スピードの果て 近藤史恵著(yom yom vol.9より)
車を運転中、自転車レーサーが脇に近付くと、“歩道走れよ!”といつもうざい気持ちになっていた。でも彼らからすると歩道を走る事自体が無意味なのである。ちょっとした段差でパンクするし、スピードすら出せない。この作品はレーサーからの視点でかかれており、いかに公道で練習することが危険なものか分からせてくれる。ロードレーサーなりの理屈が見えた気がした。前作、ロードレーサー小説「サクリファイス」で、脇役だった伊庭がこの短篇では主人公となっている。相変わらず孤高の自転車乗りだが、意外な性格も描かれていて痛快だった。やはりロードバイクの世界を描かせたら、この著者はうまいなぁ。想像力がリアルを凌駕していく文体って好きなのだよね。でも主人公は将来必ず世界のトップになるのだろう、という期待を読者にうえつけ、敵から勝ち抜くにはさまざまな試練(イジメ)を乗り越え、何もかも捨てなければならない孤独簑を教えてくれた。性格はともかくとしても、妹と両親の微妙な関係も教えて欲しかったな。
車を運転中、自転車レーサーが脇に近付くと、“歩道走れよ!”といつもうざい気持ちになっていた。でも彼らからすると歩道を走る事自体が無意味なのである。ちょっとした段差でパンクするし、スピードすら出せない。この作品はレーサーからの視点でかかれており、いかに公道で練習することが危険なものか分からせてくれる。ロードレーサーなりの理屈が見えた気がした。前作、ロードレーサー小説「サクリファイス」で、脇役だった伊庭がこの短篇では主人公となっている。相変わらず孤高の自転車乗りだが、意外な性格も描かれていて痛快だった。やはりロードバイクの世界を描かせたら、この著者はうまいなぁ。想像力がリアルを凌駕していく文体って好きなのだよね。でも主人公は将来必ず世界のトップになるのだろう、という期待を読者にうえつけ、敵から勝ち抜くにはさまざまな試練(イジメ)を乗り越え、何もかも捨てなければならない孤独簑を教えてくれた。性格はともかくとしても、妹と両親の微妙な関係も教えて欲しかったな。