店長スペシャル

人生は心に想い描いた通りになる。ゴールデンルールの道。

化合

2011-11-25 15:31:32 | Weblog
『化合』 今野敏著


警察犯罪のプロ今野敏の最新作。
事件そのものよりも警察内部の捜査を掘り下げてゆく不思議な小説。
今回初めて今野作品読んけど、これに慣れなきゃならないのかなぁ。
たしかに警察内部は興味深い。
でも犯人逮捕は二の次で警察内部の事務的処理や縄張り争いが主だとしたら日本警察に未来はないでしょう。

板橋区内の公園でイベントサークル主宰者が刺殺された。乱れた男女関係、バブル期の借金を取り立てる金融屋、男が執着して通った六本木のキャバクラ嬢。スピード解決を目指すエリート検事は容疑者を固めた。検事主導の捜査本部に、若き警視庁捜査一課刑事は抗えるのか。時は1990年、科学捜査の夜明けを迎えようとしていたが…。

捜査を行う刑事コンビが主体で物語が始まるのだが、年配の相棒のいい加減さにイラつき捜査に戸惑う若手刑事はおもしろくスカッとする。
だが年配刑事のいい加減さは実は「的を得た努力」だったのだ。ベテラン刑事の行動で証明する姿はカッコイイ。

検事と刑事の対立も見ごろ。これは永遠のテーマだね。
もっともこれが本国の裁判が円滑に行われない悪だともいえる。

文章は読みやすく東野圭吾を思わせるリズムもあるから清々しい。
警察犯罪本はミステリーとはかなりかけ離れていて犯人探しや犯罪動機がポイントではなく、わりと簡単な事件をどのくらい複雑であるかを想像する警察思考に重要点があるのだ。
だから話の仮定を超越した想像力が必要。登場人物も読手も両方ね。

しかし危険だ。著者は危険だ。
一歩間違えれば直木賞もとれるかも。
もっとも著者の作品全部読んでから判断するけどね。

年下の男の子

2011-11-17 17:34:21 | Weblog
『年下の男の子』 五十嵐貴久著


こういう話大好き!
だから本ってやめられないな。
恋愛小説なんだけどただのラブストーリーではない。
好きだの愛してるだのと恋愛当事者のグダグダが続く小説とは比較にならない。まぁ、おもしろいというよりも終始晶子に対して苛立って読んでいたよ。
最後のドンデン返しには参りました。
本書はある種の「ミステリー」といってもよいでしょう。

川村晶子は三十七歳の独身。職場では管理職の立場であり婚期を逃したお局的存在だが、仕事はできるキャリアウーマン。でも会社が終われば一人の女の子であり、いい人との出会いがあればいつでも結婚を視野に入れている。
ある日、取引先の下請け会社の新卒社員である児島くんと知り合う。
だが彼は今年二十三歳。晶子とは十四歳も離れているのだ。彼との交際なんて眼中にない晶子だが、二人で徹夜作業をすることになり徐々に距離が近づいてゆく…。

まずこの出会い。
下請けである児島くんの会社のミスにより徹夜作業で仕事をするという出会いがある。知り合うきっかけは仕事取引。そして今回は先方のミス。
三十七歳と二十三歳が出会うシーンは至って平凡。だが十四歳年下の新卒の彼は純粋な気持ちで何事にもぶつかってくるから好感がもてる。
自分の会社のミスにより一睡もせず仕事をさせたお礼に食事に誘う。
晶子も社交辞令だと食事を受けるが彼を恋愛対象には考えていない。そう悲観的な彼女の心情が彼を寄せつけないのだ。

晶子の持論はこうだ。
年の差カップルは出会った時はイイ。お付き合いもよい。一年間は幸せが続くだろう。だが問題はその先にある。自分が四十の時彼は二十六。五十歳になる頃には隣に彼は絶対いないだろう。お互いが結婚を望んでも、世間体、子供の出産、性の持続など、致命的な問題ばかりが現実にある。おそらく男女間の年齢の差は八歳以内が限界だろう。相手を信じ続けても年の差破局は必ずくる。
後に絶望が訪れる未来ならばそんな将来は端からないほうがいい。
晶子は大人な女性なのだ。四年前に元カレと破局したときに愛する恐怖を知ったのでしょう。
僕は女性ではないけれど晶子の気持ちは理解できる。男の大半はそうだからな。
あれだけ愛していた小柳ルミ子を大澄賢也は簡単に捨てたからな。それも晶子の考える将来のピンポイントな時期に…。

だからなかなか交際に踏みきれない晶子。しつこいくらいの優しいメールを送り続ける児島をだんだん好きになる晶子に、早く付き合え、と何度も思ったな。
児島が晶子を好きになる理由なんだけど、明確に彼女を好きになった時点や感覚がわからなかった。自然に人を好きになるのはわかるけど小説だからな。惹かれたポイントだけでも知りたかったけど。まぁいいか、晶子の一人称だから。

児島は毎日メール送り再び食事に誘いだす。新卒では無理のような高級レストランの毎回の招待は気持ち悪かったけど、晶子の率直な料理の感想や年下の観察は清々しく気持ちよかった。
当然僕にもそんな時はあったし、年上の女性と付き合っている時期もあったから共感できた。
年上の女性は男性をあたりまえだけど冷静にみる。少し姉貴目線で。
でも晶子は対等で児島を見ている気がした。年下の弟の感覚だと言っていたけどそうは感じられなかった。同じスタートラインで同等に付き合っている彼女からは尊敬の念さえ感じられた。
そして、半年先まで予約いっぱいの有名レストランをいくら兄貴のコネとはいえ、店内一の席を取得できる児島の苦労を理解している所もスゴイ。

だが結論はこうなのだ。
先入観バリバリの自己思想により一方的に別れを告げる晶子。
そして自分に相応しい年相応の上司と関係が近づいてゆく。
なんだよ!晶子ふざけんなよ!こんなクソジジイより児島にしろよ!
読んでいて晶子に怒りが爆発しそうになりました。

でも晶子は気づくのです。
そう、世間体なんてクソ食らえ!年齢差なんて死んじまえ!
相田みつおじゃないけど、幸せは自分で決める、ということを…。

最後は泣いた。久しぶりの嬉し涙に感動した。
晶子大好き。晶子素敵。
読後何日も晶子が夢にでてきた。
本書は最高。
こういう作品をいつか自分で描いてみたい。