有志舎の日々

社長の永滝稔が、 日々の仕事や出版・学問などに関して思ったことを好き勝手に 書いていきます。

科研への「ナショナリスト」の攻撃開始にあたって

2017-12-16 17:22:30 | 学問
「「徴用工」に注がれる科研費 前文部科学事務次官の前川喜平氏は韓国と同調」という『産経新聞』の記事を読んで。

以下は、『1984』『動物農場』などを書いた作家・ジャーナリストのジョージ・オーウェルの言葉です。「ナショナリズムについて」『オーウェル評論集』岩波文庫、より。
「ナショナリズムというとき、私がまっさきに考えるのは、人間を昆虫と同じように分類できるものと考えて、何百万、何千万という集団をひとまとめに、平然と「善」「悪」のレッテルを貼れると決めてかかる考え方である。・・・自分を一つの国家あるいはこれに似た何らかの組織と同一視して、それを善悪を超えた次元に置き、その利益を推進すること以外にいっさいの義務を認めない考え方である。ナショナリズムと愛国心とははっきり違うのだ」。
「ナショナリストたるものはつねに、より強大な権力、より強大な威信を獲得することを目指す。それも自分のためではなく、個人としての自分を捨て、その中に自分を埋没させる対象として選んだ国家とか、これに類する組織のためなのである」。
「私が愛国心と呼ぶのは、特定の場所と生活様式に対する献身的愛情であって、その場所や生活様式こそ世界一だと信じているが、それを他人にまで押しつけようとは考えないものである」。

オーウェルの評論が面白いと教えてくれたのは安田常雄さん(日本近代史研究者)で、早速読んでみたところ、上記の言葉に出会いました。
なお、ここでいう「愛国心」とはパトリオティズムの訳語だということだそうです。

とはいえ、この『産経』の記事は今後大きな影響を学問の世界と学術出版界に与える影響があると思います。
『産経』によると、「徴用工をめぐる韓国側の主張に同調する研究者らに文科省などが助成金を交付していたことを伝えた産経新聞の報道(13日付朝刊)を受け、(自民)党文部科学部会は14日、文科省幹部を呼び説明を受けた」ということです。
科研費の採用・不採用に際して、「反日」かそうでないかのレッテル貼りによる「思想審査」がなされるという事が現実化してきました。
つまり、オーウェルのいう「ナショナリスト」の利益にならない研究には、国家はお金を出すべきでない、ということですね。
日本国家は一部のナショナリストの私物では無いはずですが、どうも彼らは私物と考えているらしい。
でも、日本国家がナショナリストだけのものならば、それに同調できない人は納税しなくても良いのかな?

先月出版した牛米努さんの『近代日本の課税と徴収』には、大正期において大蔵官僚出身の議員が「税金とは会費である」として、無理矢理に徴収するのではなく、その団体を構成する者として納得して納めてもらうことが税の本質だと議会で言っている事が書かれていました。
では、一部の人間の私物になってしまった国家には、構成員ではない私は会費を払う義務はないということになるのでは?



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