暁に咲く幻の花

花が咲くように生きていきたいな。日々のあれこれ、嬉しいこと楽しいこと好きな人のことを、花や自然にことよせて綴ります。

離れているから育つ愛、もしくは… ③彼女の話vol1

2015-06-25 10:12:54 | 恋愛 彩とりどりの愛の軌跡
 私から見た二人を描いてきましたが、今回からは当事者の彼女が語り手になります。彼女から聞いた話を忠実に再現し、どうしても足りない点のみなるべく彼女ならこう考え、話し、動くと信じて書きます。
フィクションとノンフィクションが混じった彼女の物語。なので一人称で書きます。【私】は=彼女 貴子(仮)で私ことゆりりんではありません。 では、彼女の恋物語を聞いてください。

 私は、パリのオペラ座をやや興奮気味に親友のMと見学していました。私達は劇団四季の『オペラ座の怪人』の世界が大好きで、関西公演が決まった時に即初日と千秋楽のチケットを予約したのに、ロングラン公演になり、もう一度本当に最後の千秋楽のチケットを購入して、計3回観に行った程役者も、音楽も演出に至る全てに虜にされていたから、本物のオペラ座を見て、空気を感じるだけで、気持ちが高ぶってしまうのは仕方なかった。
Mはボックス席から照明だけキラキラ輝く誰もいない舞台を見下ろし、『怪人』ではなく、オペラ、プッチーニ作『マノン.レスコー』の「華やかに着飾っても」を小さく呟くように歌っていた。
ソプラノからメゾまで出るのは、声楽をやっていたからだろう。
マノン.レスコー、贅沢で優雅でわがままな女。およそMとは別人の女を可憐なのに誇り高い女性に解釈して歌っても違和感が
全くない「貴方がいなければ 柔らかなレースで飾った寝台の中も
死んだように冷たく 私を凍らせてしまう…」
いきなり隣のボックス席から小さい拍手と「ブラボー!」と声が聞こえてMは真っ赤になって両手で口を抑え、とにかく頭を下げた。
そんな仕草も身長が低く、猫毛でふわっとしたセミロングヘア、瞳もつぶらな子猫の様な可愛い彼女には似合う。
暗くてよく見えなかった声の主は、隣のボックス席から私達のボックス席に入って来た。
「ノックもなく…」とMが言えば、「イタリアの女の子かと思ったら日本の女の子だったんだ。イタリア語上手だね。パリにはオペラ留学?」
「まさか…ただの観光旅行です」
入ってきたのは、背の高い日本人の青年2人だった。
眼鏡をかけた理知的な瞳が好奇心に輝いている。
もうひとりは眼鏡の男性より、少し背は低いけど口元に穏やかな笑みをたたえ、二人共同じような雰囲気を持っていた。何処か落ち着いていて、今まで合コンなどで知り合った男性とは何か違って見えた。
元々、私は、中学校から女子校で、大学も系列は違うけど女子大。
Mは大学までは共学校だったから、私よりは男性に免疫はあるとはいえ、突然歌を聞かれオペラ留学かと揶揄されたと勘違いしている今のMはまさに毛を逆立ててる猫みたいに見える。
 「9月も夏休みなら大学生だね。僕達も夏休みだからツアーみたいな旅をしてみようかっていう思いつき旅行。君たちはツアー?」
「いいえ、私たちは自由に行動したいから日程とホテルとTGVや高速バスと飛行機だけ決めたやじきた道中記みたいな旅です!」いいい切る語尾の強さとやじきた道中記になってしまった私たちの旅に、私もそんな答えが返ってくると思わなかった二人も笑ってしまった。
「た、貴子まで笑う事無いでしょ!」
M、真里子は顔を真っ赤に染めて抗議する。
「ごめんごめん。私たち弥次さん喜多さんにいつなったのかと思って…!」
流石に変な事口走ったと真里子は思ってる様子だった。
「では、美人二人のやじきた道中記の護衛に僕ら二人を雇いませんか?まだまだパリは物騒だよ」
「貴方たちが物騒じゃないでしょうね。大使館に走るわよ」
真里子の言葉にくっくっと笑い、眼鏡の男性は学生証とパスポートを見せて、どう?と聞く。
学生証とパスポートの情報は合致していたし、何よりガツガツ感が一切ない二人に真里子はついに立ててた尻尾をおろした。
「いいけど、私は行きたいとこに行くから、そっちの都合にはあわさないわよ」
「かしこまりました、マドモワゼル方」いとも優雅に執事のような仕草で腕を動かす。きっと向こうも演じて遊んでいるんだろう。
「僕は、鷹木哲也。こっちは瀬戸和弘」名乗られたら名乗るしかない。
「結城真里子です」「折原貴子です」
よろしく、と微笑んだ鷹木さんに私は一瞬胸に電流のようなピリッとした痛みが走ったけど、男性になれてない私の緊張だろうと思い、気を取り直して私は顔を上げて二人に微笑んだ。
 vol2に続く


 まだ愛ではない2人の恋 恋の痛みも何もない頃の恋に
    捧げる花


    

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