やすとみせんせいの気保養記

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円形脱毛症

2019年11月30日 | 症例
今回は、円形脱毛症についてご紹介します

「円形脱毛症」ってご存知ですか

平安時代に「頭を鬼になめられた痕」という意味の「鬼舐頭」(きしとう、きじとう、とくとう)という言葉があったそうですが、これが円形脱毛症を指していたといわれており、古くから身近な病気の一つでした

「知らぬ人は知るまいが、自分の頭は、昨年十一月の初め鬼舐頭病(とくとうびょう)といふのに取付かれたので、今猶(いまなお)直径一寸余の禿(はげ)が、無慮(むりょ)三つ四つ、大きくもない頭に散在して居る。」
『雪中行』小樽より釧路まで/石川啄木(著)


円形脱毛症とは、髪が丸く脱毛する病気ですが、髪ばかりではなく、まゆ毛やまつ毛、ヒゲや体毛にも生じることがあります

頭部に1か所だけ脱毛が生じた場合には、円く抜けた形になります。

しかし、多発してそれぞれの脱毛がつながった場合や、頭部全体、頭部以外の毛も抜けた場合には脱毛の形は円形ではなくなります。


円形脱毛症にかかりやすい年齢や性別は特になく、赤ちゃんから高齢者まですべての年齢で発症すると言われています。

アメリカの調査では人口の0.1~0.2%に発生するというデータがあり、日本でも病院を受診する人は同程度の割合と考えられています。

しかし、小さな円形脱毛症などの場合、7~8割の人は自然治癒していると言われてるため、気が付かないうちに自然治癒していることもあり、実際の患者数はもっと多いとも言われています。


■円形脱毛症の発症の原因
円形脱毛症の原因については、様々な説が提唱されています。
近年では、“髪の毛の毛根組織に対して免疫機能の異常が発生”する「自己免疫疾患」を原因とする説が有力です。
免疫機能の異常を発生させる要因としては、疲労や感染症などの肉体的・精神的なストレスや体質的な素因があります。
それらも含め、円形脱毛症の原因になると考えられているものを、以下に紹介しましょう。

●自己免疫疾患
円形脱毛症の原因として近年有力視されているのが、「自己免疫疾患」です。
「自己免疫疾患」とは、外部からの侵入物を攻撃することで私たちの体を守ってくれている免疫系機能に異常が生じ、自分の体の一部分を異物とみなして攻撃してしまう病気です。
円形脱毛症は、Tリンパ球が毛根を異物と間違えて攻撃してしまうために発症すると考えられており、その激しい攻撃により毛根が傷んで、元気な髪の毛でさえ突然抜け落ちてしまうのです。
しかしなぜその様な異常が生じてしまうのかは、まだ明らかになっていません。
また円形脱毛症は、橋本病に代表される甲状腺疾患、尋常性白斑、SLE(systemic lupus erythematosus=全身性エリテマトーデス)、関節リウマチ、あるいは重症筋無力症などの各種自己免疫疾患と併発する場合があります。
特に、甲状腺疾患は約8%、尋常性白斑は約4%の患者が、円形脱毛症を併発していると言われています。

●アトピー素因
アトピー素因とは、アトピー性疾患(アトピー性皮膚炎、気管支炎、アレルギー性鼻炎のいずれか)を持っている人のことを言います。
円形脱毛症患者の40%以上がアトピー素因を持つと言われ、半数以上が本人もしくは家族にアトピー素因が認められるなど、深い関連があるとされています。

●精神的ストレスによる影響
円形脱毛症の発症要因のひとつとして、「精神的ストレス」が挙げられます。
精神的ストレスを受けると、それに抵抗するために交感神経が活発に動きます。
交感神経は、心肺を早く動かしたり体温を上げるなどの働きがあり、身体がストレスと闘う準備をしてくれます。
このとき、ストレスが強すぎたり長く続いたりすると、交感神経に異常をきたします。
その結果、血管を収縮させ、頭部への血流が悪くなり、毛根への栄養補給が行き届かなくなって脱毛が引き起こされると考えられます。
また、ストレスは、毛根への栄養補給を妨げるだけでなく、「自己免疫疾患」や「内分泌異常」などのさまざまな疾患を誘因することもあります。

●遺伝的要素
中国で行われた大規模な調査によると、円形脱毛症患者の約8.4%に、同じ病気を抱えている家族がいると報告されています。
それは親等が近いほど発症率が高く、欧米の調査でも、円形脱毛症患者の一親等の発症率は、二親等以上の家族の10倍におよぶという結果が出ています。
このことから、円形脱毛症には遺伝的要因が関係する可能性が高いと考えられています。

●出産後の女性ホルモン値の変化
妊娠から出産後における女性ホルモンの減少も、原因の一つと言われています。
妊娠中、体内の女性ホルモン値は通常の100倍以上に増加しています。
それが、出産すると一気に通常値に戻ります。
女性ホルモンには発毛促進の作用があり、逆に減少すると抜け毛につながることから、毛周期との関係で産後3~4ヶ月後に抜け毛が多くなります。
多くの場合は頭髪全体のボリュームが減る産後脱毛となりますが、このときに、円形脱毛症になることがあります。
さらにアトピー素因を持つ場合、それが加速されやすいというデータもあります。
ホルモンバランスだけでなく、育児の忙しさによる食事の偏りや出産のストレスが原因になることもありますので、産後の抜け毛には特に気をつけることが大切です。

(円形脱毛症.comより一部改編)


多くの原因が考えられるということは、逆に1人の患者さまの原因を究明することは非常に難しい反面もあります

それゆえ、原因がよくわからずに治療が困難と言われてしまうことも多く見受けます

しかも、医師によっては「精神的ストレスによる影響」を否定しています。

「ストレスが円形脱毛症の症状を誘発する場合もあるが、根本的な原因ではない」と言います。

動物実験では過重なストレスをかけると、半日程度で動物の毛が抜けた例があるようですが、なぜ脱毛したのか、「ストレス」が原因によるはっきりとしたメカニズムはまだわかっていないようです。


人それぞれストレスの感じ方は様々であり、自分基準で他人のストレスは測れないし、ストレスに対する耐性は人により未知です。

当院の患者さまには、自分自身はストレスを感じていないにも拘らず医師に「ストレスのせい」と言われることがストレスと感じる方もいます。

「あなたが感じていないだけで、身体はストレスを感じているからこのような症状が出たんだ」と言われてストレスを感じていないことがまるで悪いかのように言われて困惑してしまうと言っていました。

それでも、ストレスが原因なのでしょうか❓

ストレスはどこで判断し、どこで感じているのでしょうか❓


今回ご紹介する患者さまは、以下のような経緯でした。
(以下症例は、患者さまの了解を得て掲載しています)

60歳 男性 会社員

①平成28年5月頃
初めて円形脱毛症を発症。
行きつけの美容室で指摘される。
しかし、病院には行かずに3~4ヵ月で自然に治癒した。

②平成29年5月頃
2度目の円形脱毛症を発症。
行きつけの美容室で指摘される。
しかし、病院には行かず約6ヵ月で自然に治癒した。

③平成31年2月頃
3度目の円形脱毛症を発症。
行きつけの美容室で指摘される。
今までで一番大きな範囲の円形脱毛症だった。
今まで同様、病院には行かずに様子を見る。

・令和元年5月頃
美容室で「2月から変化が無い」と言われ皮膚科の受診を勧められる。

・令和元年6月頃
皮膚科を受診。
担当医より「来院する時期が遅すぎた。細胞がほぼ死んでいる。元に戻ることはない。」と言われショックを受ける。
液体窒素治療と塗布剤を処方される。
液体窒素治療を2回ほど行い、毎日の塗布剤をするも変化はなかった。

・令和元年7月頃
当院にて別の治療をしていたが、円形脱毛症に気づき治療を勧める。
週1回の灸治療を中心とした治療を開始する。


患者さまの仕事の都合で、週1回の治療で経過を診ていますが、月に1回程度は病院で液体窒素治療と塗布剤の処方も続けています

初診時からの経過を追うため、写真を撮り患者さまと確認しながら経過を診てきました

以下、実際の経過です

R1.7.6(初診時)↑脱毛範囲は後頭部の上、たて約7㎝、よこ約5㎝

R1.7.27

R1.8.28

R1.9.28

R1.10.25

R1.11.30

写真のアップの度合いが違うし、画質が良くないので分かりにくかもしれませんが…

経過を追うごとに、脱毛部の範囲が狭くなっていることが分かると思います

最近では、他の部位と比べて毛量は少ないものの、白髪のような細めの毛髪範囲が多く、脱毛部の領域が狭くなってきています

円形脱毛症の治癒過程として、細めの白髪⇒黒髪へと成長していくので、全体的に順調に回復していると思います

僕が学生の頃、学校の先生から「円形脱毛症にはお灸が効果的だ」と聞かされていました

しかし、なかなか見つけづらい症状に加えて、本人の相談から治療に至るケースも少なく(鍼灸が適応だと知らない)、また今回のようにフォローできたケースも少なく、当院でも治療したケースは多くはありません

しかし、潜在的にも悩んでいる患者さまは大勢いるのではないかと思います

今回のように、専門のドクターに可能性が低いという事を告げられたとしても、治療して回復することはあります

つまり、毛根が「死滅」しているのか「休眠」しているのかは「分かりにくい」ということだと思います

今回のケースが、当院での治療の成果なのか、病院の液体窒素治療と塗布剤の成果か厳密には分かりません

しかしながら、僕は「研究家」ではなく「臨床家」なので、患者さまが回復しているのであれば、どちらと決めるつもりもありません

気になる方は一度、鍼灸の治療に挑戦してみる価値はあります


【 ばい菌が病気ではない。その繁殖を許す体が病気だと知るべきだ 】

― 石橋湛山(いしばし たんざん) ―
(ジャーナリスト、政治家、教育者(立正大学学長))


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