陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

在宅作業、ほんとうに働きやすいのか?

2023-07-29 | 仕事・雇用・会社・労働衛生

以前、遠縁にあたる同年代の男性から「ITエンジニアとして会社から独立しようと思っている。フリーランスになったら自由に働ける」と相談を受けたことがあります。それはコロナ禍まえのことだったのですが、今、この彼がはたしてどうしたのかわかっていません。

自分の家族、とくに配偶者が勤め先から在宅作業切替えを打診されたら?
在宅作業といいましても、その会社に在籍して、リモートワークとして働くのならばまだよし。

しかし、Zoomなどのリモートワーク用のツールは通信不安があると、とたんに用をなさなくなります。最近、KDDIだったかの通信障害が発生したばかり。ロシアのウクライナ侵攻での原油高があって、光熱費も爆上がりしていますし、家でのんびり仕事ができることがいいことだとは思えません。停電したら、クラウド処理していたデータがオシャカですよね。

私は個人事業を10年勤めた後、兼業で会社員生活をしておりますが。
サラリーマンとして勤めるのは、やはり経済的な面からしたら、とても楽です。

なにせ、毎月定額のお給料が約束されています。賃金債権は労働法で保障されていますから。フリーランスのように作業単価の安い出来高制ではないのです。通勤手当はもちろん、会社によりますが、皆勤精勤手当、有休手当、残業代、賞与もありますよね。納品に向かう間に事故に遭っても労災の対象にはなりませんし、完成度が低いと請負額の割に何度も修正をかけられることもありえます。

またオフィスにいけば、自分が用意しなくてもよい最新の業務システムや設備が使えます。
大型のプリンターや大きめのディスプレイのPCなど。通信料を気にしながら電話をしたり、インターネット接続したりすることもありません。冷暖房の利いたオフィスで快適に働けますよね。業務上に必要な設備が故障しても、修繕費はとうぜん会社負担です。フリーランスになったら、紙一枚買うので経費にして帳簿をつけねばなりませんよね。そうした面倒ごとは他の人がやってくれるわけです、会社では。

プライベートの空間をうっかり覗かれることもなく。
公私をきりわけることもできますね。私はついつい自室に個人事業上の書類と、趣味で読みたい本とが混在していて誘惑に負けてしまうことがあります。ネットでもついつい検索してよけいな情報を得てしまいます。会社だと同僚や上司の眼がありますので、そんなことは許されません。

独りで作業をしていると、業務に行き詰まったときに、相談できる人が側にいません。
家でモクモクと作業することで、他部署宛の電話から解放されたり、メールやFAXの受注につど対応しなくてもよいこともあり、不意うちの訪問営業マンからも逃げることはできます。

実は私、個人事業の専業になる前に、ちょっとのあいだだけ。在宅のライター稼業をしていたことがあります。文字単価がかなり安くて、毎日必死に書き連ねても月に数万円ほどにしかなりません。お小遣い稼ぎとしてならよいでしょうが、これを専業一本で食っていくのは至難のワザ。とてもとても作業に掛けた時間に見合うとは思えませんでした。

現在は、ネット上での副業稼ぎも増えています。
しかし、在宅できる、誰でもできる、の敷居が低い仕事は競争率が高く、さらに単価も低めの傾向があるでしょう。

さらに業務上の指示が電話やメールだけの場合。
直接の打ち合わせと違い、微妙なニュアンスが伝わらない恐れもあり、何度も往来することもありえます。通信費ややり取りの時間をいれたら、時間単価は最低賃金以下になることもありえます。

公私の時間の区別がつきがたく、下手したら過労気味になりやすいものです。
家で作業していたら、プライベートの割り込みタスクが発生して締切りに間に合わないおそれも。私はパソコン作業になるとのめり込んでしまう性質のため、ずっと椅子に座って入力ばかりするような仕事は好きであるけれど、ずっとはやりたくないですね。会社での業務のように、雑多な作業を組みあわせ、アレンジして、気分を入れ替えできるのが、やはり理想なのです。

私の現職場でも、家庭の事情で、一時的に在宅作業に切り替えた方がいます。
とうしょは、完全なアウトソーシング者になると希望されたのですが。その方がかなりの職場内での戦力だったこと、フリーランスになると同業の他の業務を請け負われてしまう恐れがあること、さらにはその方の有休がなくなるなどの不利な面も加味して、説得し、あくまで一時的な在宅作業者という扱いにしました。一定期間たてば、また職場復帰してほしいとお願いしたのです。

もし会社から率先的にフリーランス独立を打診されたら。
社会保険や労働保険などのメリットがなくなりますので、よくよく考えてから結論を出してください。不景気になった会社は従業員を多く抱えたくないので、要は体のいい退職勧奨なのです。会社員で雇われている間は仕事が暇でもお給料が発生し、さらには業務上の都合で出社出来ねば休業補償が出ますが、フリーランスは被用者ではないので、そういった補償はまったくありません。ある日、作業の割り振りがなくなってしまえば、自然とその会社と縁が切れてしまい、収入減を失ってしまいます。またより安い単価で作業が早いアウトソーシング者にのりかえされることも起こりうるのです。

私はアウトソーシング者への報酬の計算も担っていますので、よくわかりますが。
在宅での作業量での報酬と、会社に出社しての月給とは、単価に直すとかなり異なります。またアウトソーシングの方は時間を守る意識がないのか、急に来社されたりもするので、困惑することもあるのです。自由な働き方は、会社員としてのスキルやマナーを磨く機会を損なう恐れもあるのでしょう。

定年退職後の軽めの副業としてやるのならばよいのですが。
在宅作業も現役で働けるうちはキャリア形成を考えて働かないと、いいように時間を切り売りさせられてしまうだけなのではないでしょうか。けっして、好きなだけ自由に働くという、おいしい労働ではないように、私には思われるのです。

(2022/07/23)






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