弁理士試験・弁理士受験対策講座  全員合格!吉田ゼミ

頑張るぞ!弁理士試験
370万PVを誇った吉田ゼミのブログ。OCNのサービス終了により、こちらに引っ越してきました!

青本読んでる? その5(29条の2)

2010-07-22 23:46:29 | 特許法
 さて、29条の2ですね。
 法29条の2は、拡大された範囲の先願と考える考え方(拡大先願)と、出願について公知を擬制すると考える考え方があります(準公知)。いずれでもよいのですが、趣旨を記載する際に、「そこで出願により公知とみなすことにした。」のように書いてしまうと、「そんなみなし規定は存在しないよ。」と、誤解を招くおそれがあるので準公知の考え方で答案を書く場合には、細心の注意を払いましょう。私は青本の記載に沿って趣旨を述べるのが(論文でも、口述でも)よいと思います。

 特許法29条の2は、特許出願に係る発明が、「XYZの発明」と同一であるときは、その発明については、前条第1項の規定にかかわらず、特許を受けることができない旨規定しています。
 「XYZの発明」が29条の2の適用要件のところで、

 X 当該出願の日前の他の先願があり、
 Y 他の先願が後願の出願後に出願公開等されており、
 Z そのような先願の当初明細書等に記載されている

 という要件を満たす発明

 ということになりますね。

 発明の同一性の判断については審査基準を熟読しておきましょう。
 さらに発明者同一の場合や出願人同一の場合は例外となりますが、発明者同一というのは、手続的には願書に記載された発明者により判断されることになりますが(基本的に特許庁は判断するすべがないからですね)、実体的には、願書の記載がどうであれ、発明をした者が同一人であるならば、先願により後願は拒絶されることはないということになります。
 今年の本試験は願書の発明者が乙と記載されていることを問題文で述べる一方、「乙による出願Y1の経緯を含む上記事実は、すべて明らかにされていることを前提として、以下の設問に答えよ。」との記載から、明らかに実体的な法律の適用を求めた問題でしたね。


 さて、青本には、まず、「一 この規定を採用した主な理由は、次のとおりである。」ということで立法趣旨が述べられています。
 この趣旨は、三つ、挙がっています。
 (1)は、先願の明細書等に記載された発明について後願が出願しても何ら新しい技術を公開するものではなく、このような発明に特許権を与えることは新しい発明公表の代償として発明を保護しようとする特許制度の趣旨からみて妥当でない。
 (2)(イ)は、審査請求制度を採用したことに伴うもの。
 (2)(ロ)は、いわゆる防衛出願の抑制を図るというもの。
です。

 口述試験などでは、「特許法29条の2の立法趣旨を三つ言え」と言われたら、言えなければなりませんよ、良く確認しておきましょう。

 さらに青本においては「四 本条については、39条との差異が問題になる。」として39条との差異について、
 (1)規定の趣旨の面からの差異
 (2)後願を排除できる範囲はどこまでかという観点からの差異
 (3)後願を排除できない場合は何かという観点からの差異(4つ)
 これらは「すっっげええええ」大事なところです!

 最後に、青本ではパリ優先権の場合について、特許法17条の3かっこ書との兼ね合いも踏まえ、第一国説と第二国説の話まで展開しています。ここでは優先権の効果は出願日の遡及効ではないことを前提に4条Bの効果により第一国出願日で先願の地位を与えることが明確に述べられています。

 特許法29条の2については、青本は重要事項オンパレード。審査基準に加えて青本の解説は必読です。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 青本読んでる? その4(2... | トップ | 口述練習会開催(平成22年... »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
吉田先生、こんにちは。 (かおり)
2010-07-23 14:09:12
吉田先生、こんにちは。
猛暑[E:sun]のなか、
今回は「すっっげええええ」大事な(笑)な条文のご説明ありがとうございます[E:happy01]。

そういえば、今年は青本18版がでたようですね!第17版とかなり相違点があるのでしょうか?
それともあんまりかわらないのでしょうか(実質同一)?

今年の青本条文ゼミは「第18版」でなさるのですよね[E:sign02]
10月を楽しみにしております[E:happy02]
かおりさん (吉田)
2010-07-23 22:32:37
かおりさん

 コメントありがとうございます。
 青本18版は、仮専用実施権や仮通常実施権の記載が入ったことと、17版でところどころで見られたミスが直っていることが特徴です。
 青本条文ゼミは、もちろん18版でやります[E:happy01]。

コメントを投稿