店長スペシャル

人生は心に想い描いた通りになる。ゴールデンルールの道。

四十九日のレシピ

2010-09-23 18:51:05 | Weblog
『四十九日のレシピ』 伊吹有喜著


人はあたりまえのことには感謝しない。むしろ気づきもしないだろう。
そのあたりまえのことが無くなった状況に出くわした時、人はありがたみを感じる。
「親孝行しようと思うと親いない」本書を通じてあらためてそう思った。

僕が二十六才の時、母親は病気で亡くなった。
先ほどの言葉通り母に何もしてやることが出来なかった。
もう少し一緒にいた時間の中で大切にしておきたかったな。
大好きだった母の手料理。もう二度と食べられないのなら少しは教わっておけばよかった。
そうした自身の経験も含めて本書からあらためて大事なことに気付かされた。
「自分の一番大切な人のことを、心から一番に大切にしなければいけない」ということ。
いたってシンプルなことかもしれないが多くの人(自分も含めて)はそれが出来ない。
もしかしたら、誰しも仕事などが忙しいときや追い込まれたとき、距離が近い本当に大切な人のことを蔑ろにしてしまうことはないだろうか。

彼らの後悔や、生前の乙美について何も知らなかったことへの情けない思いが、自分に重なった。でも涙はでない。
本書はとってもあたたかいストーリーだから。


ある日突然乙美が脳梗塞で亡くなる。残された夫や娘に対して乙美は日々の些細な事あるは突然の状況でも対処できる「レシピ」残しておいた。
そのレシピは井本という教え子から伝えられるのだが、井本という若い現代風の女性の放つ言葉は時として、抜け出したくても抜け出せない弱い現代人に対しての愛のムチにもなる。

乙美は「四十九日のレシピ」として、四十九日当日は、読経や焼香はいらず、レシピ通りの料理を立食形式で出して、みんなで楽しんでもらえればうれしいという遺言を井本に託す。
素敵で立派なお話。

四十九日の日にまるで自分で作った料理のようにみんなにふるまう。
せっかく自分の為に集まってくれるのだから最高のおもてなしをと、故人がさもそこにいるかのようにふるまう姿には本当に感動させられた。
自分が死んだ後のことまで考える人は真の大人なのかもしれない。
そういえば、母も亡くなった後の葬儀代として、どこそこの通帳から引き出せすように言っていたのを思い出しました。

レシピはそれだけではなく、「掃除のレシピ」、「料理のレシピ」、「ひな祭りのレシピ」そして「お誕生日のレシピ」など、自分が存在しなくなっても夫が普段通り暮らせるように色々用意してある。
もう少しそのレシピの内容も知りたかったな。

冒頭は、「今日から彼女があたらしいお母さんになる人だよ」と父から初めて紹介された時、乙美手作りの重箱お弁当を投げ捨てた百合子の気持ちは、三十三年の時をこえ、乙美と同じ年齢になってその意味を知る。

生きている時は素直に甘えられなかったり、反抗したりした母親が亡くなってその優しさや偉大さを知り、無性に会いたくなるという気持ちに血のつながりは関係ないはず。


自分が今生きている。
たったそれだけのことが、きっと誰かの踏み板になっているのだ。
そう考えれば生きてゆくのに力が湧いてくる。



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