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有志舎の日々

社長の永滝稔が、 日々の仕事や出版・学問などに関して思ったことを好き勝手に 書いていきます。

カストロの死去と『キューバ革命』

2016-11-27 10:20:01 | 出版
フィデル・カストロが亡くなりました。
何だかんだ言っても、「革命家」といえる最後の人だったのかもしれません。
故人にかこつけて宣伝するのも何ですが、でも、今こそキューバ革命とカストロについてきちんと考えないといけないのでは?
河合恒生さん著『キューバ革命』を読んで、現代史のなかでのキューバ革命をぜひ論じ合って欲しいです。この本はキューバ革命の功罪を論じています。
某学会に本を販売に行ったとき、この本をみて鼻で笑った研究者がいましたが、「今さらキューバ革命?」と思ったんでしょうね。
しか~し、
オバマ政権での国交回復から一転、トランプ次期アメリカ大統領は対決姿勢を鮮明にしているので、まだまだキューバの存在からは目が離せません。その原点を知らなくて、どうして現在と未来が見えるでしょうか?


有志舎初の子ども向けイベント、「千春先生の地球授業」 盛り上がりました!

2016-11-24 07:00:10 | シンポジウムなどの情報
有志舎主催・「本が育てる街・高円寺」協力による子ども向けのイベント、
「世界を知ろう! 千春先生の地球授業」
が11月20日(日)に杉並区立馬橋小学校で行われました。
参加してくれた子どもたちは全部で9名(下は小学1年生から上は小学5年生まで)。杉並区以外の世田谷・練馬・渋谷からも来てくれました。
学校を通して動員をかけるようなことはせず、全く純粋な募集だけで集まったメンバーです。

テーマは「戦争と難民とこどもたち」で、講師は竹中千春先生(立教大学教授、国際政治学専攻、『盗賊のインド史』著者)。
最初に、ユニセフ作成によるシリア難民の子どもたちについてのビデオを見たうえで、竹中先生が易しく解説。そのあと、事前に調べてきた事や考えたことを2つのグループになり班長と記録係も決めて話し合い、最後に1枚の模造紙に自分たちの意見や感想・考えた事、将来、自分が平和のために出来ることやりたいこと等をまとめて書いてもらい、発表をしてもらいました。

なお、子どもたちの付き添いで来られたご両親たちも「大人チーム」を作って、同じように議論に参加、途中からは休憩時間に入っても議論し続けるなど熱くなっていました。でも、親御さんがきちんと世界や社会について考えているから、子どもたちも勉強させられているという感じはなく、自然と世界・社会について考えるようになったのだということを実感しました。
子どもたちの中には小学1年生もいたのでどうなることかと最初は思いましたが、上級生のリーダーシップで最後は見事にまとめも完成しました。

また、上級生の中には安保法制や難民などについてかなり専門的な勉強もしている子もいて舌を巻きました。グループには、助っ人として立教大学の准教授の方と学生さん2名も加わってもらったのですが、本気で子どもたちと議論をする場面もあって面白かった。

それに、やはり竹中先生がすごかったですね。
子ども目線での見事な話術と気配り、そして知らない子同士でもきちんとルールを守って話し合いができる事と全員が喋り参加することが大事ということで考え出されたプログラムと進行(これぞ民主主義の実践!)。見事でした。

それにしても、子どもたちが楽しそうだったので、とても気持ちのいい日曜日になりました。
でも、準備が結構大変だったと思うので、事務局となってもらった「本が育てる街・高円寺」の狩野俊・かおりご夫妻には大感謝です。
またやりたいな!

写真は授業風景と子どもたちがまとめを模造紙に書いているところ、そして出来上がった「まとめ」2枚と最後が大人チームの「まとめ」です(写真掲載にあたっては保護者の方々からご許可をいただきました)。






野良(のら)人類学会という試み

2016-11-23 12:05:44 | 学問
先日、北浦和で猪瀬浩平さん(人類学)や中田英樹さん(農業経済学、『トウモロコシの先住民とコーヒーの国民』著者)たちがやっている「野良(のら)人類学会」(商店街のストリートで学問する勉強会)に久しぶりに参加。
中田さんの論文、
「戦後近代民主化における「三界に家なし」農婦の「土着」する主体 ―岩手県北の女性を綴った一条ふみの「その地に留まるということ」―」
を読んで議論しました。
そこで中田さんの言った、これまでの近現代農村史は山村史と切断されて論じられてきたが、それでは何も分からないという事、そして何よりも「生業」という視点から歴史を見ていくべきという指摘に激しく同意。
人々の「生」に寄り添う学問でないと、歴史学はやがて滅亡するでしょう。

なお、中田さんの同論文は下記からダウンロード可能です。
http://repository.meijigakuin.ac.jp/dspace/handle/10723/2417
こういう、商店街という生活空間で行われる学問とても大事だと思うし、たくさんの若者が参加していることも心強い。




サントリー学芸賞と編集者

2016-11-11 19:32:21 | 販売情報
沖本幸子さん(青山学院大学准教授)の『乱舞の中世-白拍子・乱拍子・猿楽-』(吉川弘文館)がサントリー学芸賞を受賞しました。
この本の編集者は岡庭由佳さん。私も吉川勤務時代に一緒に働いた後輩です。
岡庭さんは私と違ってゴタクを並べたりするわけではなく、コツコツと仕事を積み上げ、誠実に著者に向き合うタイプの編集者。それに、本づくりの力量に関しては私などはとても及びません。
そういう彼女にこそ、この受賞はふさわしい。もっとも、賞は著者に与えられるものですが、それをサポートし続けた編集者も共に栄誉にあずかるべきだと私は思います。
岡庭さんの企画・編集した本の受賞は、小野沢あかねさんの『近代日本社会と公娼制度』(女性史学賞受賞)に続いて2作目だと思います(他にもあったらごめんなさい、岡庭さん)。
なお、私がこの賞をとった作品の編集者を評価するのは、この賞が一種の新人賞的な意味合いがあるからで、それ程有名ではないが優秀な研究者を見つけ出し、それに伴走して賞をとるまでに至ったのは編集者の目利きと努力があったに違いないからです。
岡庭さん、本当におめでとう。
受賞式は胸を張って行って来て下さい。そして、そのあとの祝賀パーティー(立食形式)は飲み放題・食べ放題なので、いっぱい食べて飲んできて下さい。もちろん、並べられるウィスキーは全部サントリーです(笑)。

11月の新刊、『近現代日本 選択の瞬間』(小林和幸 編、本体5000円)の見本が出来てきました。

2016-11-10 08:41:16 | 販売情報
11月の新刊、
『近現代日本 選択の瞬間』(小林和幸 編、A5判、300ページ、本体5000円+税)の見本が出来てきました。
ほぼ真っ白な本なので表紙写真が分かりづらいかも・・・(日本地図がブレているのはそういうデザインだからで、手ブレではありません)。
オビの宣伝文は、「近現代の日本史は重大な選択と決断の連続であった。歴史に重い責任を負うことになった当事者たちの決断の瞬間に立ち会い、重大な局面を乗り越えていこうとした姿を明らかにする」ということで、幕末から戦後までの「選択・決断の瞬間」を分析している論文集です。
なお、以前にも書いたとおり、故・沼田哲先生(青山学院大学名誉教授)の十三回忌にあたり、教え子の研究者が集まって議論し、まとめた本でもあります。
私もその教え子の一人なので、自分の手でこの本をつくらせてもらった事で少しでも恩返しになったのなら嬉しい。
ただ、学術書としての評価は読者の方々にゆだねたいと思います。
よろしくお願いします。