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ゆうなパパのブログ

思ったことの羅列から…
基本的に毎日書くことを自分に課しています
つまらないエントリもありますが流してくださいませ

『さまよう刃』 東野 圭吾

2010-05-08 14:54:00 | 読んだ本
未成年による少年犯罪とその被害者の父親の復讐がテーマ。
昨年、寺尾聰主演で映画化された作品ですね。

少年犯罪、警察、週刊誌、テレビ、世論、加害者の親…
そして、被害者の遺族の前に大きく立ちはだかる少年法。
冒頭で少年たちに蹂躪されてしまう少女は高校1年生。
その世代の娘を持つ親としては、当然のことながらその父親の立場で
場面場面の心理や行動を「自分だったら」と置き換えて読んでしまいます。

大切なひとり娘を酷い状態で殺された被害者の親が、
少年法である意味保護されている犯人を発見した時、
そのまま警察に通報し、つき出したとしても、
大した制裁も受けずに数年で出所するとしたら?
それならば自分の手で殺してやる、
って思う気持ちは、心情的によ~く理解できます。

『そんな人間に生きていく資格などない。更正する見込みもない。
 だったらせめて遺族の怒りをぶつけたい。恨みを晴らしたい。
 自分がどれほどの憎悪を受ける行為をしたか思い知らせてやりたい』

しかし、弁護士の立場からすると、
『少年法は子どもを裁くためのものじゃないんだ。
 間違った道に進んでしまった子どもたちを助けて、
 正しい道に導くために存在してるんです』

被害者の遺族は、
『だったら被害者の立場はどうなるんですか。
 彼等の受けた苦痛は、どこにぶつければいいんですか。
 加害者を助けることばかり考えるのが正しい道だというんですか』

捜査をする側の刑事も、復讐を果たせればいいと本音を漏らします。
『そういう気持ちになるのは当然だ。そのことに罪悪感なんて持たなくていい。
 俺たちは道徳の教師じゃないし、牧師でもない。
 ただの刑事なんだ。正義とは何かなんて考える必要はない。
 この問題について議論する必要はないんだ。少なくとも刑事である限りはな』

物語の最後に警察を退職した元刑事がつぶやきます。
『警察というのは何だろうな。正義の味方か。違うな。
 法律を犯した人間を捕まえているだけだ。
 警察は市民を守っているわけじゃない。
 警察が守ろうとするのは法律のほうだ。
 法律が傷つけられるのを防ぐために必死になっている。
 では、その法律は絶対に正しいものなのか。
 絶対に正しいものなら、なぜ頻繁に改正が行われる?法律は完璧じゃない。
 その完璧でないものを守るためなら、警察は何をしてもいいのか。
 人間の心を踏みにじってもいいのか』


犯罪の低年齢化が進んできた現在においても、
未成年の犯罪者は少年法によって保護されていますが、
その反面、被害者側の心の傷はどうケアされるべきなのでしょう。

正義とは?正解のない重たい問いなのかもしれませんが、
自分の答えは長峰の答えとそれほど違わないような気がしました。


『夜の橋』 藤沢 周平

2010-04-16 12:42:00 | 読んだ本
いつの時代でも、江戸城でも、地方の城下町でも、
親は子を案じ、男と女は恋に落ち、
理解のない上司に不満を抱き、部下は悪口を言うもんです。
庶民や下級武士の平凡な日常にありがちな出来事や事件を、
いろんな人間模様や人の情、人の心をしみじみと描く
藤沢さんの時代物は、長編もいいですが短編もいいですね。

『蝉時雨』『たそがれ清兵衛』『武士の一分』等々
映画になるともっといい味が出るのでしょうが、
心にじんわりとしみてくる藤沢さんの描く世界を、
文庫本で文章をじっくりと読むのもまた格別。

短編それぞれの結末は、ハッピーエンドとは限らないのですが、
それぞれの主人公のその後を応援したくなるような、
心に優しい藤沢ワールドを堪能できる一冊でした。


『眠れぬ真珠』 石田衣良

2010-04-02 12:40:00 | 読んだ本
45歳の女流版画家咲世子が17歳年下の
カフェのウェイター素樹との恋に落ちる物語ですが、
更年期に差し掛かる女性の心理の裏側を
繊細かつリアルに見事に表現していますね。

主人公の咲世子が慕う町枝ママの台詞も秀逸。

『女はね、二種類に分かれるの。
 ダイヤモンドの女とパールの女。
 光を外側に放つタイプと内側に引き込むタイプ。
 幸せになるのは、男たちの誰にでも値段がわかる
 ゴージャスなダイヤモンドの女ね。
 真珠の良し悪しがわかる男なんてめったにいないから』

『あなたは見事なパールの女になったねえ。
 光を豪華に撒き散らすダイヤモンドじゃなく、
 内側に引き込んで大切に守るパールの女。
 男たちが理解してくれなくても、気にしちゃダメよ。
 男の目なんてみんな節穴なんだから』

自分が28歳のときに45歳の女性をどう見てたんでしょうね。
女優でいうと、吉永小百合、大原麗子、倍賞美津子、
阿木燿子、上村香子、新藤恵美、酒井和歌子…
彼女たちの魅力全開で誘惑されたたらね~そりゃね~
でもこのお話の咲世子は自分から積極的に誘惑したわけじゃなく、
相手の若さに対して自分の更年期の引け目を感じながら、
ストーリーは展開していくわけで、そのプロセスの中で
揺れ動く心のリアルな描写はとても作者が男性とは思えません。
石田衣良、恐るべし!

物語の終わりのその先に希望が持てるような、
最後は石田流のハッピーエンドになっていますが、
ラストシーンがストップモーションで終わる
映画かドラマにすると結構いけるかも。


『裁判長!ここは懲役4年でどうですか』 北尾トロ

2010-03-04 12:35:00 | 読んだ本
主に東京地裁での裁判の傍聴記ですが、
いるんですねぇ、裁判の傍聴マニアってのが。

世間を騒がせた大事件の裁判から、
新聞記事にもならないような些細な事件や、
離婚調停のようなごくごく個人的なものまで、
裁判所ではいろいろなことで裁判が行われていて、
一般の人もそれを傍聴することができるわけで、
そこではドラマか映画の一場面を見ているかのような
様々な“人生劇場”が繰り広げられているんですね。

他人の離婚調停を傍聴して何になる?とも思いますが、
そこに至るまでには深~いワケがあったり、
あきれるほど短絡的な犯行から、
証拠もアリバイも100%そろっているのに、
それでも堂々と無罪を主張する被告人がいたり、
詐欺師自身も実は詐欺師に騙されていたとか、
事実は小説よりも奇なりというのを地で行くわけですな。

裁判員制度が実際に始まって、
世間で裁判への関心度が高まっている今、
裁判って実際はこんなことしてるんだぁと、
軽~い感じで読める本でありました。


『それ行けミステリーズ』 赤瀬川隼

2010-02-25 12:18:00 | 読んだ本
41歳のごく普通のサラリーマンが、
通勤電車内のトラブルがきっかけで
自分の野球チームを作ろうと思い立ち、
会社の女子社員から家族や
老齢の親まで老若男女を巻き込んで
そのチームで試合までやってしまうという
草野球のお話ですが、読んだ後には
爽やかに胸が熱くなるお話でした。

主人公が通勤しているのが京浜東北線だったり、
主人公の故郷が私と同じ愛媛の今治だったり、
会社の女子社員の苗字が私と同じだったり、
家族の年齢もほぼほぼ同じような感じで
なにかと今の私と共通点が多かったので、
シチュエーション的に
今の自分と重ね合わせたりしながら、
一気に最後まで読んでしまいました。

40を超えたオヤジが、凛として思い立ったことを
成し遂げようとする過程で起こる日常的な出来事の
ふとした心の動きや気持ちの描写が絶妙にうまいので、
読みながら心の中で“よくあるこういうこと”と、
苦笑いと感心させられることと半々でしたね。

私も小学校の頃は野球チームに入っていたので、
なんか野球やりたなぁっていう気持ちが
むくむくと湧き上がってきましたが、
一人じゃできないんだよなぁ、野球は。