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『ミュンヘン』
出演: エリック・バナ, ダニエル・クレイグ 監督: スティーブン・スピルバーグ
この映画は先日観た『パラダイス・ナウ』とコインの裏表の関係にある作品。
ミュンヘンオリンピックの選手村でイスラエルの選手スタッフが
パレスチナ・ゲリラ『黒い九月』に拉致されやがて全員殺される。
イスラエルはこれに報復する為に暗殺特別チームを結成し、
チームはヨーロッパ各地でパレスチナ要人を次々と殺害する。
しかし、チームのリーダーであるアグナー(エリック・バナ)とメンバー達は次第にその殺戮に苦悩し、
自身たちもパレスチナの暗殺ターゲットになっている事を知り、恐怖し、神経を犯されていく、、
このミュンヘン事件は実際にあった話で、
イスラエルはもちろん否定しているが、
この暗殺チームは当時のイスラエル女性首相ゴルダ・メイアの肝いりで結成されたと言われている。
スピルバーグの演出は凄まじく、
例えば選手村のシーンで右頬を撃たれた選手は、
歯を吹っ飛ばされて弾丸が左頬を貫通したままでまだ生きており、
その映像は強烈でグロテスクでさえあった。
スピルバーグはイスラエル寄りであると言われており、
イスラエルの暗殺チームは自分達の殺人に苦悩するが、
パレスチナ側のテロには人間らしい所の描写がなされておらず
必ずしもフェアであるとは言いがたい。
しかし、スピルバーグはイスラエルに無批判であるのかと言うとそうではなく、
アグナーの視点を通してイスラエルを批判してもいる。
パレスチナ側の、ハニートラップを使うオランダ人女殺し屋の殺戮シーンでは、
火力の弱い銃で胸に小さな穴を開けられた女が、
死ぬ前に可愛がっていたペットを抱きしめる。
なんでもないシーンだったが、涙がこぼれた。
★★★★★