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有志舎の日々

社長の永滝稔が、 日々の仕事や出版・学問などに関して思ったことを好き勝手に 書いていきます。

宣伝・広告について

2013-04-08 09:51:19 | インポート

ある著者から、著書などを新刊で出したあと、どういう宣伝を有志舎ではしているのか、ブログに書いてはどうかというご提案をいただきましたので、書いてみます。
同業の出版社の人にとっては当たり前の事かもしれませんが、確かに一般の方は知らないでしょうから。
さて、弊社では基本的に、どの本も出版直後には必ず以下の媒体の書評担当部署に献本して書評をお願いしています。
朝日新聞
読売新聞
毎日新聞
日本経済新聞
東京新聞
共同通信社
時事通信社
歴史学研究会
歴史科学協議会
日本史研究会
週刊金曜日
出版ニュース社
最近、原田敬一先生の『兵士はどこへ行った』が日経新聞の書評に載ったのも、新聞の側が偶然この本を見つけたのではなく、こちらから送っているからであるわけです。
それから、専門学会誌ですが、だいたい書評が載るのが1年後くらいで、そのころには書店には当該の本が無くなっているケースが殆どで、正直、取り上げられても全く売上には結びつかないものですから、商売的には意味がないといえます。ただ、関連学会にその本を知らしめる事で他の研究者にも議論してもらうために必要であるという事であれば別ですから、著者の希望によって送ったりもしています。
私の経験から申し上げると、よく言われる「宣伝しないと売れない」という事は総論としてはその通りですが、実際には書評が売上に影響するのは大手全国新聞のみ、多少の影響という点では共同通信配信による地方紙の書評だけだと言ってよいと思いますので、あちこちに献本すれば宣伝になるという事は実質的にはないと言えます。
また、新聞以外の媒体は、ほとんど影響がありません。一番、大きな誤解は「学会誌に書評で取り上げられれば売れるだろう」というもので、『歴史学研究』ですら殆ど売上に影響はありません(それだけ研究者も本を買わない、買えないという事でしょう)。
また、ネット上での評判なのですが、正直、これはわかりません。というか、今まで弊社の本でネットで話題になった事で売れたという本がないものですから。
ただ、繰り返しますが、これはあくまでも売上をあげるための「宣伝」という意味においてであって、学問・学会の世界で、この本を知らしめるという意味とは別ですから、関連学会に献本すること自体に反対するものではありません。
それから、広告ですが、もはや新聞広告には殆ど広告訴求力はない状況です。まあ、それでもたまに弊社も出しますが、新聞広告は目が飛び出るほど高いので、費用対効果はマイナスです。では、なぜ出すか。まあ、「もしかすると売れるかもしれないから、僅かの希望に賭けて」ということくらいしかないでしょうね。
はっきり言って、弊社の場合は大手新聞の書評に載ること、殆どこれしか確実に売れるという現象を引き起こす要素はないと言ってよいでしょう。
それから、もうひとつの誤解に「学術書は黙っていても図書館が買う」というものです。はっきり言って、今は買ってくれません。これは大学図書館の人に聞いたことですが、図書館に宣伝チラシを送ったり、新刊案内をファクスしても、殆ど見もしないでゴミ箱行きだそうで、結局、大学図書館において買うか買わないかの判断する一番大きな要素は、その大学の教員から「これを買ってくれ」というリクエストがあるかどうかだそうです(まあ、大学によって違いもあるでしょうが)。ですから、これを大学教員の皆さん、是非、有志舎の本をリクエストして下さい!
以上、愚痴めいた事も含めて色々書きましたが、学術出版を成り立たせていくのは極めて大変なので、有志舎は原点に帰って、基本的には高定価の専門学術書を少部数つくり、大学や機関から助成金をもらって初版時の赤字を埋めて出版活動をしていく、という方向に進んでいこうと思っています。もっとも、大学のテキストで多くの部数を使ってもらえるような本は安い定価にしますが。
ともかく、弊社だけではなく、どこの学術出版社も身もだえするほど苦しいのですが、そのなかで何とか生き残っていかないと。頑張ります。


学術書出版社のコネ採用?

2012-02-13 14:55:47 | インポート

雑誌『アエラ』最新号の記事に、岩波書店の社員募集に関する記事が載っていました。何でも、応募資格に「岩波書店著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること」という項目があって、これが「コネ採用ではないのか」と話題になったというものです。

でも、この程度のことはどこの学術書出版社でも昔からあるんじゃないですか?それにあくまでも応募資格なのであって、試験なしのコネだけで採用するなどと言っていないわけで、これは一般で言う「コネ採用」の範疇には入らないでしょう。なぜ『アエラ』ともあろう雑誌が、こんなネット右翼の2ちゃんねるみたいな記事を出すのか、まあ今の朝日新聞社はその程度なのでしょうが(こういう事を書くと、当社の本は新聞書評で取り上げてくれなくなるかもしれませんが)。

私が二十数年前に吉川弘文館を受けたときも、大半の学生は指導教官の紹介状を持ってきていて、それが当たり前でした。もっとも、私は紹介状が必要だなどという事は知らずに就職試験と面接を受けにいったので、会社の人から「紹介状は?」と言われて驚き、「もらって来ていませんが、ダメですか」といったら、「まあ、いいです」と受けさせてくれて、結局、採用されました。紹介状なんて採用・不採用を左右するものではなかったということでしょう。

この年の大卒採用は私を含め2人でしたが、今でも一般的に学術書出版社は小さな会社が多くて新規採用は欠員募集の1人か2人です。だから採用に失敗は許されないわけで、大手企業のように何十人・何百人も採って優秀な人間だけ残れば良いなどという悠長な事は言ってられないのです。採用に失敗したら、それが直接会社の浮沈に関わるわけで、しかも学術書を作るわけだから大学できちんと勉強している学生でないと使えません。それには指導教官が責任を持って紹介できるような学生じゃないと安心できないという事はあるでしょう(一回や二回の試験・面接では本当に勉強している学生かどうかは分かりませんからね)。

でも、岩波の場合は一般的な「指導教官の紹介」ではなく、「岩波書店の著者の紹介」というところが気位の高さを示していて、さすが「岩波帝国主義・帝国意識」というところでしょうか(こういうイヤミを書くとまた怒られそうですが・・・)。

今日は、ブラック永滝でした。


「講座 明治維新」全12巻の刊行

2010-07-06 14:53:01 | インポート

この冬から新しいシリーズを刊行し始めます。「講座 明治維新」全12巻です。

これは明治維新史学会の編集で、通史テーマを立てる第1巻~第5巻、また重要テーマを設定する第6巻~12巻という編成です。以下に現状でのラインナップをご紹介しましょう。

1  世界史のなかの明治維新(木村直也・三谷博) 
2  幕末政治と社会変動(青山忠正・岸本覚)   
3  維新政権の成立(松尾正人・佐々木克)    
4  近代国家の形成(勝田政治・中川壽之)    
5  立憲制と帝国への道(原田敬一・飯塚一幸)  
6  明治維新と外交(森田朋子・小風秀雅)    
7  明治維新と地域社会(奥田晴樹・牛米努)
8  明治維新の経済過程(佐々木寛司・勝部眞人)
9  明治維新と女性(西澤直子・横山百合子)
10 明治維新と思想・社会(小林丈広・若尾政希)
11 明治維新と宗教・文化(高木博志・谷川穣)
12 明治維新とは何か(羽賀祥二)
※( )内は各巻の編集担当者。巻名は今後変更になることもあります。

明治維新史学会が総力を挙げて編集する大企画であり、執筆者も各巻8名前後で総勢100名近くになります。

刊行スケジュールや定価など、詳しく決まりましたところでこのホームページでお知らせしたいと思います。予約開始まではもう少しお待ち下さい。


『脱帝国のフェミニズムを求めて』の見本出来

2009-10-21 14:03:24 | インポート

『脱帝国のフェミニズムを求めて-朝鮮女性と植民地主義-』(宋連玉先生著)の見本が出来てきました。高い評価を受けている研究者でありながら、なかなか単著がなかった宋先生。その待望の単著出版です。編集しながら、私もたくさん勉強させてもらいました。

配本は28日なので、もう少しお待ち下さい。定価は2400円+税です。