有志舎の日々

社長の永滝稔が、 日々の仕事や出版・学問などに関して思ったことを好き勝手に 書いていきます。

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中村政則先生、逝去

2015-08-05 15:34:08 | 学問
歴史学の巨星がまた一人、去っていってしまいました。
日本近現代史・経済史の中村政則先生(一橋大学名誉教授)が、昨日亡くなられたとのこと。
実に残念です。
中村先生には、吉川弘文館の新入社員時代からお世話になりっぱなしでした。
最初の出会いは「近代日本の軌跡」シリーズ第5巻の『占領と戦後改革』の編者になっていただいたときのこと。今でもそのときの情景が目に浮かびます。
この巻の編者を依頼するべく一橋大学にうかがった時、初対面の私に「吉川弘文館が私に何の用?」とつっけんどんにおっしゃった。その頃、吉川は『国史大辞典』などを出していて全く中村先生などの左派の研究者の方々とは付き合いが無く、後に、「あのときは、君たち吉川が大嫌いだったんだよ。悪かったね」と笑って仰ったように、右翼出版社だと思われていたのでした。
それでも、私は中村先生の書いた本が大好きで沢山読んでいたので、戦後史の巻は絶対に中村先生にお願いしたいと、必死にかき口説き、ようやく編者を承諾していただきました。
そして、その編集の過程で戦後史の研究史や読んでおきべき本など、沢山のことを教えていただきました。
ときには、突然会社に電話がかかってきて、「昨日出た『歴史学研究』○○号は読んだ?」と訊かれたこともありました。そもそも、『歴研』が昨日出たことも知らなかった私は、「いえ、まだですが」というと、語気鋭く、「直ぐに読みたまえ。○○君のすごい論文が載っているから。編集者は、常にきちんと学問の情報を収集しておかないとダメだよ!」とおっしゃいました。
慌てて会社に来ていた『歴研』を読み、その日のうちに中村先生に電話してその感想を伝えたのでした。
そういう意味で、私にとってはとても怖い先生でした。でも、怖いと同時に心の底から尊敬できる先生でもありました。
「編集者は勉強しないといけないよ」というのは幕末維新史の田中彰先生と中村先生に言われた言葉です。まだまだ勉強不足でお恥ずかしいですが、この言葉は絶対に忘れてはいけないと思っています。
そういう意味で、私にとっては、田中先生・由井正臣先生に加えて、中村先生も編集者として私を育てていただいた「恩師」です。
その最後の恩師が亡くなってしまいました。
有志舎を立ち上げたときも、寿司屋に呼んでいただいてご馳走になり、「いずれ僕の本も出してもらうよ」とおっしゃっていただきましたが、体調を崩されそれが実現できなかったのは誠に残念です。
しかし、中村先生の残された近代経済史・戦後史の業績は、多くの人にこの後も必ず読み継がれるに違いありません。
ご冥福をお祈り申し上げます。
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