店長スペシャル

人生は心に想い描いた通りになる。ゴールデンルールの道。

天使のおやつ

2009-11-27 19:11:39 | Weblog
『天使のおやつ』  沢木耕太郎


一人娘がある日突然死んでしまう。

幼稚園のすべり台から転落し怪我した娘。
一見軽い事故に思えたのだが、脳に腫瘍が見つかる。
すぐに入院させ手術に踏みいるがもうすでに手遅れ。

やり場のない怒りをどこにぶつけてよいかわからない父親。
幼稚園側への責任追及か? 医師の診断ミスなのか? 他の園児が突き飛ばしたのか?
裁判も考えるが父親がとった行動は、最大の原因であるすべり台を解体することだった。

どんなことをしても戻ってこない娘に対して。
でも何もしないわけにもいかない…。

もし自分が父親として、同じ状況に陥ったら、はたしてどんなことをするのだろうか?

妻とは永遠に心から笑いあえないだろう。
天国にいる娘は、両親が私のせいで離ればなれになることを願わないが、たぶん離婚するだろう。

人は子供を亡くしたやりきれない気持ちを相手方に求める為、裁判をして莫大な金額を請求する。
二度とこのようなことがおきないように相手に示す為に…。
それしか手段がないのだろう。
子供が戻ってくるわけではないが、なにもしないでいること自体が悪に感じてしまい。

でもこの父親はその手段は選ばず、すべり台をぶち壊すのだ。

なんだか少しながら理解できる気がする。
一生懸命解体して一つのことに専念できる時間を作りたいのだ。
ただひたすら。何も考えず。解体する。すべり台のせいではないはずなのに…。

そして、一度も缶コーヒーを飲んだことのない父親が、缶コーヒーに口をつけたのは、些細なことでも、新しい心みで、新しい世界が始まる、期待や変化(もしかしたら、娘が帰ってくる)を求める希望なのかもしれない。


借金取りの王子

2009-11-15 18:20:27 | Weblog
『借金取りの王子』  垣根涼介著


「幸せ」は自分自身にしか決められないと改めて思った。


一流大学を卒業し、一流企業で働いて高収入を得る。
まさに絵に描いた人生かもしれないが、それがどうした?と言われてしまえばそれで終わり。
結局のところ、自分の満足度しか幸せはつかめない。

会社にクビを宣告されたって、これを機に新しい世界へのチャレンジをする、というセリフは決して間違ってはいない。
むしろ自分自身にもう一度問質すチャンスなのでは。
きれいごとばかり言ってゴメンナサイ、かな?


『君たちに明日はない』の続編の本作は、五つの完結短編ストーリーだが、主人公二人のことよりも、相手方よりで構成されている。
著者の真意は絶対揺れない。

しかも前作より以上、キャラクターの魅力が光り、非常に濃い作品に仕上がっている。
このシリーズ何作も続けて欲しいな。


「二億円の女」

デパートの外商部(直接取引)営業の倉橋なぎさの生き様を描いている。
恐ろしく大変なノルマを女性ながら毎月クリアしていく姿には圧倒されっぱなし。
孤独が作り出した強い女性。立派なような、悲しいような…。


「女難の相」

女性の圧倒的パワーに押され職場で行き場をなくしていく切ない話。
初恋の女性にからかわれ女性不審な男は、出世よりも脱女性の道を選ぶ。
バカかおまえ?と簡単には済まされないが、本人の気持ちには最後までなれなかった。


「借金取りの王子」

ヒロと美佐子の壮絶な純愛ストーリー。
男気溢れる元バリバリヤンキーの美佐子が、とても魅力的で女性も憧れる女性像を見事に描いている。
美佐子はほんとうに素晴らしい女性。
いかに社会には学歴が不要だということがイヤというほど理解できる。
六大学を首席で卒業したって無茶苦茶な日本語を話す大人はたくさんいる。
暴走族時代に学んだ縦社会が礼儀作法を身につける過去の実体験がよっぽど社会で役に立つ。

反対する両親に結婚の承諾をお願いする美佐子に僕は大泣きしました。
僕の地元「小岩」が舞台なのでより親近感が沸きました。


「山里の娘」

地方に住んでいる人の都会への憧れというフィルターを通して、二十代の女性が持つ、本当にこのままでよいのか?私の人生。という葛藤を描いている。
結末は今の自分を選ぶが、それでよいのだろう。
そう自分が決めたのだから。
この作品は一見地味だが一番著者の思いが込められている。


「人にやさしく」

このシリーズの主人公の二人である、真介と陽子の新しいチャレンジを描いている。
テーマは二人の女性の人間性。
女性の人物描写から一歩踏み込んで、今度は女性各々の相性まで描いて納得行く答えをだしている。
それぞれを上から目線で語るやりとりは面白いが、それでも真介がひっくり返す展開に違和感を覚える。
結局この二人は結ばれないのかも。



いやぁ~面白くて一気に「二回」読みました。超おすすめの一冊。