ビール瓶

2008-02-10 17:55:25 | Weblog
昨日であったか、朝食を食いながら新聞を読むと、
前時津風親方の山本順一容疑者が、被害者の若者をビール瓶で10発ほど殴ったと書かれていた。



ビール瓶で人を殴るとき、割れないとものすごく痛いらしいが、
私は若い頃ビール瓶で人を刺そうとした事がある。



県庁所在地にある三流大学に通っていた頃で、
この学校は2年で退学したから、18か19歳の頃だと思うが、
天気の良いある初夏の昼、私は友人とこの県最大の繁華街を歩いていた。

この友人というのが県南Y市にある高校の副番(古いですね、、喧嘩でNo2の事)だった男で、
すこぶる喧嘩っ早い。

ビルの谷間にある交差点を眩しい太陽に目を細めて渡っていると、
いがぐり頭のがっちりとした体育系らしい男が、私と友人を交互に睨みながら向こうから歩いて来た。

何で睨んでいるのか解からないのだが、
奴は私たちとすれ違う時も目を離さず、顔を捻じ曲げながら睨んでいる。

私も友人もそのただならぬ雰囲気に緊張し、奴を凝視し続けた。

その間は他の景色はまったく目に入らず、ただ奴の眼光だけがその視界にあった。

しかし、何事もなくすれ違ってやれやれと思った矢先、
友人が首をぐりっと廻し後ろを振り返った。

つられて私が振り返ると、、、

奴は、、立ち止まって完全にこちらのほうを向いており、
首をカクンと左に傾けてポケットに手を入れた。
ベージュの綿パンに紺色のTシャツを無造作に着ていた。

友人は痩身長躯俳優のようなハンサムな男なのだが、すでに目が完全に据わっており
『やんのか、コラ!』と吠えた。


すぐ近くに地元の新聞社があり、その裏手に空き地があった。
ふたりはいきなり殴り合いをはじめ、私はオロオロして見ていた。
その内友人は組み付かれ、倒されて下になった。

私は奴の方から見えないように注意しながら、奴の尻や足を蹴った。

その時私の目の端に古い木箱が見え、中に麒麟ビールの大瓶があった。
私は蹴るのを止め走って木箱に近付くとビール瓶を手に取った。
瓶は空だったが、雨だか何だかわからない液体が少し入っており、
瓶を逆さにしてそれをこぼした。

私は裕次郎の映画を思い出し、ビール瓶を近くのコンクリート塀に打ちつけた。
瓶は割れた。少しビックリした。

割れた瓶は20センチくらいの長さでちょうど良かった。
、、つまり、、その、、映画のシーンのようだった。

組み敷かれて劣勢だった友人がこっちを見た。
『お!Pちゃん、刺さんの!刺さんの!』と大声で叫んだ。

私は二人に近づき、まわりをウロウロした。
時々わざと当たらないように腕を突き出し、合間に奴を蹴った。


私は刺せなかった。


考えてみれば何の恨みも無い、しかも友人が始めた喧嘩で、
とても人間一人、たとえビール瓶といえども刺せるものではない。

私の知り合いで、ナイフで人の腹を刺し少年院に入った人の話を聞いたことがあるが、
人の腹というのはブスっと刺すという感じではなく、スゥーっと刃が入っていくような感じで、
刺した瞬間は『ざまぁみろ』ではなく『しまった!』と思うそうだ。


しかし刺さないで良かった。
もし刺していたら、私の人生はかなり違ったものになっていたような気がする。
友人もその後冷静になったとき『Pちゃん、刺さんで良かったない』と言った。


喧嘩はしばらくすると双方疲れてきて、またバカらしくなってもきたのだろうか、
もうやめよう、という事になって握手して別れた。



人はなかなか刺せませんですよ。






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2 コメント

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幸運 (P@RAGAZZO)
2008-02-11 10:34:20
いやいや、ありがとうございます。
お恥ずかしい過去でございます。

でも、こんな何でもない岐路で、
運の悪い人は悪い方悪い方に行っちゃうんですよね・・

私は幸運だとつくづく思いますです。
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ヨカッタ、ヨカッタ! (ボチボチかめです。)
2008-02-11 09:40:45
やはり男の子と女の子では、青春の思い出に
随分と差があるもののようですね。

>奴は、、立ち止まって完全にこちらのほうを向いており、
首をカクンと左に傾けてポケットに手を入れた。

表現がうまい!
映画「レオン」で、キレた刑事役の
ゲイリ・オールドマンを思い出しました(笑い)

>割れた瓶は20センチくらいの長さでちょうど良かった。
、、つまり、、その、、映画のシーンのようだった。

わはは~ 面白い! ここ、気持ちわかるなぁ~

>喧嘩はしばらくすると双方疲れてきて、
もうやめよう、という事になって握手して別れた。

この辺りが、最近の若者には、欠けているような気がします。
でも本当に、刺さないで良かったですね!
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