今回は、顔面神経麻痺についてご紹介します
有名人でも発症した方がいます
・ビートたけし(タレント)
・船越英一郎(俳優)
・松居一代(女優)
・落合博満(中日ドラゴンズ第29代監督)
・高橋メアリージュン(モデル)
・山田ローラ(モデル)
・ビビアン・スー(女優)
・TKO 木下隆行(お笑い芸人)
・奥村政佳(RAG FAIRのボイスパーカッション)
当院でも、何人もの方が相談に訪れている疾患の1つです
まずは、顔面神経麻痺とはどんな病気かについてお話しします
顔面神経麻痺とは、顔の片側(稀に両側)に麻痺が生じて、顔の筋肉が動かなくなってしまう病気です

初期症状としては、片目の周辺がぴくぴくする程度のものから、ある日突然に朝起きたら急に顔が動かない、目が閉じない、口に含んだ水がこぼれる、笑うと顔が曲がる、口が動かずうまくしゃべれないなどです。
また、目が閉じられないため乾く、普通にしていても涙が出る、音が強く響く、味覚が分からなくなるなどの随伴症状が現れます。
その後、額にしわが寄らない、頬を膨らませることができない、口元が下がるなどの症状もみられるようになります。
顔面神経麻痺には主に、中枢性と末梢性があります
中枢性の顔面神経麻痺は脳腫瘍、脳梗塞、脳出血等の合併症などにより脳神経に問題が生じた時にその症状の1つとして顔面部に神経麻痺が見られるものです。
末梢性の顔面神経麻痺は、顔面神経が脳神経(中枢)から出て末梢部へ行く途中でいずれかのトラブルが起こった時に顔面部に神経麻痺が見られるものです。
当院を受診する患者さまは、末梢性が主になります。
末梢性の顔面神経麻痺の原因には、
1.ベル麻痺(Bell麻痺)
2.ラムゼイ・ハント症候群(Ramsay Hunt syndrome)
全体の3/4は、上記2疾患が原因です。
他にも
3.中耳炎、顔や側頭部の外傷、耳手術後
4.糖尿病、尿毒症、ビタミン欠乏症、甲状腺機能低下症
5.ギラン・バレー症候群(Guillain-Barre syndrome)
6.シェーグレン症候群(Sjogren syndrome)
7.メルカーソン・ローゼンタール症候群(Melkersson-Rosenthal syndrome)
8.ライム病(Lyme病:ボレリア感染症)
9.アミロイドーシス
10.白血病、サルコイドーシス、HIV感染
などがあります。
代表的な1と2の疾患を解説します
■ベル麻痺(Bell麻痺)
発病率は人口10万あたり年20~30名。
ベル麻痺の引き金になるのは、寒冷刺激、過度の飲酒、精神的ストレス、過労などです。
一側顔面神経麻痺の60~75%を占め、性差はなく、発症年齢は全ての年齢で発症すますが、40歳台にピークを持ち10歳以下は少ないです。
Bell 麻痺は長らく原因不明のものとされてきましたが、ウイルス研究の進歩によってMurakamiらの研究により、Bell 麻痺の79%からHSV-1(herpes simplex virus-1=単純ヘルペスウイルス1型)のDNA を検出し、HSV-1が強く関与することが明らかとなりました。
その後,Furutaらは,Bell 麻痺患者では発症1週間以内の唾液からコントロールと比較して有意に効率にHSV-1のDNA が検出され2週以内に消失することを報告しました。
これらの研究結果から、Bell麻痺の多くはHSV-1の再活性化に関連して発症すると考えられています。
Bell 麻痺の自然治癒率は70%、発症直後の適切な治療で90%以上が治癒します。
予後不良となる要因は、高齢、高血圧、味覚障害、耳以外の痛み、顔面筋の完全麻痺などが挙げられます。
■ハント症候群(Hunt症候群)
一側顔面神経麻痺の約10%を占めVZV(varicellazoster virus=帯状疱疹ウイルス)によって生ずる顔面神経麻痺を主徴とする疾患です。
Murakamiらの研究により、Ramsay Hunt 症候群の89%からVZV(varicellazoster virus=帯状疱疹ウイルス)のDNA を検出し、VZVが強く関与することが明らかとなりました。
小児期に罹患した水痘(水ぼうそう)の口腔粘膜疹からVZVが逆行性に、あるいはウイルス血症によって顔面神経の膝神経節に到達後潜伏し、後年それが再活性化することで神経炎が生じ、腫脹した神経が骨性顔面神経管の中で自己絞扼を生じ顔面神経麻痺、すなわち顔面半側の表情筋運動障害が発症します。
加えて周囲の脳神経にも波及し、耳介の発赤・水疱形成や耳痛、難聴、めまいなどを合併することが特徴です。
Hunt症候群はBell麻痺と比較して一般に予後が不良であり、自然治癒は30%、初期から十分に治療を行っても治癒は60%程度に留ま事が多いです。
いったん罹患すると、麻痺が残存する可能性が高く、後遺症(※詳細後述)に悩む可能性も高い点がBell麻痺と大きく異なります。
また、顔面神経麻痺のみの症状で、臨床所見ではBell麻痺と鑑別が困難なものをzoster sine herpete(ZSH=無発疹性帯状疱疹)といいます。
顔面神経自体の変性は発症後も進行を続け、7~10日で完成します。
この時点で麻痺の予後がおおよそ決まります。
つまり発症後速やかに、かつ十分な治療を行い、神経変性が完成する発症後約2週間以内の治療が予後を左右するため、その期間内に神経変性を如何に軽減するかが治療の最も重要な点です。
ここから少し余談ですが、ベル麻痺もハント症候群も共に「ヘルペスウイルス」が原因ですが「ヘルペスウイルス」といっても、人間に感染するヘルペスウイルスはこれだけではなく、実に8種類ものウイルスが知られており、感染するウイルスにより、引き起こされる病気や症状はまったく異なります。
ここで少し整理してみます
(1)単純ヘルペスウイルス1型…口唇ヘルペス、ヘルペス性歯肉口内炎、カポジ水痘様発疹症、角膜ヘルペスなど
(2)単純ヘルペスウイルス2型…性器ヘルペスなど
(3)水痘・帯状疱疹ウイルス…水ぼうそう、帯状疱疹
(4)EBV(Epstein- Barr virus=エプスタイン・バー・ウイルス)…伝染性単核症
(5)サイトメガロウイルス…肺炎、網膜炎
(6)ヒトヘルペスウイルス6…突発性発疹、脳炎など
(7)ヒトヘルペスウイルス7…突発性発疹
(8)ヒトヘルペスウイルス8…カポジ肉腫
日本人の場合、単純ヘルペスウイルス1型には50~70%、2型には5~10%の人が感染していると言われており、どちらも再発を繰り返すのが特徴です。
また、水痘・帯状疱疹ウイルスによる水ぼうそうと帯状疱疹は誰でもかかりやすい病気ですが、一般的に1度かかると2度とかからないと言われています。
話を顔面神経麻痺に戻します
治療法です
2011年の日本顔面神経研究会(現、日本顔面神経学会)が発行した「顔面神経麻痺診療の手引き―Bell 麻痺とHunt 症候群」から、治療に関する項目を推奨度とともに一部抜粋して紹介します。
推奨度分類
A :行うよう強く勧められる(少なくとも1つのレベルⅠの結果がある)
B :行うよう勧められる(少なくとも1つのレベルⅡの結果がある)
C1:行うよう考慮してもよいが、十分な科学的根拠はない
C2:科学的根拠がないので、勧められない
D :行わないよう勧められる
1. 急性期の治療にステロイド(経口投与)は有効か?
→ステロイドの高い有効性は確立されており、必須の治療である(推奨度A)
2. 急性期の治療にステロイド大量療法は有効か?
→Bell 麻痺重症例に対する急性期治療として勧められる(推奨度B)
Hunt 症候群重症例には抗ウイルス薬の併用を条件として勧められるが、十分な科学的根拠はない(推奨度C1)
3. 急性期の治療に抗ウイルス薬は必要か?
→Bell 麻痺において抗ウイルス薬のルーチン投与は推奨できないが、重症例にはステロイドとの併用投与が推奨される。(推奨度C1)
Hunt 症候群に対しては麻痺の重症度にかかわらずルーチン投与が推奨される(推奨度C1)
4. Bell 麻痺およびHunt 症候群に顔面神経減荷術は有効か?
→有効である。ただし外科的治療なので、内科的治療が無効であると判断された場合に行われるのが望ましい。
手術適応は発症1週以降2週以内の高度麻痺例で、40点法(柳原法)で8点以下、ENoG 値で10%以下の条件を満足している場合である(推奨度C1)
5. 低周波治療は有効か?有害か?
→神経筋電気刺激(低周波治療)は有害である(推奨度D)
6. 慢性期の理学的リハビリテーションは有効か?
→慢性期の治療にリハビリテーションは有効である(推奨度C1)

当院でも、上記の手引書を参考に最新の文献や学会等で知り得た治療法を含めて日々研鑽しています
また、当院を受診された患者さまの中には後遺症に悩む方もおられます
顔面神経麻痺の後遺症には、
・病的共同運動(synkinesis)
・顔面拘縮(動かなくなり固くなる)
・痙攣(けいれん)
・アブミ骨筋性耳鳴(耳の鼓膜の奥の音を伝える小さな骨の1つに付いている筋肉)
・ワニの涙(食事のときに食べ物を食べると涙が出る)
といった症状が生じることがあります。
病的共同運動(synkinesis)とは、神経再生時の過誤支配によって生じると考えられ、後遺症の中でも頻度が高い症状です。
顔面のある部位の随意運動(自力で動く)や反射的運動時に、他の部位の不随意運動(無意識に動く)も伴う症状です。
具体的には、瞬目時(まばたき)に患側の頬部から口角がピクピク痙攣したように動いたり、強閉眼時には口角挙上、頬部の隆起、鼻唇溝が顕著になります。
また、会話時や食事時には患側の眼瞼裂(まぶた)狭小化や閉眼状態となる場合もあります。
当院では、発症後すぐに来て頂く患者さまもいますが、多くは病院での急性の治療を終え、変化(改善)に満足できないまたは、1~2ヵ月経過して「インターネットなどで鍼灸が良いと聞いた」と調べてくる患者さまがおられます
なかには、発症して数年間経過し麻痺が残存した方や後遺症に悩む方が、美容上の観点や生活上の不具合からもう少し何とかならないかという相談に訪れることもあります
どちらにしても、ご自身の顔面神経麻痺に関していろいろと調べて、聞いて、インターネットの知識をたくさん持って来られてくる方が多いです
そんな方々にも、当院での治療方針をお伝えし、納得した上で治療をして頂いています
1年以上経過した患者さまでも、鍼灸治療により完璧でないまでも改善が見られた方や周りの視線が気にならないまで回復した方など回復傾向は人それぞれですが、悪化したり全く変化が無かった方は今のところいません
そんな患者さまの中で今回、本人の了解を得られた1人の症例の経過を以下に掲載させて頂きます
快くご協力を頂きまして深く感謝いたしますm(_ _)m
初診の約1か月前に朝起きたら急に右顔面が歪み、病院へ行き約2週間程入院治療しました。
退院後は、通院治療をしていましたが状況は良くなく、当院の事を知り来院しました。
初診時は、目が閉じられず、痛み刺激の反応も鈍く、食事中も口から水分がこぼれてしまう事があったようです。
その後、病院での投薬治療を終え、当院での治療のみで約5ヶ月ほど経過しています。
仕事が忙しく週1回くらいの不定期で通院されています。
以下に、初診時からの経過を写真に撮らせて頂き、比較したものを掲載します。
↓普通の表情(初回)

↓普通の表情(5ヶ月後)

↓強閉眼の表情(初回)

↓強閉眼の表情(5ヶ月後)

↓強開眼&開口の表情(初回)

↓強開眼&開口の表情(5ヶ月後)

↓「い~」の表情(初回)

↓「い~」の表情(5ヶ月後)

↓「う~」の表情(初回)

↓「う~」の表情(5ヶ月後)

↓「ぷ~」の表情(頬を膨らます)(初回)

↓「ぷ~」の表情(頬を膨らます)(5ヶ月後)

この患者さまの経過を知る知人は「よく見ないと気が付かないほど良くなってきたね」と最近は言われるそうです
しかし、まだ眼瞼下垂の症状が強く、朝方は目が明かない事もあるようです
引き続きこの患者さまの症状改善に向けて努力していきます
当院では、上記写真のように約1ヵ月毎に表情を撮影し、初診時と比較した写真を患者さまにお渡しして、経過を評価して頂いています

顔面神経麻痺の評価にはいろいろありますが、顔面各部位の動きを評価しその合計で麻痺程度を評価する部位別評価の40点法(柳原法)というものがあります。

評価は、安静時の左右対称性と、9項目の表情運動を4点(ほぼ正常)、2点(部分麻痺)、0点(高度麻痺)の3段階で評価し、40点満点で10点以上を不全麻痺、8点以下を完全麻痺と定義しています。
あるいは、20点以上を軽症、18~10点を中等度、8点以下を重症としています。
その評価を参考に、当院では簡略的に上記6パターンの写真で評価しています

鍼灸治療は、発症後早い時期から刺激することで回復の可能性が高まります

病院での治療とも併用が可能です
もし、発症してしまったら早期からご相談ください
また、過去に発症して後遺症に悩んでいる方もこの機会に是非一度ご相談ください
【 あきらめなければ必ず道はある。必ず。 】
― 豊田佐吉 ―
(トヨタグループの創始者)
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
〒358-0055
埼玉県入間市大字新光211-1
◆Tel&Fax 04-2968-8941
◆ ホームページアドレス
http://www6.plala.or.jp/yasu-A-M-B/
◆メールアドレス
yasu-a-m-b@amail.plala.or.jp
↑(病気や怪我などについてご質問のある方はこのアドレスにメールを下さい)
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

有名人でも発症した方がいます

・ビートたけし(タレント)
・船越英一郎(俳優)
・松居一代(女優)
・落合博満(中日ドラゴンズ第29代監督)
・高橋メアリージュン(モデル)
・山田ローラ(モデル)
・ビビアン・スー(女優)
・TKO 木下隆行(お笑い芸人)
・奥村政佳(RAG FAIRのボイスパーカッション)
当院でも、何人もの方が相談に訪れている疾患の1つです

まずは、顔面神経麻痺とはどんな病気かについてお話しします

顔面神経麻痺とは、顔の片側(稀に両側)に麻痺が生じて、顔の筋肉が動かなくなってしまう病気です


初期症状としては、片目の周辺がぴくぴくする程度のものから、ある日突然に朝起きたら急に顔が動かない、目が閉じない、口に含んだ水がこぼれる、笑うと顔が曲がる、口が動かずうまくしゃべれないなどです。
また、目が閉じられないため乾く、普通にしていても涙が出る、音が強く響く、味覚が分からなくなるなどの随伴症状が現れます。
その後、額にしわが寄らない、頬を膨らませることができない、口元が下がるなどの症状もみられるようになります。
顔面神経麻痺には主に、中枢性と末梢性があります

中枢性の顔面神経麻痺は脳腫瘍、脳梗塞、脳出血等の合併症などにより脳神経に問題が生じた時にその症状の1つとして顔面部に神経麻痺が見られるものです。
末梢性の顔面神経麻痺は、顔面神経が脳神経(中枢)から出て末梢部へ行く途中でいずれかのトラブルが起こった時に顔面部に神経麻痺が見られるものです。
当院を受診する患者さまは、末梢性が主になります。
末梢性の顔面神経麻痺の原因には、
1.ベル麻痺(Bell麻痺)
2.ラムゼイ・ハント症候群(Ramsay Hunt syndrome)
全体の3/4は、上記2疾患が原因です。
他にも
3.中耳炎、顔や側頭部の外傷、耳手術後
4.糖尿病、尿毒症、ビタミン欠乏症、甲状腺機能低下症
5.ギラン・バレー症候群(Guillain-Barre syndrome)
6.シェーグレン症候群(Sjogren syndrome)
7.メルカーソン・ローゼンタール症候群(Melkersson-Rosenthal syndrome)
8.ライム病(Lyme病:ボレリア感染症)
9.アミロイドーシス
10.白血病、サルコイドーシス、HIV感染
などがあります。
代表的な1と2の疾患を解説します

■ベル麻痺(Bell麻痺)
発病率は人口10万あたり年20~30名。
ベル麻痺の引き金になるのは、寒冷刺激、過度の飲酒、精神的ストレス、過労などです。
一側顔面神経麻痺の60~75%を占め、性差はなく、発症年齢は全ての年齢で発症すますが、40歳台にピークを持ち10歳以下は少ないです。
Bell 麻痺は長らく原因不明のものとされてきましたが、ウイルス研究の進歩によってMurakamiらの研究により、Bell 麻痺の79%からHSV-1(herpes simplex virus-1=単純ヘルペスウイルス1型)のDNA を検出し、HSV-1が強く関与することが明らかとなりました。
その後,Furutaらは,Bell 麻痺患者では発症1週間以内の唾液からコントロールと比較して有意に効率にHSV-1のDNA が検出され2週以内に消失することを報告しました。
これらの研究結果から、Bell麻痺の多くはHSV-1の再活性化に関連して発症すると考えられています。
Bell 麻痺の自然治癒率は70%、発症直後の適切な治療で90%以上が治癒します。
予後不良となる要因は、高齢、高血圧、味覚障害、耳以外の痛み、顔面筋の完全麻痺などが挙げられます。
■ハント症候群(Hunt症候群)
一側顔面神経麻痺の約10%を占めVZV(varicellazoster virus=帯状疱疹ウイルス)によって生ずる顔面神経麻痺を主徴とする疾患です。
Murakamiらの研究により、Ramsay Hunt 症候群の89%からVZV(varicellazoster virus=帯状疱疹ウイルス)のDNA を検出し、VZVが強く関与することが明らかとなりました。
小児期に罹患した水痘(水ぼうそう)の口腔粘膜疹からVZVが逆行性に、あるいはウイルス血症によって顔面神経の膝神経節に到達後潜伏し、後年それが再活性化することで神経炎が生じ、腫脹した神経が骨性顔面神経管の中で自己絞扼を生じ顔面神経麻痺、すなわち顔面半側の表情筋運動障害が発症します。
加えて周囲の脳神経にも波及し、耳介の発赤・水疱形成や耳痛、難聴、めまいなどを合併することが特徴です。
Hunt症候群はBell麻痺と比較して一般に予後が不良であり、自然治癒は30%、初期から十分に治療を行っても治癒は60%程度に留ま事が多いです。
いったん罹患すると、麻痺が残存する可能性が高く、後遺症(※詳細後述)に悩む可能性も高い点がBell麻痺と大きく異なります。
また、顔面神経麻痺のみの症状で、臨床所見ではBell麻痺と鑑別が困難なものをzoster sine herpete(ZSH=無発疹性帯状疱疹)といいます。
顔面神経自体の変性は発症後も進行を続け、7~10日で完成します。
この時点で麻痺の予後がおおよそ決まります。
つまり発症後速やかに、かつ十分な治療を行い、神経変性が完成する発症後約2週間以内の治療が予後を左右するため、その期間内に神経変性を如何に軽減するかが治療の最も重要な点です。
ここから少し余談ですが、ベル麻痺もハント症候群も共に「ヘルペスウイルス」が原因ですが「ヘルペスウイルス」といっても、人間に感染するヘルペスウイルスはこれだけではなく、実に8種類ものウイルスが知られており、感染するウイルスにより、引き起こされる病気や症状はまったく異なります。
ここで少し整理してみます

(1)単純ヘルペスウイルス1型…口唇ヘルペス、ヘルペス性歯肉口内炎、カポジ水痘様発疹症、角膜ヘルペスなど
(2)単純ヘルペスウイルス2型…性器ヘルペスなど
(3)水痘・帯状疱疹ウイルス…水ぼうそう、帯状疱疹
(4)EBV(Epstein- Barr virus=エプスタイン・バー・ウイルス)…伝染性単核症
(5)サイトメガロウイルス…肺炎、網膜炎
(6)ヒトヘルペスウイルス6…突発性発疹、脳炎など
(7)ヒトヘルペスウイルス7…突発性発疹
(8)ヒトヘルペスウイルス8…カポジ肉腫
日本人の場合、単純ヘルペスウイルス1型には50~70%、2型には5~10%の人が感染していると言われており、どちらも再発を繰り返すのが特徴です。
また、水痘・帯状疱疹ウイルスによる水ぼうそうと帯状疱疹は誰でもかかりやすい病気ですが、一般的に1度かかると2度とかからないと言われています。
話を顔面神経麻痺に戻します

治療法です

2011年の日本顔面神経研究会(現、日本顔面神経学会)が発行した「顔面神経麻痺診療の手引き―Bell 麻痺とHunt 症候群」から、治療に関する項目を推奨度とともに一部抜粋して紹介します。
推奨度分類
A :行うよう強く勧められる(少なくとも1つのレベルⅠの結果がある)
B :行うよう勧められる(少なくとも1つのレベルⅡの結果がある)
C1:行うよう考慮してもよいが、十分な科学的根拠はない
C2:科学的根拠がないので、勧められない
D :行わないよう勧められる
1. 急性期の治療にステロイド(経口投与)は有効か?
→ステロイドの高い有効性は確立されており、必須の治療である(推奨度A)
2. 急性期の治療にステロイド大量療法は有効か?
→Bell 麻痺重症例に対する急性期治療として勧められる(推奨度B)
Hunt 症候群重症例には抗ウイルス薬の併用を条件として勧められるが、十分な科学的根拠はない(推奨度C1)
3. 急性期の治療に抗ウイルス薬は必要か?
→Bell 麻痺において抗ウイルス薬のルーチン投与は推奨できないが、重症例にはステロイドとの併用投与が推奨される。(推奨度C1)
Hunt 症候群に対しては麻痺の重症度にかかわらずルーチン投与が推奨される(推奨度C1)
4. Bell 麻痺およびHunt 症候群に顔面神経減荷術は有効か?
→有効である。ただし外科的治療なので、内科的治療が無効であると判断された場合に行われるのが望ましい。
手術適応は発症1週以降2週以内の高度麻痺例で、40点法(柳原法)で8点以下、ENoG 値で10%以下の条件を満足している場合である(推奨度C1)
5. 低周波治療は有効か?有害か?
→神経筋電気刺激(低周波治療)は有害である(推奨度D)
6. 慢性期の理学的リハビリテーションは有効か?
→慢性期の治療にリハビリテーションは有効である(推奨度C1)

当院でも、上記の手引書を参考に最新の文献や学会等で知り得た治療法を含めて日々研鑽しています

また、当院を受診された患者さまの中には後遺症に悩む方もおられます

顔面神経麻痺の後遺症には、
・病的共同運動(synkinesis)
・顔面拘縮(動かなくなり固くなる)
・痙攣(けいれん)
・アブミ骨筋性耳鳴(耳の鼓膜の奥の音を伝える小さな骨の1つに付いている筋肉)
・ワニの涙(食事のときに食べ物を食べると涙が出る)
といった症状が生じることがあります。
病的共同運動(synkinesis)とは、神経再生時の過誤支配によって生じると考えられ、後遺症の中でも頻度が高い症状です。
顔面のある部位の随意運動(自力で動く)や反射的運動時に、他の部位の不随意運動(無意識に動く)も伴う症状です。
具体的には、瞬目時(まばたき)に患側の頬部から口角がピクピク痙攣したように動いたり、強閉眼時には口角挙上、頬部の隆起、鼻唇溝が顕著になります。
また、会話時や食事時には患側の眼瞼裂(まぶた)狭小化や閉眼状態となる場合もあります。
当院では、発症後すぐに来て頂く患者さまもいますが、多くは病院での急性の治療を終え、変化(改善)に満足できないまたは、1~2ヵ月経過して「インターネットなどで鍼灸が良いと聞いた」と調べてくる患者さまがおられます

なかには、発症して数年間経過し麻痺が残存した方や後遺症に悩む方が、美容上の観点や生活上の不具合からもう少し何とかならないかという相談に訪れることもあります

どちらにしても、ご自身の顔面神経麻痺に関していろいろと調べて、聞いて、インターネットの知識をたくさん持って来られてくる方が多いです

そんな方々にも、当院での治療方針をお伝えし、納得した上で治療をして頂いています

1年以上経過した患者さまでも、鍼灸治療により完璧でないまでも改善が見られた方や周りの視線が気にならないまで回復した方など回復傾向は人それぞれですが、悪化したり全く変化が無かった方は今のところいません

そんな患者さまの中で今回、本人の了解を得られた1人の症例の経過を以下に掲載させて頂きます

快くご協力を頂きまして深く感謝いたしますm(_ _)m
初診の約1か月前に朝起きたら急に右顔面が歪み、病院へ行き約2週間程入院治療しました。
退院後は、通院治療をしていましたが状況は良くなく、当院の事を知り来院しました。
初診時は、目が閉じられず、痛み刺激の反応も鈍く、食事中も口から水分がこぼれてしまう事があったようです。
その後、病院での投薬治療を終え、当院での治療のみで約5ヶ月ほど経過しています。
仕事が忙しく週1回くらいの不定期で通院されています。
以下に、初診時からの経過を写真に撮らせて頂き、比較したものを掲載します。
↓普通の表情(初回)

↓普通の表情(5ヶ月後)

↓強閉眼の表情(初回)

↓強閉眼の表情(5ヶ月後)

↓強開眼&開口の表情(初回)

↓強開眼&開口の表情(5ヶ月後)

↓「い~」の表情(初回)

↓「い~」の表情(5ヶ月後)

↓「う~」の表情(初回)

↓「う~」の表情(5ヶ月後)

↓「ぷ~」の表情(頬を膨らます)(初回)

↓「ぷ~」の表情(頬を膨らます)(5ヶ月後)

この患者さまの経過を知る知人は「よく見ないと気が付かないほど良くなってきたね」と最近は言われるそうです

しかし、まだ眼瞼下垂の症状が強く、朝方は目が明かない事もあるようです

引き続きこの患者さまの症状改善に向けて努力していきます

当院では、上記写真のように約1ヵ月毎に表情を撮影し、初診時と比較した写真を患者さまにお渡しして、経過を評価して頂いています


顔面神経麻痺の評価にはいろいろありますが、顔面各部位の動きを評価しその合計で麻痺程度を評価する部位別評価の40点法(柳原法)というものがあります。

評価は、安静時の左右対称性と、9項目の表情運動を4点(ほぼ正常)、2点(部分麻痺)、0点(高度麻痺)の3段階で評価し、40点満点で10点以上を不全麻痺、8点以下を完全麻痺と定義しています。
あるいは、20点以上を軽症、18~10点を中等度、8点以下を重症としています。
その評価を参考に、当院では簡略的に上記6パターンの写真で評価しています


鍼灸治療は、発症後早い時期から刺激することで回復の可能性が高まります


病院での治療とも併用が可能です

もし、発症してしまったら早期からご相談ください

また、過去に発症して後遺症に悩んでいる方もこの機会に是非一度ご相談ください

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― 豊田佐吉 ―
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↑(病気や怪我などについてご質問のある方はこのアドレスにメールを下さい)
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