コロラド州より、小さな町の小さな物語

コロラドの魅力は小さな町にありました。人気の田舎町への小さな旅と、日々の暮らしのレポートです。

シリコンバレーからの脱出 ⑥ここが腕のみせどころ

2010-03-14 09:16:47 | 日記
ここが腕のみせどころ






5分後、彼はニッと笑って戻ってきた。 日本人クライアントを持つリアリターに、「ワイフはあなたのオファーを取りたいと言っている。 しかし、Greedy(貪欲)なアメリカ人のハズバンドは、一番高いオファーを出した別の人に売りたがっている」と、言ったらしい。 
彼女はすぐ自分のクライアントに電話し、申し出価格を引き上げ、おまけにContingencyも取ってしまった。
「これで、決まり!」
Royceはそういい、書類を片付けはじめた。
私は、しばらく頭がボッーとしていたが、戦友の功績をたたえるべく握手し、別れた。

オフィスを出たとたん、喜びがこみあげてきた。 いままで隠していた感情が、抑えられなくなってくるのがわかる。 ガハハッ、と大声を出して笑いたい。
一年半前に売りに出した時よりも、ずっといい値段がついた。 不動産売買はタイミングが大事だというが、そのとおりだ。 日本のバブル経済時に、不動産をころがして、大儲けした人がいたそうだが、彼らは私たちの何百倍もの興奮を味わったのだろう。
私と主人は建物の陰に隠れ、誰も見ていないのを確かめてから、「やった、やった」と抱き合い、子供のように飛び跳ねた。
とにかく戦いは終わった。 今日からゆっくり家でくつろげる。

ホッとしたら、お腹が空いているのに気づいた。 もう、お昼の時間だ。
私たちは、Palo Altoのこぎれいなイタリアンレストランに入り、ランチを食べた。 いつもより高い目のワインをオーダーし、ほろ酔い気分になった。
レストランを出ると、太陽がまぶしい。 この脳天気なカリフォルニアの気候ともお別れかと思うと、少し寂しい気もするが、私たちのCondo for saleは幕を閉じたのだ。




ステージングをすると、すっきりとしたセンスのいいコンドに早がわり。



家の良し悪しは、飾り方次第?

コンドのステージングで考えさせられたことがあった。 
世の中には、家を飾るのが上手な人がたくさんいるが、私は下手である。 なにをどう飾っていいのかわからない。 そういえば小学生の頃、美術が苦手だった。 私が絵を描くと、家は必ず倒れていたし、人は道にへばり付き、犬や猫は横になって眠っていた。
そして色彩感覚やバランス感覚の欠如に加え、私のせっかちな性格は、家を美しく飾るという作業を不可能にしている。
 
しかし、プロの人にステ―ジングをしてもらうまでは、きれいな家は高価なインテリア用品で飾ってあるからだと信じていた。 趣味の良さもあるだろうけれど、安物をつかってないから美しいのだと。

コンドが売れたあと、ステ―ジングの人に荷物を引き取りにきてもらった。 その時に、間違えて、我が家のランプまで持って行ってしまった。
ステ―ジングの会社に電話すると、「ごめんなさい。 でもどのランプかわからないので、見にきてくれる?」といわれた。 住所を聞くと、家のすぐ近くだった。
私は、ショールームのようなオフィスを想像していたが、ステ―ジングの会社は大きな倉庫の一角を借りていて、そこに貸し出し用の家具や小物を山のように積んであるだけだった。
はっきり言って、ゴミの山。 Kマートより雑っぽい、JCペニーより安っぽい。 ガレージセールに出しても、売れないようなものばかりだと、私は思った。
ランプばかりを並べてあるコーナーへ行って、自分の物を探したが、私のランプが一番高級そうだった。 でも、コンドを飾ってくれたランプは素敵だったという印象があったが。 
要は、飾る人のセンスで高級にも、安物にも見えてしまうということか?
それじゃあ、私が高級なものを買うという行為は、間違っているな。 まあ、買いはしないが。  




ステージングを取り去った後の我が家は、スカーンとしていたが、こちらのほうが生活しやすい?!




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シリコンバレーからの脱出 ⑤こんどは売れそう

2010-03-04 08:12:21 | 日記
こんどは売れそう。





二人目のリアルターは、ちょっと大柄の白人女性だった。
彼女は私を見て、ニッコリ微笑んだ。 
彼女のクライアントは、日本人のカップルだそうだ。
そして、私の目をじっと見つめ、「ワイフもハズバンドも、あなたのコンドをみてFall in love、恋におちたのよ」という。 この言葉は私の心をくすぐった。 うれしいではないか、こんなに気に入ってもらえて。 私だって、このコンドを売るために、いっぱい努力したのだ。  

このリアルターはFall in loveを何度も繰り返し、私を恍惚状態にさせた。 そして最後に、「このカップルにも小さな子供がいて、あなたのコンドミニアムのバックヤードで遊ばせたいんだって。 とっても、とっても可愛い子なのよーー」と言った。
そう、このリアルターは私たちにも小さな子供がいるのを、知っているのだ。 オープンハウスをしたとき、ぞうさんのシーソーをバックヤードに置いたままだった。
小さいバックヤードではあるが、水遊びをさせたり、私にも子育ての思い出がある。 リアルターは私の母性に訴えかけてきたのだ。

彼女が部屋から出た後、Royceは「あのリアルターのFall in loveのパートは忘れた方がいい。」と、アッサリ言った。 しかし、彼女が持ってきたオファーも、私たちの予想を上回る金額だった。



このあと3件きているオファーを開け、そうこうしているうちにFaxで6件目の駈け込みオファーが届いた。
高い金額を提示しているのは、やはりリアルターが直接持ってきている最初の2件である。 Royceは「じゃあ、二人で話し合ってね。」といって、さっさと部屋を出ていってしまった。

私は、日本人カップルに売りたかった。 Fall in loveは忘れろといわれたが、こんなに気に入ってくれているのだし、子供をかかえての家探しはストレスも多い。 さっさと決めて、引っ越して、終わりにしてしまったほうが、気持ちがすっきりする。
主人は、離婚男性のほうが、提示金額が多いのだから、当然こっちだという。
私は、この男性はまだ離婚していないのよ、と反撃した。
「もし、明日にでも“やっぱり、離婚はやーめた”といったらどうするのよ。 離婚するとカリフォルニアは慰謝料が高いし、だいたいアメリカ人なんて、いつ気が変わるがわからないでしょ。」

Royceが部屋へ戻ってきた。 私たちはそれぞれの考えを伝え、彼の意見を聞いた。
彼は、日本人カップルのContingencyが1週間というのが、気にかかるという。 シリコンバレーでは、通常2-3日だそうだ。
Contingencyは、英和辞典で引くと、“偶発事件”と書いてある。 これだとよく分からないが、不動産売買では条件期間とでもいうのだろうか。 この期間ならどんな理由でもキャンセルできる。 次の日、もっとよい物件があったとか、単に気が変わった、でもいい。 「やっぱり、やーめた。」と、ペナルティなしで、白紙に戻せる期間のことをいう。
売る側にすれば、これが一番怖い。 すごろくゲームのように“振り出しに戻れ”といわれれば、すべての予定が狂ってしまう。

Royceは「ちょっと、待っていてね」と言って、ふたたび部屋を出ていった。

<つづく>


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