コロラド州より、小さな町の小さな物語

コロラドの魅力は小さな町にありました。人気の田舎町への小さな旅と、日々の暮らしのレポートです。

コロラドのワイルドライフ ③ あっ、マウンテンライオンだ。

2009-10-14 14:45:47 | 日記
あっ、 マウンテンライオンだ。



数年前の9月6日、私の誕生日に素晴らしいプレゼントが届いた。
朝、トーストをかじっていると、なにやら見慣れない黒と白の鳥が、バタバタとやってきては、飛び立ってゆく。 なんだろう、と外を見ると、裏庭の芝生の一部がもっこりと盛り上がっている。 鳥は何かをつついているようだ。
外に出て近づいてみると、なんと鹿の屍だった。 
内臓を食べられ、肋骨が見える。 草の山のように見えたのは、枯れた芝をかき集め、屍を隠そうとしてあったからだ。
誕生日の朝に、なんという贈り物だ。

私はすぐに主人に電話をした。
「大変よ。 裏庭に鹿の死体がころがっている。 きっと熊にやられたんだ。 帰ってきて。」
彼はすぐに同僚を連れて帰ってきた。
「鹿の首が食いちぎられている。 マウンテンライオンの仕業だ。」と同僚が言う。
「違う。熊よ、きっと。」と、私が強気になると、「熊が鹿を食べるか?」と主人が首をふった。 なるほど、熊が鹿のお尻に噛み付いている様子は、想像できない。 やっぱり、マウンテンライオンなんだ。 ひぇ、怖い。




こんなかわいいマウンテンライオンはいません。 本物はこれの100倍くらいの迫力で牙をむく。


この屍をどうすればいいのか? 警察に電話をしたら、「裏庭は個人の所有地だから、家主が処理をしなさい」という答えだった。 しかし、どうしていいのか分からない。 電話帳を調べるとAnimal Moversなんてのがあったが、動物の死体を持っていってくれるのだろうか。 ひょっとして、ペットの引っ越し屋さんかもしれない。
同僚は「みんな道路に捨てにいくんだよ。 道路に捨てておけば、市が片付けてくれるさ」と言う。 そういえば、車にはねられた鹿の死体が道路わきによくころがっている。 あれは、市が片付けているのか。
主人と同僚は、キャンプ用のブルーのシートに鹿の屍を乗せ、トラックにつみこんで、臭い臭いといいながら、どこかに走り去った。

夕方、隣人にこの話をすると、驚いたように言った。 「危ないよ。」
隣のダンナ様は、ハンティングをするらしい。 ハンティングで一番危険なのは、動物の死体に近づくことだという。 マウンテンライオンは食べ残した獲物を、隠れて見張っていることが多い。 そこに人間が近づけば、獲物を横取りされると思い、襲いかかるのだそうだ。

私はゾッとした。
鹿を運び出した後、私はひとりで血のついた芝をビニール袋にいれて、お掃除していたのだ。 あの時、もしマウンテンライオンが戻ってきていたら、私は間違いなく襲われていた。 
やっぱりここはコロラドだ。 恐ろしいなあ。 しばらくは子供を裏庭で遊ばせるのをやめよう。





マウンテンライオン出現後は、動物の足跡を見ただけでもドキッとする。 この足跡はたぶんBobcat 山猫、、、と思ったが、犬の足跡らしい。


夕食時、今日はとてもエキサイティングな日だったなどと話していると、息子が「マウンテンライオ~~ン」と歌うように言う。 「そうよね。 今日はマウンテンライオンが出たのよね。」と返事をすると、「ママー、マウンテンライオ~~ン」と、またいう。
えっ? と外を見ると、ダイニングテーブルから10メートルも離れていないところにマウンテンライオンがいた。 マウンテンライオンはこちらを睨みつけながら、歯を剥きだしウーッと唸っている。
やっぱり、隠した獲物を探しに来たのだ。 マウンテンライオンと私たちの間にはガラスの扉があったが、突撃されたらガラスなど粉々に割れてしまうだろう。

主人が「動くな」といった。 マウンテンライオンはまだこちらを睨みつけている。
私にはマウンテンライオンの言葉が聞こえるようだった。 「おまえだろう、オレ様の獲物を横取りしたのは。許さねえ、許さねえからな。」

マウンテンライオンはもう一度、ウーッと唸ると、裏山のほうへ消えていった。
マウンテンライオンと向かい合っていたのは、たぶん5秒か10秒だと思うが、私の体はカチンコチンに固まってしまった。

この事件の3日後、こどものクラスメートのお母さんたちが立ち話をしていた。
このあたりで鹿の屍を見るのは珍しくないけど、学校の裏の道の鹿の死体はひどいわね。肋骨まで丸見えよ、と。
主人にどこに捨てたのか聞くと、場所が一致する。 潅木の茂みに置いたらしいが、たぶんマウンテンライオンかコヨーテが道路に引きずりだしたのだろう。

まずいな、これは。
我が家の鹿の話はしないでおこう、と心に決めた。

 

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