していた。
これが世渡りだ、現実にはクソにもなってないが、
ドシロウトの署長に 専門用語をまじえて説明すれば、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・~アホは何か?納得するだろう。
結局~目的は、アホを納得させ、御自身の存在感を誇示する為か~結果は、立派な組織人である。
・・・うまいものだ。
・・・・・・~感心しながら~現場に向かおうとした~
後日・・オートバイから採取された指紋は、やはり~引き上げ作業に従事した、刑事課員のものであることが判明した。
警察官の指紋は、本人の気が付かないうちに全て保管されている。
警察学校在学中に被疑者(犯人)指紋採取の練習と称し、二人一組になり、それぞれの指に墨を付けて、
一生懸命・お互いの指紋を取り合った。
たしかに練習と言われてやったことだが、じつは・この時取った指紋は確実に保管されている。
したがって警察官全員の指紋は、本人が死ぬまで個人資料として管理されている。
しかし~オートバイの引き上げ作業をした刑事さんは、手袋もせず~力まかせにオートバイを引っ張ったのだろう。
そうでなければ、川の中で指紋は付かない。一体どうゆう感覚で仕事をしているのか、
情けないやら、ハラガ立つやら、まぁ~この程度のものだ。
署長室で、上手に世渡りしている指導官を横目で見ながら外に出た時には、
すでに午後4時45分になっていた、今から現場に行ってもしかたない。
また今日も1日~くだらん時間が流れた。情けないが、どうしようもない。
真夏の太陽が照りつけ、空気が淀んでいる。
何もかも馬鹿らしくなり、自然に歩き出した。5分ぐらい歩いたところに
警察官が絶対行かない喫茶店がある。ジャズ喫茶だ、
道から少し入り込んだ目立たない場所に、青色の壁を隠すようにポツリと建った、
ブルーノートと言う小さな店があって、モダンジャズが流れていた。
演歌が好きな人は、絶対来ないから時々行った。
昔、ビリーホリデイが好きだった。ベトナム戦争の終わり頃、岩国に米軍の
ベースキャンプがあり、心身共に傷ついたアメリカ兵が多く集まっていた。
私は、広島の工業大学で将来を夢見ながら当時の総理 田中角栄が 言うところの
「日本列島改造論」を信じ工場の流れ作業をコントロールする生産工学を学んでいた。
当時は学生運動が盛んで、浅間山荘にたてこもった日本赤軍と、 機動隊の攻防がテレビ放映された時代だ。
広島でも学生運動が盛んになり、あちこちにヘルメット姿でゲバ棒を持った学生が路上で
気勢を上げていた。人間の心理とは、多数が正義であり少数はバカにされる。
さらに1人は悪だ。
ゲバ棒を振り回し学生運動に没頭する者が正義で、何もしないヤツはノンポリ学生、
1人で何もしない者は害悪だった。
そう言う風潮のなか、1人の女子大生が首をつって自殺した。
学生運動を否定し、仲間の中で孤立して自殺したのだ。一番悲しい出来事だった。
が、遺体に逢うこともできなかった。
事の話を聞いたときは、既に彼女の遺体は故郷に帰っていた。
広島のスナックに、黒人のアメリカ兵士が1人座っていた。
もうろうとしながらウイスキーを飲み、ビリーホリデーの「奇妙な果実」に聞きいっていた。
南部の木々に奇妙な果実が、
むごたらしく、ぶら下がっている。
その葉は血に染まり、根本にまで、血潮はしたたり落ちている。
黒い遺体は、南部の微風に揺れそそぎ、
まるでポプラの木から、垂れ下がっている奇妙な果実のようだ。
美しい南部の田園風景の中に、思いもかけず見られる、
腫れ上がった眼や、苦痛に歪んだ口
そして甘く新鮮に漂う木蓮の香りも、突然肉がこげる臭いとなる
群がるカラスに、その実をついばまれた果実に、雨は降り注ぐ。
風になぶられ、太陽に腐り、道にくち落ちる果実
奇妙な、むごい果実が、ここにある。
(KKK)
“愛”と言う美しい名の下に集まった。
片方から見れば愛国者の秘密結社・KKK・・~クー・クラックス・クランに、
なぶり殺しにされた黒人の死体を
遊び半分に “吊した”
恐るべき情景が、ビリーの語りとも言える歌声で、
1本の木に、1人はこの枝で首を吊され~
あの人は~こっちの枝、
この人は~こっちの枝に~吊り下がっている。
奇妙な形の “木の実” が、あるモンだと、
全ての死体を抱きしめるがごとく歌い込む・・~誰にもできまい。
~・・コレに聞き入る黒人兵の姿も絵になって、
酒に涙を落とした初めての夜だった。
人は流れの中で上手に生きている、~回りを見ながら。
が、1人で正論を見つけることもだいじだ。
実際ゲバ棒学生の多くは、卒業と同時にすまし顔で、
彼らが最も攻撃した大企業に就職している。
奴らに、奴らの頭には矛盾と言う言葉は無いんだろう。
飲んだ帰り、1人でウロウロしているヘルメット姿のゲバ棒学生を見つけ
無茶苦茶な因縁をつけ喧嘩を売りつけ殴り倒した。
起きあがる相手に回し蹴りをブチ込みサッサと逃げた。
2人目は何も言わずに跳び蹴りをぶち込み即座に逃げた。
酒と空手しか能のないアホが、せめて彼女の供養にできる事は、これぐらいの事だった。
酒に酔った勢いで、相手にチドリ足で近づき油断させ、瞬時に猛攻をくわえ
一撃で倒し逃げる。酔拳の極意である。土佐に帰ろう。やっぱり土佐がええ。
そう思う様になったのはこれからだ。
土佐に工業は無いがアッケラカンと酒を飲み、「犬と猫のどっちが強いか」
くだらんことを真剣に論ずる気風がある。やっぱり土佐がええ。
強烈な望郷の念が働いたが、仕事は無い、
昭和50年のオイルショック・ドルショックでスーパーにトイレットペーパーが無くなった時代、
田舎に工業大学の学生が就職出来る職場は無かった。
大学に入る時は「日本列島改造論」日本の前途は洋々としたものだった、
それが大学を出る時は、スーパーにトイレットペーパーが無い。まるで詐欺だ。
それじゃあ~警察官にでもなるか。
この安易な決断が間違いのもとだった。
その後どうすることもできず、ズルズル底無し沼に飲み込まれるハメになろうとは 夢にも思わず、
ただ土佐に住みたい一心で警察官になった。
結婚して家庭を持てば、いまさら仕事を辞めるわけにはいかない。
都会なら、ほかにも仕事はあるが、高知県のような田舎でいくら探したところで
たいした仕事はない。土佐に帰りたい、そう言う感傷的な思いが悔やまれる。
今となっては、どうすることもできない。流れに身を任すしか他に方法がない。
なんともならん・・
喫茶ブルーノートで1人、昔の物思いにふけりながら、
子供だけは自分の様な、くだらん生き方はさせたくない、
それなら今を乗り切るしかない。そう言い聞かす、
そして又、イヤミな戦場に出て行く。この繰り返しだ。
今日もくだらん時間を1日つぶした。
明日、また日が昇る。
車をそのまま職場に残し、歩いて家に帰る事にした。
車を残して置けば、まさか帰ったとは思うまい。形を残して実体を移動さす、
家に帰ってビールでも飲むか。少し怠ける、これが心のいやしだ。
もっとも結果はどうあれ、
いそがしそうに~パタパタ動き回っておれば、警察では評価が高くなるが、そんな事はどうでもいい。
大動員をかけて捜索した、四万十川河川敷から何も発見されなかった。
何もないでは、シャレにもならん。翌日から~さらに規模を大きくして再捜索が開始された。
横一列に警察官が並びそのまま前進する。
前に竹藪があっても、水たまりがあっても~そのまま突っ切る。
それでも何も見つからなかった。
太陽はジリジリ音をたてるように照りつけている。
皆、汗で濡れ鼠のようにビショビショ になり
帽子から地面に、しずくとなって汗が落ちた。何も発見できない。
河原には木が生えてない、石ころばかりが、ごろごろ転がっている。
日陰が無い。上から太陽、下から石の熱気がむせ返る。石に汗が落ちても直ぐ乾いた。
みんなグッタリして座り込んでいた。
遠くで誰かが騒いでいた、何か発見したようだ。
重たい体を引き起こし、声がする方に走った。
・・・~いつ来たのか“タンス係長”が、何か~わめいている。
「どうして、これが見えん」等と言う内容だった。
見ると 、直径40センチ位の範囲で
~プラスチックがドロドロに融けたような黒い塊が、
道路から少し離れた地面の上に、無造作に放置されていた。
黒い塊をヒックリ返すと、下には焼けこげた ・一国銀行の伝票様の書類が
融けたプラスチックにくっついていた。
伝票は、30枚位あり、上にあるのは部分的に燃えていたが
その下にある物は、まったく燃えてなかった。
この伝票は、失踪した銀行員が住んでいた・マンションのゴミ箱で見た物と、同じ伝票だった。
紙と言う物は、ピッタリ・くっつくと、なかなか燃えない、
例えば本なんかを燃やす場合、
火がついた本を開き、中に火を入れなければ、燃えるものではない。
つまり、この伝票を燃やした者は、紙が燃えにくい、くっついた紙は、なかなか燃えない、
~と、・言う観念がない者が燃やした。~という事になる。
黒い塊は、ビニールかプラスチックが熱で溶けたものだろう、炎で炭化され黒くなった。
が、黒い塊をひっくり返すと、下側は熱だけで融解しているので、
溶ける以前の色が鮮明に残っていた。~青色だ。
この色は銀行・農協その他金融機関の外回りの従業員が、使用するオートバイの前側の
荷カゴに、これと同じ色の丈夫なビニールカバーを取り付けている。
数百万円、又は一千万円を超す現金を鞄に入れ、
オートバイのハンドル前にある荷カゴに入れて、
この荷カゴ全体を青色のビニールカバーで、すっぽり包み込み、
雨や風を防ぎながら、オートバイを走らせている。
このビニールカバーを取り外し、この下に一国銀行の伝票を置き・火を付けて燃やした。
ところが、上のビニールカバーを燃やす事に一生けんめいになり、
肝心の伝票は、蒸し焼き状態になって完全には燃えなかった。
~こう考えるのが自然だろう。
汗を流しながら地面に~はいつくばって~現物を見ながら、考えている私の頭の上で
タンス係長が得意げにわめいていた。
「こんな・わかりやすい・道ばたにある物をどうして、発見できん。
・・・・・・・・・・・・・オレはすぐ見つけた」
回りには、10人位の警察官が輪になって聞いていた。
今頃ノコノコやって来て、車を止めたあたりを少しぐらい探し・・・・・
~たまたま見つけただけだろう。~むしょうに腹が立った。
が、その時ふと考えた。~こんな所を探す警察官はいない。~・・そのとおりだ。
タンス係長が~たった一度だけ、いいことをした。
発見場所から 30メートル位離れた箇所に、ゴミ焼き用のドラムカンがある。
その回りには、数カ所ゴミを燃やした黒い塊がある。
それぞれの塊は、直径1メートル以上の大きさである。
この場所は、地元住民のゴミ焼き場だ。
そこからわずか30メートル位離れた箇所、まさか~こんなところに。
誰でもそう思う~だから誰も探さなかった。
探したのはタンス係長だけだった。~タンスが言った
「こんな・わかりやすい所」~まさに~そのとおりだ。
・・・・ココは、地元のゴミ焼き場。
タンスが初めて、いいことを言った。
“タンス” だからこそ、乗ってきた車を止めた~ゴミ焼き場を探した
車が自由に出入りできる、地元住民(川漁師)のゴミ焼き場
その前には四万十川が流れ、川舟が三隻係留されている。
~三隻とも地元の川漁師の舟~ その三隻の持ち主が、共同で使用しているのが、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・このゴミ焼き場だ。(現在は無い)
つまり地元民の生活圏だ。
こんな所で銀行員が、失踪する前に証拠隠滅を計るだろうか
・・・・・・・・・・まず場所・・今は鮎やウナギ漁をする人が多い。
川漁をする人は、早朝又は深夜・いつ現れるか判らない~前に川舟、後ろはゴミ焼き場。
ここは、完全な地元川漁師の生活圏の中にある。
このエリアの中で、よそ者が火を焚けばどうなる。
とたんに地元住民の眼が光る。~まちがいなく~そうなる。
外回りの銀行員に、そんなことが理解できないはずがない。
こんな所で銀行員が燃やすか・・・まず、燃やさない。・・・だれが燃やした?・・つまり、銀行員では無い。
次に紙だ、薄い紙の伝票を 数10枚重ね、
その上に厚いビニールカバーを置いて火を付けた。結果、紙は完全には燃えてない。
当たり前だろう・・・こんな事が判らない人間が、火を付けた。ここまでは事実だ。
~推測ではない
銀行員に、こんなことが判らない人がいるだろうか
毎日「紙」と格闘している銀行員にだ。
銀行員の紙に対する管理は厳しい、数年前から不要になった書類等を処分する時は、
紙を粉砕するシュレッターと言う機械に通して、文字が読めない様にしてから焼却処分する。
そこまで徹底的な処分方法をとるものだ。
それがどうだ、伝票の紙は蒸し焼きだ。これを見て何も感じないのか?
これは明らかに銀行員の仕業ではない。銀行員ならもっと上手に燃すだろう。
・・・しかも、今から逃げる銀行員が、何のために?ビニールカバーを~これほど丹念に燃やす必要があるのか?
・・・なんの意味もない。まったく必要がない。~川に投げ捨てて~サッサと、逃げればいい。
始めから全体を見てみることだ。
失踪した銀行員が住んでいたマンションのゴミ箱には、
使用済みのコンドームが2つ、
一国銀行発行の伝票の様な物が多数、
さらに押入には、
使ってないコンドームが2箱あった。
本人の車は駐車場から動いてない。ホコリをかぶっている。
次に仕事で使用していたオートバイは、 闇夜の四万十川を舟に乗せられ、
川底の根ガカリする場所に、持たせ~かけるよう正確無比に捨てられていた。
漆黒の闇夜に、川舟を操り、舟の上からオートバイを捨てたのか?
この様な事ができる者は~地元の川師以外に考えられない
さらに、このオートバイのナンバーは取り外して、
オートバイ本体から300メートル下流の川底に捨てられていた。
さらに、その場所から500メートル位川下の河原に蒸し焼きにした
一国銀行の名前が入った伝票の様な書類が、
地元住民のゴミ焼き場近くから発見された。
通称、赤鉄橋と言われている四万十川橋から川沿いに下った四万十市荒川地区の間、
直線にして約1500メートルの間に、全てが埋まっている。
この事件の根は、四万十川にある。
これだけの材料がありながら未だ警察は、
失踪であり、事件ではないと言い張る。
なぜだ?オートバイが川底に捨てられたのは、
何月何日であると決める事はできないが、数日間に限定する事は可能だ。
その期間、月齢は闇夜。
しかも発見された場所は橋の下、闇夜の橋の下。
夜になれば自分の足元さえ見えない。
そんな条件で失踪した銀行員が、深夜こっそり川舟を自由自在に操って
オートバイを運び、しかも川漁師が網を打たない、根ガカリする場所をねらい
確実にオートバイを~水上から川底に投げ捨てた。
捨てた一点は、根ガカリするコンクリートに、もたれかかる様にオートバイが沈んでいた。
よほど正確に投棄しなければならない。
しかもくどいようだが、闇夜の橋の下。自分の足元さえ見えない条件でだ。
こんな事が、どうして銀行員にできるのか~できるわけがないその必要もない
この一点だけでも事件と断定していいさらに職場で使っていた一国銀行の名前が
入った伝票の様な書類を蒸し焼き状態にしている。
燃やしたのは銀行員とは思えない。~しかも、燃やした場所は地元の川漁師が使うゴミ焼き場だ
これら一連の材料は四万十川沿い、
約1キロメートルの範囲に点在しながら集中している。
~他にはない。すべて、ココだ。
これで事件じゃない~失踪だと言いはる警察幹部は、バカと言うより、
自分のやりたい放題の主義主張を無理矢理おし通す、子供の感覚でしかなく、
人の命を左右する警察官の・やる事ではない。そんなに出世がしたいのか?
日本のお役人様、あんたが出世したいなら勝手に出世しろ、ゴマでも何でもすれ、
銭でも・何でも投げろ。勝手に、やりゃぁ~いい。クソバカタレ。
しかし眼の前で~人の命が燃えている、いま1人の命が消されたかもしれない。
その命さえ~出世の天秤にかけ、計っている。
日本のお役人、お前たちは人間じゃない。クソ虫が。
・・・~この事件の「根」は、冤罪(えんざい)事件と同じ~クソ虫の都合で、ねじ曲げられた。
冤罪の「冤」は兔(うさぎ)を冠(かんむり)で囲(かこう)った意味だ。
・・・おとなしいウサギを無理矢理“絡め取って”~オリの中に~平気で押し込んだ。
・・・・・・~たかがウサギだ。気にする事はない
~ウサギはウサギ
昔々~秘密結社kkkが黒人を殺戮しながら~死体を木に吊り下げた
南部の木々に奇妙な果実が、
むごたらしく、ぶら下がっている。
その葉は血に染まり、根本にまで、血潮はしたたり落ちている。
黒い遺体は、南部の微風に揺れそそぎ、
まるでポプラの木から、垂れ下がっている奇妙な果実のようだ。
やがて~四万十川にも “不思議な果実” が・・・・・・・・・