次回から「神嫁の巫女」がはじまります。
暗黒面に堕ちた媛子がこちらです。
千華音ちゃん、逃げてーぇ!!(違)
暗黒面に堕ちた媛子がこちらです。
千華音ちゃん、逃げてーぇ!!(違)
古い想い出をたどると、あのとき、あの場所で、あのひとにこう言ってあげられたらよかった、なんて後悔してしまうことは多々あります。
はっきりと好きを伝えなかったがために、誰か別の人と人生を歩んでしまう。恋愛だけではない。あのとき落ち込んだひとを励ましていれば、勇気づけていれば、あの一歩を思いとどまったのに。だって、そのとき、そのひとが崖っぷちだなんて思いだにしなかった。道はもうすこし続いてたと信じていたから──そんな悲しい事態も世のなかにはあったりするものです。しばしば、つながりの終わりはそうして訪れる。
17年と前にさる名作百合アニメの最終回で「気づいてあげられなくて、ごめんね」と語ったあの少女、令和のいま、彼女と似た人物は、いろいろ気づきすぎてしまっていたようです。そして、彼女の選んだ選択は──…。
ひさびさに漫画版『姫神の巫女』の本誌派レビューをします。
なおこのレビューは雑誌基準の、掲載回数とします。そのため、単行本二巻以後の話数とは異なる可能性があります。
今回のレビューは『月刊電撃マオウ』誌における第十三話から第十五話までのまとめ。
第十二話は単行本編集作業の月のため、おまけのサービス回なので考察対象外とします。あとで本筋と絡んできそうもなさそうなので。
第五話あたりから八話までの感想を外したのは、原案扱いのウェブノベルでの先を知っているので、考察しながらうっかり自分の意見のように展開明かしを含めないためです。
それと、いささか不審点がありましたので、レビューを控えていました。このあたりは、ウェブノベルではかなりの重要部分。じっくり、とっくり、たっぷり味わうように。さて漫画ではどう描写されたのでしょうか。現在、電子版の角川コミックウォーカーでの公開も終わり、既読の方が多いはずなので、ネタバレ配慮なしで、ざくざく筆が進みますよ。
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御霊鎮めの儀に勝利を収め、「神嫁の巫女」として婚儀を控えている媛子。
そこへ媛子へカマを掛けにきたのは双磨。今回のセクシーお姉さん枠なので、神無月の巫女時代にはできなかった媛子へのアレやソレやもやりたい放題。ソウマ君の使い方、まちがってるよ! それはともかく、京四郎と永遠の空のDVD特典の温泉回とか、原作漫画「神無月の巫女」でのお風呂回と比較しますと、媛子の不動心っぷりがわかります。同性どうしのセクハラを賢いねで封じこめるソウマ子の遣り口にややうすら寒さを感じつつ。媛子もなにやら思惑があったようで、独りになれば不敵な笑みが…。
その頃、東京の街をさまよっていたのは、死んだはずの千華音。足はあります、念のため。
千華音ちゃん、大蛇神が自分の魂を気に入らず現世に送り返した、なんて考えるあたりが古めかしくて律儀ですね。伝統をぶち壊すという感じじゃないのよね。その千華音は、生き残った理由を求めて媛子の部屋を訪れて──。
はい、ここからが皆さんお待ちかねの、あの媛子の日記回想パートですね。
あのときも、このときも、媛子はどんな顔してたの? どんな気持ちだったの? そう、千華音ちゃんから見えていたのは、媛子のつくられた仮面。でも、先に言わせていただきますと、この回想部分たったの三話だけで終わってしまったのがちょっと残念でした。
媛子の部屋および日記から明かされた事実とは──。
其の一:ソウマ子の巻貝は偽物だった
雑誌掲載三話の時点で、双磨が穢したものと千華音が媛子に贈ったものは形状が異なるのです。これを指摘すると、千華音ちゃんが勝手に疑心暗鬼に駆られて早合点した小心者に見える。双磨はふたりの海デートを盗み見して、似たものをでっちあげたのでしょうか。それにしても、プレゼントしたものの形をきちんと覚えていない千華音ちゃんもなんだかな…な演出ですよね。ソウマ子のツラなんて直視したくないだろうけど。漫画独自の味付けですね。
其の二:初邂逅の夜は媛子側が仕組んだもの
原案小説から大きく変更された部分。二巻でも明かされていましたが、第二話登場のレーコとコロナ似の九頭蛇さんは日之宮家側のスパイ。皇月家にわざと情報を流して、襲われた媛子を助けさせる。雑誌の六話後半で媛子と同じ制服の刺客がいて、千華音ちゃんは「媛子の家の者」と考えていますが、彼女らは九頭蛇と名乗っています。なので、この六話時点で「九頭蛇」なる組織のなかには、媛子側に与する者もいたとわかる。けれど、二話のレーコ似は千華音ちゃんを見て「何者?」と考えているんですよね、ごまかし言葉で言ったのでなく。媛子と共謀していたのなら、なんで千華音ちゃん登場を驚いたの? 島から逃亡した媛子の探索命令が出たときの御殿で、千華音ちゃんは九頭蛇全員と同席していましたよね…? だとしたら、お互いの顔や雰囲気は知っていそうなものなんですが。なので、とうしょ、私は「九頭蛇」とは、九人の神官ではなく、島の祭儀武闘集団の組織名で、刺客になっていたのは下忍だと考えていたのです。ここが混乱して、レビューを進めなかった理由でもあります。
其の三:千華音ちゃんの今わの際に贈られた言葉
これの回答はこの回想では判明せず。アニメ神無月の巫女になぞらえて、お誕生日おめでとうかなと思っていたんですが。そういや、絶対少女聖域アムネシアンで、「ハッピーバースデー♪」と歌ってましたね、「あの姫子」が…。
其の四:スマホの位置情報をゲットだぜ!
これも八話あたりでなんとなくなんか仕掛けたな、この犬っころ娘め、と勘付くところ。千華音ちゃんの行動を逐一報告して、観察してたんですね。好きな人のアカウントを監視してる媛子、ストーカーみたいでちょっと気持ち悪いですね~(酷)。せめてドローンで監視してたとか、なんかなかったのかい。
其の五:いろいろあざといデート中のしくじり
第一話で派手に転んで見えてたことがありましたよね。アニメ神無月の巫女初回のオマージュなんだけど、そこ要らんわと思っていました。そんな大げさなドジっ娘ぶりにも、千華音の行動を誘う思惑があった模様。こ の 天 然 悪 女 がッ! もはや、殴りたくなるレベルです。第一話は、かなり千華音ちゃん側の気持ちを引き寄せた地点だったとわかります。媛子、罪なオンナだな!
其の六:異性の好みを探ろうとして恋のスイング
このブランコシーン、小説にあったのでしょうか。媛子が千華音の心に近づいたのは、おそらく御神巫女としての孤独な過酷な運命。ふたりだけはそこで繋がっていた──はずなのに。媛子のこの、あなただけが親友なのよ作戦、二巻のおまけ漫画を見たらば締めあげたくなります(怒)。女の子らしい日常の愛おしさを語る媛子、それに感化されていく千華音。ふたりで東京スカイタワーからちっぽけな街を見下ろしたからでしょうか。
其の七:ひめちかキッスの画像転送のときの…!
一話で千華音ちゃんはほっこり顔なのに、媛子ときたらこの悪女フェイス。わたくし、東京湾に簀巻きにして沈めたろかと思いましたわ(酷) その地獄スマイルで「一番大切な人を目指して」とか抜かすなあああッ!! どの口で言うかあああ!(落ち着け)
其の八:だんだん本気になっていく媛子
スマホでのやりとりをしたり、時間を共有するうちに、肌に触れるうちに好きが深まるのがわかる媛子。ヤクザで悪いオトコにずぶずぶハマる女の心境です(違)。心臓のどきどきすらも勘違い。YOU、もう、付き合いっちゃいなよ!
其の九:雨の日のあの顛末
媛子の傘がビニール製、いやなんでもありません。マンション前で怒りに駆られ待ち伏せする千華音、怖がった媛子はなんと奇策に──って、これが服ビリビリの顛末かい! いや、原案小説もそうなのですが、なのですが、ココはやはり別の解釈が欲しかったですね。千華音ちゃんの胸に顔を埋めて嬉しそうにする媛子、もはや変態です、懺悔なさい。 千華音ちゃんが部屋で貝を見つけたら、どうするつもりだったんだろう…。飼い猫が食べてたせいにでもすんのか?
其の十:千華音ちゃんの好きを拒んだあの夜
自分でお泊り誘っといて彼女がこれってどうなの、ふんが~ッ!と健全な諸兄は思うところですが、まあ女子的にはこうなのでしょう。ダメよ、ダメよも好きのうちでなくてですね。正直、過激派百合漫画好きさんとしてはここでキスぐらい欲しかったはず。やや肩透かしですね。でも、これこそがまさに姫神の巫女流。
ここで媛子は自分の嘘が引き起こした結果に向き合うことになります。なんという自己矛盾。
媛子の回想日記は自分にくすぶる愛の芽生えにもだえた地点で途切れ、媛子が「どういう覚悟を独りで固めたのか」まで明らかにされていません。
ウェブノベルとここが違う。そう、アニメ神無月の巫女七話の千歌音ちゃんのように、媛子もまた大切なものを守るために、人知れずの企みを実行する決意をした。それを千華音ちゃんは悟ったわけですね。書かれていない媛子の強い想いと秘めたる行動力とを。
儀式の前に想いを告げたい──けれど、それは叶わなかった。
九話の仲直りデート回当日まで、媛子はもう日記をしたためるのを止めたのでしょう。あの日、千華音ちゃんがすこし恋に溺れた女という感じであまりに浮かれすぎていた感があったからか、それとも自分がどうするか迷っていたからか。自分が振り向かせた女なのに、それを突き放さねばならないこの悲しさ。ああ、辛い!
日記ではなく、媛子ほんらいの回想であったのなら。
九話のあたりでどんな胸中だったのか、計り知ることもできそうですが、ここでは伏せられています。ここが今回やや物足りないと感じた部分。あともっと、過去回にはなかったオリジナルエピソードが欲しかったなあとも。
ウェブノベルの媛子の気持ちをそのまま引用して、漫画ではなくただの挿絵になっている部分もあったけれども。視点切替えの叙述トリックにありがちな、同じ部分を繰り返すのを避けたのでしょうね。
でも、この媛子の日記回想の足りなかった部分はおそらく先送りされているはずなので。
今後に要期待というところでしょうか。
あれからの神無月の巫女、これからの姫神の巫女(まとめ)
神無月の巫女のスピンオフ漫画「姫神の巫女」(2020年5月より連載中)の本誌掲載分の随時更新感想の一覧です。レヴューは各話やるとは限らないので、通し番号にしてあります。単行本派の方に配慮しないネタバレ全開となっています。
★★神無月の巫女&京四郎と永遠の空レビュー記事一覧★★
「神無月の巫女」と「京四郎と永遠の空」に関するレビュー記事の入口です。媒体ごとにジャンル分けしています。妄言多し。
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