「言われたことをする」というのは、実はスゴイこと
部下に対し「言われたことしかしない」と嘆く上司が多いようですが、その前に”言われたことをする”部下を持つ上司は、とても恵まれていると私は思います。
そもそも、人に言われたことを、言われた通りにするのは案外難しいということを、私たちは忘れがちではないでしょうか?それでも多くの部下は、上司に言われたことを忠実に実行しようと頑張っているのです。
そして、「言われたことも出来ていない」と腹を立てる上司もやはり多いようですが、その前に、本当に「言った」のでしょうか?
「あれ、頼むね」とか「いつもの様に…」という指示だけで終わっていませんか?
(株)タバネルが行った「上司についての意識調査」では、良い上司は14%しかいないという結果になっており、さらに良い上司の条件として「指示や意見を明確に伝える」を挙げています。
参照データ:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000035275.html
つまり、86%の上司のうち、指示が不明瞭で具体性がないという人が多いということですが、貴方や貴方の上司はどうでしょうか?
確かに、上司の指示に従わない部下には問題がありますが、指示になっていない指示をする上司の方にも問題はあるのではないでしょうか?
伝わるか?よりも、達しているか?を意識しましょう。
「伝達」という言葉は、「伝える」と「達する」が合わさった言葉です。
つまり、伝える側の意図が、相手に達して、初めて伝達が完成するのです。投げたボールが相手に届いていない、または相手がキャッチしていない状態では、伝えたことにもならないし、達したことにもなりません。それと同じように、上司は「明確に指示した」と思っていても、部下がそれを理解していなければ、やはり伝達になっていないのです。
近年、SNSの影響なのか、伝えるためのツールや技術ばかりに意識が傾いていて、達するためのそれが置き去りにされている様に思うのは私だけでしょうか?
「ちゃんと指示している。でも部下がまともに動かない」と思っている方は、今一度「達する」を意識してみてはいかがでしょうか?
多くの上司は、確かに丁寧で正しい言葉で指示をしていることでしょう。しかし、部下に達していなければ何の価値もないのです。
達するには、レパートリーが必要
「達する」を意識すると、言い方や言葉選び、さらには表情や声の大きさなどが気になるものです。
「これで本当に部下に達しているのか?」などと意識しながら伝え方に工夫を凝らすことはとても大事だと思います。
しかし、いかに工夫をしても、誰に対しても通り一遍の伝え方では、達する人と達しない人が出てきます。
だからこそ、日頃から部下をよく観察して、達しやすい伝え方のレパートリーを増やすことが、良い上司への道になるのです。
良い上司は、指示命令ではなく質問をする
- 人を動かすには、命令してはいけません。
- 人をやる気にさせるには、誉めるだけではいけません。
- 人を育てるには、教えるだけではいけません。
この三つに共通する対処法は「質問をする」です。
人は、指示命令よりも自分の決めたことに喜んで従います。
さらに、それでよい結果を得ると、何度も再現しようと努力します。
相手に「伝える」よりも「達する」を意識し実現するためには、質問をすることはとても重要です。
但し、「分かったか!」や「異議はないだろ⁉」というのはNGです。これは質問ではなく指示だからです。相手に考えさせ、どうすべきかを自分で決めさせるように導く質問をすることで、伝えたい意図や考えが達するようになります。
さらに、上手な質問は、部下の指示待ちの姿勢を変えることも出来ます。
「どうしたらいいですか?」から「こうしたいのですが」という部下に育てるためには、上司が様々な質問法を身に着け実行することが近道です。
社員を宝にする風土作りこそ、持続可能な組織に不可欠
上司に言われたことを忠実に実行しようと頑張る部下は、会社の宝です。
上司にいくら指示を受けても上手くできない部下もまた、会社の宝です。
しかし、どんな宝石でも磨かなければ輝やかない様に、これからは社員を磨き輝かせるための仕組みや風土作りにもっと注力しなければ、持続可能な組織になれない時代に入っています。
誰もが発信機能を持ち、これだけ膨大な情報が行き交う時代です。社員とろくに向き合わずに切り捨てたり、人間関係が上手く行かないのは本人のせいにしている様な組織は、どんどん働き手に選ばれない会社になり伝播する時代に既に突入していることを、私たちはもっと自覚すべきではないでしょうか。