この9月、N響定期演奏会は新たなシーズンを迎えました。昨日ですが、約3ヶ月振りに
NHKホールに出掛け、N響の演奏会を聴いてきました。今回はシューマン生誕200年と
題して全てがシューマンの曲であり、曲目は前半が序曲、スケルツォとフィナーレ作品52
とピアノ協奏曲イ短調作品54、後半が交響曲第3番変ホ長調作品97「ライン」でした。
指揮はネヴィル・マリナー、ピアノがアンティ・シーララでした。ネヴィル・マリナーと
いえば、今から30数年前の学生の頃にアカデミー室内管弦楽団 (Academy of St. Martin-
in-the-Fields) との演奏が強く記憶にあります。
その頃はバロックから古典派あたりまでの曲に取り組んでいたような気がします。その演
奏は清楚で自然な気品あるもので、安心して聴ける指揮者のイメージがあります。1924
年生まれといいますから、今年86歳です。凡夫の父親より1つ若いですが、舞台の袖から
出てくるときも非常に若々しい歩き方で年齢よりも若々しく見えますし、その指揮の内容も
しっかりとしており、70歳代の指揮ではないかと疑うような感じでした。
演奏内容ですが、今回はN響の弦楽器が最高の出来でした。久し振りにN響の良い演奏を
聴いた感じです。また木管楽器ではオーボエが素晴らしい音色でした。ネヴィル・マリナー
の力だと思いますが、どの曲もバランスがとれた内容で全ての音がクリアーに聴こえました。
一方で、全てがシューマンの曲であったのが良かったのかもしれません。曲を聴くにつれ
てシューマンの世界にどんどん入っていく感じがあり、指揮する側、演奏する側、聴く側か
らしても充実したものになる確率が高いと思われます。人によってはいろいろな作曲家の作
品を混ぜた方が面白いという意見もありますが、個人的には今回のような一人の作曲家の作
品を取り上げる演奏会のスタイルが好きです。
今回演奏された3曲とも演奏内容は充実していましたし、満足感のある演奏会でした。ピ
アノ独奏のアンティ・シーララですが、初めて聴くピアニストでしたが、今年31歳の若い
ピアニストであるにもかかわらず、基本がきっちりと出来ておりどちらかというとベートー
ヴェンやブラームスのようながっちりとした構成の作品に合っているピアニストだと思いま
したが、一度モーツァルトの作品を聴いてみたいと思いました。鳴りやまぬ拍手の中でアン
コールがなかったのが少し残念でした。
3曲の中ではシューマンの交響曲第3番は最高の出来でした。ネヴィル・マリナーがこの
ような演奏をするのかと思えるほど素晴らしいものでした。特に第4楽章は心を揺さぶるも
のがありました。何度も聴いている曲でしたが、何故かレクイエムのような重厚で心の底に
響きわたるような感じを受けました。
ゆっくりと幅広く広がる感じで、混沌とし真っ暗やみの中で自分自身がこれから進むべき
道を見出すような試練の中にいるといった感じでした。最後に闇の中に月の光が差し込み自
分の行く先がはっきりと見えたそんな感じを受けました。シューマンを聴いてこのような感
じ方をしたのは今回が初めてのことでした。
久し振りに満足感に満たされ、NHKホールを後にしました。これからの季節は芸術の秋
ですで、毎回このような演奏会になると良いのですが・・・
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